シナリオ詳細
亜竜種少女ペアの冒険
オープニング
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覇竜……覇竜領域デザストル。
亜竜種は亜竜や魔物達が闊歩するこの地で集落を構えており、それだけの力量を身につけた者が多い。
幼くしてから鍛錬を行う者もいるし、生まれながらに相当の力を秘めた者だっている。
ある程度の強さがある者は集落を出て、覇竜の地を冒険しようとする。多くはやや無鉄砲な若者であることが多い。なぜなら、彼らですら手に負えない亜竜や魔物が道中にすら徘徊しているからである。
それでも、集落から飛び出すことに決めた亜竜種の若者達がまた1人、2人。
「ふうっ!」
軽装鎧を纏う赤髪ショートの少女が息をつく。
出てきた亜竜数体の群れを倒し、爽やかに微笑む彼女はカレルという名の長剣使い。
「もう、カレルってば、無茶しすぎよ」
それを心配するのは、緑髪ロング、ゆったりとした衣装を纏うシェインだ。
シェインはゆっくりとカレルへと歩みより、彼女の腕の傷を手当てする。
「癒しの風よ。カレルに安らぎを与えたまえ……」
手にする杖をシェインが振るうと、カレルの体に暖かな風が吹く。
見る見るうちに傷口が塞がっていくが、流れた血がそのままになっていることにシェインが気づいて。
「あっ……」
「じっとしててね」
カレルの腕に顔を近づけたシェインはその血をゆっくりとなめとる。
「なあ、シェイン。折角だから、こっちも……」
「ふふ、戦うときはあんなにりりしいのに。甘えん坊さんね」
笑い合う2人はしばらくの間寄り添い、離れようとはしなかった。
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一方、幻想ローレット。
『覇竜領域デザストル』での依頼、探索を進めるイレギュラーズではあるが、依然として危険な地であるという認識は変わらず。
「私の力量では、なかなか外に出ようとはならないのが厳しいところです」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)もイレギュラーズとなってからは世界を回り、多少なりとも魔物と戦う術を身に着けている。
しかしながら、その多少のレベルでは覇竜に生息する魔物や亜竜とは渡り合うことができない。
それだけに、アクアベルも思うように情報提供できない状況を歯痒く感じていた部分があるらしい。
「ですが、未来視で少しだけですが、情報を補いつつ説明をと考えています」
例えば、フリアノンから最近亜竜種の少女が2人、外の世界を見たいと飛び出したという情報がある。
アクアベルは彼女達がその後どうなるかを視ていたのだが……。
「襲い来る敵を倒していた彼女達ですが、ある時連戦となって追い込まれてしまうのが確認されています」
難敵と遭遇して撃退した彼女達は傷つき、一時フリアノンに戻ろうとしていた。
しかしながら、長い巨体を持つ亜竜ラウンドウォームに出くわし、退路を断たれてしまう。
体調が万全であっても、その亜竜は格上の魔物。彼女達も撃退覇で来ただろうが、疲弊した状態ではそれもままならない様だ。
「できるなら、彼女達を助けてあげてください」
ラウンドウォームは成体が1体と幼体が数体存在する。
成体は巨躯を活かして岩場ごと周囲を破壊、吸い込んだ岩石を吐き出すなど広範囲の攻撃を得意としている。
また幼体は動きが素早い動きで襲ってくるので、こちらも注意が必要だ。
「見た目以上の強敵ですので、どうかご注意くださいね」
締めに、アクアベルは改めて覇竜に生息する生き物の強さをイレギュラーズ達へと説いていたのだった。
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迫る長い巨体。そして、その子供達。
亜竜の1種であるラウンドウォームは格上の敵ではあるが、カレル&シェインも万全の状態であれば相手を退けることくらいはできたかもしれない。
だが、その前に襲ってきたワイヴァーンとの戦いで負った傷が癒えぬままの連戦。
2には幼体を2,3体倒しはしたが、体力気力がつきかけてかなり苦しい状態となっていた。
「カレル、私、もう……」
「何を言っているんだ、シェイン。まだ一緒に冒険するんだろ!」
まとわりついてくる幼体を振り払い、少女達は距離をとって岩場に隠れようとするが、なおも残る幼体が追いすがってくる。
加えて、ラウンドウォームが岩場ごと尻尾を振り払い、隠れられる場所を破壊してしまう。
グオオオオオオォォォ!!
破壊した岩石を吸い込んだラウンドウォームは、すぐにそれらを吐き出して亜竜種少女達へと叩きつけてくる。
「「あああああああぁぁぁぁ……!!」」
絶体絶命のピンチに陥る二人は地面へと倒れこんでしまうが、それでも、最後の最後まで一緒にいようと互いに手を取り合っていたのだった。
- 亜竜種少女ペアの冒険完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年02月28日 22時06分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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フリアノンを出るイレギュラーズ一行。
今チームの半数あまりが亜竜種という新たなイレギュラーズ多めのメンバーである。
「旅だ冒険だっつーのに興味持つんなら、向こう見ずなくらいが丁度良い……とはいえ、命あっての物種ってな」
ペイト出身の武術青年、『特異運命座標』凛・詩楼(p3p010438)とて、外の世界に興味を持った1人だが、やはり救出対象である少女2人の行動が勇み足すぎたと感じていて。
「外に憧れる気持ちはわかるッス」
大柄で筋肉質な身体を持つ『青の疾風譚』ライオリット・ベンダバール(p3p010380)が大きく頷く。
彼らとて、まだ外のことを勉強中。焦らず少しずつ進んでいけばいいとライオリットは語る。
「勉強のためにいつも身を危険に晒していたら、命がいくつあっても足りないっスからね」
「挫折や敗北から学ぶには、最低でも生き残らなければいけない」
ライオリットの一言を受け、まったくもって無鉄砲なお嬢ちゃん達だと白いスーツ姿の『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)は呆れて。
「いいだろう、俺がお嬢ちゃん達に学ぶ機会を作ってやる」
「高い授業料にはなったろうが、今後に活かして貰う為にも生きて貰わねぇと。なぁ?」
ジェイクや詩楼らの掛け合いを、傍で聞いていた青水晶の様な角と翼を持つスフィア(p3p010417)は無言のまま頷く。
人助けをすればお金になる。そんな考えで彼女はこの依頼に参加しており、もったいないとさえ感じていた。
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フリアノンの周囲は山岳地帯。
空飛ぶ亜竜や魔物も少なくないが、多数の岩が並び立つ岩場は身を潜めるのにうってつけといえる。
だが、相手もそれがわかっているからこそ、獲物を狩る為の手段を講じていて。
巨大な外見は芋虫ともミミズともとれるラウンドウォームだが、これでも亜竜の一種だ。周囲には幼体の姿もあり、明らかに何かを探している。
オオオオォォォォ!!
その捜索方法は何とも豪快で、尻尾を大きく薙ぎ払うことで岩場ごと獲物を破壊しようというものだ。
ラウンドウォームより前に、イレギュラーズはスキルを駆使して亜竜種少女2名の発見を目指す。
「さって、んじゃあ、ちゃちゃっと助けに行きますか!」
詩楼はその岩場を広域俯瞰することで、捜索を開始する。
何が視えたか詩楼が逐一仲間に情報共有すると、その助けを得て、ガンマンを思わせる風貌をした『幸運の引鉄』ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)は翼で低空飛行し、死角や高低差で見えない部分を確認していく。
加えて、ジェイクの働かせたハイセンスも手伝い、自然知識の推測によってジュートはすでにラウンドウォームの破壊した岩陰で横たわっていた亜竜種少女、長剣使いのカレンと術士シェインの姿を発見する。
「Hey! ラッキーガールズ、俺達が来たからにはもう大丈夫だ」
「「……!!」」
茶目っ気たっぷりにジュートがウィンクすると、少し頬を赤らめていた彼女達は互いから顔を背けて身を起こす。
「……危ない所だったな、亜竜種の娘達」
続き、傭兵業と秘書を同時にこなす『蒼空』ルクト・ナード(p3p007354)が気遣うと、少女達は呆けたまま視線を次なるメンバーへ。
「お二人さん、大丈夫? 何とか間に合ったみたいだね!」
「よーく耐えたな、お二人さん! ヒーローのご登場だぜぇ!」
さらに、『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)がよくここまで持ちこたえたと喜び、詩楼も2人に救出に駆け付けたことをアピールする。
「この地は死と理不尽と隣り合わせ……一寸した油断が己を死地に追いやるのですが……今回はなんとか間に合いましたね……」
長身ながらも、女性らしさを主張する体つきをした『新たな可能性』アンバー・タイラント(p3p010470)もまた、同族の無事に安堵する。
「…………」
スフィアは、同胞のカレンとシェインが手を繋いだままな様子を見つめ、まるで将来を誓い合った伴侶みたいだと感じていた。
そのスフィアにも、それに近しい存在の友達がいたが、2人が死を目前にした彼女達が究極的な選択をせねばならぬ状況で、ただ仲良くしただけなのかなと首を傾げて疑問を抱く。
(どちらにしても……)
オオオオォォォォ!!
岩を破壊するラウンドウォーム一団の接近を察し、スフィアは傍に控える可愛らしい量産型ハイペリオン様を優しく撫でてから戦鎌に手をかける。彼女達を助けてお金を得る為に。
「こんなところで冒険を終わらせたくは無かろう? ……力を貸そう」
「さて、ここから第二幕! 『反撃の狼煙』といこう!」
敵の接近もあってルクトが手を差し伸べ、アクアも大天使の祝福によって治療を施して。
「さぁ、立て。生き延びたいのなら、な」
「立てる? 一緒に戦える?」
まだ、立て直しにはしばしの治療を要する亜竜種少女達。
しかしながら、亜竜の集団はイレギュラーズが固まっていたこともあり、こちらに気付いて岩を粉砕しながら近づいてくる。
しばらく動けないなら、彼女達の安全を確保するまではとライオリットは仲間と共にこの場で敵を迎え撃つ。
「繋いだ手を離すなよ、互いの命を守りあえ!」
「「は、はい……!」」
2人の返事を背で聞いたジュートは、間近に迫るラウンドウォーム一団を止めるべく、浮遊するのだった。
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戦いが始まり、普段喋らぬスフィアが初めてバラードという形で声を披露する。
ヴォカリーズと呼ばれる歌詞がなく母音のみの歌唱法で歌うことはあるようで、この岩場に可愛らしい歌声を披露し、仲間達を鼓舞する。
その支援を受けるアンバーは改めて、状況を確認する。
イレギュラーズの目的は、亜竜種少女2名の救出。並びに亜竜ラウンドウォームの討伐だ。
「成体が幼体引き連れてこっちくるぜ!」
迫る敵にジュートが仲間達へと注意を促す。
成体1体に幼体は7体。索敵手段のないメンバーへ、ジュートはその配置を伝える。
「最期まで一緒に居ようという心意気はいいが、先ずは後ろにさがれ!」
アリアの手当を受ける少女らへと告げたジェイクは盾役となるべく飛び出す。
グオオオオオオ!!
(たまには女の子を守る為に体を張るのも悪くない)
叫ぶ巨躯のラウンドウォーム。そして、後方には亜竜種のお嬢ちゃん達。
「おい、余所見などさせねえぜ」
グオオオオオオオオオッ!!
成体幼体問わず纏めて名乗りを上げたジェイクへ、成体を含めた敵は一挙に押し寄せる。
彼は元々、自身の防御技術や回避能力は大したものではないと思ってはいたが、気休めでも予め全身の力を高め、反応速度を高めて身を固める。
こうすることで、相手の攻撃に先んじて動きを止めることができる可能性が高まるとジェイクは考えていたのだ。
ともあれ、敵の数が多いこともあり、動きが素早い幼体に囲まれぬよう半数以下にまで減らしたいというのがメンバーの総意。
「いくら幼体の動きが早かろうと……」
ルクトは義肢や翼の機構から粘着射出弾頭「AGBB」を放つ。
火薬量はさほど多くないが、爆撃によって敵の動きを阻害するのがルクトの狙いだ。
そこへ、強烈な運気を自身へと呼び込んだジュートが仕掛ける。
「ラッキーな俺の立ち回りを見せてやるよ」
運気の高まりを実感して高揚するジュートだが、驕ることなく防御に集中する。
幼体の尻尾はたきで受けた傷から流れるジュートの血が変形して敵を強かに打ち付け、さらに彼は無数の糸を放って敵を切り裂く。
ジュートはそれらの攻撃を続け、相手の動きが鈍るのを待つ。
一方で、少女達の安全を確保すべく、数名が動く。
「我が名はアンバー! アンバー・タイラント! 我が刃恐れぬのならばかかってきなさい!」
盾を構えたアンバーは名乗りを上げて幼体数体を引き受け、後方の2人にも呼び掛ける。
「覇竜の地を巡ろうと集落を出たのでしょう? このような場所でへこたれている暇はないでしょう」
檄を飛ばすアンバーは正面からくる幼体ののしかかりを受け止める。
破壊された岩は倒壊の恐れなどあって危険だが、身を潜めて僅かに時間を稼ぐことはできる。
彼女達がその間に立ち上がることを信じ、アンバーは大薙刀「屠龍」の間合いの広さを活かし、ラウンドウォームを牽制する。
少女達の回復に当たっていたアリアはその手を止め、問いかける。
「相手の力を削ぐから、二人で各個撃破お願いしてもいい?」
勿論、アリアも力を貸す構えだ。すでに少女らは幼体を数体討伐しているという。
「私達も合わせれば、きっとこの局面も切り抜けられるはず!」
アリアは敵側へと向き直り、音を操る精霊として狂乱を帯びた音楽の渦を敵陣へと浴びせかける。
吹荒れる音色は相手を巻き込み、相手の精神を抉り、貪る。
相手の動きがわずかでも止まれば、ライオリットが少女達へとチョコレートを差し出す。
「腹が減っては戦はできぬ、こういうときこそ甘いものを食べて心を落ち着かせるのが大事……って、鉱山の現場長が言ってたっス」
ライオリットから渡されたチョコを割り、カレルとシェインは口にする。
(落盤事故で鍛えた逃走力の出番はなさそうッスかね?)
他メンバーからも避難するよりも立ち向かってほしいという要望の方が強く、ライオリットも彼女達が動く様子がないことから庇うことも想定しつつ足止めに徹する。
幼体が噛みついてくるその動きを予測し、ライオリットは幼体を追いこんでいく。
一曲歌い終えたスフィアも幼体の数を減らすべく立ち回り、仲間を巻き込まぬよう魔砲を放って複数のラウンドウォームを撃ち抜く。
追撃として、位置取りを気にかけていた詩楼が背水の構えをとり、その幼体へと肉薄戦を仕掛けていく。
強い力で詩楼が拳を胴体へと突き入れ、装着する黄金の爪を突き刺すと、幼体は力なく崩れ落ちた。
程なく、ジュートも格闘術で果敢に攻め立てる。
彼を長い体で縛り付けようとしていた幼体だったが、力尽きて地面に横たわったのだった。
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亜竜ラウンドウォームは荒々しく暴れ、戦場となる岩場をどんどん破壊して少しずつ見通しを良くしていた。
そんな中、イレギュラーズも討伐を進めて。
アリアが抑えに当たっていたところ、亜竜種の少女達がついに立て直して参戦する。
突き出す杖からシェインが雷を発し、カレルも長剣で連続斬りを浴びせて幼体1体を追い込むと、アリアが零距離から神秘の極撃を打ち込んでとどめを刺す。
少女達に笑顔を向けるアリアの傍ら、スフィアも仲間へとのしかかる幼体の喉元を魔砲で撃ち抜き、仕留めてみせた。
これで残る幼体は最初から半数以下となる3体。
成体を含めて抑えに徹していたジェイクもここからは押していくことに。
グオオオオオ!!
相手が自分へと注意を向けているのを確認し、ジェイクは再度力を高めてから巨躯のラウンドウォームに対して両手の拳銃から蜂の集中攻撃のごとき弾幕を展開する。
ガンマンの見た目をしたジュートも破壊されずに残る岩の間を移動しつつ、敵の体当たりを岩で避け、式符より生み出した冥闇の黒鴉で成体の胴体を穿つ。
空から攻撃を行うルクトも武装を変え、義肢から特殊な炸裂弾……多目的炸裂弾頭「MRBL」で攻め立てる。
(私が空から攻撃する理由は単純だ)
一方的に攻撃されるということは、生物に少なからずストレスを与える。
しかも、竜でなく、機械の翼で――本来なら飛ばない種族であるからこそことさらだとルクトは考える。
「燃やし、蝕め。これもまた一つの戦術だ」
いくら巨躯の敵だろうが、届かなければ意味がない。
多少煽りともとれる攻撃で、ルクトは空から炎と有毒ガスを起こす炸裂弾を降らせていた。
グオオオ、グオオオオオオオ!!
今なお、残る幼体はアンバーに抑えられたまま。
そこで、成体は全身を力ませ、新たな幼体を生み出す。
「何か弱点とか知らないッスか?」
その様子を観察していたライオリットが亜竜種少女達へと問うが、さすがに彼女達も成体とはまともにやり合っていないようだった。
幼体が1体増えれば、すかさずメンバーは数を減らしにかかる。
アンバー自ら、最初から相手にしていた幼体1体を変幻邪剣で惑わした後、その首を断ち切ってみせた。
「尻尾は効果が薄い。頭と首を狙え!」
アナザーアナライズで成体を調べていたジュートは弱点と思しき箇所を仲間へと告げると、メンバーの攻撃はその頭に集中する。
「頭が柔らかいなら残影でいいッスね!」
これ以上幼体を生み出される前に、成体を仕留めようと残像の生じるスピードで攻め立てる。
合間に、亜竜種少女の片割れ、シェインが気力回復にも当たってくれるのがありがたい。
無論、相方カレルも粗削りな剣術で幼体を纏めて蹴散らそうと剣戟を繰り出す。万全であれば、彼女達もまた亜竜と対する力を持つ。問題は野良で恐ろしい生物と幾度も、連続して遭遇する危険があることだろう。
さて、イレギュラーズのラウンドウォーム成体への攻撃が集中していて。
グオオオ、オオオオオオ!!
衝撃波を放つラウンドウォーム成体。イレギュラーズもそれをしのぐべく距離をとり、あるいは防御態勢をとる。
だが、巨躯へと幾つも刻み込まれた傷から体液を流す敵は相当に苦しみ、悶えていたようだ。
スフィアも黙したままで攻撃を繰り返す。
幸い、亜竜種少女が気力補填してくれることもあり、魔砲でラウンドウォーム成体の体を撃ち抜き続ける。
しかしながら、その巨躯は伊達ではなく、かなりのタフネスを誇ってイレギュラーズを追い込まんと暴れる。
さすがは覇竜を生き抜く亜竜だが、イレギュラーズとて世界を股にかけて数々の難敵を倒した面々。最近参戦した亜竜種達もそのノウハウを受け継いでいるのは間違いない。
相手はジェイクへと気を払っている。その隙を突き、詩楼は多方向からその頭部目掛けて殴打を繰り出す。
グオオオオオオオ!!
すでに飲み込んでいた岩石を吐き出してくる敵の後方から、詩楼が相手の顎を頭上へと殴りつけた。
アッパーの様な一撃に、成体の頭がのけぞる形となると、アリアが神秘の破壊力を集約させて。
「仲間の皆だって同様! 救出対象は二人だけど戻るときは全員で!」
アオオオオォォォォ……。
高火力の一撃を頭部へと叩き込まれた成体はついに卒倒し、地へと伏してしまう。
残るは幼体3体のみ。
決して弱い相手ではないが、イレギュラーズとてまだ余力を残しており、ライオリットが先程のジュートによる指摘もあって幼体の周囲に残像を展開しつつ攻め立て、その首を跳ね飛ばす。
少女達も負けていない。ここぞとシェインが相手の頭を燃やすと、カレルがその炎を切り裂き、幼体の頭部を真っ二つに断ち切ったのだ。
残る1体は、抑え役となっていたジェイクが死の凶弾で仕留める。
どうと岩の上に崩れ落ちる最後の敵を確認し、メンバーは一息ついてから武器を収めた。
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強敵、ラウンドウォームとその幼体を倒した一行は近場のフリアノンまでカレルとシェインを連れていくことに。
「いやぁ、無事で良かった良かった! 無茶したよなぁまったく」
事なきを得て、詩楼は無事だった亜竜種少女らに声をかける。
岩場に留まると新手に襲われる危険性を考慮して移動していたのだが、アンバーなどは危なっかしいからと本音も漏らす。
「血気盛んなのは大いに結構だが、先ずは自分達の現状を認める事から始めろよ。そうすりゃ今よりマシになる」
「「…………」」
彼女達も自分達の実力に自身はあったのだろうが、ジェイクに諭されてうな垂れていた。
「向こう見ずなのは必ずしも悪い事じゃねぇけど、今回の件で旅の怖さはよく思い知ったろう」
旅の楽しい面ばかり見ていた少女達に、詩楼がその厳しさを示す。
「仲が良いのはいい事だが、ならばこそ命は大事にするべきだ」
ルクトもまた、集落を出て旅したいと語る彼女達に引き際や先を見据えた戦い方をすることが大事だと諭す。
「……大切な人を、悲しませたくはないだろう?」
「「はい」」
そこで、仲の良い2人は同じタイミングで返事する。
まだ旅を続けたいという彼女達へ、詩楼が引き際を見極めるよう告げて。
「……でもほんと、気を付けるんだぜ。何がどうあれど、死んじまったら終わりなんだからよ」
無茶なことをした2人を諭すメンバーがいる一方、ジュートは諦めの気持ちがあったことを指摘する。
「ピンチでも絶対、あきらめねー! 救えるかもしれねぇ命を諦めちまったら、生き残ったってぜってぇ寝覚めが悪いだろうが!」
蛮勇と不屈は別。それぞれについて考えつつ、少女達も今は休息を求める。
「お二人の旅はどこが終着地なんだろ?」
今は実家に戻る2人だが、新たな旅路を含めて文章にしたら面白そうだとアリアは相談を持ち掛けて。
「……ダメ?」
「「えっ、えっ!?」」
あられもない自分達の姿が書き起こされるとあって、ずっと手を繋いだままのカレルとシェインは戸惑いを隠せずにいた。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは敵の弱点を探り、その後の戦いに大きく貢献した貴方へ。
今回はご参加、ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
『覇竜領域デザストル』に住まう亜竜種達の中にも冒険者が存在します。
ただ、彼らも向こう見ずなところがある為か、その身を危険にさらしてしまうことも少なくないようです。
皆様の力をお貸し願います。
●成功条件
ラウンドウォームの撃破。
亜竜種少女2名の生存。
●概要
ようやく集落を出ることを認められた亜竜種の少女2名が集落を出て覇竜の地を巡ろうとしたようですが、思わぬ敵の出現に苦戦しているようです。
戦場は岩山となり、大小多数の岩が突き出しており、視界はあまり良くありません。
皆様の力で彼女達を救ってあげてくださいませ。
●敵……亜竜
○ラウンドウォーム(成体)×1体
全長7mもの巨体を持つ亜竜。
その動きはあまり速くありませんが、巨体を生かした攻撃は脅威です。
吸い込み、薙ぎ払い、衝撃波、岩石群吐き出しを行います。
また、場合によっては、幼体を生み出すこともあるようです。
○ラウンドウォーム(幼体)×7体
全長2mほど。上記ラウンドウォームの幼体。すでに数体が少女たちによって倒されています。
親とは違って素早く獲物へと迫り、全身を使って縛り付け、のしかかり、食らいつき、尻尾はたきといった攻撃を行います。
●NPC……亜竜種少女×2名
フリアノン出身。集落を出て2人で旅をしたいという願望を持っていました。
少なからず、互いを友人以上の存在だと感じているようです。
○カレル
17歳、赤いショートヘアの長剣使い女性。軽装鎧を纏い、剣舞を行う彼女は見とれてしまうほどの美しさです。
ただ、今回は少しばかり相手が格上だったようで、手こずっているようです。
○シェイン
16歳、緑のロングヘアを揺らす術士の少女。
樹でできた長い杖を所持し、先端にはめ込んだ魔力晶から炎や雷、治癒術を使うことができます。
今回はカレルについてきたものの、思いの他敵が強く、苦戦しているようです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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