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シナリオ詳細

<異世界プリンの恨み>俺のプリン食っただろ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●俺のプリン食っただろ!!
「俺のプリン食っただろ!!!」
 タイトル、小タイトル、台詞の三つを使ってまで叫ぶこの男こそ今回の依頼人ベーナス・ゲーヤ氏。
 あちこちの貴族からあいつスゲーヤベーなっていう低い語彙力で語られる彼の心からの叫びを、どうか聞いて欲しい。
「あれはアラモード伯爵のパーティで出されたきわめて上品かつきわめて美味なディッモールトプリンなのだ! あれを一つだけ特別にいただいて! 冷蔵庫にしまっておいたのに……おまえ……おまえおまえおまえー!」
「別にプリンくらい買ってくればいいじゃないですの」
 ソファに足を組んで座る女貴族カサドラ。羽根の付いた扇子をおつきの者にあおがせて優雅にくつろいでいた。
「よくない! 今食べたかったんだ! 俺が! 忌々しい貴族会合で暑苦しい顔に囲まれ何時間も地獄に耐え抜いたご褒美としてとっておいたのだ! 大体あれと同じプリンなんてそうそう手にはいらんのだぞ! 分かってんのかそこんところォ! アァ!?」
 途中から貴族口調が壊れ始めたベーナス氏。
 だが周囲の貴族たちはまるで意に介さず自分の世界に浸っていた。
 ここは幻想王都にある会員制サロン。
 あちこちから貴族がやってきては上品な時間を過ごす場である。
 ただくつろぐだけの者もあれば、互いの学術について知識を買わす者もあり、美術や博物の拠点としても使われる非常に重要な場であった。
 その冷蔵庫に、どうやら例のプリンはしまわれていたらしい。
 両手を翳すベーナス氏。
「OKわかった。あんたがその気ならこっちにも考えがあるぜ」
「……なんですって」
 日常会話からすぐに剣呑な言葉で殴り合う。幻想貴族あるあるだが……だからこそ周囲は見逃さない。
 争いを避ける者。争いを利用する者。そのおこぼれを広う者。
 サロンという名の戦場に緊張が走る。
 ベーナス氏は手を高く掲げ、びしりとカサドラ氏を指さして、両目を大きく見開いた。
「これからきっちり一週間後、お前の秘蔵プリンが何者かに奪われるであろう!」
 あくまで自分でやるとは言わない。
 これもまた、幻想貴族あるあるである。

●というわけだ!
「というわけだ!!」
 小タイトルとステレオで叫ぶベーナス氏。
 彼の邸宅に招かれここまでの説明を聞いたイレギュラーズたちは、『えっなに自分たち今から盗みをやらされるの?』という顔をしていた。
 両手を翳しどうどうとやるベーナス氏。
「OK心配するなレギー(イレギュラーズの愛称)。このことは俺の名にかけて必ずもみ消す。悪名がつくことはない。俺にも、そして当然この場にいる全員にもだ」
 ベーナス氏は立ち上がると、手を組んで部屋を歩き始めた。
「カサドラの邸宅にはかの異世界プリンが秘蔵されているという噂だ。
 特別な冷蔵庫の中に、特別な鍵をかけて、特別にしまわれている」
 ひとつひとつジェスチャーをして、ふくませるように言う。
 特に聞くべきは『冷蔵庫』と『鍵』だ。
「まず鍵だが……おっとなんという偶然だろうか、ここにある鍵とまったく同じ形をしているらしい!」
 銀色の小箱から取り出した樹脂製の鍵を翳して、それをイレギュラーズの一人に黙って持たせた。
 持たせたというか、偶然手からこぼれ落ちた結果偶然イレギュラーズがキャッチしたみたいな渡し方であった。
「だが鍵は一つだ。上等なピッキング能力でもない限りは、そいつが必要になるだろう。
 ――だが油断はするな!」
 バッと振り返り、両手を突き出すように翳す。
「鍵があるだけで手に入るならもうとっくに手下を放って手に入れている。
 そうでないということは? それだけ警備が厳重で、なおかつ騙すのに相当なテクが必要だということだ。
 あいにく俺が持っているのは武力と政治力だ。他人からものを奪うのは専門じゃない。
 うまくやってくれ。もしつかまっても、くれぐれも俺の差し金だと言わないように。
 プリンを手に入れたら速やかに俺の所に持ってきてくれ。
 以上だ。期待してるぜ」

GMコメント

 異世界プリンが引き起こす悲劇がまたひとつ。
 最近流行ってんな!

【オーダー】
●成功条件:カサドラ氏の秘蔵している異世界プリンを手に入れる

 メタ情報ですが、一人がなにかしらうまく立ち回ったとしても阻まれる程度には警備が厳重です。できるかぎり参加メンバー全員の協力プレーを仕掛けてください。
 多くが気を抜いていたり齟齬が大きかったりすると作戦(依頼)が失敗してしまうかもしれません。
 具体的にどこを注意すべきかを先に解説していきましょう。

・ミスタートキオカ
 カサドラに仕える執事です。
 感情探査やエネミースキャンをもっており、自分に敵対していたりよこしまな感情を持っている人間を見分けるすべに長けています。
 彼と出会ってしまったらまあごまかしは通用しないので、どうにかして避けるかどうにかして引きつけるかのどちらか――ないしはその両方が必要になります。

・魔術強化構造壁
 カサドラは他貴族の隙をつくのが得意なタイプの貴族です。
 そのため隙を見せることを恐れ、屋敷の壁の多くは透過や透視を阻害する作りになっています。
 もし内部に侵入するならドアから入るほか無いでしょう。
 ドアは表と裏の二つ。
 どちらにも常時見張りがついています。

・カサドラ
 プリンが奪われると知っているのでかなり警戒しています。
 別にプリンくらいよくない? と思うかもですがめっちゃ美味しいプリンである上に、幻想貴族が予告された上にみすみすなにかを奪われたと知られればそれが巨大な隙になります。
 なんとしてでも奪われないように立ち回るでしょう。
 嘘や詐称は、よほど上手でない限り見破られてしまうでしょう。

 一発勝負の作戦を立てるよりは、二重三重に作戦を用意しておくことをお勧めします。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • <異世界プリンの恨み>俺のプリン食っただろ!完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年08月01日 21時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ディエ=ディディエル=カルペ(p3p000162)
夢は現に
エト・ケトラ(p3p000814)
守護者の盾
イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275)
世界の広さを識る者
河津 下呂左衛門(p3p001569)
武者ガエル
ノワ・リェーヴル(p3p001798)
盗兎
原田・戟(p3p001994)
祈りの拳
アベル(p3p003719)
未来偏差
ロク(p3p005176)
クソ犬

リプレイ

●怪盗はバーにいる
 オレンジ色のランプに照らされたバーカウンター。
 ブランデーグラスにつたう露。
 『世界の広さを識る者』イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275)は爪の先でグラスを叩くと、まだわずかに揺れる水面を見下ろした。
「人の物を盗むのはよくない」
 揺れが収まり、彼の鋭い目が映る。
「プリンはプリンに過ぎない」
 グラスを持ち上げ、口をつける。
 喉を伝う刺激ととっくりとした陶酔。
「つまりこれは、不条理で滑稽な話というわけだ」
 だから、気に入った。
 イシュトカは席を立ち、指でコインを弾いた。
 硬化がバーテーブルの上で回る。
「今回……私は下準備に徹することにしよう。決行の日には駆けつけるが……場合によっては『できない』かもしれない。成果を楽しみにしておいてくれ」
 ベルの音と共に扉を開き、バーの外へと出て行くイシュトカ。
 残されたのは七人。
 それぞれバーカウンターに横並ぶ。
「食べ物の恨みはおそろしいものだな。まったく」
 『夢は現に』ディエ=ディディエル=カルペ(p3p000162)はグラスにのったチェリーをつまむと、舌の上にのせた。
 とても短い静寂。
 やがてディエは席を立ち、コインをテーブルへと滑らせる。
「依頼人がそう望むのなら、ボクは手を貸そう。ボクはそういう存在だし、な」
 遠ざかる足音と扉の開く音。
 残る六人のうち、はじめに口を開いたのは『パラディススの魔女』エト・ケトラ(p3p000814)だった。
「絶対的な権力は絶対的に腐敗する……とは異界の格言の様だけれど、言い得て妙ね」
 赤い色のカクテルが揺れる。
 グラスを空にして、僅かに残った滴がグラスの表面をすべってゆく。
 ゆがむガラス鏡面にエトの赤茶けた髪が映った。
「名誉とプリンの為に争うなんて愚かな事、けれど」
 席を立ち、代金をそっとグラスの横に置くエト。
「罪に問われず屋敷を荒す事が出来るのは魅力的ね?」
 小さく手を振ってバーを出て行く。
 残るは五人。
 されど静寂が場を包み、『祈りの拳』原田・戟(p3p001994)はただニチャリと笑って腕を組むのみ。
 『破片作り』アベル(p3p003719)に至っては満たされたグラスを前にガスマスクを外す様子すら見せない。
 『麗しの黒兎』ノワ・リェーヴル(p3p001798)はトランプカードを扇状に開いてはルールの分からない一人ゲームを楽しんでいる様子だ。
 和笠を被った『武者ガエル』河津 下呂左衛門(p3p001569)が、笠の縁を深く引き下げた。
「やれやれ。権力者同士の意地の張り合いとははた迷惑な。食い物の恨みは恐ろしいでござるな」
 そうとだけ言って、コインをピンと指で弾く。空になった湯飲みに入り、からからと音を立てる。
 席をたち、『では手はず通りに』と呟くと竹串を加えてバーの外へと出て行った。
 再びの静寂。
 沈黙のままやや顎をあげる戟。
 いつのまにか二人に増えているアベル。
 ドミノ倒しをしたあとなんでか逆向きに立ち上がっていくさまを楽しむリェーヴル。
 三人(?)は三人とも、どこか非憎げににやりと笑った後、同時に立ち上がってバーカウンターに背を向けた。
 開く扉、閉じる扉。
 静寂の中でまだ回っている最初のコイン。
 を、手でべしんと止めて。
 『脳内お花畑犬』ロク(p3p005176)は振り返った。
「プリン!? プリン、かっこいいよね! 首と脚がやたら長い黄色の馬! あっ、それキリン? プリンって何! キリンの亜種!? キリンどこーー!? キリーン!」
 ロクはわーいといってキリンの置物を咥えると、そのままダッシュで店の外に飛び出した。
 それまで黙っていた店主がダッシュで追いかけた。

●ローレットエイト
 異世界プリン騒ぎにちいさく揺れる幻想の町。それまさにプリンのゆらめきのごとく。
 そんな中、即席で組まれた八人のプリン強盗はある夜静かに動き出した。
 向かうは幻想貴族カサドラ邸。
 ……と、その前に。
 イシュトカの述べた下準備について触れておかねばならない。
「ごきげんよう。私はこういう者だ」
 ある日ある高級カフェの一角。突如向かいのソファに座ったイシュトカに護衛が銃へ手をかけた途端、彼は相手の銃よりも早く自分の名刺を差し出していた。
 この世界、名刺ひとつで人が殺せることもある。
 充分に警戒して護衛がとった名刺にはイシュトカの身分が書かれていた。
 ローレットギルド構成員でも、イレギュラーズでもなく、芸術家としての身分である。
 何が目的だと問いただすべく『な』の部分まで述べた護衛に指を立てると、イシュトカはややゆっくりと、そしてほんのわずかにウィンクをして言った。
「イラド遺画のふしぎな持ち主についてご興味は?」
 それまで表情一つ変えずにカプチーノを飲んでいた相手の男……幻想貴族のひとりがぴくりと眉を動かした。
「どこでその話を」
 顔を、テーブルの中央よりやや自分側まで寄せるイシュトカ。
「偶然、私も興味のある話がある。『交換』というのは、どうだろうか?」
 そうしてやっと、貴族の男はカプチーノのカップをテーブルに置き、端へ寄せた。かわりに、金色の懐中時計を中央に置く。
「ただの狼藉者ではなさそうだ。そのソファに30分座る権利をやろう」
「損はさせない。お互いに」

「そうして手に入れた情報がコレというわけですよ」
 手紙の写しを翳すアベル。
 下呂左衛門が目を細めて覗き込むと、カサドラ氏のコレクションに数えられるとある宝石を盗むという犯行予告状であることがわかった。もっといえば、その写し。さらに言えば、カサドラ氏にこの予告状は渡っているという。
「ふうむ。盗むのはプリンのはず。しかし宝石を盗む予告を出す……」
「つまりは、ブラフ」
「拙者らはそれに乗じ、真実みを持たせればよいわけでござるな」
「イシュトカは貴族に引き留められてしまったらしくて、こっちの対応ができなくなったみたいだけど……ま、充分に働いてくれました。後は俺たちでカタをつけましょう」
 委細承知と呟いて、下呂左衛門は唐草模様のほっかむりを頭にまいた。
「しかしこうしていると、気分は大義賊『蛙小僧』のようでござるな」
「盗むのはプリンですがね」
「気分は大事でござる」
「たしかに」
 アベルはガスマスクを別のものにかぶり直すと、服装を大胆にチェンジした。

 さて、ここまでが下準備である。
 八人はいかなる手段をもってカサドラ氏の異世界を盗み出すのか。
 仮にカサドラ氏直属執事ミスタートキオカの視点から語るのだとしたら、始まりは一台の馬車の音となるだろう。

 よく舗装された広い道を馬車がゆく。
 馬車はカサドラ邸の表口。それも門の前でとまった。
 しっかりと幻想貴族。郊外アパートのようなみっちりとした間取りでは勿論ない。広い庭と周囲を囲む塀。厳重な門とそれを守る見張り番。
 一日に二つも犯行予告が舞い込んだということで、カサドラ邸の警備はひどく厳重になっていた。
 御者のふりをしたエトはちらりと門番を見やる。門の左右に武装した兵士。
 馬車の荷台には箱に包まれた戟や仲間たち。
 瞬殺するには相手の武装や戦力が整いすぎてる。最低でも数十秒は欲しい。
 となれば1~2人で兵士を無理矢理押さえ込んでの強行突破か……。
 交渉がうまくいけばその限りでは無いのだが。さて。
「こちらにお届け物があってあがったのですが」
 きわめて巧妙に変装したリェーヴルが筒にはいった書類を門番へと差し出した。
 開いてみるとアイスクリームの購入と配達に関する書類であった。
 リェーヴルの用意した偽造文書だが、ただの偽造文書ではない。リェーヴルの手によってカサドラの魔術性蝋印が押された特別製の偽造文書である。
 一時間後にはそれこそアイスクリームのように溶けて消えるとは知らず、門番は『たしかに』と呟いて筒へ書を戻した。
「冷蔵庫のある部屋にお荷物を直接運び込むようにお伺いしたんですが」
「ああ、それなら――」
「なりませんな」
 大きく声を張る者。
 屋敷から出てきた老紳士。執事服を纏ったそれは、噂に聞く鬼執事ミスタートキオカであった。
「今屋敷は厳戒態勢。鼠一匹たりとも入れることまかりなりませぬ」
「いやしかし……」
 弱った様子の兵士に、トキオカが目力をきかせて言った。
「あなたが運べばよろしい」
「うう……」
「それは悪いですよ。我々もお手伝いを」
「なりません」
 がんとして譲らないミスタートキオカ。
 が、リェーヴルやエトたちは内心『しめた』と思っていた。
 兵士たちが重い荷物を運ぶなら、それだけ敵の数は減る。
 中身はアイスクリームではなくただのデカい氷。その一部に至っては戟たちが詰まっている始末である。
 ……あ、そういえば。
「お待ちなさい」
 渋々箱を持ち上げ、屋敷に運び込もうとする門番たち。
 それを、ステッキを翳したミスタートキオカが制止した。
「どうしました」
「やっぱり商人たちに運ばせますか」
「いいえ。どちらにも及びませぬ。感じますぞ、邪な者の気配!」
 ステッキの表面が箱の表面を撫でる。
 次の瞬間。ステッキから刀を抜いて刃を鋭く走らせた。
「仕込み杖――!」
 ばらばらと崩れる箱。
 中に入っていたのは戟である。
 箱ごと切り裂かれなかったのは、エトたちが門番を瞬殺して進めないのと同じ理由。それなりの頑強さが彼にあるからである。
「――!」
 ばれてしまっては仕方ない。
 とばかりに戟の拳がミスタートキオカに迫る。
「ミスター!」
 横から門番がわってはいり、戟のパンチを盾で引き受けた。
 そこへ素早く飛びかかるエトとリェーヴル。
 エトが指先で描く幻想が恐ろしい力となって吹き出し、同時にリェーヴルのハイキックが門番の側頭部に命中する。
 慌てて銃を抜くもう一人の門番。
 と、その瞬間に二つの出来事がおこった。
「ワンワン! ワンワン!」
「まて犬! 逃げるんじゃない! だれかとめてくれ! それはうちの飼い犬なんだ!」
 キリンの置物を加えたロク猛ダッシュで門をくぐり、その後ろを猛ダッシュでディエが駆け抜けた。
「な、なりません! 今屋敷は厳戒態勢――!」
「ミスター、言ってる場合ではありません!」
「とにかくあなたたちは偽承認たちと飼い主を止めなさい。私は――犬を始末します」
 ミスタートキオカが、わーいといって屋敷に飛び込んでいくロクをにらんだ。
 おっと、はじめに『二つのことが起こった』と述べていたが、二つとは今のことをさしているのではない。
 もうひとつあるのだ。
「レディースアンドジェントルメン! さあ皆様、これより怪盗ガスマスクのスーパーイリュージョンをお見せいたしましょう!」
 おかしな格好をしたガスマスク男がそのへんからパクってきたらしい木のはしごでカサドラ氏の塀をえっほえっほ上り始めたのだ。
「俺を捕まえられると思っているのかな? お宝の元までひとっ飛びだ!」
 塀をなんとか乗り越え、庭へと着地するアベル。
「……ええいこんな時に! 全員出なさい! 捕ま――いや、殺しなさい!」
 カサドラ邸が見事に殺気だった。
 あとロクはわーいといいながら窓を突き破って屋敷に突入していた。

「ふう、大変な騒ぎでござるな」
 裏口を守っていた門番が表の騒ぎに身構えている最中。
 下呂左衛門が刀を手に現われた。
「無用な殺生は好まないでござる。命は取らぬゆえ――!」
 咄嗟に剣を抜いた門番と下呂左衛門がぶつかり合う。
「よそ見をしていれば奇襲をしかけたものを……自分の仕事に徹するとは見上げた門番でござるな」
 だが押し通る。とばかりに下呂左衛門は目にも止まらぬ剣術で押し込んでいく。
 壁際まで相手を押し込んだ所で、刀を強く振り上げた。
「覚悟!」
 思わず身構えた門番――の顎に肘を入れる下呂左衛門。
 あうんといって気絶する門番。
「ふう……扉ひとつ開くのに一苦労でござるな」
 下呂左衛門がどんなに不意打ちされたとしても一撃で倒れたりしないのと同じ理由で、門番を強行突破するならそれなりに戦う必要があったようだ。
 扉に手をかけ……る前に門番から鍵を奪い、がちゃりと開く。
「怪盗蛙小僧のおでましでござるよ……っと」

 一方その頃。アベルがなんかとんでもないオーバーキルで木っ端みじんになっていた。
 が、倒したそばからぽふんと溶けるように消えてゆく。
「なんだこれは……偽物か!?」
 気づいた時にはもう遅い。
 本物のアベルは木箱の中から飛び出し、門番を膝蹴りで倒していた。
「分身にばっかり仕事はさせませんよ。さ、ここは任せてお先にどうぞ」
 残る門番を引き受けつつ、リェーヴルたちを屋敷へ引き入れるアベル。
 屋敷に飛び込むと、ロクが死ぬ目にあっていた。
 具体的には絨毯を毛まみれにしようと転がっていたところにミスタートキオカが人を殺す目で飛び込んできたのである。
「お屋敷のガラスに絨毯……よくもやってくれたな犬ウウウウウウ!」
「ギャアアアアアアアアアン!?」
 ころころ転がって斬撃をかわすロク。かわしたそばから高そうな彫像が真っ二つになった。
「まてまてまてまて!」
 ディエがその辺の棒を掴んでミスタートキオカの剣をとめた。
「これは私の飼い犬だ。連れて帰るから殺さないでやってくれ!」
「なんです貴女も殺して差し上げましょうかァ!?」
「だめだぶち切れてる!」
 それでもキレかたが甘いのはディエが感情封印でよこしまな感情を察知さてていないからだ。
 こいつは引き受けるから先に行けとアイコンタクトを送ると、リェーヴルやエトたちはプリンの置かれている冷蔵庫へと走った。

「そこまでですわ」
 彼らが目にしたもの。それは冷蔵庫の前で仁王立ちするカサドラ氏であった。
 彼女の手には異世界プリン。
「宝石泥棒とプリン泥棒が同時に訪れるとは不運なこともあるもの……ですが、こっちは渡しません」
 あーんと口をあけ、プリンを流し込もうとするカサドラ。
 どっちかに行かなきゃいけなかったらまあ安全そうなほうに行くよねという納得の目をしているエトとは裏腹に、リェーヴルは『いいのかな?』と呟いた。
「実はそれが偽物で、毒が仕込まれているのでは?」
「は? まさか。それなら強盗なんてするはずありません」
 とか言いつつちゃっかり食べるのはやめているカサドラ。頭で分かってても恐いもんは恐いという状態である。
「今だ」
「――!」
 戟が素早く詰め寄り。プリンをかすめとった。
 ついでにハラパンしとこうかなって顔をしたので必死にとめた。
 だめだよ貴族にハラパンしたら。知らないうちにお風呂とかで逆さに浮くよ。という具合に。
「御機嫌よう皆さま、そして大変ご愁傷さま! 人の物を盗る時には後先を考える事ね!」
 エトはそう言うと、その辺に思いっきり火を放って逃げ出した。
「つ、捕まえなさい! あと火を消しなさい! トキオカー! トキオカー!」

 さてこうしてイレギュラーズたちはプリンを手に入れたのであった――で終わらないのがこの話。
「待てエエエエエエエエエエエエエエエイ!」
 トンプソン機関銃を乱射しながら馬で追いかけてくるミスタートキオカ。
 馬車のあちこちにしがみついては飛来する弾丸を弾く下呂左衛門やアベルたち。
 あと毛をめっちゃむしられて白い目むいてるロク。ディエがバリアげなものを展開しながら振り返った。
「もっと速度は出せないのか!」
「出せるけど、振り落とされないようにね――!」
 エトは自慢の乗用馬ラムセスに鞭をいれると、速度を速めた。
「なんの!」
 猛烈に追いかけてくるミスタートキオカ。
 馬車をひいてる分の速度差なのか、トキオカの馬が横に並んだ。
「お屋敷の絨毯を毛まみれにした恨み!」
「えっまだそれ?」
「恨み晴らさでおくべ――むぐん!?」
 木の枝に頭をぶつけ、トキオカは馬から転落した。

 さてあらためて。
 イレギュラーズたちは見事プリンを奪取し、カサドラ邸をあとにしたのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!

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