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シナリオ詳細

今日の稼ぎとサイクロプス

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●亜竜種集落の暮らし
 亜竜種――デザストルに住まう人類種の一つ。
 危険極まりない人跡未踏の地に住まう彼らであるが、その生活は、例えば仙人のように超自然的、というわけでも、動物のように野生的というわけでもない。
 あくまで住まう場所が少々特殊なだけで、彼らもまた、人間種の一つであり、相応に文化的な生活を築いている。
 例えば、ここ。集落より少し離れた場所にある、採石場だ。文字通りに石材を産出する場所である。採石された石材は、建築物はもちろん、石像などの芸術品にも使用される。石にはただのまっさらなそれだけではなく、マーブル模様などの入った、いわゆる大理石の様なものも産出され、前述したとおり、様々な用途に使用され、作業者たちの貴重な収入源になっているわけだ。
 亜竜種と言えば些か幻想的な印象を持つが、そこに住まうのは地に足をつけた人々である、とは前述したとおりだ。採石場には多くの体格のいい亜竜種たちが男女問わず働いている。
「おーい、今日のノルマは大体完了したな」
 大柄なリザードマン風の男が言う。言うまでもなく、亜竜種の男で、現場監督を務めている。
「今日はあがりだ、働きすぎると体壊すぞ! 休め休め!」
 ガンガンと、ぼこぼこになったバケツを叩いて音を鳴らす。作業員たちが「はーい」などと声をあげながら、片づけを始めた。
「西の方は大体掘ったな。東の方の新しい坑道はどうなってる?」
「そうっすね、今穴つなげてるとこで。ぼちぼち予定の分だけ道拡張した感じっすかね」
 人間タイプの亜竜種の男が言った。
「じゃあ、明日くらいには採掘に取り掛かれるか。
 中の奴にも伝えとけ、今日はあがりだってな」
「うぃっす」
 男がぴょん、とあちこちに放り出された石を軽々と飛び越えて、鉱山の入り口に向かう。入り口の伝声管のふたを開けて、中の作業員を呼び出そうとした瞬間――ばたばたと中から足音が聞こえる矢、血相を変えた様子の男女が、ツルハシだのバケツだのを抱えて飛び出してきた。
「やべぇ! やっちまった!」
「ああん?」
 開口一番そう告げた、飛び出してきた作業員に、男は声をあげた。
「何したんだよ、まさか崩落か?」
「じゃねぇ! 掘ってたら、奴らの巣につながっちまった――!」
 刹那。
 坑道内から、轟、轟のような声が上がる。うげぇ、と男は声をあげた。
「これ、サイクロプスの声じゃねぇか!
 馬鹿野郎! 一つ目共の巣とつなげちまったのか!?」
「そうだよ! 逃げろ逃げろ! 潰されちまうぞ!」
 作業員がそういうのへ、男は頷いた。足元に転がっていた板を持ち上げて、ガンガンと石ころで叩く。
「緊急! 緊急! 一つ目共に素につながっちまった!
 サイクロプスが来るぞ! サイクロプスが来る!」
 男が板を鳴らしながら飛び出す。作業中だったほかの作業員たちも、片付けも中途半端に、慌てて飛び出した。
 従業員たちが採石場から離れた岩陰に退避するとほぼ同時。行動の入り口を半ば粉砕するように現れたのは、5体の、3mほどの筋骨隆々の一つ目巨人であった。
「あーあ、ありゃ巣を壊されて怒ってるぞ」
 男の言う通り、一つ目巨人たちはひどく憤慨しているようであった。手にした薄汚れた巨大な棍棒をあたりかまわずふりまわし、それが足元に積まれた石材に叩きつけられ、粉々に粉砕されてしまう。
「あー! あの模様の石は高く売れるんだぞ!
 一つ目のアホンダラめ! 弁償しろ!」
 ぎゃあぎゃあとわめく従業員たちを抑えながら、現場監督のリザードマンは、むぅ、と唸った。
「さてどうする? あいつらなんとかしねぇと仕事にならねぇぞ」
「それどころか大損っすよ監督。今日の稼ぎ全部ぶっ壊されちまった。
 今日の稼ぎならまだしも、貯蔵エリアにある石、腹いせにぶっ壊されたら、マジで首くくりモンっすよ」
「しゃぁねぇな、お前ら、サイクロプスと喧嘩してかてっか?」
 現場監督の言葉に、従業員たちは頭を振った。
「冗談っしょ! 俺ら石は掘れても一つ目と戦うなんてとてもじゃねぇ! そんなのプロに任しとけば……」
 その言葉に、ん? と現場監督は唸った。
「お、プロか。そういや、外から来た物好き共が居たな。ローレットっつったか? そこのイレギュラーズだ。
 ちょうど仕事を求めてるって話聞いたし、いっそ話を振ってみるか……」
 よし、と現場監督は決意したように声をあげると、従業員体たちに向って、
「ひとまず、撤退だ、撤退!」
 と、慌てて集落へと逃げかえるのであった――。

●奪還、採石場
「っつーわけで、一つ目共の討伐を頼みてぇ」
 と、ローレットのイレギュラーズであるあなた達に、採石場の現場監督であるという、リザードマン風の亜竜種の男は言った。
 なんでも、坑道拡張工事中に、内部に済むサイクロプスたちの巣につながってしまったそうだ。
 巨人たちは、坑道を自らの身体でぶち壊しながら外に出てきてしまい、いま採石場で暴れまわっているのだそう。
「さっさと追い払ってもらわねぇと、仕事にならねぇし、万が一貯蔵エリアの在庫の石を壊されちまったら、本気で大損だ。
 っつーわけだから、何とか早いとこ、やってもらいてぇ」
 現場監督がそういうのへ、あなた達は頷いた。
 こういった荒事はなれている。覇竜領域の魔物達は、外の魔物達とはまた一味違う、強力な相手であるが、行う事はシンプルである。
「アンタらも、亜竜種の集落まで来れる位だから、相当つえーんだろうけどよ。
 まぁ、それでも気を付けてくれよな? 死人が出たところで仕事なんざしたくねぇしな!」
 ガハハ、と現場監督は笑う。彼なりの激励だろう。
 ありがたく受け取りつつ、あなた達はさっそく、採石場へと向かう事とした――。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 採石場に現れた、五体のサイクロプスを倒しましょう!

●成功条件
 すべてのサイクロプスの撃破

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 亜竜種たちが石材を掘り出す、採石場。ある日、坑道の拡張工事をしていた彼らは、不運にもサイクロプスの巣を掘り当ててしまいます。
 怒ったサイクロプスたちは、坑道を破壊しながら外にやってきてしまいました。彼らは怒りのままに採石場で暴れており、在庫の石材や機材、建物などを破壊しています。このままでは、作業員たちが大損してしまいます……。
 そうなる前に、皆さんはこのサイクロプスたちを撃破し、採石場に平穏を取り戻しましょう!
 作戦決行時刻は昼。周囲は、切り出したばかりの石が大量に置かれています。足元が少々悪く、スムーズに行動するには何らかの工夫が必要かもしれません。また、大きな石材は遮蔽物的に利用することもできます。


●エネミーデータ
 サイクロプス・スタチュー ×5
  石材が豊富に含まれた山などに棲むタイプのサイクロプスで、石像のような硬い石の皮膚が自慢です。
  知能はほぼないようなもので、大体常に怒って何かに当たり散らしています。(BSの怒りが効かない、というわけではないです)。
  馬鹿ですが膂力はすさまじく、身の丈もある石の棍棒をもって、強烈な打撃をくらわせてくるでしょう。
  その一撃は、『ブレイク』を持っていたり、『乱れ』系列を付与するほどに衝撃的な一撃です。
  半面、火力と体力に全振りな彼らは、総じて『遅い』です。気を付けてやれば、翻弄することも可能なはずです。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • 今日の稼ぎとサイクロプス完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年02月09日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
オウェード=ランドマスター(p3p009184)
黒鉄守護

リプレイ

●VS一つ目
 轟轟、轟轟、と唸り声が上がる。空気を振動させるほどのそれは、怒声だ。
 怒りに任せて暴れるのは、石の肌を持った、3mほどの石肌の巨人。ぎょろりとした一つ目の、それはサイクロプス・スタチューと呼ばれる種類の怪物である。
 彼らは、基本的にいつも怒っている。何が原因というわけではないが、常に怒って暴れている。とはいえ、今回は特に、巣が変な所に――亜竜種たちの作った坑道に――つながってしまったという面が大きい。というわけで、一つ目たちは怒声をあげながら、とりあえずその辺にある石に八つ当たり気味に石の棍棒を振り下ろして、片っ端から粉砕して回っていた。
 砕けた石が、あちこちに散乱しているここは、亜竜種たちの営む採石場である。元々雑多に石が置かれていたが、今は一つ目たちが暴れ、滅茶苦茶になっているのが分かる。
「見事にキレて暴れてるって感じっスね」
 『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)は、巨大な切り出した石の影から、怪物たちを見やる。
「……覇竜っつーから竜の相手をするかと思ったっスけど、全部がそうじゃないんスね。
 そらそうか、竜に負けず劣らずの生態を作る奴らがいたって普通だよな」
 覇竜領域は危険地帯だ。そこには竜や亜竜以外の生命体も確かに住んでいる。この危険地帯にすむ生物は、外のそれよりもはるかに強靭で強かなのだろう。
「集落周りの害獣タイジって依頼としてはお約束なんだけれど、出て来るのがサイクロプスとなるとスケールが違うよね。流石デザストル!」
 『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)が笑って言った。一つ目巨人となれば、外ではかなりの脅威の一つとなるだろう。とはいえ、イレギュラーズ達も、長き戦いで研鑽を積んでいる。
「オレ達の力が、デザストルでも通じるか……それを試すにはもってこいのアイテだね!」
 イグナートの言葉通り。自分たちの実力を測る試金石にはちょうどいい相手だ。
「だが、あの程度のサイズで巨人、ってのはなぁ?」
 『喰鋭の拳』郷田 貴道(p3p000401)が肩をすくめてみせた。
「3メートルだろ? ミーと比べて、せいぜい50センチ高い程度じゃないか、巨人ならもうちょっと……なあ??」
 貴道が言う。まぁ、坑道のような場所に住んでいる以上、小ぶりな種のかもしれない。いや、筋骨隆々、皮膚が石のようになっている3mの大男、となれば、充分巨人と言ってもいいほどに怪物的ではあるが、貴道にとっては、確かに少し大きな敵、くらいの印象なのかもしれない。
「だけど、結構ワクワクしてるのは本当だぜ! まるでガキの頃テーマパークに行った時みたいな気分にな!
 イグナートも言ってたが、デザストルってのはスケールが違う! 一つ目が集落付近の害獣感覚で出てくるなら、もっと危ない奴がゴロゴロいるって事だからな! HAHAHA!」
 楽しげに笑う貴道。イグナートも同意する。
「テーマパークというのはイイね。今後も楽しくなりそうだけど、まずは一つ目タイジだ」
 その言葉に、仲間達は頷く。
「さて、じゃあ作戦を確認しようかな?」
 『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)が言う。
「事前に親方に聞いているけれど、西の方に石の貯蔵施設がある。依頼の成功には関係ないけれど、あそこが潰されたら大損害らしい。
 だから、可能な限り、あちらに敵は近寄らせたくないね」
「作業場にも在庫みたいなのがあるんだろ? そっちも守りたいよなぁ」
 『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)が、むむ、と唸りつつ言った。
「可能な限り、その辺を避けて戦いたいよな。依頼自体には影響しないけど、あとの作業員たちの生活を考えるとな」
「同感だね」
 ルーキスが頷く。
「では、敵を引き付けながら戦う方向性か」
 『絶海』ジョージ・キングマン(p3p007332)が言った。
「この辺りなら、既に切り取った後の石が転がっている。多少足場は荒いが、戦えないことはないだろう」
「賛成だ。保護結界もはっておくから、戦闘の余波で壊れるようなことはないよ」
 『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)が頷いた。
「ただ……」
 と、再び一つ目を見やる。相も変わらず、勝手に怒って、勝手に暴れている。あちこちに八つ当たりするように振るわれる、棍棒が、また石の塊を粉砕した。
「……意図的に八つ当たりされたらどうしようもないけどな」
「まぁ、そこは。仕方ないだろうさ」
 ジョージが肩をすくめた。こればかりは、流石に守ろうと思って守り切れるものでもないだろう。最低限、此方もしっかり気を付けている。実際のところ、それだけでも依頼主にとっては、まさに望外の喜びなのだ。
「じゃあ、フウガ、ジョージ、セカイ、この三人で敵を引き付けてくれるかい?」
 イグナートが言うのへ、三人が頷く。
「で、一体ずつを集中砲火と行こうか。弱ってる奴を狙って一体一体、ってのはケンカの基本だな!」
 貴道が笑う。
「では、その作戦で行こうかの」
 『黒鉄守護』オウェード=ランドマスター(p3p009184)が、頷いた。仲間達も、承知した、と頷く。
「サイクロプスか……スラン・ロウの巨人群を思い出すのう……。
 少し暴れすぎじゃな……。
 ハイペリオン様の手を借りずとも依頼成功と行こうかね!」
 オウェードがそういうと、武器を構えた。仲間達も、合わせて武器を構える。
 そして、一気に戦場へと飛び出すと、いざ一つ目に向けて、一気に駆けだしていくのであった――!

●5体のヒトツ目
「まずはアイツをぶっ潰す! FW陣、いけるっスか?」
 葵がサッカーボールを強く蹴りつけた! 緑の風邪を纏い飛ぶ、灰の弾丸(サッカーボール)! それが、一つ目の顔面を蹴りつけた! それが、攻撃の合図、攻撃目標につけるマーカーだ! 風牙が飛び出す!! 固まっている五体の一つ目、その中心に向けて、高らかに口上をあげる!
「さすが覇竜領域。サイクロプスとか、そんなホイホイ出ていいやつじゃねえぞ!
 ま、オレ達もそのくらいで怖気づいたりしないよな!
 任せろ! オレ達イレギュラーズ! みんなの生活、護ります!」
 その名乗りにひきつけられた、一つ目たちが轟轟、吠えた。此方を委縮させるほどの、強烈な雄叫び。一方で、風牙の『結人渡』の技術により、反応速度を伝播された仲間達も、高反応の風牙と同様、一つ目たちをはるかに上回る速度での行動にうつる!
「向こうはさっきのお兄さんが言ってた保管所だね」
 ルーキスが声をあげた。上空を飛ぶファミリアーの視点から覗けば、どの敵が保管所に近いかはすぐに分かった。
「できれば、あっちにひきつけて。お願い!」
 ルーキス言葉に、引き付け役の三人は頷く。
「よし、二匹、引き受ける」
 世界が声をあげた。同時、ジョージもまた、
「こっちも二匹だ!」
 叫び、突撃! 低空を滑る様に滑空しながら、一つ目へと迫る! そのままの勢いで、殴りつけた! バスタースマイトVの一撃、勝利をもたらす正義の拳が、この時サイクロプスの岩のような皮膚に食い込んだ!
「ほう、硬い硬い。だが、確かに色々と『遅い』ようだな!」
 ジョージが飛びずさる。ワンテンポ遅れて、一つ目は棍棒を振り下ろした。地面を抉るように振り下ろされたそれは、保護結界によって大地を傷つけることはない。一つ目は、よけられた怒りも相まってか、さらに、轟轟と雄たけびを上げる。
「ジョージ、手伝うよ!」
 イグナートが、ジョージの下へと飛び込んだ。呪われし腕より放たれる、強烈な拳の一撃。気を練って放たれる『覇竜穿撃(バルムンク)』の一撃が、岩のような一つ目のどてっぱらへと放たれる! 轟! 痛みに一つ目が悲鳴をあげる!
「痛ッ!」
 イグナートが後方へ跳躍。手をふりながら、にやりと笑ってみせる。
「ほんとにカタイみたいだね! ま、でも、岩だのなんだのを砕く訓練は、よくやってきたからダイジョーブ!」
 一方、残る二体を、世界は引き付けるべく奮闘する。
「こっちだ、追い付いてみろ」
 世界が描くように、指先で中空に術式をなぞる。放たれた停滞のそれは、ただでさえ脚の鈍い一つ目たちのそれを、さらに鈍くした。どしん、どしん、と、重い足を引きずる様に動く一つ目が、怒りの雄たけびを上げる。
「そんなにキレてばかりいて、頭の血管が破裂したりしないか?
 まぁ、頭が弱い分、そっちの方は丈夫そうだから、心配はしていないけどな」
 あえて挑発するように、世界が言った。皮肉が理解できる頭かどうかは不明だが、少なくとも嘲笑されていることは分かったらしい。轟、と悔し気に棍棒を振り回す。
「よし……頼むぞ、皆」
 ジョージが声をあげる。果たして四体の一つ目は、ジョージと世界によって引きはがされる。残る一体、風牙が槍で棍棒をいなしながら、後方へ跳躍。
「さて、石のような怪物に、砂嵐の攻撃はきくかな?」
 くすり、と笑いながら、ルーキスは魔典を構える。ぼう、と開かれたページより砂嵐が舞い興り、熱砂のそれが、雨だれがごとく一つ目に襲い掛かる! 強烈な礫が、一つ目の身体を抉った。轟! 一つ目が吠える! 苛立たし気に振るわれた棍棒が、周囲の石を、文字通りに粉みじんに粉砕してみせた。
「ひゃー、こんなのがうろついてるとか、凄いね覇竜」
「ガハハ! ワシの一撃も結構重いぞ!」
 オウェードが飛び掛かる。その手に掲げる、ノルダイン風の片手斧。言葉通りに重い一撃が、砂嵐に翻弄される一つ目の腕を叩いた! がん、と硬いもの同士がぶつかる激しい音が響く。果たしてうちかったのは、オウェードの片手斧だ。左腕を切り落とされた一つ目が、痛みと怒りに吠える! 振り上げた残る右腕。ワンテンポ遅れて振り下ろされた棍棒を、しかしオウェードは飛びずさって回避してみた。
「HAHAHA! 本当に鈍いんだな、ユーは!」
 その大掛かりな隙に、貴道が迫る! 得意のステップで軽やかに懐にもぐりこむや、
「ユーはボクシングは知ってるか? どれだけ鍛えても、脳は鍛えられないんだぜ?」
 にやり、と笑い、貴道は鋭いアッパーを繰り出す! 3mの巨体、その顎に届く、昇竜が如き鋭いアッパー! がぎん、と衝撃に歯をかみ合わせた一つ目、その衝撃は脳を激しく揺らし、巨大な一つ目がぐるり、と上を向く! ごえ、と声をあげて、一つ目が衝撃に耐え切れず意識を飛ばし、あおむけに倒れ伏した。ごしゃ、と頭を石にたたきつけて、動かなくなる。
「ヒューウ、脳筋、とは言うが、ユーはまだまだ鍛え方が足りない様だな!」
「流石貴道、鋭い一撃っスね!」
 葵が歓声をあげる。一方、すぐに残る四体の一つ目を見やりながら、
「オウェード、どいつから狙うっス?」
「ふぅむ、ジョージとイグナートの相手をしている巨人、奴が御しやすいとみた!」
「了解! さっさと倒して、被害を最小限に抑えるぞ!」
 風牙の言葉に、仲間達は頷く。
「そうだね。亜竜種たちの信頼を勝ち取るためにも、頑張ろうじゃないか」
 ルーキスの言葉に、仲間達は頷いた。

●一つ目退治、完遂す
「ハァッ!」
 イグナートが叩き込む鋭い拳が、一つ目の石のような皮膚にひびを入れた。びき、と本物の石にひびが入るようだ。痛みに一つ目が呻き、棍棒を振り下ろす。イグナートはバク宙しつつ、それを回避て見せた。
「はは、まだまだだね?」
「油断はするなよ」
 ジョージが、一つ目に拳を叩きつけた。ぎゃ、と一つ目が呻く。
「モチロンだよ! それに、ミンナも来たみたいだ!」
「家を壊したのは申し訳無かった……が、お前さんらは暴れる相手を間違えたのう……」
 オウェードが突撃、片手斧を振り下ろす! ごっ、と音を立てて、分厚い刃が石の皮膚を切り裂く。
「狙撃シュート……行くっスよ!」
 葵のサッカーボールが、一つ目の顔面に突き刺さった! 強烈な一撃を受けた一つ目が、顔面を抑えながら昏倒。やがて動かなくる。
「ジョージ、そっちにもすぐ行く!」
 風牙が飛び込み、槍を振るった。脚を止められた一つ目を見やり、
「ルーキス!」
 叫ぶ!
「ああ、任せてほしい。
 損害抑えが最優先なんだ、悪いけど加減しないからね」
 再び魔典を開き、呼び出すは言葉紡ぐは呪言の一節。唇より紡がれたそれは、歪曲の力を以て、一つ目の身体を握りつぶすように歪めた。
 ぎっ、と一目が吠える。攻撃に怯んだ一つ目に、風牙が跳ねだすような跳撃をくわえる! 槍が一つ目の胸を貫き、鍛えようのない心の臓を粉砕した! がふ、と悲鳴をあげた一つ目がぶっ倒れる。
「おっと、そっちが終わったら、次はこっちを頼む!」
 世界がぴょん、と飛び跳ねながら、声をあげた。ワンテンポ遅れて、先ほどまで世界がいた場所に、強烈な棍棒の一撃が振り下ろされる。
「追いつけない間抜けとは言え……石片は飛んでくるし、走り続けるのは、俺のキャラじゃないしな」
「了解だ。すぐに一体、引き受ける」
 ジョージが叫び、残る二体のうち一体を、力強く殴りつけた。横合いからの突然の一撃に、一つ目が悲鳴をあげる。すぐに怒りをあらわにすると、ジョージへ向けて棍棒を振り下ろした。ジョージはそれを、受け流しの要領で、腕を滑らせるように受け止めた。ずん、と滑った棍棒が、地面に落着する。
「やれやれ、直撃でなくとも、痛いは痛いんだぞ?」
 ジョージは笑うと、再び殴りつけた。ぎゃ、と一つ目が雄叫びをあげ、貴道が鋭く踏み込んでくる!
「良いパンチだ!」
「どうも」
 ジョージがにぃ、と笑った。貴道も笑って応じると、
「次はミーの番だぜ!」
 鋭いフックをぶち込んだ! 横なぎに振るわれる拳が、一つ目を殴り飛ばす。衝撃に、一つ目がたたらを踏む刹那、ルーキスの呪言が、一つ目を縛り上げた。
「邪魔したかな?」
 ルーキスが微笑む。二人は笑って肩をすくめた。
「終わりよければ、だ」
 ジョージが言うと同時、呪言にて絶命した一つ目が、ずん、と音を立てて大地に横たわっていた。
 一方、最後の一体の棍棒を、世界は跳躍してよけみせた。敵の攻撃は鈍く、世界に追いつくことはなかったが、石礫は弾丸のように迫り、時折世界の身体をかすめる。
「後はお前ひとりだが、素直に頭を冷やして帰るという事は――」
 その問いに、一つ目は棍棒を振り下ろして答えた。世界は鬱陶しそうに目を細めて、それを回避してみせる。
「そうか。どうやら、耳も頭も悪いらしい」
 うんざりするようにそういうのへ、返事をするかのように、鋭いサッカーボールの弾丸が飛び込み、一つ目の腹を抉ってみせる!
「熱狂した厄介ファン(フーリガン)みたいっスね。そういう奴は出禁になるんスよ」
 葵が再度、サッカーボールを蹴り上げる! 弾丸のごとく加速したそれが、再度一つ目の身体に突き刺さった! 硬質化した皮膚が、砕けるように飛び散る。サッカーボールが回転し、抉る様に身体を穿つ!
「よし、トドメだ!」
 風牙が、脚を止めた一つ目の顔面に、槍をつきした。ぎゃあ、と悲鳴をあげた、一つ目が顔面を抑える。一つ目がどたどたと暴れるのへ、イグナートが一気に接敵する。
「ワルイね。運が悪かったと思って、諦めてよ」
 一気に突き出した拳が、その衝撃が、一つ目の身体を駆け巡った。ごふ、と息を吐いて、一つ目が絶命する。そのまま、ずしん、と倒れ伏した。
 イグナートは、ふぅ、と息を吐いて、肩を回す。
「これでゼンブかな?」
「そのようだ」
 世界が頷いた。果たして、後に残ったのは、一つ目たちの亡骸と、危なげない勝利を手にした、イレギュラーズ達の姿だった。
 世界が息を整えて、少し息を吐いた。
「まったく、理性のない奴の相手は疲れる」
「お疲れ様。最後まで引き付けてくれて助かったよ」
 ルーキスの言葉に、世界は頷いた。
「さて、終わったなら、さっさと報告しておきたい所っスね」
 葵が言った。
「まだ坑道は、巣につながってるんスよね。さっさと塞いだ方がいいんじゃないかな」
「そうだなぁ。他にはいないみたいだけど、万が一を考えるとな」
 風牙が頷いた。
「流石にオレ達で塞ぐ……ってわけにはいかないからなぁ」
「それもあるが、念のため被害額も産出してもらった方がいいだろうしな」
 ジョージが頷いた。
「ルーキスの指示もあって、保管所には近寄らせないで済んだが。あちこち、壊れたところはあるだろう」
「だが、被害は最小限に抑えたと思うぜ?」
 貴道の言葉には、仲間達も頷くところだ。被害は最小限に収まった。これは間違いなく、誇ってもいい結果だろう。
「うむ。サイクロプス共も、災難だっただろうが……」
 オウェードが言った。元はと言えば、偶発的な事故による遭遇である。誰が悪いというわけではない。が、一方的に対話も出来ず暴れる相手を、仕方ないからと放置しているわけにはいかないのも実情である。
「そこはしょうがないだろうな」
 貴道が言った。
「ま……難しい話はあとにしようぜ! 依頼は成功した! ミーたちの力も、デザストルで通用する!
 それが分かっただけでも、大収穫だ!」
 その言葉に、仲間達は頷いた。
 かくして、イレギュラーズ達は、この地での仕事を、無事成功裏に収めることができた。
 この体験はきっと、この地でのさらなる戦いへの、確かな自信となっただろう――。

成否

成功

MVP

新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様のご活躍により、サイクロプスたちはすべて排除。
 また、皆さんの気配りによって、被害は最小限に棲んだとの事で、作業者たちは驚きと喜びの声を、皆さんに送ったようです。

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