シナリオ詳細
再現性東京202X:恐慌の末に渡る
オープニング
●再現性東京202X街:恐慌の末に渡る
極々普通の日常が繰り広げられている再現性東京。
いや……正しく言うなら、日常が繰り広げられていたのは、昔の話。
つい先日に発生した怪竜ジャバーウォックを初めとした竜種達の襲撃。
その襲撃により、希望ヶ浜の日常は一変し、高いビルがポッキリと倒壊してしまったり、地面のアスファルトがめくれて瓦礫が散乱してしまったり……と酷い状況。
しかし、希望ヶ浜の人々は、そんな竜種達の襲撃を決して信じようとしない。
知らない内に発生した大地震がビルを倒壊させ、更にそこに台風が多重に発生してしまった結果である、と希望ヶ浜地域で営業しているテレビ局や報道機関は、その旨を大々的に喧伝している。
普通なら、そんな訳ないだなんて思う事だろう……だが。
『そうだよねぇ……こういう災害って、立て続けに起きるもんなんだよなぁー』
『ああ。ま……これ以上起きなきゃいーさ。災害復興、俺達はそんなのに負けやしねーさ』
と、町の人々はそれを信じず、懸命に生きている。
そう、大多数の一般人達は、竜なんていうファンタジーな物を信じようとしない。
だが、一部の一般人はそれを信じる事をしない……。
『そんな事件が立て続けに起きる訳ねーじゃん。俺は見たんだ! 空に竜が飛び回って、俺達の町をぶっこわした事をよ!』
声を上げるは、血気盛んな20歳位の若者達。
彼らは真実を追究しようと、瓦礫が散乱する町を歩き回る。そんな彼を闇の中から監視するのは……。
『……クク……面白ェ奴メ……』
荒れたこの世界で、人知れずに蠢く夜妖。
口裂け女が如く、口元は真紅に染まりし夜妖は、竜種の事件で一端息を潜めていた様だが……こうして、見込みのある者を狙っていた。
……そして漆黒の闇の中で、彼に静かに迫る。
『……ん?』
気配を感じ、振り返った彼。
『ケケケ…!!』
『うわぁあああ……!!』
多い被さられた彼は、苦悶の叫びを上げる。
そしてそのままバタン、とその場に倒れ込む。
『お、おい、どうした!?』
別れて探索していた、彼の仲間達がその声に気付き、その場へとやって来る。
すると……。
『……は、ハハハ……コロス、殺す殺す殺す……!!』
目は真紅に染まり、人だった筈の彼の爪は鋭く伸びる。
異形の存在となった彼に驚いた彼の仲間達は、その場に腰を抜かしてへたり込む。
『や……やめ、やめてくれ……!』
と声を掛ける仲間達だが、夜妖へと憑かれた彼は、仲間を仲間と認識する事はなく……切り裂くべく爪を薙いだ。
●
「みんなー! ちょっといいかなー? 結構緊急事態なんだよー!」
と、カフェ・ローレットで騒がしく叫んでいるのは、綾敷・なじみ。
彼女が騒がしくしているという事は、何らかの事件が起きたことはまぁ間違いないだろう。
……そんな彼女を落ちつかせつつ、イレギュラーズの君達は話を聞く。
「えっとね、ここ再現性東京……つい先日まで大事件があったのは知ってるよね? 竜が来て街並みをババーン、とぶっ壊していったの」
それに君達が頷くと、なじみは良かった、と頷きつつテレビを指さす。
当然そんな事件があったからには、町には甚大な被害が起きている。
そんな被害の理由は……と知りたくなるのも当然のことなのだが、テレビニュースなどでは、未明の大地震やら、台風やら……とそんな事を繰り返し言っている。
だが、イレギュラーズの君達は真実を知って居るし、それを一般人達が信じたくない……と思うのもまぁ仕方ない事。
そして一般人の中において、その真実に辿り着こうとする人が出てくるのも又、自然な流れであろう。
「そうそう! どうも正義感を持った人達が真実を追い求めようとしているのがいるみたいなんだよね! でも、そんな一般人を食い物にしようとする夜妖ってのも出て来ているみたいなんだ」
「この夜妖は深夜の人気が無い時にやってきた一般人に襲い掛かり、取り憑いてから周りの他の人達を殺そうと蠢いているみたいなんだ。この夜妖を放置していると、第二第三の被害者が出てくるのはまぁ間違い無いと思うんだよね? そこでみんなには、早々に倒してきて欲しいって訳!」
そこまで言うと、再度皆を見渡しながらなじみは。
「あんな大事件を信じたくない……なんていうのはまぁ仕方ない所ではあるんだけど、そんな危険を脅かさせる訳にはいかないよね! という訳でさ……みんな、宜しく頼むね!」
と元気いっぱいに、皆を送り出すのであった。
- 再現性東京202X:恐慌の末に渡る完了
- GM名緋月燕
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年02月20日 22時21分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●崩落の足音
突如の災害に見舞われてしまった、再現性東京。
ジャバーウォックを初めとした突然の竜種達の襲撃は、住まう人々の日常を一変させてしまう。
ビルは倒壊し、地面のアスファルトはめくれ上がり、足場も悪い……だが、町の人々の共通認識は大地震や大災害が起きたからという……事実から目を離そうとしており、報道機関等もその方向性に世論を誘導しようとしていた。
「うーん……ジャバウォック達が襲来して、錬達全体が大変な事になっているというのに、まさかあれを自然災害で片付けようとする人達がいるとは思わなかったわね……」
実際にジャバウォックらに相対した『「Concordia」船長』ルチア・アフラニア(p3p006865)が肩を竦めると、それにいつもより張り切っている『鏡越しの世界』水月・鏡禍(p3p008354)が。
「ええ……ここも竜種の襲撃を受けたんですよね、当たり前ですけど。なのに、次は夜妖って……気持ちに付け込まれている感じがしますねぇ……」
「そうね。この様な状況だから、住んでいる人達からすれば、何かに心の支えを求めそうなもの……そこに上手くつけこんで、夜妖達は自分達の領域を広げようとしているのかしらね」
二人言う通り、こういった事件を目の当たりにした人々は何かしらに心の平穏を求めそうなもの。
事実、今回イレギュラーズ達が受けた依頼も夜妖が憑いてしまった一般人の討伐、そして可能ならば救出してきて欲しい……という物。
ただ同様の話はこの町の他でも度々噂は届いており、錬達、ひいてはこの再現性東京では頻発しているという様な状況なのは間違い無い。
「本当、夜妖憑きが最近どんどん出て来てる気がするですよ……これも、ジャバウォックの襲来が関連してるですよ……? やっぱり出てくるだけで、とんでもない力を誇るわけですよ」
「そうだな。竜種は強い……ここに住むような一般人では太刀打ちする事すら出来ないだろう。その力不足の部分を、真実から目を離す事によって自制を保って居る……という事か」
『航空猟兵』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)に『含牙戴角』イルマ・クリムヒルト・リヒテンベルガー(p3p010125)が漆黒の闇が覆い尽くす空を見て零す。
当然街灯も大多数が破壊されており、街中というのに灯る灯りはごく少数。
日に日に繰り返す闇に、人が希望を失いつつあるからこそ、夜妖達はつけあがって、弱い物に取り憑こうとするのかもしれない。
「しかしまぁ……夜妖も飽きないものだね? 僕たちのお陰で再現性東京は何とかなってる訳だけど、いい加減に科学で否定出来ないモンスターは存在する事を認めて頂きたい!! 面倒極まりない!!」
声高に訴えるのは『魔刻福音』ヨハン=レーム(p3p001117)。
確かに再現性東京は今回の様な事件が起きる前からも、数多の夜妖事件が起きてきていた。
だが、それが一般に表沙汰になる様な事は無い……再現性東京の掃除屋などが証拠を隠滅する事で、『本当に事件はあったのか?』と思いこませる。
そしてそれを信じようとしない周りの人々がいるからこそ、段々とその事件は夢なのでは……と段々と自分自身が思ってしまう……正常性バイアスを自然と引き起こさせるのである。
だが、今回の依頼においては、そんな正常性バイアスをくぐり抜け、町が変わり果ててしまった姿になったのは何か理由がある筈だ! と強い意志を持ち、それを調べに来た若者達が事故に巻き込まれてしまうという具合。
「んー……ま、身の回りの理不尽に『なんで』とか『どうして』って理由を求めちまうのは、良く判るよ。まぁ何にせよ、憑いている青年。こいつはとびっきり『ツイてる』ぜ! なにせ俺は豪運で! 不幸な奴の味方だからな!!」
サムズアップする『幸運の引鉄』ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)。
そんな彼にやれやれ、といった感じで肩を竦めるヨハン。
「まぁ……それならいいけど。本当何かもうまとめて巣なり何なり爆弾で吹き飛ばしたりしたい所なんだけど、色んな所から沸いて出てくるから判りようがないんだよね」
とヨハンが言うと、ブランシュは小さく頷き、リフィヌディオル(p3p010339)は目を閉じ。
「そうなのです。そして町の人達が、そういうのを信じたくない気持ちも解るですよ。その真実を求める気持ちを食い物にする夜妖というのも賢いなぁ、と敵ながら思ったりしたですよ」
「ええ……それを調べたいという、この人が抱いた義憤や探究心は理解できます。ただ機会と力に恵まれなかっただけ……願わくば、次より良い方向にその情熱が向いて欲しい所です」
そんな三人の言葉に、ヨハンからも。
「ま、愚痴ばかり言ってても始まらない。夜妖憑きを殴り倒せば、闇狼も消えるものと推測するが、消えなかったら大変な事になる。守るべき対象が増えてしまうからね、まぁ闇狼から始末していけばいい。再度召喚されても、その時はその時、持久戦においては僕に勝てるなんて思わないで貰いたいね!」
と笑うと。
「……私の父は良く『真実に生きる人々のために真実は勝つ』と言っていました。真実の真の価値は判りませんが……追い求めるのは正しい事です。ですがそれは、夜妖たちにとって都合が悪いのでしょう……だから守ってみせます。わたしも、真実の為に戦いたいから」
心の底に呼びかけ、町の人々を護る……と『春風と導き』プラハ・ユズハ・ハッセルバッハ(p3p010206)は強く決意。
更に鏡禍も。
「ええ。やれることはやるだけです!」
ぐっと拳を握りしめ、気合いを充填。
そんないつもと違う鏡禍の雰囲気に、ルチアは。
「……?」
心当たりなく、ちょっと首を傾げるのであった。
●故に影あり
そしてイレギュラーズ達は、すっかり帳が降りてしまった深夜の街角を駆ける。
町の状況は正しくボロボロな状態であり、夜の灯りも殆ど灯らない状況とあれば……出歩く人はごく少数。
「この様な状況ならば、出歩いている人を発見するのはそこまで難しくはなさそうですね。であれば、私は空から偵察させて頂きます」
「そうですね。ブランシュも手伝うですよ!」
とリフィヌディオルは言うと、ブランシュを共にして、空に飛行。
暗闇でも見通せる暗視の力で、空から探すは灯り。
「普通の人達は暗視能力を持ってなど居ないでしょうから……灯りを照らしているでしょう。その灯りを探せば、人の居る場所をピンポイントで見つける事が出来ると思います」
そんなリフィヌディオルの作戦に従い、二人は空からの偵察を開始。
その一方で、プラハはたいまつを用意し、それに火を付け頭上で大きく振るう。
「誰かいませんか~、こっちが安全ですよ~!」
とりを灯す事と、他の人が居るという事で安心感を与えようという作戦。
その傍らにて鏡禍は暗視の力で周囲を監視し……暗闇の中に蠢く影がないか、を偵察し続ける。
そんな地上と空の二面から偵察を開始するイレギュラーズ。
……数分経過した頃に、空の二人が。
「……あれ? あそこで何か光ってないです?」
指を差したブランシュ、リフィヌディオルも頷く。
幾つかの懐中電灯と思しき灯りの筋が点在しており……どうやら手分けをして周囲を探っている模様。
……いや、その灯りの一つは動きがない。どうやら懐中電灯が地面に落ちていた。
その灯りに僅かに灯されながら、蠢く人影。
『う……うぅううう……ウグァアアアア!!』
次の瞬間、苦しみの咆哮が響きわたる。
その声は当然地上にいるイレギュラーズと、彼の仲間達にも聞こえ……空から観察している灯りは、その声の方向に向けて集結していく。
「いました……暴れています!」
「みなさん、こっちです!!」
視認したリフィヌディオル、空のブランシュが地上の仲間達に合図を送り、方向を指示。
地上のイレギュラーズ達も声の主の方向へと駆けて行く。
……そして。
『ウウウ……グゥウ……』
『お、おい……ど、どうしちまったんだよお前!!』
『や、やべーぞ!! なんかやべーぞ!!』
夜妖に憑かれた者を、友人達が驚きと共に、その場にへたりこむ。
……夜妖憑きは、逃げれない仲間達を殺そうと……ニタァ、と惨忍な笑みを浮かべて、急速に伸びた鋭い爪を鈍く輝かせて……飛び跳ねる。
「させないのです!」
そこに空から割り込み、SAGで一発夜妖憑きを吹き飛ばしながら、彼の狙いを自分に向ける。
後方に転がり間合いが広がる中に、リフィヌディオルは彼の仲間達の所へ。
『ひ、そ、そらからなにか来たぁ……!?』
突然の事に目を白黒させている彼等。
「……騒動が真夜中で良かったですね。人混みで暴れられたら大惨事だったでしょう……ともかく大丈夫です、じっとしていてください」
彼等を護る様に、夜妖憑きに対峙するリフィヌディオル。
……当然夜妖憑きは、邪魔するなと言わんばかりに咆哮を上げ、更にその傍らに闇から作り出した狼を次々と具現化させていく。
『なんなんだよぉ……俺の仲間が、良く判らねえのになっちまったぁ……』
半べそ状態な仲間達……そして二人が守っている所に追いかけてきた他のイレギュラーズ達が到着。
「仲間が突然変わってしまって不安よね? でもあれ、興奮状態で暴れているだけ。こちらで何とかするわ。危ないから、大人しく待って居て?」
「そう……わたしの側を離れないで。絶対に大丈夫ですよ?」
ルチアとプラハは彼等に優しく語りかけるように伝える。
更に、凄く弱気になっている彼等の肩を叩きながらジュートが。
「大丈夫だ、俺達が助けに来たぜ! アイツを正気に戻してやるから、巻き込まれないように下がってな。待って居る間に何かあったら、こいつの紐を引っ張れ!」
とクラッカーの様なものを手渡す。
良く判って居ないけど、取りあえず判った、と頷く彼等。
一方でイルマは、唸る夜妖に先駆けて一発ドカン、とライフルをぶっ放し……それに鏡禍も。
「貴様の如き化け物がヒトを支配するなど不可能だ。ここで散るがいい」
「そうです。あなたの餌はここにいますよ! 食べられるものなら食べて見てください」
二人挑発し、夜妖の注意を更に惹きつける。
そんなイレギュラーズ達の行動に対して夜妖憑きは、唸り声を上げて、闇狼達を嗾ける。
視界に納めた者を無差別に噛みきり裂くだけの闇狼は、猪突猛進の攻撃特化。
しかしそんな闇狼達の攻撃を決して後方に通す事は無く、鏡禍はしっかりとそれら攻撃をブロックしていく。
ただ一人だけでは流石に全ての対処は仕切れず、ブランシュ、イルマの二人も協力して鉄壁の如くディフェンス。
そして闇狼達の攻撃が一通り終わった所で、いざイレギュラーズ達の反撃の手番。
「皆さん、大丈夫ですか……!」
と、一番傷を負っている鏡禍にプラハが癒しを飛ばし、更にルチアも。
「そうね、大丈夫。私がいるから、貴方が倒れるような事にはさせないわ!」
と聖なる賛歌で総じて回復を行う。
二人の回復により前線を維持し、その傍らからヨハンが。
「さて、と。それでは先ずは、周りの取り巻き共から殲滅していく事にしよう。そうすれば、抑えも楽になるだろうしね?」
と相手を執拗に追い回す炎弾で、闇狼一匹を確実に葬り去る。
「いいか、ここからが俺の落暉タイムだぜ!」
と傀儡の糸を闇狼に放ち、敵陣を纏めて呪縛に包み込んだ後、更にリフィヌディオルが。
「闇にかえりなさい」
と拳の一撃を放つ。
加えてイルマの鋼の雨と、ブランシュの死神たる狙撃がそれぞれ別個の闇狼を狙い、闇狼の数を確実に減らす。
流れる様な連携、連射に闇狼達は次々と倒れ、半数程度の闇狼と夜妖憑きが残る。
……とは言え、夜妖憑きになりたての彼に、それが正常なことかを判断する事は出来ない。
むしろ仲間達を殺され、更に怒りを過熱させ、闇狼を数匹、更に生み出す。
ただ、闇狼を生み出すと、彼は行動が殆ど出来ない模様。
「闇狼を倒して行けば、あいつ自身は動けないって事みたいだな! よっし、それじゃ闇狼を更に倒して行くぜ!」
ニッ、と笑みを浮かべたジュートは、己が血を鞭に変えて放つ。
麻痺の効果も付与為つつ、総じて強力なダメージを与えていくと、ヨハンからも。
「中々いいね。それじゃあこっちも手を抜く訳には行かないね」
と更なる炎弾で敵を追跡し焔へと変えていく。
焔に包まれた闇狼は、最後に足掻き前線の仲間達を喰らいダメージを積み上げていく。
しかし……。
「絶対に倒れさせません……!」
「ええ……!」
ルチアとプラハ二人は回復を最優先として動く事により、鏡禍を初めとした前線を崩す切っ掛けすら与えさせようとしない。
そうして数刻、闇狼だけを集中敵に攻撃していった結果、その数は0となり、残るは夜妖憑きのみ。
「後はお前だけだな? さぁ、どうする? さっさと尻尾巻いて逃げるか?」
笑うジュートに対し、夜妖憑きの彼はウウ、と低く唸る。
「さぁ爪長夜妖くん? キミはもう少し本気で斬り裂けば僕たちを仕留めれると思っている筈だ。しかしながらここからが本番だ……!」
とヨハンが言い放った次の瞬間、その長い爪をスッ、と眼前に構えると、間合いを詰めて攻勢に出る。
「はっ! そうか、人を殺す意思だけは否定しないって訳か! なら、その意思を完全に止めてやるよ!」
と迫り来る彼に対し、ジュートは呪縛の糸を放つ。
縛り上げられて動きが鈍った所へ鏡禍の不殺の一撃。
回避行動も取れぬまま、受けた一撃でほぼ瀕死になる彼へ、リフィヌディオルが。
「今度こそ、悪い夢はお終いですよ」
と、その拳から繰り出す一撃で……彼の命を奪わないままに、気を奪うのであった。
●狂う歯を戻して
「ふぅー……終わった様だな。ま、俺達のラッキーに敵う訳がねえって訳さ!」
ニッ、と笑みを浮かべ拳銃を回すジュート。
……そして彼の元へ歩み寄り、彼を治療するプラハ。
昏睡から暫し……気を取り戻した彼は、先ほど迄の様な瘴気は消え失せ、ぼんやりと虚空を眺める。
……そんな彼の元へ、同行した仲間達が心配する様に声を掛けるが……彼はあぁ、うん……と生返事のみ。
「……ちょっとまだ意識が混濁しているのかも。でも、もう暫くすれば治ると思うわ」
ルチアの言葉に、ほ、本当なのかぁ……と不安気に尋ねる仲間達。
そんな仲間達に、ブランシュは一人一人の目を見つめながら。
「大丈夫です……それにしてもこの様な危険な目に遭ってまで、真実を探求しようと思っていたです?」
純粋に尋ねるブランシュに、彼等は言い淀む。
危険に遭わないとは思って居なかっただろうし……ここまでの危険だとも思わなかったのだろう。
そんな彼等へ言い聞かせるよう、ブランシュは。
「真実は何だと思いますですよ? 竜がやってきた? それとも地震と台風? ブランシュたちはよく知ってるですよ。でも……貴方たちは、それを知らない方が幸せだと思うです」
真実を知って居る……と言われ、顔を見合わせる彼等。
そんな彼等に、ブランシュは更に。
「今日の事は夢だったと思って、いつもの日常に戻るのが一番だと思うですよ。非日常は、此処では存在しないのですから……ね?」
ブランシュはあえて、少し強い口調で語りかける。
勿論、それを鵜呑みにするかどうかは……彼等一人一人の受け取り方だろう。
それに……誰かが。
『……そ、そうだよな。今日の事は夢……そう、夢なんだよ……!』
と言うと、こくり、と頷く彼等。
「うん……そうだね。それじゃ、みんな帰ろう? 家まで送っていくわ」
「そうですね……家に帰って、皆さん、ゆっくり休んで下さい……今日の事は、夢ですから」
ルチア、鏡禍の言葉に促され……彼等はその場を後にする。
そして……。
「それじゃぁ、この場の後片付けはいつもの通り……だね。本当、いつになったら大手を振って言えるのやら……」
とヨハンは肩を竦めるのであった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
再現性東京の世界の大事件……中々に酷い状況の中、皆様参加頂きありがとうございました!
今回の様な状況が再現性東京の至る所で発生している様ですので、この先も皆様のお力が必要になると思います。
一般人達はその力がありませんので、どうぞ宜しくお願いします……!
GMコメント
皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
再現性東京……かなり大変な事にはなっている様ですが、住まう人々はそれを信じない事で平穏を保とうとしている様ですね。
●成功条件
夜妖憑きから一般人を守る事になります。
可能であれば夜妖憑きになってしまった彼を救うことも御願いします。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●夜妖<ヨル>
都市伝説やモンスターの総称。
科学文明の中に生きる再現性東京の住民達にとって存在してはいけないファンタジー生物。
関わりたくないものです。
完全な人型で無い旅人や種族は再現性東京『希望ヶ浜地区』では恐れられる程度に、この地区では『非日常』は許容されません。(ただし、非日常を認めないため変わったファッションだなと思われる程度に済みます)
●周りの状況
再現性東京の都心から少し離れた小都市が舞台となります。
町は竜種達の襲撃により、ビルなどは倒壊、道路のアスファルトは割れて瓦礫だらけ……と結構悲惨な状態です。
時間は幸い深夜ですし、この様な町の状態なので外出している人もほぼいません。
なので、今回の夜妖憑きの青年と、彼等の仲間達以外は居ませんので、ご安心下さい。
勿論足元は瓦礫が散乱しているので、足場は悪めです。夜なので躓いたりする可能性はゼロとは言えませんので、灯り等の確保はお忘れ無く。
●討伐目標
夜妖憑きの青年
一体だけではありますが、夜妖が取り憑いてしまった青年です。
とても素早く、また鋭い爪で切り裂く攻撃を繰り返してきます。
彼が集中的に狙うのは、彼等の仲間である一般人の方々になりますので、彼を足止めしないと容易に動く事を可能になってしまいます。
又、常に自己回復の能力が発動しており、一度倒れてもゾンビが如く時間が経過すれば復活する事がありますので、ご注意下さい。
尚、夜妖の取り憑きを解除するには、不殺状態で倒す事が必須です。
夜妖によって召喚された闇狼
夜妖の能力によって生成された、実態のない闇の狼達です。
彼らは理性なく、見境無く、見かけた人を喰らい尽くそうとしてきます。
ただただ単純に攻撃するしか能力はありませんが……彼らに一般人の方々が見つかれば、また危険な羽目になるでしょうから、ご注意下さい。
それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。
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