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シナリオ詳細

夜盗に堕ちたスモウレスラー

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


『ドスコーイ』
 大きな四股踏みに、大地が揺れた。
『ハッケヨーイ』
 腰を落として身構える。
『ノコッター!』
 元ヨコヅーナのぶちかましで、家屋が震える。
『ノコッタ! ノコッター!』
 何事かと飛び出た村人に、巨体が襲い掛かる。

『ゴッツアンデス』
 今夜もチャンコ鍋だ。


「おう、お前ら。スモーレスラーって知ってるか?」
 ローレットの情報屋『酔っ払い』ジュリエット・ノックス(p3n000036)が、依頼を探しにきたイレギュラーズたちに今にも死にそうな顔で声をかける。二日酔いなのだ。
「『オーズモー』って部族――戦闘集団があるんだが、そこの戦士をスモーレスラーって呼ぶんだけどな。なんでも極限まで鍛えた己の身体のみを武器に、徒手空拳で闘うタイプのファイターらしいぜ」
 身体に染みるわーと、美味そうに水をガブ飲みする。飲む。飲む。さらにお代わりする。あー、生き返るー。
「己の身体のみを武器……マワシ? とかいう下着一枚で闘う――よくわからん伝統スタイルらしい」
 依頼書を眺めつつ、謎情報を口にする。
「で。最近その部族から破門、追放された一団が食い詰めた挙句に夜盗化して辺境の農村を荒らしまわってるんだわ。少数精鋭っつーのかなー、少人数の癖にとてもよく喰う連中で、襲われた村は食糧根こそぎ持ってかれちまう。で、そいつら夜盗をぶっ殺してこいって依頼だぜ」
 辺境の領主は頼りにならずにローレットに依頼が持ち込まれる、よくあるケースだ。
「少人数なんだが、破門にされた連中ってのがちょっとヤバくてな。普段から素行が悪くて追放されたんだが、元部族のトップクラス戦士を筆頭になかなか手強いらしい」
 首領の元ヨコヅーナ以下、全員が重量級パファーファイターだ。腕一本で伸し上がったものの、元々ゴロツキ気質で生来の素行の悪さを隠せずに夜盗に成り下がる。なんともありがちな話ではあるが、農民には手が余るのも事実だ。
「ローレットの調査で、連中のヤサは判明してるぜ。いっちょ退治、お願いするわ」

GMコメント

 イロモノじゃありません、純戦です(多分)。こんにちは。茜空秋人です。
 以下、シナリオ補足情報です。ご活用ください。

●情報確度
 Aです。想定外の事態は起きません。

●依頼成功条件
 夜盗の殲滅。

●ロケーション
 幻想辺境の廃村を拠点にしています。
 隣り合う二軒に住みついてるようです。
 廃村内でレンジ制限、足場による命中、回避などの補正は特にありません。

●スモーレスラー
 強力な破壊力――攻撃力に特化したファイター。
 回避に劣りますが、鍛え抜かれた身体の防御力でカバーします。
 自身の強さに誇りをもっており、単独での攻撃を基本とし連携は好まないようです。誰も狙ってない相手を見つけたら、積極的に狙います。
・元ヨコヅーナ
・元オーゼキ
・元セキワーケ
・元コムスービ
・元ジューリョー
・元マクシタ×2
 階級で段階的にHPとステが上がります。元ヨコヅーナのHP、攻撃力は元マクシタの二倍と考えてください。

 張り手(物至単)【痺れ】【弱点】
 サバ降り(物至範)【窒息】
 ぶちかまし(物遠貫) 移動を伴う攻撃。マーク、ブロック無効

●アドリブ
 アドリブ描写が用いられる場合があります。
 プレイングやステータスシートにアドリブ度合、『アドリブNG』等記入くだされば対応いたします。

  • 夜盗に堕ちたスモウレスラー完了
  • GM名茜空秋人
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年08月09日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
ヘルマン(p3p000272)
陽気な骨
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
琴葉・結(p3p001166)
魔剣使い
セシリア・アーデット(p3p002242)
治癒士
リナリナ(p3p006258)

リプレイ


「あれが、連中のヤサか」
 鉄帝と国境を近くにする幻想辺境北部。
 最近この界隈に出没し、近隣農村を脅かす夜盗――スモーレスラーの討伐依頼を受けたイレギュラーズが遠巻きに息を潜める。
「けっ……夜盗如きが調子に乗りやがって」
 夜盗がネグラにしている廃村を前に、『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)が吐き捨てる。脂でぎとぎとした白髪に白髭、浅黒い肌を持つ不潔で小汚い印象のこの男、実は盗賊を生業としている根っからの悪党だ。己の領分を侵す新参者に対して、寛容ではいられない。
「オッサン、……ヤトーってなんだ?」
「オッサンじゃねえよ! おれさまの事はイケメンお兄さんグドルフさまと呼びやがれ。夜盗ってのは、人のモノ盗んだりする、なんだその――悪い連中のことだ。全く、最近のチビッコはなってねえな……」
「なんだ、オッサンのことか」
「オイッ!」
 人の顔と名前を覚えるのが苦手、ついでに夜盗が何かもよく判っていない『特異運命座標原人』リナリナ(p3p006258)が、どこから取り出したのか漫画肉をモグモグと頬張る。
「うん、マンモの肉、旨い」
 じゃれあう二人を他所に。
「連中、力に自信があるだと? ……ハッ、結構。だったら示してやるとするさ――死神を相手にするという事を」
「極限まで鍛え上げた肉体? おいおい、このミーを差し置いて言ってくれるじゃないか?」
 ローレットの誇る腕自慢、『業に染まる哭刃』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)と『ボクサー崩れ』郷田 貴道(p3p000401)の二人も業腹だ。
 特に貴道は非武装で、己の肉体のみを武器にするという点において共通するスモーレスラー――それが自身を差し置いて極限の肉体などと名乗っていることに不快感を露わにしている。
「破門にされた上に夜盗になるなんてとんでもない連中ね。村の人達の為にも絶対倒してみせるわ」
『おいおい、えらく強気じゃねえか』
「う……煩いわね……」
 義憤から声をあげる『魔剣少女』琴葉・結(p3p001166)に、彼女の本体、自称勝利の魔剣ズィーガーが茶々をいれる。結の強がりを見透かしているのだ。
「人から物を盗るのは良くない事だよ、それに食料を根こそぎ持って行かれたら生活もままらなくなる、皆生活が掛かってるんだからこれ以上被害が広がる前に止めないとね!」
「やれやれだな、生きるためとはいえ人々を襲うたぁ言語道断! 古来よりSUMOUは神事として神に捧げられてきたそうだが……。その技を悪用するなんぞRIKISHIの風上にも置けねぇな!!」
 『治癒士』セシリア・アーデット(p3p002242)と『陽気な骨』ヘルマン(p3p000272)の二人も意気揚々と士気は高い。
 ――敵が油断、疲労しているであろう時間帯を狙いたい。
 本職のグドルフに従い、イレギュラーズは時が来るまでじっと潜み続ける。


 仕事を終えたスモウレスラーたちが廃村に帰還して数刻が過ぎる。
 どうやら、寝静まっているようだ。
「ちっ、素人が……」
 見張りの一人も立っていない状況に、所詮は腕っぷしだけのゴロつきだとグドルフが呆れかえる。もっとも、都合がいいに越したことはない。
 その隙に、廃村の広場にいつの間にやら『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)がでっかい円陣を描いていた。
「賢い妾はスモーもドヒョーも知っておるのじゃ」
 えっへん、とないすばでぃな胸、略してない胸をはるデイジー。
「悪いヤトーの肉団子達、全部退治する。お金もらえる。リナリナ、ご飯食べられる。仕組みわかったゾ」
 リナリナも、ようやく任務内容を理解したようだ。
 やがて夜の帳があけて空が白みはじめた頃、視界を確保したイレギュラーズは行動を開始した。

「太っちょの夜盗ども、神妙にお縄につくのじゃ!」
 やおらデイジーは夜盗どもの住処のドアを開け放つと、勢いよく大声をだしそのままドヒョーへと駆ける。
「お主達の流儀に則って場を用意してやったのじゃ。ここで勝負してやる故、全員そこへ入るが良い!」
「な……何事でゴワス!?」
 青天の霹靂、寝耳に水。ドスドスドスと、巨体を慌て揺すぶりながらスモウレスラー達が現れる。それは巨躯の群れと呼ぶに相応しく、身長はともかく体重は、唯一人としてイレギュラーズに負けていない。
「ニョニンキンセイ? 何を訳のわからぬことを言っておる、文句があるなら力ずくでどかして見せるが良い。準備が整ったら成敗開始なのじゃ!」
 まさか、女に怒鳴りつけられると思わなかったのだろう、たじろぐスモウレスラーに喝をいれるデイジー。
「生意気でゴワス」
「目にもの見せてやるでゴワス」
 スモウレスラーも息が荒くなる。
「バトルロイヤル開始なのじゃ! ハッケヨイノコッタなのじゃ!」

「ドッセーイ!」
 元コムスービが土埃をあげながら、猛烈な勢いでデイジーに迫る。
「来るがよいのじゃ」
 迎え撃つデイジーは、ぶつかる直前にさらりと身を躱す。
 ドオオォン!
 目標を見失った元コムスービが派手に転び、轟音が響き渡る。
「くくっ、ファンブルというやつじゃな! これがスモーなら妾の勝ちじゃ」
「……スモーレスラーって何なの? マワシ!?」
 話にこそ聞いていたものの、特殊といえば特殊な恰好の彼らを初めて目の当たりにしたセシリアが狼狽する。
 ふくよかな巨躯を隠すのはマワシ一本。変態さんかな? と思われても仕方のない出で立ちに、セシリアは普段なら決してとらざる行動にでた。
 敵陣から一人突出した元コムスービ。序盤だからこその味方の負傷者ゼロ。そして目にした変態姿?
 多少の動揺もあった。偶然と云えば偶然なこの状況、この好機に普段は治療師として支援にのみ務めるセシリアも思わず手が出てしまう。
 高い神聖を帯びる聖印が、聖なる力を帯び始める。その力が放出され元コムスービを襲った。
「わ! 当たった! というかあれほぼ裸だよね……何でわざわざあんな恰好で戦うんだろう? 伝統といえばそれで終わりかも知れなけど……ん~うん! 何であろうと夜盗なんだから何とかしないとね!」
 久しぶりに攻撃を当て少しテンション高めなセシリアが、改めて回復役に務めることを思いだす。
「聞いた感じだと一撃の威力は高そうだし、後は私も頑張って皆を支えないと……!」
「不甲斐ない。それで最強だと? 所詮、現役を退いた力士なんざモドキもいいところだな!」
 元来、スモーレスラーは朝に強くないと務まらない。そうでないと朝稽古に耐えられるものでない。朝駆け如きに遅れをとり、のっけから無様を晒すスモウレスラーに、貴道が吠える。同じ格闘家として情けないと、譲れない矜持に触れたのだろう。
「最強の肉体派はミーに決まってるだろこのデブどもがぁ!!!!」
 貴道はスモーレスラーの敵陣真直中に徒手空拳で飛び込むと、その拳で元マクシタの肉の壁を貫き、初手から少なくないダメージを与える。
「突撃廃村の晩御飯ってな。この山賊グドルフさまが、おめえらのメシを奪いに来たぜ」
 山賊刀を大きく振りかぶり、どちらが悪党か判らない程に顔を歪めてグドルフも元マクシタに猛々しい一撃を見舞う。ともすれば粗野粗暴とも云える荒っぽい闘いぶりは、流石盗賊だ。
「はじめはマタシタ、弱い順に倒すっ! リナリナ、考えるの苦手。みんな頭良いなっ!」
 オッサンに続けとばかりに、リナリナも元マクシタ目がけて夜盗の群れに元気に飛びこんでいく。マタシタと名前を間違うのはいつものことだ、というより最初から名前を覚える気もないのだろう。原始時代からきた少女の皮の服は、足元で大きく捲れるたびに別の意味で非常に危なげだ。履いてないのだ! だが、そんなことはどうでもいいと、リナリナの派手な飛び蹴りが元マクシタに決まる。とりあえず、闇市でパンツのゲットをお奨めしたい。
 遠距離から虎視眈々と文字通り『虚ろな目』で獲物を狙うのはヘルマンだ。
 敵味方入り乱れた敵陣の中を正確に、ミスティックロアで魔力を高めたマギシュートが彼方より元マクシタを狙い撃つ。
「少しずつコツコツと減らしていかないとな。『骨』だけにな!!」
 全身白骨のヘルマンは命中を確認すると、スケルトンは歯が命! とばかりに白い歯をキラリと光らせ誰に聞かせるともなく、持ちネタの骨自虐を決める。
「死神の出番だ! アンタらのどてっぱらに風穴を空けて払ってもらおう!」
 イレギュラーズの連携で弱った元マクシタにトドメを刺したのはクロバだった。
「とっとと潰れろ――抜、殺!!!!」
 まずは一人。赤いマフラーを翻したクロバの二刀が煌めきを放ち、元マクシタの腹を切り裂いた。
「どうした? そんなものなの?」
 結が、残る元マクシタの攻撃をひらりと避けながらの反撃――続けざまの連撃が放たれた。機敏さを売りにする結のお得意の戦法だ。
「ウッ……」
 よろめいた元マクシタにデイジーが、グドルフが、そしてヘルマンの怒涛の連携が決まった。
「オードブルはおしまいなのじゃ、これからが本番なのじゃ」
「ケッ、雑魚が」
「やっぱ数は力だし。弱いとこから減らしていかねえとな!」


 元マクシタ二人が斃れ、後顧の憂いを断った貴道が元ヨコヅーナに挑む。
 ガチな真っ向勝負である。後続の応援――悠長にそんなものを待つつもりはない貴道は、初手から全力で一切の容赦がない。
「ぶちのめしてやるよ、この拳でな!!!!」
 ボクサーとして高潔なストイックを誇る貴道。それだけに堕ちた元格闘家を赦せないとばかりに拳が音を立てて唸る。
「ちょこざいでゴワス」
「悪いな。後退のネジは外してあるんだ!」
 非常に重い元ヨコヅーナの張り手にも微塵も怯むことのないのは、足取り軽やかなフットワークに裏付けられた自信。
「そんな死んだ拳、ミーには届かないぜ!」
 今では近代ボクシングの基本の一つ。『蝶のように舞い』――しかし、『そして蜂のように刺す』のはジャブではなく磨き上げられたレフトフックだった。
 貴道の最強の一撃が、元ヨコヅーナの横っ面に激しくヒットした。

「マクシタの次はジューリョーなのじゃ!」
 デイジー、リナリナ、クロバの三人が元ジューリョーを襲う。
 セシリアにメガヒールを貰った万全のクロバが、まずは二刀でもって無慈悲かつ容赦なく斬りかかる。
「ドスコーイ!」
「肉団子の人デカイ。でもレックスより小さい。マンモより小さい。ドスコイドスコイうるさい。だからきっとやっつけられる」
 言葉の意味は分からぬが、物凄い自信でリナリナがどう見てもF・ブレイカー『さわっちゃだめ』を両手で振り回す。冗談みたいな名前の割に、優秀な破壊力を誇る武器だ。
「ええい、焼き肉団子になるのじゃ!」
 そこにトドメと、デイジーのタコツボが火を放つ。
「ぐわあああああああ……」
 炎に包まれる元ジューリョーは、そのまま身を悶えつつ絶命した。
「焼き肉団子……不味そう。マンモの肉のほうが好き」

「ぶちかましが得意なんだってえ? おれさまも得意なんだよ。どっちのぶちかましが上か、見せてやるぜ!」
 奇しくも似て非なる同じ名前をもつ技――『ぶちかまし』使いとして、グドルフが大きなダミ声で元セキワーケを挑発する。
 それを受け腰を低く落とし手を地にあて、どっしりと構えをとる元セキワーケ。
「……ミアッテミアッテー」
 元セキワーケが、低く呟いてからの『ノコッタ!』。
 次の瞬間、怒涛の立ち合いがグドルフを襲う。
「ちっ、これが本場のぶちかましか……効くじゃねえかい」
 グドルフは、負けじと己の体躯を強烈にぶちかます。

『イヒヒヒヒ! トロいんだよデカブツが!』
 反応速度や敏捷性を主体とした戦いを持ち味とする結は魔剣ズィーガーが元オーゼキを嘲笑うと同時に、怒涛の張り手を紙一重で躱しながら背中に廻り、漆黒の魔剣をリズムカルに繰り出している。
「ほらほら、当てられるものなら当ててみなさい!」
『ヒヒ、結も油断は禁物だぜ!』
 強気に振る舞ってこそいるが、その実魔剣ズィーガーの挑発にバクバクと心臓が強く波打ち緊張している結を魔剣ズィーガーが気遣う。気遣うくらいなら、最初から挑発しなければいいのになんて思うが、そこは魔剣ズィーガーの挑発せずにいられない性格が滲み出ているのだろう。
「大丈夫! 味方が加勢に来るまで時間を稼ぐ方針のがいいんでしょうけど――別に、倒してしまっても構わないのでしょう?」
 突風のように華麗に跳ね回り、さらに新たな死角へと回り込む。
「一気に勝負を決めるわよ。ズィーガー!」
 結の切り札、ソニックエッジ――音速の斬撃が元オーゼキの肉を切り裂いた。

「リナリナ、マタシタの次はオムスビ! 美味しそうな名前っ。でも米じゃなく肉団子の人。どうしてオムスビだ?」
「オムスビではなく、コムスビなのじゃ」
 リナリナとデイジーの二人が元コムスービを相手取る。
「わかったっ! オムスビ好きなんだなっ!」
 全然判っていないリナリナが自身の二倍以上のサイズの巨体に連続で蹴りを見舞う。皮服が捲れ色々と見えちゃいけないところが見えまくっているのだが、そんなことはお構いなしにと繰り出されるマシンガンの如き足技に、元コムスービがタジタジと防戦一方になる。
「何? ……顔蹴ってない。なぜ肉団子の人、鼻血!?」
「メガ・ヒールだよ」
「ン? 元気になったゾ!」
 不思議そうに呟くリナリナに、セシリアの支援回復が届く。
「焼きオムスビは好きかの?」
「好き! でもこれは不味そう」
 デイジーの炎で皮膚が焼かれ元コムスービが苦しげに顔を歪めたところに、ヘルマンの一撃が炸裂する。超遠距離から放たれた魔砲は肉の鎧を貫いて、元コムスービを薙ぎ払う。
「見かけ倒しの肉だったな」
 骨だけなのが気楽、身軽なのが一番だとばかりに、ヘルマンが呟いた。


「待たせたな貴道。さぁ、どちらの『拳』が強いか奴に知らしめるぞ!!!」
 巨躯を誇る元ヨコヅーナを相手に、こちらも負けることなく激しいファイトを続けている身長2m越の貴道。二人の巨体が繰り広げる張り手と拳、息を飲むパワーファイトの応酬――予断を許さぬ削りあいの果てに、クロバの拳が加わったことで、パワーバランスが一気に崩れることになる。
「さあて、アンタもどてっぱらに風穴を空けてもらおうか!」
 内に秘めた憎悪と焦燥――力を欲したクロバは、ここぞとばかりに温存していた能力を解放させる。クロバの左腕が黒く染まり、異形化してゆく。死神の誇る魔爪であった。
 右手で振るうディバイダー・ヴォルフの苛烈な斬撃に、左腕の魔爪が獰猛な獣のように追従する。機構刀と魔爪の織り成す二刀流。
 デストロイ・リッパー、禍々しい魔力を纏った凶爪が元ヨコヅーナの腹部を抉りとり、文字通り『どてっぱらに風穴』を開けた。
「……む、無念で……ゴ、ゴワス」
 大きく地を揺らして元ヨコヅーナはその巨躯を地に臥せた。一時期は頂点を極めんとした元武道家の成れの果て――夜盗として討ち取られる哀れな最後だった。
「喧嘩ならともかく、奪い合いなら相手を選ぶ事だな。死神の腕(かいな)はお前らの命を刈り取るぜ?」
 堕ちたスモウレスラーを見下ろし、死神クロバは何を物想うのか――。

「ちっ、おれが最後か……。だがな、てめえを倒すのは、このおれさまだ!」
 グドルフと元セキワーケの闘いは、どちらのぶちかましが本物か、意地のぶつけあいの様相を呈していた。幾度となくぶつかりあった頭部からは血が流れ、それでもなおお互い退くことを知らずぶちかます。
 周りのイレギュラーズも空気を読んだのか、手をだすことなく二人の闘いの行方を見守る。
「オッサン、いけえ!」
「ぶちかましてやるのじゃ!」
「が、がんばってくださいね!」
「絶対、勝てるわ」
『イヒヒヒヒ! 勝利の魔剣がついてるぜ!』
 女性陣(と魔剣)の声援と、固唾を飲んで見守る男性陣。
「へっ、よおく味わえよ。これが、おれさまの……本物のぶちかましだあッ!」
 仲間の期待を一身に背負い、グドルフが渾身の気迫でぶちかます。ごつごつした前頭部から身体ごとぶつけ、しっかりと元セキワーケに組み付く。
「これで、決まりだッ!」
 元セキワーケに組み付いたまま剣を握ると、マワシを狙って切り裂き始めるグドルフ。
「モロダシなのじゃ」
 デイジーがあんまりと云えばあんまりな決まり手を告げる。
「ウオッ、クッッセェ!」
 スモーレスラーの習性――マワシを奪われると同時に戦意までも奪われた元セキワーケに、グドルフのトドメの一撃が決まる。
「おめえの敗因……それはパンイチだった事だぜ」
 下品、下劣、粗野が売りのグドルフの勝利の笑みは、何故か物凄く爽やかに見えた。


「リナリナ、すっかり弱い。お肉足りない。もっとお肉食べる。早く前みたいに強くなる。これ必要」
 スモーレスラー達との闘いを振り返り、思わず反省の言葉を口にするリナリナ。
「オウ、初めての依頼にしちゃ充分だろ。大したもんだぜ」
 相撲というものに想いを馳せた後、長居は無用だとグドルフ達イレギュラーズは引き上げていった。

 Congratulations!
 イレギュラーズの活躍により依頼は達成された!

成否

成功

MVP

なし

状態異常

リナリナ(p3p006258)[重傷]

あとがき

依頼お疲れ様でした。
また、ご縁がありますように。

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