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シナリオ詳細

【四季彩の箱庭】淡い思い出

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

・花の園

 四季彩と呼ばれる、世界がある。そこは世界といっても、国があったり、海があったり、広大な土地があったりするわけではない。少し広い庭園と青い空、それから休憩するための場所があるばかりの、箱庭のような場所だ。

「誰も、遊びにきてはくれないの」

 この世界に住んでいるのは、神と天使、それから花の精だけ。人の姿はなく、ただ色とりどりの花で囲まれた空間がそこにはある。

「神様は、お姿を見せてはくれないの。天使も、そう」

 この箱庭を自由に歩き回り、その限られた生を過ごすのは、花から産み落とされた少女のみ。彼女らは花弁のような衣装を身にまとい、鈴のような声で歌い、裸足で踊り続ける。

「あのね。私たちはね、花が咲いている間しか生きられないの。この世界の妖精って、そういうものよ」

 少女たちの命は、短い。限られた季節の、限られたときにのみ咲き誇る。しかしこの箱庭には、その生を見届ける者もいなければ、歌や踊りを楽しんでくれる者もいない。

「寂しいのよ。私たちをね、覚えていてくれるひとなんて、誰もいないのだから」

 箱庭に、少女に寄り添ってくれるものはいない。だから、外の誰かに、手をのばす。

「誰か来て、お願い。寂しいわ」

 少女の姿が、ふわりと風にとける。花びらが散らされたその場所に、またひとつ、命が産み落とされる。

 真っ赤な花弁に包まれた少女。衣装と同じように紅い唇から、小さな言葉が零れ落ちる。

「私が生きている間のことを、どうか、誰か、覚えていて」


・少女たちの姿

「花の精が住む世界に、言ってほしいの」

 境界案内人カトレアが指さすのは一冊の本。表紙には鮮やかな色の花々が描かれている。

「花の精はね、生まれては死んでいくの。だけど、そこで姿かたちをもって生きているのは、あの子たちだけ。他に誰もいないの」

 寂しいんですって。カトレアは、そう唇を震わせた。

「誰かに存在を知られることもなく、ただ朽ちていくだけなの、本当は。だけど、それが耐えられないらしいの」

 カトレアは本の表紙に指を滑らせる。花の縁をなぞって、ゆっくりと微笑む。

「一緒に時間を過ごしてくれるだけでいいわ。一緒に歌って踊ったり、遊んだり、話したり。何でもいいから」

 そうすれば彼女たちは報われる。花びらとなって消えゆくことを、きちんと受け入れることができる。

「この時期に箱庭にいるのは、椿や山茶花の精よ。他にも誰かいるかもしれないけれど」

 あの子たちを、よろしくね。そう言ってカトレアは、本を丁寧に抱きしめた。

NMコメント

 こんにちは。椿叶です。
 お花の妖精がでてくるお話です。季節のお花たちが登場します。

世界観:
 四季彩とよばれる空間です。花で溢れる庭園と休憩スペースがある、小さなところです。庭園にはちょっとした池もあります。
 この箱庭には、花の精と神、それから天使が住んでいます。姿を見せるのは花の精だけです。花の精は花弁が咲いている間だけ生き、花が散るときに命を落とします。

目的:
 花の精と共に時間を過ごすことです。少女たちは誰も姿を現さない箱庭の中で、自分たち以外の誰かに出会うこともなく朽ちて行くことを、とても寂しく思っています。彼女たちと言葉を交わし、踊ったり遊んだりすることで、彼女たちの心の隙間を埋めてあげてください。
 遊ぶのに必要な道具や、ちょっとした食事などは、天使たちがこっそり持ってきてくれます。自由に過ごしてもらえたらと思います。

花の精について:
 花から産み落とされた妖精です。ほとんどが少女のような姿をしており、花弁に似た衣装を身にまとっています。妖精ですが、翅が生えているかどうかは少女が選んだ姿によります。
 少女によって性格は違いますが、寂しがりやであることが多いです。寂しさを表に出す子、出さない子、様々な妖精がいます。箱庭には常に数人はいるので、何人かに出会うことができます。
 この時期には椿や山茶花をはじめとする花の少女がいます。

できる事:
・花の精とおしゃべりをする。
・一緒に踊る、歌う。
・お茶をする。軽く食事をする。

サンプルプレイング:

 翅のある妖精さん、透き通っていて綺麗。あなたは何のお花の……? そうなんだ、山茶花なんだ。
 ほんとに、生きている時間は短いの? そういうものなの? そっか、そうなんだあ……。なんか、寂しいね。私も寂しくなっちゃった。
 うん。あそぼ。寂しいけど、せめて思い出作ろうね。


 登場する花の精について希望があれば、プレイングに記載していただけたらと思います(花の種類、性格、翅の有無など)。記載がなければこちら出会う妖精を選ばせていただきます。花の種類についても、冬に咲くものであれば自由に書いていただいて構いません。
 よろしくお願いします。

  • 【四季彩の箱庭】淡い思い出完了
  • NM名椿叶
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年01月16日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ルシア・ペラフィネ(p3p009277)
沈む夜の祈り
ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム(p3p010212)
凶狼

リプレイ

・香りを連れて

 鮮やかな花々で満ち、木漏れ日にも似た光が降り注ぐ場所。それが『スピリトへの言葉』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)が降り立った所だった。

 花が咲いている間しか生きられない。そんな妖精がいる世界が、ここらしい。生きている自分を知ってもらえない、そして見届けてもらえない。その寂しさに、長命な自分がどこまで寄り添えるかは分からない。それでも、話を聞くくらいしたかった。

 目の前をくるりと回った妖精と、一瞬目が合う。同時に漂った香りは甘く、どこか切なく、気が付いたら声をかけていた。
 彼女の髪や衣装を彩る黄色い花の名を問えば、それはロウバイなのだと教えてくれた。

「いい香りのするお花なの」

 そうはにかむ少女の甘い香りが少し羨ましくて、可愛らしくて、思わず微笑む。この少女と、もっと話したいと思った。

「私はね、別の場所ではあなたと同じ妖精って呼ばれてるのよ」

 話すべきことに悩まないわけではなかったけれど、同じ妖精なのだと思えば、自然と話すことは決まっていた。

「木漏れ日の妖精で、こうやって暖かい日の光も出せるのよ」

 そう翼を光らせると、ロウバイは目を輝かせた。きらきらとしたそれがどこか心地よい。

「そうだわ。せっかくなら、お話しながらこの場所を散歩したいわ」

 少女の首が傾げられる。どうして、と問うようなその仕草に、オデットは微笑んでみせた。

「思い出に残すなら。あなたの好きな場所があるのなら、知りたいから」

 彼女が求めているのは、一時の思い出。誰かの記憶に在り続けること。それならば、自分の心にいつまでも残り続けるような何かをしたかった。特別な何かをすることで、きっと、忘れられないような時間になるはずだから。

「気に入っている場所とそこでの思い出。後はあなたの素敵な香り」

 三つも合わさったら、忘れたくても忘れられないわ。

 オデットの言葉に、少女が頷く。足を踏み出したその場所に甘い香りを残して、彼女は歩き出した。

「ここで、一緒に話そう」

 池のすぐ側にあるベンチ。そこに二人で座ると、少女の香りに水の涼やかさが混ざりこんで、彼女の香りが際立っていくような気がした。

 短い命のかわいいあなた。大丈夫、あなたの香りはどの世界に行っても、私と一緒に連れて行ってあげるから。

 ふと、少女がこちらを向く。そこに浮かんでいた表情に、オデットもまた穏やかな気持ちになった。


・お菓子を囲んで

 閉ざされた空間で何か出来ることがあるわけでもなく、ただ無為に日々を過ごしては、貴重な時間を消費して死んでいく。なんて儚い命なのだろう。その生にわずかでも潤いを与えてやれるのなら、喜んで協力しよう。

 なんて大仰には言ってはみたけれど、実はそんなことは微塵も思っていないのだが。そんな風に生まれてきたんだから、そうなるよとしか言えねぇ。そう『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)はひとつ息を吐く。冬の空気に溶けたそれを眺めて、それから庭園を見回した。

 しかし、まあ。会って話したり遊んだりするだけで相手の望みを叶えられるのなら、叶えてあげない理由もない。暇つぶしも兼ねて、相手をしてあげるとしようか。

「ねえ、そこのあなた、何しようとしてるの」

 寄ってきた椿の妖精に少し待つように伝え、簡易式召喚陣で精霊を召喚する。ふわりと現れた何人もの精霊に、椿は嬉しそうな声を上げた。

「私、こんなにひとがたくさんなの、初めて」
「そうか。精霊たちが、遊んでくれるとのことだ」

 ぱっと少女の顔が輝く。精霊たちに彼女と遊び相手になるように言うと、少女たちは楽しそうに走りだした。山茶花や水仙の妖精と一緒に追いかけっこをはじめたようで、色とりどりの翅や衣装がひらひらと揺れる。

「あなたも一緒にどう」
「俺は運動は苦手だからな。代わりにお茶会でもするかね」

 お茶会? 素敵!

 明るい声が降ってくる中、庭園に机と椅子を並べる。ひょっこり寄ってきた山茶花が手伝ってくれた。
 妖精たちに食事という概念があるかどうかは分からないが、少なくとも食べることは出来るだろう。ならば、持ってきたお菓子を食べさせてあげるとしよう。

「それなあに。綺麗」
「ひとつぼしの菓子折りだ。これを知らないのは人生の一割を損する」
「そんなにおいしいのね」

 ひとつぼしの菓子折りを並べ始めた頃、はしゃぎまわっていた妖精たちが戻ってきた。つまみ食いをしようとしている者とそれを止める者で大騒ぎになり、頭をかきながらそれを止めた。

 淹れたてのお茶と共に、甘味を楽しむ。丁寧に作りこまれたその菓子は、優しく鮮やかな味わいで、ゆっくりと心に染みていく。

「おいしいわあ」
「そうだろう。この甘味は絶品なんだ」

 甘味を味わいながら、世界は少女たちを横目に見る。楽しそうな表情が、少し眩しい。
 こんなことで人助け――いや妖精助けか――ができるなら、悪くはない。そう思った。


・花は歌う

 誰にも覚えられずに消えゆく。何と寂しいことだろう。なんと悲しいことだろう。そう『沈む夜の祈り』ルシア・ペラフィネ(p3p009277)は目を伏せた。

 視界を閉ざしてしまうと、花の香りを強く感じるようだった。優しく甘やかなそれに、ふと、歌声が混ざる。

「こんにちは」

 目を開けると、美しい庭園を背景に立つ少女の白い肌を、黄色い衣装と翅が鮮やかに飾っていた。この甘い香りと色は、蝋梅だろうか。

「こんにちは。私はルシア。貴女の歌声、とても綺麗ね。よかったらもっと聞かせて貰えない?」

 聞けば、少女はやはり蝋梅の妖精だった。くるりくるりと舞う彼女から甘い香りが散り、歌うように言葉が紡がれる。
 歌うことが好き。ゆっくりと交わし始めた会話の中で、朗らかな笑みと共に教えてくれた。

「私もそうなのよ。歌うのも、踊るのも、誰かの事を語り、聞かせることも」

 ふと、蝋梅が立ち止まり、ゆっくりとルシアの目をのぞき込んできた。香りと同じように甘い瞳に、自分の姿が映っている。たじろきたくなるのを抑えてのぞき返すと、少女は表情を綻ばせた。

「他にもお友達はいる? 歌ってくれたら、それに合わせて踊りましょう」

 きっと楽しいと思うの。どうかしら。

 そう尋ねると、少女は頷いた。すると、他の妖精がふわりと舞い降りてきた。全員が全員同じ香りを放っているのに、それぞれの見た目が少しずつ違っていて不思議だった。

 紡がれる歌。軽やかなステップ。浮かぶ微笑み。時折絡む視線。透き通る歌声に身を任せて、ワルツを踊る。どこか夢のような時間に身を落とし込みながら、ルシアは耳を澄ませた。

「あのね」

 いつの間にか、少女たちの姿は散り散りになっていた。そこに残っているのは、最初に声をかけてくれた蝋梅のみだった。

「最後の姿、仲間には見せられなくて」

 楽しい時間はいつまでも続かない。

「私、もう消えるの。貴女に会えてよかった」

 微笑む少女の翅が透けているのが、その存在の曖昧さを象徴しているようだった。すぐにその姿が消えてしまうように思えて、少女の手のひらに向かって、手を伸ばす。

「ありがとう」

 わたしはあなたの助け手。わたしはあなたの語り音。わたしの魂はあなたによりすがり。

「わたしは、あなたを、忘れません」

 繋いだ手から、花弁になって溶けていく。

「おやすみ、なさい」

 さようなら。少女の形をなくした花弁を包み込んで、ルシアは静かに目を閉じた。


・約束

「おお! こんな所にも妖精はいるのだな!」

 棘のついた衣装の少女が、『呑まれない才能』ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム(p3p010212)の声に振り向く。ひとを拒むような深い緑の棘は、アロエだろうか。

「初めまして! ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイムなのだ! わーはっはっは! ヘルちゃんは人畜無害な悪狼さんだから、怖がらなくても大丈夫なのだ!」

 信仰蒐集で話しやすさを演出しながら近寄ると、アロエの少女はそろりと目を逸らした。何かを言いたげなその仕草に、思わずその側に近寄っていた。

 庭園の端に座り込む少女の足には、たくさんの小さな傷がついている。自分の棘で傷つけてしまったのではないか。そんな予感が脳裏をよぎった。

「あたしじゃなくて、もっと明るい子のところに行きなよ」
「なぜなのだ? ヘルちゃんは、君と話したいのだ!」

 にこりと笑うと、彼女はそっと息を吐きだした。その吐息に込められた孤独が、ヘルミーネの胸に届く。

 その孤独を、埋めてあげたい。そう思った。

「ヘルちゃんが君のお友達になるのだ!」

 よろしくと言えば、少女は随分と戸惑って、それからやっと、伸ばした手を握り返してきた。

 友達になった記念と題して、一緒に歌を踊って踊る。こうしていれば悲しい気持ちなんて吹っ飛ぶからと、マスターダンスを駆使して楽しく踊ってみせた。

「アロエちゃんも中々いい歌を歌うのだ! これは妖精界のアイドルも夢じゃないのだ!」

 笑いかけた言葉に、アロエはふと表情を曇らせた。

「あたしなんてすぐ死んじゃうのに」

 はっとして、ヘルミーネは首を振る。
 この世に生を受けた以上、意味のないことなんてない。それこそ、アロエと自分が友達になれたように。だからそんな風に、すぐに終わるからと悲観しないでほしい。

「自分たちの生に疑問を持っても、強く生き抜いてほしいのだ」

 意味があるのか分からなくても、きっと。

「アロエちゃんがその生を全うして、死出の旅路に行くときは、ヘルちゃんが見送りにきてあげるのだ」

 それがこの自分に与えられた役割で、友達としてできることだから。

「ひとりぼっちってやっぱり寂しいのだ。だから、最期位」

 そう。誰かと一緒に居て欲しいものなのだ。

「だから、約束。君とヘルちゃんの約束なのだ」

 小指を絡め合うと、彼女の孤独を少しでも埋められたような気がした。頷くアロエの小さな言葉が、耳に心地よく響いた。


成否

成功

状態異常

なし

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