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シナリオ詳細

超銀河いわしアイドル、エルキュール・カンパニー!

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●1月4日は……いわしの日にしてもいいよなぁ!?
「こんにちは、わたしロク! コヨーテ! おさかな食べるの大好きさ!」
 鰯の蒲焼きが乗ったテーブルをわんこハンドでバァンてやると飛び上がった蒲焼きさんにかじりついた。
 甘辛醤油だれによって炭火でじっくり焼かれた蒲焼きはふんわりとした魚肉と独特のさっぱりとした風味が調和し――。
「いわしをたべるな!」
 ドッという音と共に放たれたアンジュ・サルディーネ (p3p006960)のいわしぱんち。
「はうあっ!?」
 激しい衝撃が脳を揺さぶり、そしてロクは一瞬の中で走馬灯のごとき夢を見た。

●夢落ちが約束されたカオス回
 鰯世紀0091、環境汚染の深刻化した地球から逃れるべく宇宙に幾多のエンジェルいわし型コロニーを建設した人類はそのテクノロジーによってあらたな文明形態を築き上げていた。
 人類が生活するために必要な酸素をなんかしらないけど供給するようになった不思議生物『エンジェルいわし』は一家に一匹ないしは一人一匹の割合で供給され、人々は自分専用のエンジェルいわしに名前をつけ共に暮らすエンジェルいわし社会が恒常化したのである。
 いわしっていう割に常に空中をふわふわ浮かび、そのせいか身体は銀色の産毛で覆われ魚っていうかちょっとふわっとしたぬいぐるみみたいなさわり心地とほんのり良い香りのする生物、エンジェルいわし。彼らがキュウと鳴けば、その愛らしさに心が和む。
 人々にとって肉体的にも精神的にもエンジェルいわしが無くてはならない存在だ。
 だが、そんなエンジェルいわし社会を脅かす存在があった……。

「キョーッキョッキョッキョ! エンジェルいわしは焼いて食うのが一番いいぜェ!」
 異星人いわしイーターである。酸素が無くても別に生きていける上、見た目がリトルグレイぽいせいか美観が人類と違いすぎる彼らはエンジェルいわしを食料としか見ていなかった。
 大量にエンジェルいわしが繁殖したコロニーを狩り場とし、彼らは次々にエンジェルいわしを乱獲。焼いたり蒸したり石狩鍋にして食すという暴挙に出た。
 謎の光線銃でびかびかすることで人類からいわし愛を無くさせる力をもった彼らに人類はなすすべなく、今日もエンジェルいわしを失う恐怖に怯えている。
 そんな未曾有の危機に――超銀河いわしアイドルが立ち上がった!

「「超時空いわしアイドル――『エルキュール・カンパニー』!」」(ここでOPテーマソングが流れます)

 オーシャンブルーのアイドル衣装に身を包んだ『いわしアイドル』アンジュ・サルディーネ (p3p006960)!
 パールシルバーの衣装で舞い踊る『いわしアイドル』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)!
 フォレストグリーンの衣装で歌う『いわしアイドル』フラン・ヴィラネル(p3p006816)!
 レインボーホワイトの衣装でホログラムエフェクトを展開する『いわしアイドル』ジェック・アーロン(p3p004755)!
 ピンクの衣装を巻き付けたバイク! 『いわしアイドル』アルプス・ローダー(p3p000034)!
 犬! 『いわしイーター』ロク(p3p005176)!

 『エルキュール・カンパニー』は宇宙いわし連邦によって対いわしイーター特殊部隊にして人類の希望となるべく結成された六人組のアイドルユニットなのだ!
 彼女たちが歌って踊って立体ホログラム演出でキラキラすることによっていわしイーターによるイーター光線に汚染された人々はいわし愛を取り戻し、そしてアイドルらしくパンチやキックや轢き逃げでいわしイーターをぶちのめすことによっていわしの平和を取り戻す!
「さあ、いくよ皆! いわしの平和を取り戻しに!」
 親指から中指までを立てて横に向ける『E』のサインを出すアンジュに、スティアやフランたちが同じサインで応えた。
 今日も、いわしの未来を守るため――アイドルたちの戦いが始まる!

GMコメント

 このお話は夢オチです。最後はロクさんが「ハッ、夢か!」て言って終わります。
 なので何をやってもいいしどうなってもOKです。後先考えずに好き勝手やってください。
 そしていっそのことキャラをぶっ壊してもいいでしょう。だってロクさんの夢だし。

●超銀河いわしアイドル『エルキュール・カンパニー』
 あなたたちはアイドルです。歌って踊ってなんかすごい演出で人々をキャーキャーいわせます。
 今日もコロニーライブのために宇宙いわし武道館のステージで歌って踊っていましたが、そこへいわしイーターたちの襲撃が起こりました。
 皆さんはライブをそこそこ続けながらもいわしイーターたちをぶちのめすのです。

 あと、夢なので何してもいいです。本当に何してもいいです。核ミサイルも撃ち放題だしビームも魔法も好きなだけアレしてください。

●いわしイーター
 リトルグレイみたいなやつです。彼らを詳しく描写する暇なんて絶対ないので説明もこのくらいでいいでしょう。

 あと多分ですがこの依頼は海洋に名声が入ります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度は夢です。
 夢オチに精度もなにもあったもんじゃありませんね。

  • 超銀河いわしアイドル、エルキュール・カンパニー!完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年01月17日 22時05分
  • 参加人数6/6人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

アルプス・ローダー(p3p000034)
特異運命座標
※参加確定済み※
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
※参加確定済み※
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
※参加確定済み※
ロク(p3p005176)
クソ犬
※参加確定済み※
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
※参加確定済み※
アンジュ・サルディーネ(p3p006960)
世界の合言葉はいわし
※参加確定済み※

リプレイ

●第一話:いわしのうた
 待ちに待った宇宙いわし武道館ライブ当日。楽屋には六人のいわしアイドルが集っていた。
 彼女たちは『E』のサインを出し合うと、一斉にステージへと走って行く。
 満員に詰めかけた観客席。鳴り響くイントロミュージックと光の演出に沸き立つ人々へ、スモークと共に六人は飛び出した。
「皆のハートを一本釣り! 今日も大漁、フォレストグリーン担当フランだよ☆」
 『イワ死兆』フラン・ヴィラネル(p3p006816)は平淡な胸をそらしばんざいポーズで飛び上がる。両膝を後ろに曲げてまで。
 ちなみにこのポーズは胸のサイズがあると顔に影がかかってよくないのでフラン専用ポーズとされていた。
「銀色鮫肌パリピ殺し! ビーチの主役、パールシルバー担当のスティアだよっ」
 鮫型の巨大なぬいぐるみを抱きしめてきゅっと後ろを向く『いわしアイドル』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)。
「キミの心、撃ち抜いちゃうぞ☆ レインボーホワイト担当のジェックだよ♪」
 ばっきゅんポーズでウィンクをする『いわしアイドル』ジェック・アーロン(p3p004755)。
「ドゥルンドゥルン――ドッドッドッドッッド――(エンジン音)」
 ヘッドライトを点灯させハンドルきって振り向く『いわしアイドル』アルプス・ローダー(p3p000034)。
「いわしうめえ」
 お手製鰯ハンバーグを床のお皿に載せてがっつがっつ食らいついている『いわしイーター』ロク(p3p005176)。
「いわし要素だけでキャラ付けして今や全身図が47枚に達したオーシャンブルー担当のアンジュだよ!」
 ぬるぬる作画で投げキスした『超銀河いわしアイドル』アンジュ・サルディーネ(p3p006960)。
 六人は揃って『エルキュール・カンパニー!』と叫ぶと別々のポーズをとった。
「いわしの歌を聞けーっ」
 叫ぶフラン。いわし型マイクを握った彼女の元にエンジェルいわしのセニョリータ幸代が泳いでくる。特技は目潰し。
 セニョリータ幸代通称セニョはマイクにキュッとキスをして、星鰯型のエフェクトが散った。


 アニメ『エルキュール・カンパニー』OPテーマ
 『イワ☆イワ☆死兆ぱ~てぃ~☆』

 突然 いわし食べたいなんて
 キミが言うから あたし 神様にね お願いしたの(なんてー?)

 とっておきの(PPPH)たっぷりの(PPPH)
 死兆をキミに あげるよ(ボクにもちょうだい!)

 いわし 食べないで(FuFu-!)
 いわし 食べちゃうの?(FuFu-!)
 死兆 あげちゃうよ(FuFu-!)
 あたしからの プレゼント(し! ちょ! う!)


 いわ死兆ポーズをとった六人とサイリウムを掲げる観客たち。
 場が一体となった会場を、殻破るかのごとく闖入者が現れた。
 そう、宇宙いわし武道館の天井を破壊し巨大なイワシイーター戦艦が襲来。次々とイワシイーターが現れあのなんかよくわかんない光線を打ちまくったのだ。
「いけない、イワシイーターが!」
「えい」
 スティアがピンチになった時のヒロインみたいな声を出したにも関わらず、アンジュが『核』って行書体フォントでプリントされた赤いボタンをグーで押した。

●第二十八話:世紀末いわし伝説
 世界は核の炎に包まれた。だが人類は……絶滅していなかった!
「「ヒャッハー!」」
 バギーやバイクで荒野をジャンプするモヒカンサメ人類がギザギザの歯を光らせた。
 いわしとエルキュール・カンパニーのCDアルバム(握手券つき)を大量にアタッシュケースに詰めていた男を追い詰めると、マシンガンで射殺する。
「シャーックックック、こんなもん後生大事に残しやがって」
「ケツ拭く紙にもなりゃしねえのによー」
「ヒャッハーいわしだー!」
 もはや教科書に載るくらいのヒャッハーをかますサメ人類たち。
 彼らの中央からゆっくりと現れたのは、髑髏の仮面を被ったサメだった。
「シャーックックック、我等は核によってニュートリノ進化したスペースシャーク。地下に潜んでいた僅かな同胞たちよ。我等を一度は絶滅に追いやったエルキュール・カンパニーに復讐を果たすとき!」
 ヒャッハーいいながら空に向けて火炎放射しているサメたちは、はたと荒野の先から歩いてくる一団を発見した。
「おかしら、あれは!」
 勾配激しい砂にゆらめく陽炎。太陽を浴びて並ぶ六人の影を、全人類は知っていた。
「出たわね、スペースシャーク! いわしの平和を守る為、私達は負ける訳にはいかないよ!」
「エルキュール・カンパニー!」
 『サメにかわってお仕置きよ!』とかいって平成初期生まれしか覚えてないようなポーズをとったスティアは、背後から無数のサメオーラを湧き上がらせた。
「まさか……ヤツは古代スーパーサメヤ人の末裔だというのか!?」
「ばかな、そんなやつが居るはずねえ!」
 シャーク! とか叫びながら飛びかかるヒャッハーたち。だがスティアは白銀のサメオーラをシュオンシュオンさせると高速で空を飛び、ヒャッハーたちを一瞬でボコボコにした。
「――スティアパンチ」
「「ぐべら!?」」
 背を向け見栄を切ったスティアの背後でぶくぶくに膨れ上がり破裂するヒャッハー。
 スティアは『破ッ!』て言いながら宇宙に向けてジャンプすると、サメ色に染まった地球めがけてサメハメハを放った。なんのことかって聞かれてもわからないしわかりたくはない。
「サメ人類が蔓延りすぎてるなら、惑星ごと破壊し尽くすまでだよ! スティアびーむ!」
 サメハメハじゃなかったの?
 直撃した巨大サメオーラは地球に穴を空け、後にそれはドーナツ地球と呼ばれることとなる。

●第百六十五話:じぇっく……
「あああああああああああああああああああああああああああああ!?」
 ジェックは鳴きながら夜道をダッシュしていた。
 青春の情動が迸ったからでも、最新ゲーム機の抽選販売に当選したからでも、自分の昔の卒業アルバムが元クラスメイトの動画生配信で暴露されたからでもない。
「じぇっく……」
「じぇっく……」
「じぇっく……」
 両手にいわしを握った白いネコの着ぐるみ集団がジェックの名を呼びながらじわじわと追っかけてくるせいである。
 15年前、ハンバーガーショップにてイワシイーターウィルス入りのフィッシュバーガーが客の口にはいってしまった日から、およそ一年たらずで世界中はイワシイーターに汚染されてしまった。
 イワシイーターは人間に噛みつき耳元で『いわしは美味いぞ』って囁くことで同族へと変え、なんかしらんけど白猫着ぐるみを着せてしまうのだ。
 ジェックは足を滑らせ川辺の土手と転げ落ちると、傷付いた服のまま起き上がった。河川敷架橋下にできたバラック小屋が目に入る。振り向けば、イワシイーターたちがゆっくりとこちらに近づいてくるのが見える。夜闇にも見えるのは月が明るいせいか、それとも白猫着ぐるみのせいか。
 ジェックは地面を手で叩くようにしながら走り出すと、バラック小屋のドアとは名ばかりのブルーシートを引き剥がす。
 ハ、と短く息を吸う。そして止まる。
 小屋の中にイワシイーターが待ち構えていたからでも、電気代の振り込みを忘れていたからでも、優先依頼の予約を忘れて朝になっていたからでもない。
 小屋のハンガーにかかった、レインボーホワイトカラーのアイドル衣装を見つけたからである。
 考える時間はない。小屋へ飛び込み服をつかみ取り、0.5秒で着替えを終える。
「じぇっく……?」
「わすれちゃったのかにゃ……?」
「また会いたいにゃ……」
 その間にも集まっていたイワシイーターたちが小屋を取り囲み、逃がすまいとその包囲を縮め……ようとして、一匹の胸にハート型の穴が空いた。
「にゃ……!?」
「届け! アタシのココロ!」
 衝撃と共に吹き飛ぶバラック小屋。風圧に吹き飛ばされまいと踏ん張ったイワシイーターたちは、その中心でSUPER KAWAII PAUSEをとるジェックを目視した。
 片膝をあげ白くまぶしい膝をみせつけつつも、ウィンクと片手投げキッスをかます前代未聞のジェックであった。
「いわしを食べる悪いコにはお仕置き、だぞっ♪」
「「じぇ、じぇーーーーーーっく!?」」
 尊さの光によってイワシイーターたちは細切れに吹き飛び、そして三千世界は光に満ちた。
 後の聖書に、ジェックの光として記されることとなる現象である。

●第二千二百二話:いわまじょカーニバル
「死、死んでる……!」
 テレレッテレレッーテーレー
 温泉旅館へやってきたエルキュール・カンパニーは、湯船に浮かび息絶えていたいわしちゃん(イワシに天使の羽根が生えたナウいペット。ネコ程度の大きさで地面から30センチ高度を浮遊する。名前はスミー。バナナが好物)を発見した。
 湯船にはしっかりだし汁用の昆布が沈められ白菜やにんじんを入れたせいでもう軽く石狩鍋だった。
「そんな、いわしイーターの絶滅したこの世界で、いわしを殺すひとがいるなんて……」
 フランがゆっくりと首を振り、ヒドイヨォアンマリダヨォって言いながらうずくまった。
 その横で鰯の蒲焼きを串に刺してムシャムシャ食ってるロク。
「死亡推定時刻は今から一時間前……」
 パイプをくわえ先端でボールをフーフーしていたジェックが、なんかしゃーろっく的なあの肩にかけるなんていうのあれ(インバネスコートっていうよ)、あれを纏って振り返った。浴衣姿で。
「その頃アタシとフランは、スティアとアルプスの四人でダブルス卓球をしてた……」
 脳裏に浮かぶ卓球風景。乱れる浴衣。ゆれるバイクのエンジン。卓球台の上を爆走し壁に突っ込む湯上がりアルプスローダー(バイク。浴衣をくくりつけたものを指す)の回想シーン。帯のほどけた瞬間は止め絵でながれた。
 よろこべ皆、サービスシーンだぞ。
 あと横ではロクが鰯ハンバーグを両面しっかり焼いていたぞ。
「なるほどね……犯人はわかったよ!」
 その声に、仲間達が一斉に振り返った。
「アンジュちゃん、本当!?」
「ドゥルン――チッカチッカ」
 スティアとアルプスローダーが振り返り、湯上がりアンジュ(美少女。鰯柄の浴衣を着たものを指す)はこっくりと頷いた。
「犯人は……この中にいるよ!」
 アンジュの宣言に、アルプスローダーはヘッドライトを放ちスティアは目を見開きジェックはスマホをいじりロクは鰯ハンバーグにソースをかけフランがご相伴にあずかろうとしていた。
「は?」
「ぁっ」
 振り返ったアンジュ。そーっと後ろ歩きでクッキングヒーターから距離をとるフラン。
 鰯ハンバーグといわしの刺身を交互につまんでいたロクは、『えっ』と言って振り返った。
 さっき湯船からあげたいわし(スミー)にポン酢をかけて囓ったところである。
「スミーーーーーーーー!」
「しまったバレた!」
 ロクは全力で逃走――と見せかけて懐(どこ?)から出したボックスからカバーを外した。中には五つの赤いボタン。ひとつずつひらがながふられており、ロクは空中を指さすみたいにしながら順におしていった。
「か・く・へ・い・き」
 ロク川クリステルによる五連ニュートリノ。
 迫る核弾頭を前に、アンジュは翼(いわしうぃんぐ)を広げた。
 いわしウィングは空を飛び、いわしイヤーは地獄耳。あれは誰だ、誰だ、誰だ、あれは――。
「ギャラクシーいわしぱんち!」
 ノジャーンという全宇宙のロバが叩きつけられた音と共に、世界は鰯爆発に包まれた。

●第一億七千万話:言うとおりにリプレイをカオスにしたぞ、妹を返せ!
 ロクは目を覚ました。
 肺が酸素を欲し、慌てたように吸い込んだ息は声になる。
 ロクの耳には意図せず驚きの声に聞こえたが、それは結果として感情を伴った。(ここ英語小説の翻訳っぽい文体)
「ここは……」
 口をついて出た言葉は、どこかの映画や漫画で見たお決まりのものだった。
 白く霞む光のような風景のなか、それが真昼の陽光に目が慣れていないせいと、白い天井と白いベッドシーツのせいだと気がついた。
 布をおしのけ身体を起こすと、一面が真っ白い壁で覆われた部屋があった。かろうじてベッド側面だけには丸い窓がはめ込まれ、その先には青空らしきものが見える。まるで青白いシートを虫眼鏡で覗いた時のように、それ以外なにも見えない。
「ここは?」
「病院ですよ」
 もう一度呟くと、思ってもみない答えが返ってきた。誰かが答えるとすら、思っていなかったのだ。
 声のほうへ視線を向けると、そこにはアルプスローダーがいた。アルプスローダーっていうか、そのコミュニケーションアバター体である。なんでだよ今回はバイクだけ出てくるイロモノ枠じゃなかったのかよ。
 アルプスちゃんはゆっくりと、そして小さく首を振った。目に涙がたまっていくのがわかる。
「もう、目を覚まさないと思っていました。アンジュさんから後頭部に強い打撃(歪曲した表現)をうけてから、ロクさんは184万年も眠りについていたんです」
「生きてるのおかしくない?」
 当然のツッコミも、涙で頬を濡らすアルプスちゃんには無力だった。
 彼女のはピンク色のアイドル衣装を纏い、胸にはエルキュール・カンパニーを示すロゴ入りペンダントが下がっている。
 アルプスは後ろを振り返り、まるで偽装するかのように備え付けられていた壁と同色のドアを顎で示した。
「今からロクさんは、隣の実験室へと案内されます。部屋の中央にはテーブルが一つ。テーブルの上にはお皿がひとつ。お皿の上には……」
 ぐびりと喉をならし、アルプスは続けた。
「いわしの蒲焼きが乗っています」
「……いわし」
 繰り返すように呟いたロクの喉。そして舌に鮮烈なまでの感覚が蘇る。
「そのいわしは絶対に食べようとしてはいけません。このループを断ち切るには、いわしを害する選択肢をとってはいけないんです」
 アルプスの目は、これが悪いジョークなどではないことを否応にロクへ知らしめた。
「……わかった」
 ロクは頷き、ベッドから立つ。
 ――『D184912、実験室へ入って下さい』
 部屋に音声がながれる。スピーカーらしきものは見当たらない。
「行ってくるよ」
 バータイプのドアノブに手をかけ、なんとか肉球をひっかけて開くと、ロクは振り返る。
 アルプスは椅子に座ったまま、しかしこちらへは振り返らなかった。
 肩は、震えているように見えた。

 背後で扉が閉まる。
 部屋は真っ白だ。そう思っていると、中央に黒い穴が開き、せり上がるように円形のテーブルが現れた。
 テーブルの上には、いわしの蒲焼――
「わーいいわしだ美味しそいただきまウマイ!」
 二秒だった。
 ロクは二秒で食った。

●第零話:私はそうエルキュール・カンパニーを内部から崩壊させるためいわしイーター組織『はらぺこいわし団』から送り込まれし団員ではらぺこいわし団本社に囚われた育ての親ママエンジェルいわしの解放金を稼ぐべくアイドル活動しながらいわしを掠め取り組織といわし大安売りスーパーに卸す毎日の中しかしルーシェルが食べるごはんの質にこだわりすぎてごはん代で毎月赤字しかしそんな日々とももうおさらばなのなんだって今日はいわし武道館に襲撃をする予定らしいからこの襲撃に成功しアイドルを仕留められれば組織はママエンジェルいわしを無条件で解放すると約束してくれたのよママ待っててまた私と一緒にいわし丼食べようね!
「――はっ、夢か!?」
 ロクは叫びながらベッドから起き上がった。
 ベッドの両脇には、アルプス、スティア、ジェック、フランが二人ずつはさむように座り、顔を覗き込んでいる。
 アルプスが開口一番、こう述べた。
「今からロクさんは隣の実験室へと案内されます」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

ロク(p3p005176)[重傷]
クソ犬

あとがき

 ハッ、夢か!?

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