シナリオ詳細
デロスの塔と偽物の碑文
オープニング
●お宝を『返す』ため
豊かな島が並び、その大半を海が占める国、セイラー航海王国。
終焉獣による世界廃滅の危機を除いては特段大きな危機にさらされてこなかったこの国にも、やはり悪はあり、そして犯罪もあった。
今回紹介するのはそんな『犯罪』の物語であり、彼らによる『悪しき人助け』の物語である。
「我々の出身世界には、はるか古代ギリシャ文明において、デロス島には数々の重要な書物や神殿が集められました。それは泥棒への対策でもありましたが、それ以上に周辺国家(ポリス)群による制圧を逃れるためでもあったのです。
法(ルール)が国家に握られれば、それは文明の隷属を意味します。神殿が国家に握られれば、それは文明の支配を意味するのです。だからこそデロス島には非常に堅牢なセキュリティがしかれました。我々はそうした古代人の思想にあやかり、DELOSを名乗るのです」
そう語ったのは、なんとエレベーターであった。
ミミサキ (p3x009818)が乗る箱形の昇降装置であり、扉のついた面と天井部を覗いて足下までもが透明な板で覆われたそれは、素早く筒状のエレベーターシャフトを上っていく。
5階へと到着したエレベーターは扉を開き、そのことをエレベーターの音声が告げた。
ミミサキはサングラスをかけたままゆっくりと歩き出し、右手に持ったハニーチュロスをかじる。
ふと見れば、バスガイドのような衣装を着た女性が小さな旗を手にしながら、この場所の説明をしていた。
「ご存じデロスは、航海貴族デロス家によって名付けられた島であり団体であり、そしてこの塔の名前なのです。
周辺貴族たちとの軋轢をさけるべく定められた碑文が収められたタワーには毎日のように観光客が訪れ、そしてここ展望台からの長めは周辺諸島で一番だと言われています」
さりげなく指し示した石版には、周辺の島々を権利的に共有する旨が示され、利益の独占や軍事力による占拠を行わないことを固く記していた。
刻まれた名は六つ。どれも有力貴族の家名だ。
観光客はそれを一瞥して『へぇ』と言い、そしてすぐにガラス張りの展望台やお土産屋や、あるいは手近な美女に注意を向ける。
そんな彼らとは対照的に、ミミサキは碑文の前に立ち、そしてもう一度ハニーチュロスをかじった。
「けどこれ……偽物なんスよね」
●お宝返還
ROO内にて発生したクエスト。それは航海王国に存在する没落貴族『甲羅義』家の娘より受けることが出来た。
「デロスに収められている碑文。あれは、偽物なのです。
私達うろこ諸島の貴族連盟七家門は、豊かな資源をもつデロス島周辺の海域を誰かが独占せぬようにルールを定め、碑文をたてました。
しかしそれは、他六家門だけが資源を共有するというルールに書き換えられてしまったのです」
娘はそう語り、はるか海底より見つけ出したという本物の碑文を見せた。
大人が両手に抱えるほど大きな石版であり、これを海底から運び出すのは相当苦労したことだろう。
娘の言うとおり、石版には七つの家名が刻まれている。最後にあるのは彼女の家である『甲羅義』の家名だ。
「『ルールが効力を持つのはデロスの塔にて展示された碑文のみである』という取り決めがある以上、これが本物だと主張しても意味はないでしょう。ですから……」
「石版を持っていって偽物と無理矢理交換しちゃおう、ってことスか」
話を聞いていたミミサキは『そんな簡単な話かねえ』という顔をした。
当然である。そんなことが誰にでもできるなら、今頃ルールなど書き換え放題になっているだろう。世界を救ったイレギュラーズであってもだ。
「はい……お察しの通り、デロスには大量の兵力が集められています。六家門がそれぞれの兵力を集合させ、互いにルールの書き換えがされないよう牽制する意味もあるのでしょう」
正面から剣をふりまわして突入したとて、すぐに殺されて遠い甲羅義島のサクラメントからやり直しになるのがオチだ。片道24時間強のデロス島へトライするには、『圧倒的な兵力に対し、一度も死なずに石版の交換を達成する』という厳しい条件が課せられているのだ。
が、しかし。
「正面から殴り込むだけが手じゃあないッスよ」
騙す成り代わる忍び込む。スリ取る隠れる陽動する。
ダーティーな手を使いまくれば、この困難をすり抜けることも可能だ。
「お願いします。我が家には、あなた方しか……」
祈るように手を合わせ……いや、実際イレギュラーズという存在に祈りを捧げる彼女に、ミミサキたちはぽむんと胸を叩いて見せた。
まかせてくれ。必ずや――と。
![](https://img.rev1.reversion.jp/illust/scenario/scenario_icon/44815/02c29fad5f164d62227212fbb95e02f1.png)
![](https://rev1.reversion.jp/assets/images//scenario/evil.png?1737016811)
![](https://rev1.reversion.jp/assets/images//scenario/request-small.png?1737016811)
- デロスの塔と偽物の碑文完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2022年01月23日 22時05分
- 参加人数6/6人
- 相談8日
- 参加費150RC
参加者 : 6 人
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参加者一覧(6人)
リプレイ
●
手のひらにサイコロを二つのせ、くるくると回転させるようにいじりながら街を歩く。
ここデロス島は観光地でこそあるものの、周囲からのアクセスは悪く定期船もでていない。近隣の島から一日二本しかない船をつかってようやく訪れることのできる僻地でありながら、訪れる観光客は多かった。
『無法』天魔殿ノロウ(p3x002087)は、そんな無限に沸いてくるかのような観光客たちに混じっていた。よほど注目していなければ、彼の不自然な動きを察知することは難しいだろう。
(さてさて、どれを狙ったもんかな……)
ノロウはふんわりと、少し前の記憶を回想する。
デロス島の道ばたに開いたキッチンワゴンの前で二人分のホットドックを買った『音速の配膳係』リアナル(p3x002906)が、すぐそばで手持ち無沙汰にしていたノロウのそばへと歩いてくる。
片方をノロウへ突き出すと、自分はマスタードがえらくかかったホットドックにかじりつく。
「で、私らの役割は陽動だったよな? この辺の警備兵を引きつけて逃げ回るってやつだ」
「カンタンに言ってくれるよなあ。それってつまり、『逃げ切らないけど掴まらない食い逃げ』ってことだろ?」
もし掴まれば、PKビルドなる凶悪な戦闘能力をもったノロウといえどひとたまりも無い。かといってノロウのスキルを駆使して逃げおおせても陽動にならない。
悪事を働くにはつきものの、『勝ちすぎてはいけない』という塩梅はノロウを思わず苦笑させた。
とめておいたバイクに軽くよりかかり、長い髪をそよかぜに揺らすリアナル。
「ノロウがマジになれば気付かれずにひとの財布をスれるだろうし、私が本気だせば警備兵をまけるだろうな」
『本気で手を抜く』というのは、それこそ熟練の人間にしかできないことだ。アバターの身でありながら熟練の技を使えるというのは、ROOの楽しい所でもある。
「逃げる間は手伝ってやる。けどまあ、石版の回収がメインなもんでな。場合によっては死んでもらうぜ?」
天魔殿ノロウは『金のためだ仕方ない』といって肩をすくめ、ホットドックを大口でかじった。
「所で……オレは何を盗めばいい? その辺のヤツの財布とかか?」
「それじゃあ弱いだろ。インパクトが強くて、衛兵が大挙して追いかけてきそうなやつだよ」
という、回想である。
そして今、ノロウは金色の彫像のまえに立っていた。
お土産屋のようだが、客引きのためにクリアケースの中にしまいこまれているデロスの塔を象った純金製の像だ。
「……なるほどなー」
ノロウはサイコロをぽいっと宙になげると、それをキャッチして振りかぶった。
●
作業員に変装した男女が、大きな箱を掴んでエレベーターへと乗り込む。
観光用のそれではなく、大きな重量のものでも釣り上げることのできる専用エレベーターへだ。
エレベーター前で入館証をチェックしていた係員は、どこか暇そうにガムを噛みながら頷き、女性に『おつかれさまです』と心のこもっていない挨拶をした。
そんな係員に頭をさげ、扉を閉じるボタンを押す『カーニバルクリエイター』いりす(p3x009869)。
(ゲームでしか体験したことない潜入系が出来ると聞いて来ちゃいました。
色々やり込み要素……オプションもあるようですし全達成目指したいですね)
流石に優帝フォームでこの作戦に参加するわけにもいかないので、今日のいりすはスチームパンクめいたマスクで固めている。
いつも持ち歩いていたごっついライフルは今回はお留守番させて、懐に隠し持てる程度の小さなシリンジピストルを持ち込んでいた。
「この作戦、うまくいくでしょうか……」
「行ってくれなければ困る」
同じく作業員に変装していた『青き調和』アズハ(p3x009471)は、目深に被っていた帽子をわずかにあげた。
そして、自分達が運んでいる木箱をちらりと見る。
その中には大きな石版が入っており、ついでに言えば『うわキツ』ミミサキ(p3x009818)も入っていた。
蓋が開き、にゅっと上半身をのぞかせるミミサキ。
一緒に石版がちらりと見える。七つの家名が刻まれた碑文が書かれた石盤だ。
「碑文を立てる際に甲羅義家だけ仲間はずれにしたってことか。どういう経緯かは知らないが、姑息なやり方だな」
「ま、始めは七家門すべてがそれなりに高尚な目的を持っていて、六家門は後から腐り始めたのでしょう。人の集まりである以上、腐敗は起こりうるものっス」
ミミサキの知る限り、ルールというのは社会の防腐剤だ。
守らなければ謎の天罰で死んだりするような絶対的なものではないし、時には感情によってゆらぎを見せることもある。だがルールに守られていない場所は必ず感情によって腐敗するし、ルールで全てをカバーすることはできない。
力の届かないアンダーグラウンドや、力そのものを管理する人間達が主にそうだ。
「そういう感覚は……よくわからないな」
アズハは肩をすくめた。ルールをほどほどに守って当たり前の世界に暮らしていると忘れがち……というか、生まれてから死ぬまで一切意識しない者だって多い感覚だ。
「だから、僕たちが必要になるんだよね」
『オオカミ少年』じぇい君(p3x001103)がぽんぽんと自分の腕を叩いて見せた。
「今回は盗みとは真逆のお宝の返却! 正義の少年義賊としては腕がなるよ」
そして大きく忘れがちなこととして、ルールというものは変えることが出来る。
そもそも人が人を管理するための制約であり、であるが故にルールを部分的に邪魔に思う者も少なくない。そうした者はルールの変革を行おうとするし、その力が多方面からかかり続けることで均衡が保たれる。ルールの強度がルールを変えようとする人間たちによって保たれるのだ。そしてその均衡は、根拠を覆すことによって大きく崩れ、人間達の欲求という濁流によって変革されるのだ。
この碑文ひとつすり替えただけでルールが変わるというのは、そういうことだ。
じぇい君は『そんな難しいこと考えてないけどね』と笑い、そしてエレベーターの扉が開く。
箱をかついで移動するアズハたち。
碑文が展示された展望台にはそこそこの観光客が集まり、皆島の風景を眺めてぼうっとしている。
普段見ることのない風景に感動する者もいれば、さほど感情が動かないまでも貴重だからということで眺めている者もいる。
その中の殆どは碑文をちらりと見ただけで通り過ぎ、深く感心を寄せるものはない。自分達の生活が碑文によって守られているなど、考えもしないのだ。それほど浸透しているとも言えるし、それほど彼らが平和だとも言えるだろう。
アズハは内心で、小さく呟いた。
(碑文がすり替わってしまったら、この平和も自覚せざるを得なくなるのかな……)
今自分達が運んでいる碑文が本物であるという根拠は、実はない。
同時に、本物か偽物かは大きな問題ではなく、この場所に設置された碑文が強制的にルールとしての根拠にされてしまうだけなのだ。
(今回は高い勉強代として、次から警備をもっと厳重にしてもらおう)
アズハはいりすたちに合図を送ると、スゥっと息を吸い込んだ。
爆発――のような音がした。
更には銃声のようなものも交じり、ガラスが砕けたり誰かが悲鳴をあげるような、そんな音が耳を割くほどの大音量で鳴り響く。
いかに平和な展望台とてこんな音がすれば誰でも驚き、ミミサキが箱から飛び出すと同時に転がした発煙筒から噴き出した煙が室内に充満していけばパニックだっておこった。
警備員は状況を確かめようとあたりを見回し――そして物陰からずっと狙っていたいりすによって無力化されてしまった。両手でしっかりと構えたシリンジピストルから注射器を発射し、刺さったことで注入された睡眠薬で崩れるように倒れたのだ。
いりすは更に周囲の警備員たちへピストルを撃ち続け、煙が晴れていくのを確認した。
『急いでください』と合図を送るその一方、ミミサキとじぇい君は協力して石版を展示ケースまで運んでいく。
(最初にすり替えたやつ、良くやったなコレを……)
ミミサキはそんなことを思いつつ、しかしタネはなんとなく分かっていた。要するに帽子と鳩のマジックだ。既に展示された状態ですり替えたのではなく、運び込む予定の段階で既にすり替えたのだろう。碑文の内容を明かさないためにシートをかぶせるなどしていたならなおのこと容易だったはずだ。
大変なのはいつも、一度確定したことを変えるときだ。
「じぇい君!」
「まかせて!」
ケースに手を伸ばしたじぇい君は、碑文にかけられていた鍵の解錠にかかった。
かなり複雑な鍵で、一瞬というわけにはいかなかったものの、常人が行うより遥かに素早くロックを解除。石版をすり替え、そしてミミサキを入れていたボックスへと偽物(だと思われる)を入れた。
この場で破壊してしまえばすり替えはもっと容易だったかもしれないが、持ち帰ればそれだけボーナスもあるからだ。
エレベーターが動くのが見える。
おそらく、ここでの騒ぎがすぐに静まらないのを察して警備員を増やしたのだろう。
悠長に同じエレベーターなど使えば袋だたきは必至。
「飛ぶっスよ!」
「え、飛ぶ?」
ミミサキは箱をじぇい君と一緒に持ち上げると、アズハといりすにも担ぐように言ってから走り出した。
何をしたいのかを察したアズハが窓めがけて拳銃を連射。
ひび割れた窓へと突っ込んだ一同は、そのまま塔の外へと飛び出した。
砕け散るガラス、吹き出る煙。宙を舞う四人と箱。
じぇい君は『飛んで!』と叫び。
いりすも『飛んでください!』と叫び。
アズハも『飛んでくれ!』と叫び。
最後にミミサキが『えっ?』と素の声を出した。
「「…………えっ?」」
アズハは慌てた様子で飛行能力を付与する魔法を唱え、四人を飛行状態にした。
が、問題は箱と石版である。これを抱えたまま飛ぶにはあまりに重い。状況をさっした警備員たちが彼らに射撃攻撃を浴びせるであろうことを考えると悠長に運んでいる時間もない。殆ど自由落下の速度で海側へ降下すると、減速方法に想いをはせた。
最悪、石版が壊れるかもな……などと。
少しばかり時を遡る。
「そっちだ、捕まえろ!」
銃撃をかけながら追いかけてくる兵士たちから、天魔殿ノロウは全力で逃走していた。
建物の間の細道へと入り込み、角を曲がろうとした途端に先周りした兵士が銃を向けてくる。
すぐそばにあったビールケースを蹴り上げて銃弾を弾くと、突っ込んでいって兵士を殴り倒した。
そのまま通りを横切ると、とまっていた馬車へとよじ登ってそのまま家屋の屋根へとよじ登る。
素早い動きに兵士たちが足を止める。追いかけない代わりに、屋根を走るノロウめがけて銃を撃ちまくった。
民間人に当たらなそうだからと撃ち放題だ。
「しつこいなー」
金色の像を小脇に抱え、ノロウは苦笑する。
しつこいのは結構だ。作戦がそれだけ上手くいく。
石版をすり替えて、偽物を島の外まで持ち出すには『兵士に捕まらない』という絶対条件が加わるからだ。仲間達が降下するポイントから兵士を引き離しておかなければ、かなり大変なことになるだろう。
「殺した方がラクなんだろうけど……金にならなきゃ殺しても意味ねーもんな」
呟くと、ノロウは屋根を駆け抜け選択物をほすロープを掴み減速しながら別の通りへと落下――して、リアナルの後部シートへとぽすんと跨がった。
「逃がし屋さん、出して」
「配達屋(はこびや)と言え」
愛車マギラニアRのアクセルをひねり急発進したリアナル。その勢いで黄金像を落としそうになったノロウだが、慌ててキャッチし直しつつ片手でリアナルの腰を掴んだ。
「場所にはよるが捕まってろ。ちょっと振り回すぞ」
リアナルは後方から同じくバイクにのった兵士達が三機ほど追いかけてくるのをチラ見すると、姿勢を低くしながら急カーブ。
露天の並ぶ細道へ突入し、慌てて道端へ逃げる人々に『ごめんよ』と呼びかけながら加速した。
ちょっと道中央にせり出した果物屋台がはじけ飛び、キャッチしたリンゴをひと囓りしてから放りすてるリアナル。
先ほどの混乱を、どうやら二機だけは突破したらしい。
「えーっと、何かなかったか……」
リアナルはマギラニアRに備え付けたタッチパネルを操作すると、三ツ菱型のアイコンをタップした。ノロウが何事かと振り返ると、マギラニアR側面のボックスが自動で開き、ぱらぱらと何かを地面にまき散らす。見ただけで分かる。マキビシだ。
「なるほどな」
ノロウが感心したように頷くと同時に、追跡してきたバイク二機がまとめてスリップ、車体から投げ出された兵士たちが近くのホットドック屋台に突っ込んでいく。
「残念だ。あそこの美味かったのに」
リアナルは首を振ってから、翼のアイコンをタップ。そして謝罪の言葉を述べた。
「すまんな」
「ホットドック屋に謝ったのか?」
「いや……お前にだ」
は? と目をぱちくりするノロウが、後部シートごと車体からパージされる。
リアナルのマギラニアRはパージした部分に機械翼を装着し、広げ、そして空へと飛び上がった。
「リ、リアナルーーーーーーーゥ!」
「パーティーメンバーは『二人までなら』死亡しても問題なかったからね」
後で奢るよとリアナルは苦笑し、そして――
急降下していく箱とミミサキたち。そこへ、ドゥっと音をたててリアナルの車体が割り込んだ。
かなりの過積載に耐えるマギラニアRで箱を支え、そのまま海側へと飛んでいく。
逃走用の船が停泊しているポイントまで一直線に進むためだ。
「た、助かったあ」
アズハの飛行付与魔法をかけ直してもらいながら、じぇい君はぽへえっとした顔をした。
箱を掴んだまま船へと着地し、すぐに船の運転席へと立った。
ノロウがかなりの数を引きつけてくれていたからとはいえ、こちらを追ってくる兵士がゼロということはないからだ。というか、展望台からデカい箱を抱えて海側へ飛んでいくヤツが居れば大抵の人間は緊急事態だと察するだろう。
追いつけるか追いつけないかの違いである。
「船を出してください!」
いりすは陸から射撃しようとしてくる兵士たちへと、船においておいたライフルを使って応戦。
アズハも同じく置いておいたアサルトライフルを乱射しながら、ちらりとミミサキのほうをみた。
走り出す船は陸からの射程圏から外れ、追いかけようと出てきたモーターボートは爆発によって沈んでいく。乗り込んだ兵士が海へ逃げたのは確認済みだ。
「そういえば……」
と、リアナルが顔を上げる。
「怪盗団みたいに名乗らなくてよかったのか?」
「ははは、私ら政治犯っスよ?」
ミミサキは肩をすくめ、笑った。
「後世が勝手に名前をつけるっスよ」
実際、彼女たちは『デロスの義賊』と後に呼ばれることとなる。
うろこ諸島に真実を『据え付けた』謎の人物たちとして。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
・偽の石版を壊さずに持ち帰る
・非戦闘員の死者を10人以下に抑える
・非戦闘員の死者を0人に抑える
・戦闘員(島の警備兵など)の死傷者を半数以下に抑える
・味方の死亡者を半数以下に抑える
・鮮やかな盗みを働き、後の世で注目を集める。
以上全てを達成しましたので、報酬にボーナスが加算されました!
GMコメント
●注意事項
この依頼は『悪属性依頼』です。
成功した場合、『練達』における名声がマイナスされます。
又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。
※このシナリオはワルのためのシナリオです
殺人や窃盗、スパイのようなアクションがお楽しみ頂けます。
が、練達国的には別に悪くないのですが、ROO内のプレイから「ワルだな」「やるじゃん」といった良い意味での悪名が高まります
●オーダー
塔の最上部、大型展望台に展示された偽物石版を本物と入れ替えます。
そのためには圧倒的な兵力を変装やスリや鍵開けといった様々な方法で突破したり、外で注意を引いたり視界をくらませたり、場合によっては仲間の命を落としてでも達成する必要があるでしょう。
そしてそのためには、手段は選びません。
また、ミッションの達成度合いに応じてリザルトにボーナスが入ることがあります。
●オプション要素
以下の条件を達成するとリザルトにボーナスがはいることがあります
・偽の石版を壊さずに持ち帰る
・非戦闘員の死者を10人以下に抑える
・非戦闘員の死者を0人に抑える
・戦闘員(島の警備兵など)の死傷者を半数以下に抑える
・味方の死亡者を半数以下に抑える
・鮮やかな盗みを働き、後の世で注目を集める。
●フィールドデータ
クエストはデロス島へと船で訪れたところからスタートします。
島の中には兵があちこちに配置されており、どこかで騒ぎが起きれば周辺の兵力がドッと投入されるでしょう。
逆に言えば、2~3箇所に分かれて騒ぎを起こせば兵力の分散が可能です。(ただし、すぐにやられてしまわないように、かつ注意をひきながら暴れる必要があります)
塔の最上階へはエレベーターを使うほかありません。(クソ重い石版をもってこの高さへ飛行して接近するのは自殺行為だからです)
客用のエレベーターと従業員用エレベーターがあり、従業員用は粗末ですが重量にたえられます。どっちかというとこっちがオススメです。
石版は展望台にガラスケースに入れて設置されております。
皆が見てる前でガラスかち割ってよいしょって入れ替えたらすごく目立つので、ここでも騒ぎをおこして注意をひいておくのがベターでしょう。偽装火災とかオススメです。
入れ替えを達成したら、石版を抱えてさっさと逃げ出しましょう。
――まとめると、この作戦には『外での陽動(要持久戦闘)』『展望台への石版の持ち込み(変装するなど手段は様々)』『展望台で注意をひく(非戦闘手段でも可)』の三つの人員がいるとよいでしょう。
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●ROOとネクストとは
練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、バグによってまるでゲームのような世界『ネクスト』を構築しています。
R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に自分専用の『アバター』を作って活動します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline3
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