PandoraPartyProject

シナリオ詳細

蟲毒

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●闇の底にて
「やあごきげんよう諸君。
 うん、わかるよ、いきなりだもんねービビるよねーわかる、わかるけどとりあえず聞いて?
 ……うん、いい子達でお兄さん嬉しいな。おじさんってツッコまない辺りも好感度上昇ポイント。
 おっとごめんね、逸れたね。君たちは『なんで僕たち私たちはこんな誰かもわからない赤の他人と同じ穴蔵に放り込まれているんだろう』と疑問に思っていることと察する。そして、『なんでこのお兄さんは僕たち私たちを穴の縁から覗き込んで長々と喋っているんだろう』とも思っているよね? そこは先に教えておくよ、ただの無駄話。
 さてそれじゃあちゃーんと説明するからよーくお聞きよおっとやめて石は投げないで。どうせ届かないからね。
 ところで蠱毒って知ってる?
 うん、僕も旅人くんに聞いて知ったんだけどね、大体の所をざっくり省くと、食い合って生き残った奴は強いと言うことらしいんだ。
 あともう一つ知ってるかな、この世界にはレベルって強さの単位があるんだけれど、僕たち私たちの中には色んな経験を積むとそれが上がる人がいるんだって。
 じゃあさ、じゃあね?
 誰がそういう人かわからないからさ、試しに君たち、殺し合ってくれない?
 ……おっと察しが悪いね、マイナス3点あげちゃおう。
 そんな考えの足らない困ったちゃんの為に説明するとね、要は、だ。要はね?
 蠱毒に倣って君たちが食い合いという殺し合いをして、生き残った人はつまり、レベルというのが上がっているわけだよ。
 ワクワクしないかい?
 胸が踊るようだろ?
 なんならターンも華麗に決めてあげよう。
 まあそういうわけでさ、ちょっと強くなってみてよ。うん、うん……わかるよ、人殺しになんてなりたくないよね、命なんて背負うには重いもんね。でもね、殺さなきゃここから出られない。殺さなきゃ誰かに殺される。
 そういう場所なんだ。
 外へ出るには。鍵を開けるには。他の誰かの命を錠前に差し込まないと。
 理解した?
 おーけー、それじゃあみんな、思い思いに過ごしておくれよ。生き残った人はきっと、外に出られるから、ね?」


 幻想にあるギルド、ローレットの中は、ちょっとした喧騒に包まれていた。
 それはちょっとした事件。
 牢に入れられ、鎖に繋がれていなければならない者達が、忽然と姿を消したという情報が入ったからだ。
 その数は正確なところはまだわからない。が、かなりの数だと予想されている。
「ところがなんだが」
 そんな中、『黒猫の』ショウ(p3n000005)はローレットの隅にイレギュラーズを集めていた。
 そして、周りが見ていないことを確認すると、
「恐らく、そいつらの居場所がつかめた」
 というより、呼ばれたというほうが正しいかな。
 と、呟く様にそう付け加えた彼は、地図を取り出して見せた。
 山や森に囲まれた、近くには何も無い地域の地図だ。その図上に、赤く丸を付けられた地点がある。
「恐らくここに、囚人は『連れ去られた』と思われる。理由は、殺し合いをさせるためだ」
「どういう……というか、なぜわかった?」
「本人からご丁寧に説明書きが来た」
 それは、いいのか色々と。
 そんな疑問の視線を、肩を竦めて応えたショウはため息を一つ。
「まあ、放っておくというわけにもいかない。どうやら首謀者は、囚人達を殺し合わせて強い戦士が出来るか試しているらしい。出来上がったそれらが暴れだすと、また面倒なことになるだろうから、今、手が打てるならそれに越したことはないよ」
 どんな思惑があろうとね。
 と、そう説明して、
「現場は大きな縦穴だ。明かりに不便は無いと思われる。敵は、殺し合いの真っ最中で、生き残っているおよそ10人程と思われる。それを倒してくれ」
「……それ、一人になるまで待ってから倒す、ってのは、アリか?」
 一番てっとり早い方法だろう。
 見殺しにする後味の悪さはあれど、それは有効に思える。
 だが、
「今回のオーダーは生け捕りを希望されている。しかも、敵は度重なる殺し合いでまともな精神状態ではない。なので、気絶させるか正気に戻るまで殴り倒さなければならない」
 つまり、とても面倒臭いということだ。
 それを理解したイレギュラーズの顔は一様に歪む。
「詳しいのは書面に起こしてある。移動しながら確認してくれ。よろしく頼んだよ」

GMコメント

 ユズキです。
 生け捕りするということは手加減するということ、ではないと思ってます。
 死ななきゃいいんですよげっげっげっ。そんな感じです。

●情報精度
 Aです。安心してください。

●依頼達成条件
 10人の敵を生け捕りにする。

●現場
 結構な殺し合いが行われてて血生臭い感じです。
 剣とか槍とか斧とか銃とか落ちてたり突き立っていたりする、半径20mくらいの縦穴戦場です。

●敵・ポイント
 老若男女、色んな感じの10人。
 どんな奴が生き残っているのかは現場に着かないとわかりませんが、全員総じて自分以外の生き物は敵だと認識しています。

 攻撃スキルは特に持っていませんが、使う武器は落ちてるのをその都度拾うのでレンジや特性がころころと変わる相手になってます。

 それではそんな感じで。いつもどおり、やれるだけの最善を尽くしてやりたいようにやりましょう。
 

  • 蟲毒完了
  • GM名ユズキ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年07月31日 21時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)
特異運命座標
亘理 義弘(p3p000398)
義に篤く
フロウ・リバー(p3p000709)
夢に一途な
アイリス・ジギタリス・アストランティア(p3p000892)
幻想乙女は因果交流幻燈を夢見る
宗高・みつき(p3p001078)
不屈の
エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
特異運命座標
リジア(p3p002864)
祈り
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
希望の蒼穹

リプレイ


「その戦い、ちょーっと待ったぁー!」
 叫びながら行く『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)は、大きく掘られた縦穴の縁、固定されたロープから飛び降りた。
 そうして、着地と同時。
 彼女を左右から強襲する敵の姿がある。
 それぞれの手に握られたボロボロの剣は赤黒く、肉を、骨を、命を幾つも奪ってきたある種の風格がある。
 それが、新たにアレクシアを仕留めようと迫った。
「落ち着けと言っても無駄だろうが」
 それを、阻む者がある。
「まあ、待て」
 二人、拳を握った『任侠』亘理 義弘(p3p000398)と、背中に光翼を広げた『生誕の刻天使』リジア(p3p002864)だ。
 振るわれた剣に拳と翼を打ち込み、弾き返してアレクシアより一歩、前へ立つ。
「止められると、良いのですけれども」
 そして、三人より更に後ろ。ロープ伝いに降りてくるイレギュラーズが見るのは、殺し合う八人の男女だ。
 年の頃はバラバラで、まとまりがなく、しかし一様に血走らせた目をギンギンにして、目の前の生き物を殺そうとしている。
 では、とりあえず。
「すぅ……」
 と、大きく息を吸い込んだ『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)は、空気を取り込んで一旦溜め込むと、ほら貝を口に当て、それから一気に吐き出した。
「ぶぉ」
 その独特の抑揚が付いて鳴り響く音は、閉塞的な穴の中では特に反響する。
 殺気立ち、神経を尖らせた囚人達には、ほら貝はかなり刺激的な音だろう。
 だから、一様にそれらはエリザベスを見た。
「えー、皆様」
 エリザベスは一身に受けた視線に頷いて、こほんと一息。
 それから、言う。
「もう殺し合う必要はありません、ええ。お家に帰れるので、ございます。ええ」
 それで収まるとは思っていませんけれど。と、言葉の終わりを待たずに敵は動く。
 先んじて攻撃をしたのは、太い幹の様な矢を装填出来るボウガンを所持した男と、魔力を弾丸として射出する銃を握った女の二人だ。
「危ない……!」
 二発の攻撃が発動する、その一瞬前。『夢に一途な』フロウ・リバー(p3p000709)が、エリザベスの横合いから鎖を一つ伸ばす。
 それは、透き通った氷の鎖だ。フロウが腰に下げたカンテラの光を写しながら、矢を発射直前だった男の腕に絡み付き、狙いを大きく下へ逸らすことに成功する。
 だが、もう一方は間に合わない。
 打ち出された魔弾がエリザベスの肩を貫通し、血を吹き出させる。
「大丈夫、かすり傷でございます」
「そいつぁ良かった」
 傷の具合は、出血の割には軽い。そう報告されれば、回復手として居る『不屈の』宗高・みつき(p3p001078)の行動は変わる。
 手始めに行うのは、自身へ祝福を与えることだ。それは、これからの戦いに備えた一手と言える。
「血生臭ぇ依頼だが、全力を尽くそうぜ」
「そうですね」
 答え、『幻想乙女は因果交流幻燈を夢見る』アイリス・ジギタリス・アストランティア(p3p000892)は一歩前に出る。
 視界にあるのは動き出した戦況で、アレクシアの叫びとエリザベスのほら貝に釣られて攻め寄ってくる囚人達の姿だ。
 ……止めないといけません。
 そう思うアイリスは、手を広げて真上に向ける。何もない空間へと、毒々しい色合いの霧を産み出して彼女は放つ。
 それは、警告に近い示威行為。通常の人なら持ち合わせない技を持っているぞという証だ。
「下手に動けば、命はありません」
 牽制を目当てとしたそれは、
「くっ……これ、は……!」
 悪手っす……!
 と、片手で頭を抑えた『特異運命座標』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)にはそう思えた。
「悪趣味だとは思ってましたが、ここまでとは……」
 レッドの耳には、声なき音が押し寄せている。
 それは、助けを求める囚人達の心の内の声だ。叫ぶように、乞うように、途切れることなく声は言う。
「死にたくない……!」
 死にたくない。殺したくない。殺されたくない、傷つけたくない、生きたい、生きたい帰りたい!
「だから……死ね、死にたくないから死ね、死んでくれ!」
 新たに現れた脅威を前にした囚人達の心は、急速に恐れへと落ちていった。


「やることは変わらねえ」
 甘めに握った拳を構え、義弘は行く。
「殴って、のして、生きて帰らせる」
 敵は10人。だが、当然まとまりはない。
 全員が全員を、敵と見なしているからだ。
「じゃあ、守らないとね……!」
 少し目を離せば、勝手に殺しあってしまうだろう。だから、前へ行く義弘の更に前へ、アレクシアは飛び込む。
 行く先、囚人の睨み合う中心へと、だ。
 そうして、息を吸い込んで叫ぶ。
「さあ、かかってきなさい……私を倒せば、ここから出られるかもしれないよ!」
 ここから出られる。
 その意味を、理性ではなく本能が理解する。だから、
「ーー!」
 殺到する。
 周囲全方向から押し寄せる殺意を、しかしイレギュラーズは良しとしない。
「やれやれ、忙しくなりそうだな」
 言いつつアレクシアのフォローに回るリジアは、一番に飛び出してきた囚人の一人を迎える。
「この戦いも、どこかで見ているのだろうな、依頼人は」
 まあ、いい。
 そう思いながら、リジアは姿勢を低くしながら敵の懐へ潜り込み、掌底の要領で腹部へ一撃。
 その瞬間に起こるのは、
「私はただ、破壊するだけだ」
 接触箇所から広がる蝕みの力だ。
 肌を変色させて行く攻撃を受け、歩みを止めた囚人はそのまま、リジアを睨み付けながら動く。
「ぐっ」
 痛みの声をあげたのは、リジアだ。
 決して軽くない威力のそれを耐えた敵は、手にしたナイフを逆手にして彼女の腕に突き立てていた。
「こいつ……!」
 腕に対して垂直に刺さった刃物をそのまま横へ引き裂けば、リジアの腕へのダメージは深刻になるだろう。
「させねぇ」
 だから、義弘がそれを止めに入った。
 元より連携して数を減らそうと動いていた男だ。リジアの一撃が決まった敵を狙うのも理に叶う。
「っらぁ!」
 呼気の溜めを一瞬。吐き出すと共に拳を振るう。
 上から下へ、打ち下ろして放つ一撃で囚人の顔面を殴り、リジアから弾き飛ばした。
「……死なせねえように倒すってのは、難しいもんだ」
「全くな」
 転がり倒れ、しかし立ち上がろうとする敵を見て、二人は改めて構えを取った。

「障壁全力展開……!」
 残り9人。
 その内、アレクシアが注意を引けたのは5人だ。
 残りは遠距離用の武器を使っていた為、距離を置いて仕留めるべき敵を狙っている。
 完全無視もできないが、勝手に殺し合う危険も無く、漁夫の利を狙う戦闘スタイルならば、無理して攻撃しにいく必要もないだろう。
 そう結論付け、故にイレギュラーズが戦うのはアレクシアに寄る囚人だ。
「未知とは、恐ろしい物ですね」
 サーカスで経験したものとは少し違う精神の異常性。そして、事件を起こした黒幕の真意。
 解らない物は危険であり、怖い物だ。
「だからといって、躊躇するとこちらが危ないというのは解っています」
 解っているならそう動く。フロウは、突貫してくる囚人に狙いをつけて魔術を行使する。
 指を向け、術式を周囲に展開し、弾丸として射出した。
「っ!」
 一発ずつ、中距離を維持しながら、斧を持つ女を攻撃。
 腹を撃ち、足を狙い、肩を穿つ。
 死なせないようにしながらも体力を削っていくのだ。
「殺す……ころ、す……!」
「それでも、来ますか」
 射撃の間隙に、突撃の速度をあげる女は、フロウを自分の間合いに納めに行く。
 何をしても殺してやる。
 そんな気すら感じる気迫で、フロウを睨み付け、そして、
「殺してやる!」
 目の前に、辿りついた。
 近距離、つまりは斧の間合いだ。
 振り上げ、命を絶つ為に振り下ろす。
「させないっす」
 それを、レッドが許さない。
 手にした柄から刀身を実体化させ、横から割り込んだレッドの狙いは、
「なっ!」
 武器の破壊だ。
 斧の柄、刃の下辺りをまずは斬る。
 それにより刃は上に飛び、殺傷力を無くし棒切れと化したそれは空を切る。
「申し訳ないっすけど、動き、とめさせてもらうっす!」
 次いで、レッドは女の足を赤い靴で思いきり踏み、さらに膝へと刀身を突き立てて痛め付ける。
 ……これで、戦意を削れればっ。
 そう思い、
「ーーまだです!」
 しかし、フロウの叫びにレッドが見たのは、諦めない女の鬼のような形相だ。
 落ちてくる斧の刃を手掴み、それをレッドの肩へ深々と突き刺した。
「痛ぅ……! それ、なら!」
 と、レッドは女の腕を掴む。
「フロウさん!」
「ええ、わかっています」
 そうして逃がさない様にした女に向かい手を向け、放つ魔術は非殺傷性の衝撃波だ。
「あがっ」
 顔と意識を弾き飛ばされ、女は力無く膝を折って倒れる。
「まず、一人っす!」
 と、戦果に勇ましくレッドは言う。だが、肩の傷は深い。
「あんまり無茶するんじゃねえぞ」
 だからそれを、みつきが回復を施す。
 刃をゆっくり引き抜きながら掛ける治癒術で、裂かれた肉が繋がっていく。
 ……威力が並じゃないな。
 治しながら傷を見て、みつきは思う。
 囚人達は確かに、レベルが上がっているのだろう、と。
「傷は塞げる。でも、痛みやダメージ全部は消えないから、気を付けろよ」
「ええ、ありがとうございますっすよ」
 こくり。
 頷くレッドに、みつきも意識を切り替える。
 不審な部分はあるけれど、今はまず。
 この依頼を達成させる、と。

 そんな戦いが起きている最中、エリザベスも囚人との相対をこなしていた。
「やはり、この世界でもレベルアップの際には、ファンファーレでも鳴るのでしょうか」
 とりとめもない想像をしつつ、彼女は腕を振るう。
 そうして放つのは魔力で編まれた紐だ。
 アレクシア目掛ける敵へと目掛けて、足を引っ掻ける様に巻き付かせて動きを阻害する。
「ふぎゃ」
「うわっと!」
 スッ転び、取り落とした剣はアレクシアが蹴飛ばした。
 そうする間にも、彼女の元へは凶刃が集まっていて、
「私達が、助ける、から!」
 回避と防御を繰り返しながら、その一人一人に声を掛ける。
 だが、まともな精神状況ならともかく、今の彼らにその声は届かない。
「仕方がありません」
 言うエリザベスは、アレクシアに向かう3人の囚人に背を向け、先に引っ掻けた囚人の前に立つ。
 まだ幼さの残る青年風の囚人だ。
「改めて、しばき倒させてもらいます」
 そんな青年に向け放つのは、吹き飛ばす様にと調整された術式の衝撃だ。
 それが、膝立ちだった男の体に打ち込まれる。
「ぐふ」
 抵抗も無く、飛んでいく先は岩肌の見える壁。そこへ直撃する、瞬間。
「!」
 青年は、足から壁に着地する。そうして屈伸の動きを入れ、落ちていた両刃の剣を拾い、跳ぶ様にエリザベスへ襲いかかる。
「なるほど」
 だが、それをアイリスが遮る。
 横手から差し出した杖の先端が青年を捉え、非殺傷の術式を直接ぶちこんだ。
 行く方向を、空中で無理矢理変えられた事で、青年の体は二回目の吹き飛びを得る。
 転がり、なお立ち上がるそこへ、
「元気過ぎて厄介ですね」
 エリザベスの魔法のロープが、腕を抑える様に巻き付いた。
 そのまま動けない青年へアイリスは再度術式を叩き込み、意識を落とす。
「……ふぅ」
 一息。
 戦闘不能へ追いやった青年を、このまま戦場にはおいておけない。
 やることが多いと息を吐いて、安全地帯まで運ばなければと、思った瞬間。
「……っ」
 横合いから、攻撃が来た。
 後回しにした遠距離武器を持つ囚人達の攻撃だ。
 矢なのか、弾丸なのか、それか別の手段によるものか。
 急襲されたアイリスには判断のしようもないが、解ることはある。それは、
「危なかった……」
 自分が無事だと言うことだ。
 勿論無傷ではない。が、飛来した攻撃の威力は、先に召喚していた死骸の盾が減衰してくれた。
「気が抜けませんね」
 気絶した青年を背に、杖を構え直したアイリスは改めてそう思った。


 アレクシアの体力は、決して少なくない。
 戦いも慣れる程度にはこなしているし、元が病弱とは思えないアクティブさを今回は見せている。
 ただ、しかし。
「う、くっ……」
 しかし、多人数からの集中攻撃を完璧に防ぐ事は不可能だ。
 仲間が三人、四人と囚人を重ねて倒していくまでの間に、何度膝が折れそうになったかわからない。
 それでも立ち続けられたのは、みつきやアイリスからの回復と、絶対にみんな助けるという信念を胸にしたからだ。
「ここで、何を言われたのかは、わからないけど……!」
 殺し合いをするなんて、おかしい。
「だから、お願い……!」
 手を止めて、戦いをやめて!
 と、叫ぶ思いに答えるのは、
「し、ねっ」
 無情な刃だった。
 三人の囚人が同時に突き出す一撃は、彼女の防御障壁を砕いて、晒された体に深く刺さる。
「アレクシア!」
 呼ぶ声は、リジアのもの。
 駆け寄る彼女に先んじて、その左右を走るのは二つの糸。
 エリザベスのマジックロープと、フロウのフロストチェインだ。
 二つはそれぞれ、一人ずつ囚人の体を捕まえると、一本釣りされるように引っ張り出され、
「大人しく寝てろ」
「ごめんなさい、っす!」
 義弘の拳打とレッドの蹴撃が脳天にぶちこまれ、無理矢理に意識を削ぎ落とす。
 そうして残る一人はリジアが、
「離れろ……!」
 翼を輝かせながら光を放ち、その背中を撃ち抜いて怯ませた。
 姿勢を崩し、武器を手放す囚人を追撃するのは、アイリスとエリザベスの術式弾だ。
 発射される二つの衝撃が、敵の体を連打して倒す。
「無事……じゃ、ないな。すまない、回復をーー」
「いい、大丈夫……っ」
 みつきも傷を確かめにアレクシアの傍に立ち声を掛けた。
 それに応えるアレクシアは、弱々しくも浮かべたのは笑みだ。
 そうして突き刺さる剣を自ら引き抜き、自分の内にある力を発動させる。
 パンドラの力だ。
「さぁ、救いに行こう……? まだ、相手は残ってる……!」


 縦穴での山場は、言ってしまえばそこまでだった。
 例え、無理矢理強さを得ようと。例え、あらゆる武器が揃っていようと。
 普段から力を使い、戦い慣れているイレギュラーズとの実力差は無くならないからだ。
 数の優位を取られ、危ない場面はあったけれど。
「もう、いいんっすよ」
 戦いは終わりだ。
 武器を取り落とし、力無い体をレッドの小さな体が抱き締めれば、緊張の糸がプツリと切れた囚人はそのまま眠るように落ちる。
 事の始まりからその終結を。縦穴の縁で傍観していた依頼人も、結果に満足したように笑って背を向け去っていく。
「……何かが蠢いている様な今回の依頼。やはり、すっきりしませんね」
 その影を見上げ見ていたフロウは思う。
 ……靄がかかったような解決ですね、と。
「考えたって仕方ねぇよ」
 その呟きと思考を汲んだ義弘は、そう言いつつも、やはり考えてしまうのは事件の事だ。
 囚人を連れ出す手段、殺し合わせるという異常、それを作り上げた方法は……?
 出ない答えを紛らわす様に、吐き出す煙草の煙が昇っていく。
「財力も結構あるみたいっすしね。コネと、行動力も」
 レッドがひらひらと見せるのは、ぼろぼろに使われながらも装飾の細かい武器の破片。
「つまり、貴族か、それに類する権力者、と?」
「それは、なんとも」
 フロウの問いに、確信もない答えは返せない。わからないことはたくさんあるが、解っていることは、
「囚人の人達、上にあげましょうか」
 まだ仕事は残っている、ということだ。
「……長引くかも、しれねぇな」
 義弘の呟きが指すのは、今か、それとも。

成否

成功

MVP

アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
希望の蒼穹

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様です。
そんな感じで成功です。
またのご参加をお待ちしています。

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