シナリオ詳細
ドラヤデと遊ぶヤデ
オープニング
●つまりアレヤデ
それは、覇竜領域の厳しい生存環境とは縁遠そうなフォルムをしていた。
卵のようにまんまるな形。
よく見れば鋭いが短い脚。
よく見れば鋭い爪が隠されている翼。
よく見れば……いやどう見ても鋭くも怖くもなさそうな直線的な瞳。
きゅ、と「人」型に結ばれた口。
まんまる頭には、よく見ればちっちゃい角が一対。
亜竜種達は、図体だけはほどほどに大きいこの生き物をこう呼ぶ。
『ドラコプテリクス』。竜の翼、と。
●遊ぶヤデ
『覇竜トライアル』――それは簡単に言ってしまえば、覇竜領域での雑用仕事の始まりだ。
『覇竜領域デザストル』は前人未踏とされた危険領域であり、住人である亜竜種達もその危険性を重々承知の上で、イレギュラーズ達との友誼を図るための手立てとして提案したのだろう。
仲良くなれようとも、この領域で生き残れなくては友誼を結ぶことは難しい。それは自身等の戦力強化でもある。
竜種の脅威を目前とするこの覇竜領域で、イレギュラーズと出会った『数奇な運命を宿した』亜竜種達は共に冒険を始めるのである。
「おっっっっっっっっきなトリヤデさんだー!!」
亜竜集落フリアノン近くの高台に時々顔を見せる大型魔物がいるということで、案内されたイレギュラーズ。
大岩の上からのっそりと覗かせたその顔を一目見るなり、ミストは断定した。
これはトリヤデさんである。トリヤデさんじゃなくても、トリヤデさんぽい仲間である。
以前別の戦場で惜しくも討ち果たすこととなったスルトリヤデさんよりもっとでかい。これが覇竜ヤデ。
「ドラコプテリクスだ。竜の翼という意味だが、こいつは竜種でも亜竜でもない」
集落から案内してくれた亜竜種の女は説明する。
曰く、ドラコプテリクス(以降ドラヤデ)は基本的に人間を襲ったり作物を荒らしたりはしない穏やかな性格だという。一方で、動くものにはすぐ興味をもって追いかけたくなってしまう好奇心旺盛なところもあるそうだ。
「よかった……平和なトリヤデさんだ……」
「平和なものか。あの大きさで、あの短足でうっかり走り回ってみろ。畑のひとつふたつは秒で駄目になる」
高台の近くには、亜竜種達が作物を育てている広場もあるのだ。攻撃的な性格でなくとも、ドラヤデはその大きさゆえに存在だけで害をもたらしてしまうこともある。ミストの安堵も一転、新たな問題が生まれていた。
「今日、畑の収穫がある。お前達は収穫の間、あのドラコプテリクスの注意を引き続けてほしい。
骨の折れる仕事になるだろうが、やってくれるか?」
大岩の向こうからこちらを見下ろすドラヤデは、しきりに首をかしげて興味を示している。
畑の収穫が無事に終わるまで、絶対に、一瞬たりとも畑に興味を向けさせてはいけない。
これは好奇心モンスタードラヤデとイレギュラーズの、(あらゆる意味で)負けられない勝負である――!
- ドラヤデと遊ぶヤデ完了
- GM名夏あかね
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年04月17日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
覇竜領域デザストル――亜竜種達との交流を掲げて遣ってきたイレギュラーズを待っていたのはドラコプテリクス(通称:ドラヤデさん)なのであった。
「わっふー! 覇竜領域? ってはじめて来たけど、まさかあんなおっきいトリヤデさん(?)がいるなんて……!」
驚愕に眸を煌めかせたのは『ゴッドバード』ミスト(p3p007442)。途惑いながらもとても巨大なドラヤデさんを眺める『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)。
「ドラコプテリクス……ええと、ドラヤデさん? 亜竜というわけでもなく、当然亜竜種でもなく……なんだか不思議な存在だね?
可愛らしいのは可愛らしいけれど、畑を荒らされると暮らしてる人にとっては一大事だ! 私達で、きちんと気を引いてあげないとね!」
……つまりは『モンスター』の分類と言うことなのだろう。
(╹人╹*)
「しかもなんかちょっとかっこいい! お話は出来なくても、一緒に遊べばお友達だよね?
トリヤデさん、量産型ハイペリオン様、ペリヤデさん、そしてイレギュラーズの僕達と、思いっっきり遊ぼうね!」
\仲間ヤデ/
\(╹V╹)(╹v╹*)(╹∨╹)/
にんまりと微笑んだミストにドラヤデさんは首を傾げる。その姿はフォルムも相まってなんとも可愛らしいのだ。
「ドラヤデさん、ドラヤデさん、きゃっきゃ。エルは、ドラヤデさんと、仲良しに、なりたいです」
小鳥を追従させて『ぺこり』とご挨拶をしたのは『ふゆのこころ』エル・エ・ルーエ(p3p008216)。エルの仕草を真似るように『ぺこり』と腰(?)を曲げたドラヤデさんに『勇往邁進』リディア・T・レオンハート(p3p008325)は声にも鳴らぬ悲鳴を上げた。
「か、可愛い……! 覇竜には、ああいう生き物もいるんですね!」
「はわ~~~~~!! かわいい……」
覇竜領域と言えば『とっても怖い竜が襲ってくる』のイメージで固定されていた『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)。
リュコスが覇竜領域で熟してきた仕事と言えばジャコウワイバーンのお相手やアイスワイヴァーンのお相手である。
「こんなかわいい竜種もいたんだ……大きいけどかわいい……しかもハイペリオンそっくり……Uh……かわいいに決まってる……」
此方を見ても襲いかかってくることのないドラヤデさんは今までの経験と比べれば穏健かつ温和で友好的なモンスターと言えるだろう。
と、言えども、だ。巨大である。『春風と導き』プラハ・ユズハ・ハッセルバッハ(p3p010206)は近付けば見上げるサイズになるドラヤデさんをまじまじと眺めやる。
「うわ、大きい……! 以前どこかでトリヤデさんは見たことありましたけど、確かに似てます。
似ているどころかまんま大きくなったような気がしますが……
大きさゆえに畑を荒らして皆さんに迷惑かけて嫌われるような事態にならないようがんばらないと」
「そうだな。デカいだけなら仲良く遊ぶこともできそうだな!
てか、あのフォルムでこのデカさかよ……! 建物の三四階くらいのタッパはある!
重さは? 自重を支えられるのか? あんな大きさの羽根で飛べるのか? 覇竜領域、マジで分かんねぇなァ!」
からからと笑った『鬼火憑き』ブライアン・ブレイズ(p3p009563)にドラヤデさんが「どうしたヤデ?」と言いたげに首を傾げる。
少し身体を動かせばずしんと地が沈んだ気がするのは屹度気のせいではない。
『良かれと思って』倉庫マン(p3p009901)は深々とドラヤデへとご挨拶を一つ。
「ドラヤデ様……トリヤデ様やハイペリオン様といった方々の噂であれば耳にする事もございましたが、このようなお方も世の中にはいらっしゃったのですね。さて、こんな大きな方が畑に無作為に入られては大事。そうなる前にご満足いただける様努めましょう」
今回のオーダーはドラヤデさんを倒すことではない。畑仕事の最中にこの巨大なドラヤデさんの気を引いて、存分に可愛がって遣ることなのだ。
倉庫マンは人手を呼ばれぬ限りは畑の傍に待機して、万が一の最終防衛に努めると一行を案内した亜竜種、温羅へと告げた。
「ただ待機しているだけなのはなんですので、収穫をお手伝いしましょう。
斯う見えても私、農業には覚えがございますので。特に運搬ともなれば得意分野ですよ」
「なら手伝って貰おうかね」
温羅はイレギュラーズにドラヤデさんを任せると告げて倉庫マンと畑へと向かうのであった。
●
さて、とっても大きなドラヤデさんだ。跳ねれば地面が凹み、木々も軋む勢いである。プラハは「どうやって興味を持って貰いましょうか」とドラヤデさんをまじまじと眺めた。
「一緒に走ったり飛び回るだけでも楽しそうだけど、皆が色々用意してくれてるみたいだよ、ドラコプテrくしゅ……ドラヤデさん!」
――上手く名前を言えなかった為、ドラヤデさんで通してしまえば大丈夫そうだ。ミストが微笑みかければドラヤデさんは首を傾げる。
身体を動かすことを得意としないアレクシアは遊び終わった後に食事をしようと料理の準備に先に取り掛かることにした。
「皆が遊んでいる間に軽食の準備をしちゃうね。遊び終わった後も畑仕事は続くだろうし、最後まで気を抜けないから。
何を作ろうかな……雑食だからなんでもいいだろうけれど、せっかくなら何かしら気に入ってもらえるものを作りたいね」
収穫中の亜竜種たちにドラヤデさんの生態について確認しておくのも悪くない。フリアノンでは食用に適さないくず野菜などもドラヤデさんのお食事に混ぜてしまえば残飯にも気を配った食事を齎せそうである。
「エルは、お料理を、手伝おうと、思います」
「有り難う。エルさんは何を作る?」
「エルがあげるごはんは、ほっかほかの、ピザです」
ドラヤデさんが攻撃を行った際に直ぐに対処できるようにと見張り番である小鳥で様子を確認するエルはついでにお肉も持ってきたのだとバッグから食材を取り出した。
「じゃ、食事班が作業している間に色々とカッ飛んでる存在を見て、秒で論理的思考力を捨て、ノリと勢いに任せて遊ぶ事にする。した。
あのデフォルメの効いたツラぁ見ろよ。ユルいだろ? ここから先にシリアスな展開なんてナイナイ! ハイペリオンさまの魂を掛けたって良いぜ!」
――知らないうちにブライアンに魂を掛けられるハイペリオン様はちょっぴり焦っただろう。
「ドラヤデさん! 良ければこっちに来て、私達と遊びませんか!!」
とびっきりの笑顔を向けるリディアは身振り手振りとテレパスを駆使して懸命にドラヤデの興味を引く。動物疎通を用いて出来れば会話をしたいとリュコスはそろそろと近付いた。
「ぼくはきみと仲良くなりたい……いっしょにあそびたい……ついでにそのもふもふももふらせて……」
『よーし! あそぶぞー!』と意気込んだリュコス。本来の目的は畑仕事のためにモンスターの気を引いておくことだが、最早、目的と手段が逆転した。
首を傾げるドラヤデさんの前でプラハはドレスの裾をつい、と持ち上げ優美に一礼する。言葉が通じないのならば楽しい気持ちで通じ合えば良い。
プラハが用いるのはダンスでのアピール。笑顔で楽しく、ドラヤデにとっては小さな人であるプラハは出来うる限りダイナミックに見えるようにと仲間アピールを繰り返す。くるりくるりと舞うプラハは翼を羽ばたかせるように手を振ってはにんまりと微笑む。
ブライアンは温羅に頼んで楽器を貸して貰っていた。技能が無い素人演奏と彼は言うが、音楽が重なるだけでドラヤデさんの興味は畑からイレギュラーズへ向いて行く。
「ドラヤデさんは足踏み禁止な! 地震かよ!」
「Uhh……すごい……ゆれてる……」
リュコスが大地を気にする素振りを見せれば、ドラヤデさんは首をこてんと傾いだ。プラハは鳥がそうするように両足を揃えてぴょんぴょんと跳ね「こっちについておいで~」と誘導を続ける。
畑や人里と離れるプラハに続きリュコスはぐんと背を伸ばした。ブライアンが考案したフリスビーで遊ぶ準備をするミストとリディアの元にドラヤデさんを連れて行くのだ。
「追いかけっこだー!」
きゃっきゃと笑い走るリュコスに「躍ろう」とでも言いたげにドラヤデさんが翼をばたばたと動かした。お口でつい、とリュコスを掴み上げた様子を見て倉庫マンが些か焦るが――どうやら背中に乗せてくれた様子だ。寓話の世界のようにぎゅうとしがみついたリュコスは大きな身体に捕まってつい耳と尻尾をふさふさと揺らがせてしまったのだった。
●
「全力で楽しみますよ! その方がきっと、ドラヤデさんも楽しいと思いますからね!」
うきうきと準備をするリディアはフリスビーで遊ぶ事が軌道に乗ってからアレクシアとエルの食事組に合流することにしていた。
敵意がないアピールをして漸く少し距離の離れた開けた場所は食事の準備を行うエリアや畑からもある程度の距離を持ち、少しばかりドラヤデさんが暴れても問題はなさそうだ。
「さて! 此処で遊びましょうか!」
「OK、ピカピカに光る怪竜の鱗をフリスビー代わりにしてドラヤデさんを走らせるか。
ドラヤデさんが訓練された犬みてーに鱗を返してくれるか判らん以上、他のメンバーにパスを回していくのが一番楽そうだ。
投げる方向を畑と逆側にすれば距離を稼げるし、なにより俺達は投げるだけでドラヤデさんを走らせるコトが出来るってのが良い! サボれるトコはサボんねーとな!」
からからと笑ったブライアンにミストは「鱗? すっごいきれーだよね!」とぐいと身を乗り出して――
「トリヤデさん達もそう思……あっ、待って待って!! トリヤデさん達まで一緒に鱗を追いかけたら渋滞しちゃう…!?」
「うわ――!?」
ブライアンが鱗を投げた瞬間にトリヤデさんたちも一斉に走り出した。慌てるミスト、そして投げられるとは思っていなかったジャバーウォックの鱗。もしも此処にジャバーウォックが居たならば『そんな風に扱われると思ってなかった、びっくりする』とコメントでも残しそうだ。
「す、凄いことになってます……!」
慌てるプラハの言葉に倉庫マンが畑仕事から顔を上げ、ぎょっとしたようにドラヤデ&トリヤデが追掛ける鱗に目を瞠る。
「……それにしても、あのフリスピーに使用している鱗。
見間違えでなければ、その、物凄く大層なものに見えるのですが良いのでしょうか……? ……いえ、ああして使っている以上は良いのでしょう!!」
ジャバーウォックは泣いている気がする。
「……うん、楽しそうだからいっか。僕の方に飛んできたら良い感じに投げてあげよっと☆」
にんまり笑ったミストにドラヤデさんの背中に乗りっぱなしであったリュコスが「たすけて~~」と声を上げる。フリスビーに夢中になったドラヤデさんから降りられない儘、もふもふ強制刑を執行されるリュコスは幸せなのか哀れなのかどちらとも言えないのであった。
「……そういえばドラヤデさんって飛べるのかなぁ?
普通に飛ぶならともかく、もしトリヤデさんみたいに真っ直ぐドゥッッッて跳び上がったら……ちょっと見てみたいけど、着地の衝撃がかなり大変そうかも」
走るだけでもこの地響きだ。ミストが遠い目をしている様子を確認してからリディアは「ご飯が出来たら呼びますね」と微笑みかけた。
リディアとプラハが向かったのはアレクシアとエルのお料理コーナーだ。
「香辛料を多めにして、引き取った野菜の端材なんかを使って香りの良いお料理にするとドラヤデさんの気が引けるかと思って」
アレクシアが手際よく調理すれば、リディアは「足りないモノはありますか?」と横からサポートを申し出る。
「私も普段はお店で腕を振るっている身――絶品料理、とまでは行かないまでも、多少は心得がございます。新鮮なお肉が必要であれば、狩りもお任せくださいね!」
「リディアさんは何を作る?」
「暖かい温菜――例えばシチューのような煮込み料理! それと折角ですから、異国のメニューも一品ご用意していますよ。
外で元気よく運動した後はやっぱりこれ! 新鮮野菜とハムのサンドイッチです!」
「美味しそう、です。エルはほっかほかの、ピザを温めています」
ドラヤデさんを導く方向の少し先に位置するこの場所でエルは焚き火を起こし、ピザとお肉を焼いて温めていた。手でパタパタと仰げば美味しい香りがドラヤデさんの興味を屹度引くはずだ。
いくらかは畑の肥料にすれども捨てることになる野菜がアレクシアによってドラヤデさんの食事にアレンジされていく様子を眺めながら倉庫マンは「ドラヤデ様もこの様なおもてなしを頂けるとは思って居なかったでしょうね」と温羅へと声を掛ける。
「よく世話をしてくれて有り難いよ。さ、もう一踏ん張りかね」
食事時間中には畑仕事は終えられそうだと告げる亜竜種は倉庫マンにもドラヤデさんの食事補助を頼んだ。
あとは荷を引いて集落に置いてくるだけであるらしい。
温かなピザを皿に盛り付けたエルはサメエナガさんに乗ってから非難めいたサメエナガさんの視線にふと、気付く。
「……サメエナガさん、お家帰ってから、もぐもぐしましょう」
お腹の空いたサメエナガさんに「『くるみ亭』のパンなら少しはありますよ」とプラハは微笑みかける。
「貰いますか?」
サメエナガさんにもこれから一仕事ある。ドラヤデさんにお食事を運んで安全なものだとアピールする重要な仕事だ。
アレクシアが薫らせる香辛料の香りにリディアの作ったシチューの柔らかさが混ざり込む。食事の準備はそろそろ完了だろうか。
ドラヤデさんが動きをぴたりと止め、ミストは「ご飯の時間かな?」とトリヤデさんたちと首を捻る。
「いいにおい……」
ぐうとお腹を鳴らしたリュコスと「何何!?」と言いたげなドラヤデさん&トリヤデさん達ご一考が顔を出す。
さて、そろそろ食事処に向かおう。「ご飯ができたよ」と声を掛けるアレクシアに頷いてからリディアは「食事ですよー!」と身振り手振りでドラヤデさんに合図をしたのだった。
●
簡易的に作ったテーブルに食事を並べる。イレギュラーズも一緒に食べられるようなピザや肉、サンドイッチもあるがメインはドラヤデさんをこの場に食い止めることである。
それでもあれだけ遊んだのだから小腹は減るのだ。ぐうと腹を空かせるリュコスは「いっしょにたべよう?」とドラヤデさんに優しく声を掛けてもふもふとその身体を抱き締める。エルも同じようにドラヤデさんをもふもふとしてからピザを慎重にその口元に運んだ。
「取り合いはだめだよ? 皆仲良く食べないとね!」とトリヤデさんたちに注意を促すミストにドラヤデさんは従わず倉庫マンとブライアンをテーブルから押し出そうとする。
「おっなんだなんだ……はァー?
独り占めしようってか! グイグイと俺を締め出そうとしやがって! このドラヤデさん!
生意気だぜ! オラッ! ちょっとくらい分けろよ! 俺達もうフレンドだろボケ!!」
ブライアンが身を乗り出せばドラヤデさんはアレクシアをちらりと見てから勢いよく食事をかっ込んだ。
リディアの用意した熱々のシチューに火傷でもしたのか一気に仰け反るドラヤデさんは落ち着きなんてものを身に着けてはいない。
「お口にあうといいけれど。あ、でもあんまり一気に食べちゃわないようにね! 落ち着いて食べないと、喉につまらせちゃうかもしれないからね!
ああ、ほら――! ドラヤデさん、まだまだあるから落ち着いて! 暖かいものは少し冷ましてから!」
慌てて世話をするアレクシアにドラヤデさんは、
\美味しいヤデ/
(╹人╹)
と、喜ばしさを身体を揺すって表してくれる。まるで『ハイペリオン』を思わせる可愛らしい外見ではあるが覇竜領域では立派なモンスターだ。
警戒を怠らないように接しては居るが、そうして身を揺らして合図をする様を見ればなんとも可愛らしい。
「それにしても、ドラヤデさんはこうして優しい子でほんと良かったな〜…。スルトリヤデさんとも仲良くなれたらよかったんだけどね……」
ミストが楽しげな様子を見遣り目を細めれば、ドラヤデさんが首を傾いだ。
皿も綺麗に空っぽになる。腹が膨れたのか少しばかり寝転がるような姿勢になったドラヤデさんの代りにリュコスが「ごちそうさまでした」のご挨拶をした。
「それじゃあ、後片付けだけしちゃおっか」
微笑むアレクシアの背後から温羅が「収穫は終わったよ」と声を掛けてくれる。
「食事を与えて遣ったんだね。けど、餌付けしていいのかい?」
「……え、野生動物の餌付けは後が大変?
ん、んー……でもほら、それで"今後も安全に"畑仕事ができると思えば! なんたってドラヤデさんは、これからもこの地で生き続けるんですからね!」
これからも余った食材を分けてやれば良いだけですからと胸を張るリディアに温羅はそれならと鱈腹食べ終わった痕の満足そうなドラヤデさんを見遣る。
これからもくず野菜などを駆使して食事を与えておけば共存を続けていけるだろう。イレギュラーズ達も時折ドラヤデさんの様子を見に来てやればこの愛らしいモンスターの未来は明るいとも言えよう。
「しかし、ドラヤデ様の餌……いやともすればご馳走ともいえる食べ物に踊って騒いで見せ物騒ぎ……これ、ドラヤデ様を巻き込んでの宴会依頼だったでしょうか?」
首を捻った倉庫マンにエルは「でも、とっても楽しい、です」とこくりと頷いてドラヤデさんの抜け羽をぎゅっと握りしめるのであった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れさまでした。シナリオの代筆を担当させていただきました夏です。
この度は弊社クリエイター都合によりお客様には執筆担当変更のご迷惑をおかけして誠に申し訳ございませんでした。
GMコメント
旭吉です。
今回もアフターアクションからの派生シナリオとなっておりますが、以前のシナリオを読んでいなくても全く問題ないです。
覇竜ヤデ。
●目標
ドラコプテリクスの気を引き、収穫を無事終わらせる
●状況
覇竜領域デザストル・亜竜集落フリアノン近くの高台。
大小様々な岩がごろごろする高台で、ドラコプテリクスの気を引き続けてください。
●情報
ドラコプテリクス×1(ドラヤデ表記可)
神翼獣ハイペリオンの口を「人」にして青緑ボディに巨大化(全長10mほど)した姿がベース。
ちっちゃい一対の角が頭にあり、翼には蝙蝠の手がある辺りに爪が隠れてる。
脚の爪も鋭いが短足。
ハイペリオンとの血縁とかはない。
人語は話さないし理解もしないが、動いてるものは追いかけたくなる。ドラヤデって鳴く。
雑食なので何でも食べる。基本的に人間や作物を狙わないが、うっかり巻き込むことが多い。
●NPC
亜竜種の女
名は温羅(ウラ)。
高身長の力持ち。必要なものがあれば可能な範囲で用意しますが、収穫中は収穫に参加。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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