シナリオ詳細
常夜の谷へようこそ
オープニング
●お帰り口はございません
異界冒険家で知られる京藤イクサの顛末を知っているだろうか。
もしあなたに冒険譚への憧れや趣味があったなら、混沌のあちこちに散っている書物のうちの一つであるこの物語を知っているかもしれない。勿論、知らなくても構わない。
これはある夜の物語。
いつまでも夜が明けぬ魔術にかかった谷と、その唯一の記録である。
「イクサ、進みが早すぎるよ。少し休もう」
虫の声がする夜道。革のリュックを背負った気弱そうな男が声を上げた。
先をゆくロングコートの男。彼は舌打ちをして振り返る。
「こんな所で休んでどうする? 行くのが嫌なら俺だけで行くぞ、デルタ」
「……わかったよ」
二人が訪れていたのは『常夜の谷』と呼ばれる土地だった。
「知っているか。この谷は古代の魔術でいつまでも夜が明けない呪いにかかっているという。
この空間では『夜魔』と呼ばれるモンスターがあちこちの闇に潜み、来る者を引きずり込もうとしているらしいぞ」
「なんでそんな危険な場所に来ようと思ったの? 帰ろうよ」
「馬鹿だな」
イクサは嘲るように笑った。
「この土地の秘密を解明すれば名声が手に入る。そうすれば富も権力も自ずと寄ってくる。お前もそのおこぼれに預かりたいんだろ?」
「違うよ、僕は……」
「シッ、黙れ」
指を立てて身を屈めるイクサ。
向こうに何か居る。そう小声で述べた。
デルタが目を細めてみるも、何も見えやしない。あるのは闇ばかりだ。
「目で見るな。よく聞け。歯ぎしりのような、耳障りな軋む音が聞こえるだろう」
言われてみれば、どこかからギリギリという何かが軋む音が聞こえていた。
「夜魔に違いない。奴を捕まえて持ち帰るぞ」
「やめたほうがいいよ。勝手にそんなことして……」
「勝手? こんなもの俺の勝手だ。夜魔なんていう名前の奴はどうせ知能もない虫みたいなやつなんだろ。そいつを勝手にしてなにが悪い? 俺の邪魔は誰にもさせない。俺の好きにやる。いいな?」
イクサはそう言い切ると、剣を抜いて音のするほうへ近づいていった。
それが最後だった。
彼の……イクサのランタンの明かりから伸びた彼自身の影が歪み、持ち上がり、笑うように口元を歪めると、イクサの首を一瞬にしてはねたのだった。
くぅるりと振り返る。
影なのに、その両目らしき場所には知性の光があった。
どこか狡猾で、こちらを笑うような知性があった。
「ヒッ――!」
ランタンを取り落とす。炎が消える。
きっとそれがよかったのだろう。
デルタは全ての荷物を捨て、走って逃げた。
その数日後、彼は全身のあちこちを切り裂かれ、腕や足を失った状態で発見された。
「僕の……そしてイクサの日記をとってきてくれ。僕にとってはそれが全てなんだ」
ここまでの話をした彼――久藤デルタは、病院のベッドにローレットのイレギュラーズたちを集め、そう依頼した。
- 常夜の谷へようこそ完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年08月01日 21時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●夜闇に紛れたもの
薄い月明かりの夜。
砂利を踏む音が七つ、いや八つ。
『蒼ノ翼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)は小さなため息のように肩をおとすと、どこか潤ったような目をあけた。
「常夜の谷ね。地の理がない場所で自分から危険に突っ込むのは感心しないな」
とはいえ、と振り返る。
昼の町ははるかかなた。
常夜の谷の境には奇妙な霧がかかり、抜ければそこは夜につつまれていた。
もはやここは、夜魔のテリトリーなのだ。
「私達も今回限りなく近いことをするんだけどね。オーダーは日記の回収、さて上手く進むと良いけどなぁ……」
「…………」
その言葉に応じてか、『闇之雲』武器商人(p3p001107)がどこか不思議に笑った。
霊魂の従者や式神をつれ、簡単な明かりを翳している。
小さな火でも足下程度は明るくなるようで、歩く分にはそれで事足りた。
ふと、夜の闇の中に依頼の説明をするデルタの姿が思い浮かんで、『白き渡鳥』Lumilia=Sherwood(p3p000381)は目を伏せた。
「痛ましい姿、痛ましい話です。今となって私にできることは多くはありません。せめて依頼人の方の今の願い、この依頼だけは果たしたいものです……」
混沌の医療は結構なものだ。彼の怪我は治るだろうが……『全て』とまで言った日記が手元にないのでは、きっと心は治らなかろう。
空気を感じて、『瞑目する修道女』メリンダ・ビーチャム(p3p001496)がつとめて明るめに咳払いをした。
「常夜の谷、なかなか悪くない場所だわ。一日中お日様が出ないだなんて。住むにはちょっと退屈そうだけれど……」
「うーん、ちょっとホラーチックじゃないかな」
七鳥・天十里(p3p001668)が肩をすくめるようにする。
「『真の夜魔』だって誰も見たこと無い化け物なんでしょう? けど、誰も見たことがないやつなのに、何で噂になるのかな。噂がある以上、いないことはないと思うんだけど」
「さあ……少なくとも、日記だけ回収するのが今回の仕事だから」
「うわあ、恐い」
ぶるぶると肩をふるわせる『空歌う笛の音』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)。
「話を聞けば聞くほど夜魔って危ない感じだよね。迅速に日記を探そう。そして帰ろう!」
アクセルがそう思うのも無理はない。
常夜の谷は呪われた土地。
人は住んでいない筈なのに、不思議とあちこちに誰かいるような気がしてならない不気味さがあるのだ。
「奇妙な地だな……」
指先に小さな炎だけをともして歩く『鳳凰』エリシア(p3p006057)。
そろそろ明かりは消したほうがよいだろうと、指を握り込んで明かりを消した。
「話に聞くに慎重に動かねばなるまいよ」
エリシアの話に同意するように頷く『Tender Hound』弓削 鶫(p3p002685)。
彼女もまたカンテラを消して、周囲に意識を集中しはじめた。
「自分達から出る影には注意しましょう。恐らく、それが出現条件の一つでしょうから」
「話にもあったもんね。影が起き上がって攻撃したって」
「けれど明かりを捨てた方も酷い怪我を負っています。もしかしたら……」
話を続けようとした所で、天十里が『シッ』と指を立てて皆を黙らせた。
「なにか聞こえる。骨が軋むみたいな……前から、後ろから……ちがう、囲まれてる! 構えて!」
銃を抜く天十里。
鶫たちもまた武器をとり、即座に戦闘態勢へと入った。
周囲で歯ぎしりのような音が、どんどん強く、近くなる。
●夜魔
神子饗宴を用いて仲間たちの強化をはかったLumilia。
すぐさま攻撃に転じ、近くにいるであろう夜魔めがけて焔式を放った。
当たった……ような気はするが、手応えが感じられない。どころか相手の姿がまるで見えないのだ。
黒い全身タイツを着た人間ならば火のひとつでも浴びせようものならすぐに居場所が分かるはずだが、夜魔に関して言えばなにかをかすったような想像ができるだけだ。
本当に、闇に紛れてしまっている。それは影から起き上がったところからも察するように、夜魔が物理的な肉体を持っていないことを示していた。
「これでは……」
「けど、いることは確実にわかるわ」
メリンダが歯軋りのようなギリギリという音のするほうにタックルをしかけ、相手の動きを阻みにかかる。
直後彼女の腕に大きな裂傷が走った。掴まれて暴れているかのような傷だ。
掴んでしまえば、確かにそこにあることが分かる。肉体はなくとも物理干渉が可能なようだ。
が、そんな中でうまく動けていたメンバーもいた。
「そのままそのまま、動かないでねっ!」
天十里は両目を瞑ったまま銃をリロードすると、一切の迷い無くメリンダの掴んでいた夜魔に銃撃をしかけた。
幾度も鳴り響く銃声。香る硝煙。
天十里は超人的な聴力や嗅覚によって夜魔の詳細座標を特定していたのだ。
他にもこんな手段がある。
「そこです」
鶫は重火器を担ぎ上げると、背後から迫る夜魔めがけて思い切り乱射した。
機関銃の恐ろしい射撃音が夜魔の腕を穴だらけにし、上半身を千切り飛ばしていく。
彼女の装備したサイバーゴーグルの暗視効果によって、僅かではあるが相手の輪郭をつかめていたのだ。
「居場所がわかればこっちのもんだ!」
アクセルは小さく飛び上がると、翼を大きく羽ばたかせて魔力の風邪を起こした。
穿つ螺旋となって夜魔に突き刺さる魔力風。
武器商人のまた、ここぞとばかりにロベリアの花を発動。
悪意でできた殺傷の霧が夜魔を覆い、破壊していく。
「さて、残るは何体かな?」
「一体だけだよ。そこっ」
天十里の射撃――に続いて、ルーキスとエリシアが同時に構えた。
「どこまで通じるかな?」
ルーキスは魔術書に手を翳すと、闇の中から漆黒の翼狼を現わした。のけぞる夜魔に食らいつき、引き裂き始める。
目を細めるエリシア。
夜魔はうっすらとした霊体ともいうべき何かが、夜闇のなかにかすかに……しかし確かに見えた。
「見えた、そこだ!」
魔砲の炎を両手から発射。夜魔を焼き尽くし、そして跡形も残さずに消し去った。
「……こんな所か。どれ、怪我をしたなら見せてみろ」
回復をするから、とメリンダたちに手招きをするエリシア。
その一方で、鶫はカンテラで翳した地面にあるものを発見した。
「これはデルタさんの日記。近くにイクサさんの遺体と日記があるはずですが……」
「この場にはないようですね」
Lumiliaが辺りを見回して、深く息をついた。
依頼も戦闘も、これで終わりにはならなそうだ。
イクサの日記を回収すべく、この先へと進まねばならない。
「何が潜んでいるのか――慎重に行きましょう」
「まずはにおいをたどってみようね」
天十里が地面に顔を近づけて、くんくんと鼻をきかせはじめた。
●闇の模索
探索チームは四つに分けられた。
というのも、イクサの臭いらしきものが途中で三つか四つに分断したからである。
死体はひとつ。日記もひとつ。これが四つくらいに分断した状態をあまり想像したくはないが……そのどこかに日記はあるはず。そう考えて、彼女たちは手分けして探索することにしたのだ。
では、それぞれの探索の様子を追ってみることにしよう。
武器商人とLumiliaの探索チーム。
二人は岩でできた通路を歩いていた。
通路といっても、一般建築でいう三階建て程度の高さに渡された塔と塔をつなぐ通路である。手すりはあちこちでくずれ、足下の岩もあちこち崩れているのでうっかり足を滑らせて転落なんてことも考えられる道だ。
飛行できるLumiliaはいいが、武器商人には大きな問題である。
ではあるのだが、武器商人はなぜだか余裕そうに振る舞っていた。
「ここは霊魂だらけだね……」
「そうなのですか?」
「ああ。右も左も」
武器商人はそこでふと足を止めた。
霊魂疎通や霊魂操作が可能な武器商人は、こういった場所でこそ自由が利くもののはずなのだが……。
「まるで他人ごとだ」
「?」
「いや……」
周囲の、それも常人が引くほど大量にいる霊魂たちが、まるで武器商人の話を聞こうとしないのだ。勿論、霊魂操作による命令もである。
相性問題でそういうことはあるらしいが、ここまでそろってノータッチなのは異常だった。
武器商人が今日たまたま霊魂にめっちゃ嫌われる呪いにでもかかってない限り、なにか別の……かなりどうにもできない何かが、霊魂たちを支配している可能性があった。
通路をわたりきった所で、Lumiliaは持っていた剣で壁に矢印を刻み込んだ。
通ってきた道を迷わないするための工夫である。
と、その直後。
先行させていた武器商人の従者が八つ裂きとなった。
とはいえ霊魂。姿を消して武器商人の札へと戻る。
「敵が出てきたらしい」
「音はしなかった筈なのに――下がってください!」
Lumiliaはあえて前へ出た。このとき夜魔がどこから現われたか分からないので、従者のいた場所に飛び込む形である。
待ち構えていたかのように闇に走る斬撃。
切り裂かれ、吹き上がる血。
やや遅れて、先刻聞いたばかりの軋む音が周囲で鳴り始めた。
Lumiliaはそれをぐっとこらえると、焔式による攻撃を振りまき始めた。
「さて、今の襲撃は何がトリガーだったのか……考えるのは後、かな」
武器商人は秘銘の力を引き出し、マジックフラワーの魔術を振りまいた。
一方その頃、というべきなのだろうか。
メリンダは庭らしき場所をとおる渡り廊下を、きわめて微妙な顔をしながら通っていた。
ここが仮に夜の呪いにかかることなく、人々が自然にすごしていた住処だったとしたならば、美しい噴水を中心とした花々の庭が広がり、その間を抜けるようにこの廊下があったはずだ。彫刻の施された柱が等間隔に並び、間を歩いていれば貴族にでもなったような気分だ。
が、それでも微妙な顔をしているのはワケがある。
「まだ、続いているんですか?」
「そうね……」
鶫が心配そうに見やる。
メリンダはここへ来てからずっとエネミーサーチをはしらせている。
結論から言うと、今現在、敵意あるものを大量に察知していた。
右も左も。後ろも前も。敵意あるものにみっちりと囲まれている状態だった。
が、先程から一切攻撃らしい攻撃をしてこないのだ。まるで遠くからにらむだけにらんで手を出さないような、まるで歓迎されていない場所に乗り込んでしまったような……。
いや、考えようによってはまるっきり事実なのだが。
「なにかあったらよろしくね。式神さん」
武器商人からレンタルされた式神が彼女たちの後ろを歩いている。
周囲の連中に敵意はあっても攻撃はしてこないことを、この式神をずんずん歩かせることで確認していた。今も似たような状態である。
といっても作成した武器商人が『この人の周りを歩け』と命令してそれに従っているだけなので、行動の精度はなかなか低い。メリンダたちに管理者権限がないのでその辺はしょうがない話である。
さておき。
「この先、なにかあるわね?」
「いかにも、ですね……」
二人は岩でできた小さな塔を見つけ、その前に立った。
何かあるのは、もはや誰にでもわかった。
なにせ酷い腐敗臭がするのだ。
生ゴミをずっと放置したような、もしくは死体を放置したような。
カンテラを翳し、ゆっくりと中へ入る。
屋内にあったのは……大量に並べられた人間の生首だった。
多くは肉が乾き落ち白骨となり、巨大なテーブルのようなものへいくつもピラミッド状に並べられている。その一山に、まだ新しい生首があった。
それがイクサのもので間違いないだろう。
ギリギリ、と声がする。
二人はついに来たかという顔で、それぞれの武器をとった。
重火器をてにとり、構える鶫。
身体に力を漲らせ、鎖鉄球を振り回し始めるメリンダ。
「夜魔ってどんなふうに死ぬのかしら? 気になるわぁ……」
空を飛ぶカラス。地をかけるネコ。
ルーキスはその二つに索敵を任せ――た途端、カラスが聞いたことも無い激しい悲鳴を上げて攻撃されたということがあった。
その時はさすがに『もう戦闘!?』と思って身構えたものだが、なぜだかカラスが重傷をおっただけで、それ以上のことは何も無かった。最悪カラスが殺されてしまう所だったので、そういう意味では危なかった。
「空を飛ぶことを嫌がったとか?」
「まさか……そこまで心が狭ければ、私たち今頃ミンチだよ」
現に召喚したネコは元気にてってこ歩いている。なにか近づいたらダメなところにカラスがうっかり近づいてしまったのかもしれない。
「さて、何か見つかるかな」
仮に空高くから俯瞰したとしても(ファミリアーによる五感共有は術者基準なため)暗くてよくわからなかった筈なので、今回はこれでよかったかもしれない。
「しかし、雰囲気はおかしいが中の作りは普通だな……」
建物の中を進むエリシア。
できれば地図を書いて位置を確認しておきたかったが、周囲に明かりのない闇夜で地図を書くのはかなり無理があったようだ。
かといって明かりをつけるのも危険な気がして、二人は慎重に眼前を探るようにして進んでいた。
そんな中でふと、月明かりの入る場所があった。
「窓、と呼んで良いのだろうか……」
「それに、椅子だね」
円形の部屋。
窓から差し込む月明かり。
照らされる椅子。
それも、とても立派な椅子だ。建物同様岩から削り出されているが、あちこちに細かい装飾が施され、座る者の位の高さが椅子の外観からもわかる。
ギリ、と周囲で異音がした。
ハッとして身構えるエリノアとルーキス。
月明かりの中で姿を見せたのは、身の丈2メートルほどの騎士であった。全身を覆う甲冑のような影が持ち上がり、知性ある目を光らせ襲いかかってくるのだ。
即座に漆黒の翼狼を現わして攻撃を仕掛けるルーキス。
その攻撃を受けた騎士とはまた別に、新たな騎士が剣による打撃をしかけてきた。
咄嗟に飛び退くルーキス。
避けきれなかった衝撃にあおられ、岩の地面を転がった。
「ここまでハッキリ見えるとはな」
エリノアは手を翳し、炎を発生させて騎士を焼いた。
「見たところここに日記はなさそうだ。逃げるぞ!」
「なぜ逃走を?」
問いかけるルーキスに、エリノアは壁際を指さした。
無数の騎士が影となって現われ、こちらへの敵意をむき出しにして剣を構えている。
「賛成だ。いくよ、エンデ」
ルーキスたちは戦闘を放棄すると、一目散に逃げ出した。
不思議なもので、部屋から出てしばらく走っていると騎士たちは深く追いかけること無く部屋へと戻っていった。
それがなんだったのかは、今でもわからない。
「空から明かりで照らしてみたらどうかな」
「うーん……やめたほうがいいんじゃない? なんか空の方ですごくギリギリしてるし」
なんて話をしながら、アクセルと天十里は常夜の谷を歩いていた。
今歩いているのは岩でできた遺跡っぽい建物の地下である。
地下。
月の明かりも届かない暗闇オブ暗闇である。
目が見えなくても全然歩ける天十里はともかく、便利な照明器具をもっていないアクセルはごく最低限の明かり(インスタント松明)を掲げて道を進んでいた。
「恐! この辺は大丈夫なの?」
「大丈夫……じゃないかなあ」
「それはどっち? イエス? ノー!?」
「大丈夫大丈夫」
手をぱたぱたやる天十里に、アクセルは息をついた。
ライトをつけて歩いてた人が首をすっぱんやられた話を聞いたばかりなので怖さは抜群である。
といっても、『明かりイコール死』だとしたらデルタとイクサはこの場に踏み込んだ時点で死んでいた筈なので、ここは天十里を信じてもよさそうだった。
もっというと、こういう状況でも天十里はニコニコしているのでなんか安心するのである。ギフトっていうか、もはや才能だった。
「臭いもこっちからするの? どんどん地下に行ってる気がするけど」
岩で掘られた階段を下っていく。
継ぎ目がまるでないところからしてすんごーい巨大な岩山を削りまくってこの遺跡を『彫り出した』のだと思われるが、それが事実だとしたらとんでもない建造物だ。建造物って言うかもう彫刻だし。
でもって、階段もおそろしく綺麗に掘り出されていた。一段一段になにかしらの彫刻が施されている。
「一体、なんのための場所だったんだろう」
「さあねー。少なくとも今は人が死んじゃう系の場所みたいだよ?」
あっち、と指をさす天十里。
「あっちから、ゴミっぽい臭いがする」
さて。
ゴミっぽいという表現は言い得て妙。
なんか誰のものだかわかんない物品が無造作かつ大量に散らかされていた。
「あちゃー、片付けできない人の部屋みたい」
アクセルは口を曲げつつ、あちこちをがさがさ探り始めた。
そこは彼の技能ゆえと言うべきか、イクサの名前が書かれた日記が、彼のものと思われる革ジャケットと共に見つかった。
「あったよ! ほら!」
「よしよし。それじゃあ帰ろっか! 皆にも呼びかけて」
そうして、天十里たちは常夜の谷を脱出した。
後にすりあわせてわかったことだが、天十里とアクセルは最初の戦闘いらい一度も夜魔と戦闘をしていなかったという。その理由は、今でもまだわからない。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete!
――good end!
GMコメント
【オーダー】
成功条件:日記の回収
オプションA:夜魔の退治
オプションB:『真なる夜魔』の退治
『常夜の谷』は常に夜闇に覆われた土地です。
この中のどこかに置き去りにされた『デルタの日記』『イクサの日記』をそれぞれ持ち帰ることが成功条件となります。
以下はメタ情報を含みますので、プレイングでは『探索の結果判明した』ていでロールプレイをかけるとより深くお楽しみ頂けるでしょう。
【常夜の谷】
常に暗い土地。ずっと古代の遺跡があったらしく、石で舗装された道や整列した住居群の残骸が残っています。
イメージとしてはインドのエローラ遺跡に近いカンジです。建材はオール岩。彫刻があちこちに施されています。
道もちょっと入り組んでいるので、迷わず移動するには工夫がいるでしょう。
【日記のありか】
まず『デルタの日記』は谷に入ってすぐの場所で手に入ります。
夜魔との戦闘になるかもしれませんが、皆固まって協力して戦えば無難に乗り越えることができるでしょう。
問題は『イクサの日記』です。
その時点で気づくことではありますが、イクサの日記はその場にありません。どころかイクサの死体もありません。
この無限に広がっているかのように思える常夜の谷を探索し、イクサの日記を見つけ出さねばなりません。
成功へのネックとなるのは『探索にかける時間』です。
当然ながらメンバーを分散させればさせるほど時間を減らすことができ、技能があればあるほど効率があがり、工夫するプレイングが良ければ良いほど能率が増します。
探索重点。求プレイング能力。
また、探索中は”なにかしらの理由で”夜魔が襲いかかってくるでしょう。その数や強さは不明ですが、最悪非常にマズイ敵として現われる筈です。
その理由や条件はデルタの説明の中にあります。(これ以上の情報はないのでデルタに追加質問するプレイングはナシでお願いします)
声を思い切り張り上げれば仲間に届く筈なので、日記発見の知らせ方をプレイングに盛り込む必要はないでしょう。
相談・プレイング双方ともそのリソースは戦闘と探索に回してください。
【夜魔】
正体不明のモンスターです。
闇に紛れているらしいということしかわかっていません。
こいつに遭遇しやすくなる行動についてはヒントが既に出きっています。というか一部はほぼ答えですね。
もちろん、ひとつだけではありません。警戒するに越したことは無いでしょう。
『真なる夜魔』は噂だけの存在です。
そんなのがいるかもしれないという話を、デルタもちらっとしていました。けどきっと遭遇することはないだろうと語ってもいました。
なぜなら、誰もそんなものを見たことがないからです。
【アドリブ度】
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。
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