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シナリオ詳細

深夜のラーメン~カロリーを添えて~

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●飯テロだけは、許さない
 ――眼前にラーメンが現れた。
 訳が分からない。しかし己が眼前に在るのは確かに――ラーメンだ。
「や、やめろ止せ……どうしてだ、どうしてこんな時間に現れるんだ……!!」
 男は慄く――だが逃げる事は出来なかった。なぜならば男の背後には……

 熱き鉄板にて脂を滾らせるステーキすら出現していたのだから!!

「今は……深夜の一時だぞ……!!」
 香る匂い。揺蕩う蒸気――それらの何と食欲をそそらせる事か。
 見ればバターは微かに焦げている。狐色に染まりてソースと共に蕩ければ、なんたる至高か。
 喉を鳴らす。脳が過去の味を想起し、勝手に信号を鳴らしているのだ。
 ――喰え、と。
 ああ駄目だ。部屋に匂いが充満して、あ、あ、あああああ――!!
「うわあああああ!!」
 思わず部屋の窓をぶち破って外へと飛び出る男。
 だめだ! だめなんだ! こんなのに、屈しちゃいけない!!
 深夜にご飯を食べるなんて――罪深すぎるのだから!!


「と言う訳で宿に出る食物たちを食して、いえ倒してほしいんですよ!」
 何言ってんだこいつ、という顔で依頼人からの話を聞いているのはイレギュラーズだ――
 ここは鉄帝。首都スチールグラード郊外に存在する、とある宿屋である。
 一見して普通の宿屋であるし実際そうであった――少し前までは、だが。
「実はですね。ここ最近出るんですよ……飯が」
「飯が? ああ夜食付きの宿屋って事かい?」
「いえ違います。勝手に各部屋に出るんですよ――飯が」
 マジで、と宿屋の店主は語る。
 『勝手に』と述べたように、当然それは宿屋側が飯を出している訳ではない。出現時間は夜になってからでバラつきはあるそうだが、大体22時~2時ぐらいの間で各部屋に突如として出現するのだ――飯が。
 今まで確認された内容だと、めっちゃ脂ぎったラーメン、バターを塗りたくったステーキ、近くの海で取れる滅茶滅茶新鮮そうな魚の切り身(わさび+醤油付き)に、日替わりでデザートも付いてくるらしい――えっ。めちゃめちゃいいじゃん、何が問題なの?
「問題ですよ! だって深夜ですよ!? 深夜に飯を食べたら……太るじゃないですか!
 それに出所が分からない正体不明の飯を口に運ぶのってちょっと勇気がいりません?」
 まぁ確かにそれもそうか……これがなんらかの魔物や、魔術師の悪意による仕業ではないとは限らないし、体にどんな影響が出るかも分からないのであれば――『じゃあタダで食べれるね!』と喜べる状況でもない、か。
 それにもしかしたら毒物などが入っている可能性も――
「あ、それはないです。この前食べてみたんですが、めっちゃ美味しかったです」
「お前!!!!! さっきと言ってることが全然違うだろ!!!!!
 勇気がいるって話はどこに行ったんだよ!!!!!」
「だって本当に美味しそうなんですもん!!
 あとですね、流石に私一人じゃ食べ切れなくてですね……」
 だからこそイレギュラーズ達に依頼としてお願いしたい、と言う事か。
 店主の話によれば、出てきた料理を攻撃しても凄まじい勢いで再生してしまうそうだ――しかし口に運んで『食べれば』再生しないらしい。また、出現から大体一時間で消えてしまうそうなので持ち帰りなどは出来ない――

 が。食べ尽くしてしまえば、もうその料理は次の日から出てこないそうだ。

「それを知ってるって事は、店主お前もう食べ切った事もあるんじゃないか?」
「残っている料理はですね、ラーメンやステーキなどが確認されております……! こんな時間に飯を胃の中に入れるなんて明日のカロリーが心配ですが、イレギュラーズの皆さんならきっと果たしてくれると信じていますよ……!」
「店主? 店主?」
 本日の宿はイレギュラーズの貸し切りにしてくれるらしく、他の客の部屋に出現したりなどはしない……つまり、存分に相手取る時間が出来そうだ。
 まぁ、ただ。
 深夜に食べる飯の味わいは――きっと罪深い事だろう。

GMコメント

 うぉぉぉぉメシテロだけは、許さない!!
 画像を見るだけでも結構なダメージがありますよね。許さない。
 と言う訳で以下詳細ですよろしくお願いします!!

●依頼達成条件
 一時間以内に全ての飯を……喰らえッッッ!!

●フィールド・シチュエーション
 鉄帝首都スチールグラードの一角にある宿屋『ハングリー・ハングリー』です。
 建物自体は普通の宿屋です。しかし魔物の仕業かなんなのか分かりませんが、つい最近深夜になると……お客様の部屋に……現れるんですよ……

 高カロリーでめっちゃデカイ料理達が……!

 料理達の詳細は後述しますが、あまりの脅威に逃げ出す宿泊客も多々。
 このままでは宿屋の運営がヤバイ(気がする)のでイレギュラーズの皆さんへと依頼が舞い込みました――深夜に出現する飯たちを、喰らってくださいッッッ!

●敵(?)戦力
・ひき肉大量マシマシ絶品ラーメン(味はなんか不思議と好みの(醤油とか豚骨とか)が出てきます)
・じゅわりと蕩けるバターステーキ
・獲れたて新鮮たる魚の切り身、山盛り乗せ
・パンケーキ~アイスとクリーム、ラズベリーを添えて~

 なぜか全部作り立ての状態かつ、結構なボリュームが突如として部屋に出現します。
 これらは攻撃しても凄まじい勢いで再生していきます――多分EXFも100ぐらいあります。ですがこの再生能力は『食べる』場合には作用しない様です。つまり食べれば倒せるんです!!
 カロリーさえ気にしなければ楽勝でしょう。ええ――カロリーは考えてはいけません。

 お一人で一つを集中して食べても構いませんし、複数の種類を取り分けて挑んで頂いても構いません。重要なのは『一時間以内に食べ切る事』です。一時間以内に食べ切れないと料理達は消えて……また明日、完全回復した状態で出現してくるそうです。ええい、どういう理屈だ!

●情報精度
 この依頼の情報精度はS(Shinya Meshi)です。
 カロリーの保証は出来ません。よろしくお願いします。

  • 深夜のラーメン~カロリーを添えて~完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年02月28日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
エル・ウッドランド(p3p006713)
閃きの料理人
アクア・フィーリス(p3p006784)
妖怪奈落落とし
マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)
彼方への祈り
シャム=E=ロローキン(p3p010306)
うら若き姫騎士
龔・巳華(p3p010363)
食べ歩き仲間
スフィア(p3p010417)
ファイヤーブレス

リプレイ


 深夜にメシ。
 罪深い言葉だ。明日の肥満に繋がる恐ろしい言葉――
「んなー!? ななななな、なんですかこの依頼は!!?
 そ、そんなものをこーんな深夜に!? なんという悪魔的依頼!!
 わー!! しかもどれもこれもう山盛りじゃないですか――!!」
 そして。その言葉を具現化されたモノが目の前に在るのだと。『うら若き姫騎士』シャム=E=ロローキン(p3p010306)は恐れ戦いていた――

『このシャムが来たからにはもう万事解決ですよ!
 ええ!! この有能騎士にバリバリおまかせあれ~!!
 サクッと解決してきます!!』

 依頼を受ける前。碌に内容も聞かずにそんな事を言ってしまってた――! うわー!
「おおお……し、しかしシャムは負けません。バッチリこなしてみせましょう!!
 た、食べるだけですもんね!! ええ――食”べ”る”だ”け”で”す”も”ん”ね”ぇ”!!」
「夜中にご飯は、太りやすい……
 でも、それはそれ……美味しいご飯が、出てきたら、食べるしか、ないの……!」
 涙声のシャム。それでも、成すべきことを成すしかないのだと――『憎悪の澱』アクア・フィーリス(p3p006784)は件の深夜メシに立ち向かう姿勢を見せるものである。
 今回の依頼で一番大切な事は二つ――ん? 一番が二つ? いやとにかく。
「カロリーと、時間を、気にしない、なの」
 今が深夜である事は忘れよ。
 これらにどれだけのカロリーが含まれているかは忘れよ。
 ――ただ、喰らうのだ。いいな、大事なのはソレだけだ……!!
「如何にしてこのような事態が発生しているのか……事件の怪奇性はさておいて、少し楽しみでもあります。ひき肉大量マシマシのラーメンがあるそうですが、こういった品には興味がありまして――実食の機会を得られるのは幸いです」
「……ん……美味しいご飯が食べられると聞いて……参加した……
 ……任せて……大食いには……自信ある……」
 が。一方で『音撃の射手』マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)や『食べ歩き仲間』龔・巳華(p3p010363)は純粋に楽しみな側面を持っていた。マグタレーナは待望のラーメンを存分に食せると聞き……巳華に至ってはそもそも。
(……でも……皆……なんでカロリーなんて……気にするんだろう……
 ……普通に……運動したり……生活していれば……勝手に消費される物では……?)
 何故皆そんなにカロリーが恐ろしいのか――分からぬ側の人種なのだから……!!
 ともあれ。料理達が出現し始めれば――ここからが本番だ。
 ラーメン、魚、肉、デザート。
 より取り見取り……と言えば少しは聞こえが良くなるだろうか?

「これが……深夜にスイーツ……なんと罪深い。背徳の味わいか……」

 そしてその中でも『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)はデザートを目の前に思考する。あまりの悪夢に窓を破って部屋から抜け出す者もいるみたいだから――このままでは窓の修理費だってきっと馬鹿にはならないだろうと。
 イレギュラーズである己らが、成さねばならぬのだ。
 ……つまり。その。即ち……
「私達が今夜罪を犯してしまうのは必要悪だということなのだ! そう、これは仕方のない事!」
 それにカロリーはトレーニングすれば筋肉になる――そう、将来計画的に運動すれば解消されるから問題ないのだと思考すれば。
 ――頭の中に不思議な言葉が響き渡る――

 さぁ一時間以内に食したまえ、と。

 今、深夜メシカロリーとの戦いの幕が――切って落とされた!


 ――オレは割と食うのが好きだ。
 『嵐の牙』新道 風牙(p3p005012)は思考する。風牙は、常日頃から空中神殿を経由し世界各国古今東西の旨いものを――食いたいときに食いに行っている程だ――そんな風牙にとってこんな依頼など安い易い。
 故に。部屋で待つこと暫し……最初に感じたのは『香り』であった。
「しかも、レパートリーがこれとはな」
 素晴らしい事にオレの好物がひと揃えしてあると。
 魚の切り身にラーメンに肉……
 後は、さぁ。かの風牙の舌を満足させるに足る味が備えられているかと――
 それだけが重要であった。
 鼻腔に感じる香ばしき香りが風牙の食欲を唸らせる。
 ……成程。折角にも腹を空かせてきた甲斐はあった様だ。
 脳髄が『早く食せ』と急かしてくる程度には――

「いただきます」

 故に。風牙は手を合わせて儀礼を成せば。
 ――往く。
 麺は細麺。少し硬め。雑に仕上げた訳ではなく、計算された硬さであると箸より伝われば。
 勢いよく――スープを啜るものだ。
 さすれば、絡まった麺がするすると口の中へと入っていく。
 ――うまい。うまい。
 ガッツリ系にみえてその味は上品とさえ言えるすっきりさ。
 甘ささえ感じられる。これはやばい。止まらない。
 合間にそぼろ、ネギを一緒に頬張り、味と感触に変化を持たせつつ。
 ――新鮮な味わいを楽しみ続ける。
 舌で楽しみ、歯で楽しみ、匂いを堪能し。
 眼を閉じて喉の奥へと滑り落ちていく全てが――愛おしい。

 ああ。これが――絶品か。

「成程、噂のひき肉マシマシラーメン。山盛りの肉と脂の良い匂いがしますね」
 そして風牙と同様にラーメンを楽しむのはマグタレーナもであった。
 ひき肉の山。そこへと箸を至らせれば、崩れる山が其処に在る。
 ――まるで宝探しの様だ。
 この奥には何がある? おお、白ネギがあるではありませんか――こちらにはメンマも?
「素晴らしい……しかし、一向に麺に辿り着きませんね」
 上に載っているトッピングだけでもすさまじい量だ。成程、この量が目の前に現れれば窓をブチ破ってでも逃げる者が出るのも当然……当然? である。されどマグタレーナは勇気を持って開拓を進めていくものだ――
 なにせ時間制限があるのだから。食べ物はラーメンだけではない……!
「――ハッ。そうです、閃きました」
 と、その時。マグタレーナに電流走る――

『アツアツのバターたっぷりステーキ肉を、こってりラーメンの上にトッピング』?

 ……止めるんだマグタレーナ。その道は、地獄だぞ!!
「なるほどカロリーを省みぬこれが若さですか……」
 シェアとかコラボによって消費のペースを速め、味変で飽きずに食べ続けられるみたいな。でも何か味変するにしたって限度があると思うんですよね。しかも一度やっちゃったらもう止まれませんし……!

「……んっ? それが、普通、じゃないの……?
 料理は全部美味しそう……なら、全種類ミックスで食べるのが……『礼儀』だと思う……」

 ――だがしかし。もう既に実行済みの者が此処にいた……!
 巳華だ。もうそれは一つの更に集合されている……これは例えるなら、そう『じゅわりと蕩けるバターステーキと獲れたて新鮮たる魚の切り身、山盛り乗せのパンケーキ~アイスとクリーム、ラズベリーを添えて~ひき肉大量マシマシ絶品味噌ラーメン一丁』……!
 絶対に少なくとも礼儀ではないが、しかし巳華は最早確信している。
 これぐらい食べ切れて当然だと。
「……じゃあ……それでは……いただきます……!」
 ――彼女はお腹が空いている。
 ――そして目前にある料理は全て美味しそうだ。
 ――一時間? 大丈夫、食べ切ってみせるよ。
「……龔家の名に懸けて……!」
 大丈夫? この勝負に御家の名前懸けて大丈夫?
 後で怒られるか褒められるか――さてそれはともかく、しかし巳華の食事は順調であった。まずはラーメンの付け合わせの野菜を一口。胃の中のクッションを作るために必要なのだ――そこから残りの肉や魚、そしてパンケーキ……ラーメンの麺を食す。
 ――まぁ最悪の手段として水だけは用意しておこう。
 飲み込んでしまえば全部一緒なのだから。うん!!
「皆、すごいなぁ……あっ。お刺身のわさび、ちょうだい?」
 そんな様子を傍目にアクアはお魚に取り掛かりつつあった。
 ――否。違う! 目的はワサビであり……狙いは肉だ! 狼の本能的なモノが『お肉を喰らえ』と囁いているからまずは狼神の呼び声(?)に従ってどんどん食べていたのだ。しかし――濃い味の肉は旨いが、変化がないと飽きるものであり……
 故に。以前無名のウォーカーから聞いた『わさび』チャレンジである。
 お肉のこってりをわさびのつーんが中和して食べやすくなるって言ってた。どれぐらい乗せればいいんだろう? これぐらいかな? そんな感じにおそるおそるチャレンジしてみれば――
「……! おいしい! これすごい、お肉が進む、箸が止まらないの……!」
 乗せ過ぎれば鼻の奥をツーン! としてしまうが。
 しかし適度に乗せればこれほどアクセントの的確なものがあろうか――!
 アクア、復活。ペース復活。
 どんどん喰らい往く。トッピングだけで……これほどの可能性が生まれるとは……!

「くう~なんて美味しそうな……我慢できません、私パンケーキを頂きます! はぁ、はぁ。だめですよこれ……温かなパンケーキによってほんのりアイスが溶けて、溶けて……! 違法ですよこれは……違法……違法の美味しさ……!」

 そしてシャムはデザートたるパンケーキに挑んでいたッ――!
 パンケーキにアイスなどそれだけでも至高だというのに、クリームもあるだと――? それだけに終わらず、ラズベリーの酸味を傍に付けるとは……こやつ、やりよるッッッ。
 もうシャムのスイーツ魂(おとめごころ)は我慢できなかった。
 深夜メシ? そんなもの気にもしませんよ――ぱくっ。あは~~~~~!
「くっ、くやしい!! 駄目なのに! 駄目なのに手が止まりません!!
 陸鮫くんも食べてくれたりしません? ほらほら美味しいですよ~……
 あいだだだ!! 私を噛まないでください!! 私はメニュー表にのってないです!!」
 シャムのオヤツはパンケーキ。陸鮫君のオヤツはシャム。ヨシッ!!
 ――だが同時に。パンケーキに挑んでいるのはシャムだけではなかった。
 ゲオルグも、である。彼は眼前に乗せられているパンケーキを前に、苦悶しており。
「……良く、考えてみてほしい。深夜……そう今は、深夜だ」
 そんな時間に外はサクッと中はふんわりもっちりなパンケーキ――?
 それだけでも罪深いというのに。アクリームやラズベリーまで……
 馬鹿な。もしやこれが原罪。かつての人類が食したという禁断の果実なのだろうか――?
「はぁ、はぁ……いやしかし、これも依頼だ……ならば、往くしかあるまい……!!」
 故に。意を決してゲオルグはスプーンを握る――
 ああ。な、なんという事……ふんわりもっちりな生地にアイスを染み込んでおり、かつてない程の輝きを実現している――その輝き、例えるならば正に黄金の様に。
 ――世に『黄金に眼が眩んだ』という言葉がある意味を納得する程である。
 これに眼が眩まぬ者がいようか? 否ッッッ!
 思わず震える手。それでも、なんとか一気に頬張れば――

「あ、あぁ……  ぁ 」

 ――口の中に広がるのはまさに幸せそのもの。
 思わずパンドラ吹っ飛ぶかと思った。気付けば目尻の端から涙が零れる――
「……はっ。そうだ、シロ、ユキ、トラ、クロ、ミケ。それからジーク君も。
 皆一緒に食べよう――これは独り占めするべきものではない。さぁ」
 と。刹那的に正気に戻ったゲオルグは、己がアニマルのにゃんたまズと羊のジーク君にも分けてあげるものである。さすれば皆待ち望んでいたかのようにゲオルグにせがむもの――ははは。ほら、沢山あるから仲良くお食べ。
 と。そんなこんなで皆各々の調子で楽しんでいた、のだが。

「残りニ十分でーす」

 えっ。今依頼人でもある宿屋の店主の声が響いた気がした――
 えっ、えっ。マジで? もう折り返し過ぎてるの!? マジで!!?
「――いかん。これはパンケーキだけ食べている場合でもないな。
 残りのメニューにも手を付けねば……」
「ほわあああ!? あ、食べますよ食べます! もー明日の体重計は気にしません! はい!」
 パンケーキを堪能していたゲオルグとシャムが肉や魚の方にも取りかかり。
「……ん? もうそんななの……? わかった……ならちょっと……急ぐね……?」
「あっ。白いご飯が欲しいけど、あるかな? あったら、もっとペースを挙げれる、んだけど……えっ? ラーメンとかって、実質スープだし、デザートは別腹、だよね?」
 そして巳華や(白飯を手に入れた)アクアもまた急ぐものだ――
 その速度、凄まじい。量があっても食べられない道理とばかりに……化け物か!!?
「ふぅ……と、いかんいかん。このままではラーメンばかり食べてしまいそうだ。
 はは。今日の『獲物』はまだまだ他にもあるんだったな――」
 しかし。そういった余裕顔なのは二人だけではない――風牙もだ。
 そう。他にも『獲物』は待っているのだ……
「そうだろう、素敵なステーキくん……?」
 目をやれば、いつの間にか焼きたてのステーキがアツアツの鉄板に乗っていた。
 まるで。風牙に食べられることを望んでいるかのように……
 喉鳴らす。お前はなんだ? ソースか? おろし醤油か? それとも岩塩か? ふっ。バターが降りかかっていなければ俺の好みであるワサビから行かせてもらう所だったのだが……
「偶には、違う味わいを楽しんでみるのも――一興だよなぁ」
 食の魔王、新道 風牙――此処に推参。

 かくして深夜メシの崩壊が始まった。

 量が明らかに減りつつある――ただ、流石に終盤にも至れば腹が限度な者もあらわれ『見たからハムにされた』エル・ウッドランド(p3p006713)やスフィア(p3p010417)などは満腹過ぎてダウンしている程だ。マグタレーナもそろそろ胃の空き容量が無くなってきていて。
「くっ……さすがに苦しくなってきました……私は……ここまでなのでしょうか……?」
 朦朧としてくる。あと少し、あと少しで感触だというのに――くっ!
 ――と。その刹那、マグタレーナの脳裏に謎の声が響き渡る――

『マグタレーナ、苦しみに耐えられなくなったらこれをお飲みなさいな!!』

 ――成程。天啓を得ました、つまり麦酒ですね。
「……口の中の脂を流し炭酸で胃が膨らめばまだいけますね。
 成程。世にはこういった手法もある訳ですか――素晴らしい」
 なんか更にカロリーが倍プッシュされた気がしますが。
 酔ってしまえば有耶無耶という事にしておきましょう――ねっ?
 明日の体重計がどうのこうのとかそういう事は気にしない様にしましょう――ねっ?

 そして遂に。終焉が齎される――

「……ん……満足……ごちそうさまでした……」
「ごちそうさま……あれ? もうないの? おかわり……ある?」
 最後の欠片も胃の中に納まりて。
 此れにて終幕。原罪の深夜メシ。
 さすれば、ぽっこり膨らんだお腹を天上に向ける巳華に、まだいけそうなアクア。

 その顔には――満足そうな感情の色が浮かんでいたとか。


「はーごちそうさまでした!! ふう、なんとか食べきりましたね!
 私たちの手……いや胃袋? にかかればちょちょいのちょいです!」
 そんでもってお腹一杯であるのはシャムもであった。
 彼女の顔にも満足そうな色が浮かんでいる――はっ? カロリー? なんですそれ誰ですか知りません分かりませんやめてくださいこの話はこれで終わりです!! 精神衛生上よくない!! タブー!!
「……ところでふと思ったんですが、この悪しきカロリー。治癒術とかでなんとかなったりは……あっ、はいしませんよね……運動しなきゃ……うう……陸鮫くん、マラソンに付き合ってくれますよね? アイタタタ! ちょっと、今お腹噛むのはやめてください!!」
「けふ……とても、美味しかった……
 ここに来たら、また、ご飯いっぱい、出るかな? 別の種類でもいいけれど……」
「いやぁ。原因不明の深夜メシらしいしなぁ……今回限りじゃないか?」
 シャムがいつも通り陸鮫君と戯れている――その横でアクアや風牙は今回の深夜メシに想いを馳せていた。偶には思う存分喰らうのも悪くはないものである……
「……それに。一人で黙々と食べるよりみんなで食べた方が食事が美味しかったですしね」
 皆様の食べっぷりも頼もしかったです――と振り返るのはマグタレーナだ。
 世の中には他にも世の中には肉や野菜をマシマシしたラーメンもあるという。
 いつかまた、出会う機会はあるのだろうかと――思考していた。


 ――が。その一方で、後日。思い悩む者が一人いた。
 ゲオルグだ。彼が起きている時間は、あの日と同じ深夜帯。
 そこにて思い悩むのは――己の罪。

 あぁ……私はなんと罪深いのだろう。

 ゲオルグは懺悔していた。
 頭ではわかっていたのに、体は背徳的な悦楽に屈してしまった事を。
 それほど時間は経っていないというのにまた体が求めてしまう事を――!
「一度知ってしまったら……もう……自分では止められない……!」
 ああ。また手が伸びてしまう――
 口端から零れる吐息。その先に在るのは、かつて味わったあの背徳。

 深夜の……パンケーキ……!!

 あまりにも背徳的な味わいが――彼の食欲を満たしていた。

成否

成功

MVP

新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの

状態異常

エル・ウッドランド(p3p006713)[重傷]
閃きの料理人
スフィア(p3p010417)[重傷]
ファイヤーブレス

あとがき

 ああああああああなんて罪深いんだ、深夜メシは……
 MVPはとても美味しそうなプレイングを書いていた貴方へ。
 ありがとうございました!!!

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