PandoraPartyProject

シナリオ詳細

再現性東京202X街:街の灯り遠く消え

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●再現性東京202X街:街の灯り遠く消え
 新たなる年を迎えた、再現性東京。
 年の終わりの頃に立て続けに発生した様々な事件は、この地に住まう極々普通の一般人達の『日常』の認識を変化させる事となる。
「なぁ……お前知ってるか? 最近この辺りで夜歩いている人が神隠しに遭う事件が立て続けに起こってるんだけどさー……その真実をよぉ?」
 ニヤリと不敵な笑みを浮かべているのは、この再現性東京でオカルト雑誌に記事を寄稿し、編集長の役割を担っている男。
 だからこそ、オカルトな話についてはアンテナを高く張り巡らせており、そういった話があればすぐさまその足で飛んでいき、取材を行うというフットワークの軽さ。
 そんな彼が、ここ最近の取材結果で導き出した結論。
『どうもよー……実はこの行方不明事件ってよ、異形なる者が事件の鍵を握ってるらしいんだよ! 人外の者、つまり妖怪ってな訳だ!』
 妖怪、という言葉に、彼の周りの人々は何を言っているんだ、といった具合で肩を竦める。
 でも、彼は本気も本気で、その目をキラキラさせながら、まるで夢を語るが如く。
『お前達、信じてねーのか? これが本当だとすると、超超大スクープな話なんだぜ!? という訳で今回の雑誌の特集はコレだ! 人攫いの妖怪の怪ってな! と言う訳でよ、こいつらを見つけるまで今日は暗い街を手分けして歩き回ろうぜ!!』
 面倒臭いなぁ……と言う感じを醸し出している周りの者達。
 勿論上の立場から命令とあれば、それを否定する様な事は出来ない訳で……彼らは深夜の街を歩く。
 人気のなさそうな所を中心に歩き回り……暫し。
『……ウォォォン……』
 遠くから響きわたるは、獣の咆哮。
『ヒッ……!?』
 周りの一般人達は、恐怖に足が竦むものの、彼は。
『おう……これはこれは、ビンゴって事の様だな! ほら、皆行くぞ、こっちの方から声がしたからな!!』
 と半ば強制的に引き連れて、声に誘われるがままに移動。
 ……そして。
『……ガルゥゥウアアアア!!』
『うわ、来るな、来るなぁあああ!!』
 獰猛なる咆哮と共に、男共は食われようとしてしまうのであった。


「……あっ。もうみんな来てくれたんだねー! 年始から早くも集まってくれてありがとねー!」
 ぶんぶんっ、と手を振りながら、皆を歓迎する綾敷・なじみ。
 まだ年始めて数日しか経っていないのに集められた君達が、冷たい視線を投げかけるもなじみは全く動じず、悪気も無く。
「早速だけど、みんなに依頼なんだよねー。ほら、お雑煮食べたりしてお腹いっぱいだろうから、ちゃんと運動しないと太っちゃうもんね!」
 はははと笑いながらぱらっと皆に見せるのは、とある雑誌。
 怪談好きの人なら誰しも一度は見た事が有る、オカルト雑誌。
 年始からそんなオカルト雑誌を見せてきて、何なんだと言う君達だが、なじみは。
「みんなも知っての通り、この希望ヶ浜で年末年始に起きた事件の結果、色んな人々が『夜妖』の存在に気づき始めている様なんだよね。でも、『夜妖』の存在がおおっぴらに広まって行ってしまうと、噂話が更なる夜妖を呼ぶ事態になりかねないんだ」
「そしてこのオカルト雑誌の編集部員や編集長達が、どうも夜妖の噂話を聞きつけて夜妖を見つけようとしているみたいでねー……当然彼らは夜妖と戦う力は無いから、遭遇すれば死が待っているのみ。取りあえず彼らが無駄死にしない様に、みんなの力を貸して欲しいってのが先ず一つ目なんだ」
「それともう一つ……彼らが夜妖の存在を『真実』と認識為てしまうと、さっき言った通り夜妖を更に呼び込む事にもなってしまうんだ。だから、助けた後に彼らに夜妖がいない、という様な感じで夜妖は居ないって事を『わからせて』欲しいんだよ!」
 そこまでなじみは言いつつ、最後に。
「私達にとっては夜妖はなじみある存在だけど、一般人達にはなじみがない存在にしないとねー。という訳でさ、皆、宜しく頼むねー!」
 と、イレギュラーズ達の肩を叩いて送り出すのであった。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
 あけましておめでとうございます!
 
 今回の依頼は、年始特番で『夜妖』の存在をつまびらかにしようとしているオカルト雑誌の編集達を救出する事です。

 ●成功条件
  深夜の人気を失った街角に姿を表す夜妖から一般人達を守りきる事、夜妖を退治する事。
  そして一般人達に『夜妖』の存在を隠蔽する事です。

 ●情報精度
  このシナリオの情報精度はBです。
  依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●周りの状況
  深夜の街角なので、周りは寝静まっている状態です。
  とは言え人払い等をしないと、戦闘中の音や声によって、オカルト雑誌の人達の他の街の人々も出て来てしまうかもしれませんので、その辺りの対処は必要でしょう。
  又、オカルト雑誌の人々は、編集長の男だけは夜妖が現れても気丈に振る舞いますが、他の周りの編集員(6人)達は恐怖に混乱してしまっています。
  二つのパターンの一般人達を夜妖から護りきりながら戦闘……そして、その後夜妖達の記憶をいかな手段を使って『言いふらさないように』する様に御願いします。

 ●討伐目標
   獰猛な夜妖『夢喰狼』が多数です。
   敵の個々については、戦闘能力はそこまで高くありません……ただ、凄まじく素早いです。
   戦場を駆け回り、邪魔で煩い一般人達を優先的に食い殺そうとしますので、それにしっかりと対応出来るような作戦が必要になります。
   ちなみに、敵はかぶりつくと共に、体力を吸収する攻撃が可能ですので、攻撃こそ最大の防御……と言う動きになります。

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • 再現性東京202X街:街の灯り遠く消え完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年01月20日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

フェルディン・T・レオンハート(p3p000215)
海淵の騎士
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
ハインツ=S=ヴォルコット(p3p002577)
あなたは差し出した
ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)
天下無双の狩人
ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)
あいの為に
白妙姫(p3p009627)
慈鬼
イルマ・クリムヒルト・リヒテンベルガー(p3p010125)
生来必殺
ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム(p3p010212)
凶狼

リプレイ

●怪奇を啄む
 新年を迎えた、再現性東京。
 昨年の末頃に発生した事件によって、日常にも様々な影響が出始めている今日この頃。
 本来ならば、怪談話を聞けば恐怖し、その類いに耳を塞ぐのが、この世界の標準的な流れ。
 ……だが、今回の話はちょっと違う様で。
「なるほど……真実を探求したい、という事か」
 深い溜息を吐きながら、『海淵の騎士』フェルディン・T・レオンハート(p3p000215)が瞑目すると、それに『慈鬼』白妙姫(p3p009627)と『紅い怨念』イルマ・クリムヒルト・リヒテンベルガー(p3p010125)の二人からも。
「そうじゃのう……あの事件があってから、この街ではたびたび妖怪が現れるようじゃのう……」
「ああ。本当に手に負えん。興味本位で怪事件に首を突っ込もうとする奴らは、一度痛い目に遭わねば解らんのだろうな」
「うむ……本当、この街は祟られている様じゃな……」
 そんな白妙姫の言葉に『ヤドリギの矢』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)は。
「んー……まぁ、この街が祟られているというよりかは、再現性東京自体がそういった方向に進んでいって仕舞っている……って感じかもしれんな」
 苦笑するミヅハに対し、『あなたは差し出した』ハインツ=S=ヴォルコット(p3p002577)が。
「ま……そこに超常現象があれば、危険と知っていても踏み込むというのは、俺達オカルトライターの性だからな。同業者としちゃ、彼らの無謀な行動を責める気にもならないって訳だ……ま、上手く事を収めてやりたいもんだ」
 オカルト雑誌に携わっている彼からすれば、今回救出するべく者達は同業者。
 そういった類いの雑誌であれば、怪談話は喉から手が出るほど欲しいお話であり……そのネタの為なら命を賭しても良い、と思うのも仕方ない所。
 ……まぁ、本当に命を獲られる羽目になるだなんて、正直思って居なかった所ではあろう。
 そんな仲間達の会話に、レオンハートが。
「本当……何故『自分達は大丈夫』だなんんて……無意識に思ってしまうんだろうね? もう少し、冷静に行動した方が良いと思うのだが……」
 と、そんなレオンハートの憂いに『あいの為に』ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)は。
「ええ……人は真実ではなく、信じたい事を信じてしまうものです。今迄は夜妖という真実をひた隠し、偽りの平穏を信じ続ける幸せな街でした……ええ、それが一番簡単な事です。ですから、その為の言い訳をちょっと用意してやれば……簡単に現実から目を背け、幸せな嘘を信じる事でしょう……ふふ。言葉は何を言ったかではありません……誰が言ったか、ですからね……」
 柔和な笑みを浮かべるライ。
 それに、『呑まれない才能』ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム(p3p010212)は。
「んー……夜妖退治とか、初めてだからよくわかんねーんだけど……幽霊の親戚、みたいなもんか?」
 首を傾げるヘルミーネに、『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)が。
「そうだな……幽霊が更に凶暴化した様な存在っていうので、大まかには合ってるかもしれんな。凶暴化ってのがポイントだが」
「ん、なら、巫女であるヘルちゃんの出番なのだ!」
 耳をピコピコさせて勢い付くヘルミーネに、そうだな、とジェイクは頷き。
「ああ。でも忘れちゃいけないのは夜妖退治だけではなく、野次馬の対処もしなきゃならねぇ厄介な仕事だ。そんな奴らの気持ちは解るが、『好奇心は猫を殺す』って言う暗いだしな。好奇心は謂わば病気の様なものさ」
「そうなのだ! 野次馬対策……まあ、存在知らねー方がいいものを、わざわざ知る必要もねーのだ! それじゃー急いで頑張るのだ!」
 えいえいおー、と拳を振り上げるヘルミーネに、白妙姫も。
「うむ。今回はかなり急ぎ足になりそうじゃが、放置する訳にも行かぬしな……では、行くとするかの」
 そう仲間達に頷くと共に、イレギュラーズ達は灯りが薄い、薄気味悪い深夜の街へと向かった。

●夜に蔓延る影
『……本当に、こんな所に出てくるんですかねぇ……』
『ああ、間違いない。嫌な気配を強く感じるしな……これで写真にその妖怪を捉えられれば、特ダネ間違いなしだ。いいか皆、しっかりと周りを見て、ちゃんと写真に収めるんだ!!』
『判りました!』
 時刻は深夜、空の灯りがキラキラと輝く中、噂の場所へと辿り着いたオカルト雑誌の編集長と、記者達。
 特ダネを撮るべく士気は上がり、カメラを手にして、街中を歩く。
 彼らはこういう怪談スポットに行き慣れているのか、余り言葉は発せず、灯りを左へ、右へと照らして周囲の状況を注意深く観察し、何か不穏な気配があれば、すぐさま写真に収めていく。
 まぁ、希望ヶ浜という場所に生きているからこそ、そういった事象には慣れっこの模様である。
 そして、そんな彼らから少し遅れて辿り着いたイレギュラーズ達。
「よし。取りあえず手分けして行くとしようか」
 そうイルマが皆を促し、先ずは彼らの姿を夜妖よりも先に見つけ出すように動く。
 ただここは街中故に、編集部員達よりも先に、家路を急ぐ人や、飲み会からの帰りに歩く若者とかの姿も有る。
 そんな一般人達に対してはライや白妙姫が。
「ここを歩いていると危ないですよ? つい先日、この近くで野犬が発見されたそうです……私も、ボランティアとしてその退治を依頼されたシスターです」
「そうじゃ。おぬし達も、野犬に食われたくなかろう? ならば、早めに家に帰るのじゃ。人を咬み殺してくるかもしれぬしの?」
「ええ……ああ、出来ればこのお話を、帰るまでに遭われた方にも広めてくれませんか? 私達だけでは、限界がありますので……」
 と言いふらすことで、この街中から出来る限り早急に避難……というか家に帰るように指示する。
 そして街の人達が帰宅を急ぐ中……特段隠れる細工もしていない編集部員達は、程なく姿が見つかる。
「あいつらか……まだ夜妖は居ない様だな」
「その様なのだ。それじゃージェイクちゃん、いっちょ始めようなのだ!」
 ジェイクに頷くヘルミーネ。
 そして二人は、周囲探索をしている彼らの下へずかずかと歩いて行き。
「……おう、お前達、ここで何してやがる」
 強面と強い口調で、脅すように言い放つジェイク。
 編集部員達は突然の事に驚くものの。
『な……何だよ! 別にここを歩いているだけだ!』
 と額に一筋の汗を流しながら、反論。
 そんな彼らに。
「ここは俺達の縄張りだ。命が欲しけりゃ、とっとと失せな」
「そうなのだ。アニキの言う事聞けねーのか?」
 懐からチャカを見せるジェイクに、下っ端の口調で騒ぐヘルミーネ。
 しかし彼らからしても
 ただ街を歩いているだけで、例えその系だとしても言われる筋合いはないと、反論し続ける。
 そう街中で言い争いをしていれば、嫌でも声が街中に響きわたる訳で……その気配を感じた夜妖狼達も。
『ウウウ……グルゥウウ!!』
 突如、空中から唸り声を上げながら、襲い掛かってくる。
 今迄何もなかったはずの所から出現した狼は、漆黒の身と尾ひれの様に揺蕩う尻尾を備える。
『な、何……今、そこに何もなかったのに!!』
『わからねえ……けど、こ、こいつがあの妖怪じゃねーのか?』
『まじか! なら、撮れ撮れ、写真を撮れ!!』
 パシャパシャと写真を撮り始める編集部員達。
 そんな彼らに、咄嗟にヘルミーネが。
「こっちは映画の撮影をしてるんだ! 邪魔しちゃいけねーのだ!!」
 と己を目立たせながら、撮影を遮るように彼らと夜妖の間に立ち塞がる。
 更に彼女は霊魂を周りに呼び込み、ふわぁ……と写真に映り込むように展開させる。
 幽霊が更に増え、写真撮影の手が止まらない……そんな彼らに向けて牙を剥く夜妖達。
「仕方ねえ……カタギのお前らには関係のない事だ。とっとと失せろ!」
 恐怖を植え付ける程の、怒りの声で威圧するジェイク。
 そして。
「良し、んじゃー皆、俺に続けーってな!」
 とミヅハが皆に発破を掛けると共に、イレギュラーズ達はミヅハと同時に動き始める。
 狼達は、対峙してきたイレギュラーズ達に明らかな敵対心を向けつつも、弱そうな編集部員達も美味しそうだな、と狙いを付ける。
 しかし、そんな狼達の行く手を遮るように、ヘルミーネが。
「ヘルちゃんと同じ狼のようだけど……残念! ヘルちゃんの方が早いのだ!!」
 とその素早さを生かし、彼らの立っている場所に氷の地獄地帯を生み出し、足元を縛りつける。
 足止めされた彼らへ、白妙姫が。
「一気呵成、出し惜しみは無しじゃ!!」
 仲間達を鼓舞しつつ、魔性の剣で斬り付けていく。
 間髪入れず、ジェイクは銃口を敵に向けて。
「いいか……これは映画の撮影だ! 火薬も使うから、少し下がってろ!!」
 と口上を上げ、敵と編集部員達の注目を集める。
 そして実際に銃口が火を放ち、敵を撃ち抜く。
『……ヒッ!!』
 本物の銃だと知って、怖じ気づく編集部員達。
 そして、彼らをイルマが襟首を掴んで自分達の後ろに投げ込み、荒っぽいが安全を確保。
「こいつらはもう大丈夫だ。さぁ、容赦無く仕掛けて行くぞ」
 とイルマの言葉に頷きながら、ライ、ミヅハ、レオンハートの前衛陣が。
「先ずは動ける狼を先に倒して行こう。足止めされているのは、まずは後回しだ」
「判りました。犬畜生には上等すぎる餌かと思いますが……差し上げましょう」
「自分達の方が早いと思っているのかもしれねーけど、それは間違いだ。俺達の方が早いのを見せてやるぜ!」
 夜妖達を挑発しながら、宝剣を振り薙ぎ切り裂き、ライは復讐の魔弾を撃ち抜き、そしてミヅハの呪術で更なる足止め。
 そして最後にヴォルコットが、自立式爆弾を仕掛ける事で、動けない夜妖を爆発させる。
 イレギュラーズ達の、ヘルミーネに合わせた連鎖攻撃でもって、夜妖らは一刻に数匹のペースで死に潰えていく。
 その潰え方は、まるで今迄そこになにも無かったかのように、漆黒の煙が消え失せるが如く。
 そしてイレギュラーズ達に護られている編集部員達は、目の前で繰り広げられる状況に目を白黒させる事しか出来ず、呆然状態。
「ふふ。どちらの方が強い狼なのか……格の違いを見せつけてやるのだ!!」
 とヘルミーネがニタリと笑みを浮かべながら呪っていくと、その呪いを生かして他の仲間達が個々、集中砲火。
 満足に動く隙さえ与えられず、狙いとしている編集部員達を攻撃するにも、イレギュラーズ達が立ち塞がられると、攻撃が通る事も無い。
 そんなイレギュラーズ達の鉄壁を崩すことが出来ぬまま……夜妖達は返り討ちに遭うのであった。

●生き抜く声
 ……そして。
『はぁ……な、な……何だったんだよぉ……』
 目の前で繰り広げられた光景に、目を白黒させている編集部員達。
 そんな編集部員達に。
「いいか? ……これは映画の撮影だ。お前達の追い求めているような、怪談話でも何でもない。何も知らない奴らからすれば、そう思われても仕方ない所ではあるがな?」
 とイルマが言い放つ。
 だが、それに編集者……いや、編集長の男は。
『な、何を言ってんだよ! あの狼、俺達の目の前で消え去っていったじゃないか!! 動物が煙のように消えるだなんて、普通あり得ないだろうが!!』
 と目の当たりにした事象を引き合いに出して、怒りに叫ぶ。
 確かに普通の動物なら、煙のように姿が消えるだなんて本来あり得ない事象……その辺りは腐ってものジャーナリスト精神から来る者なのだろう。
 しかし、そんな彼らの追求に対し、
「倒された狼達が、目の前で姿を消したのは事実です。ですが中身はただの風船ですから……」
「そうだな。風船なんて、どこかに穴が開けば、しぼんで跡形もなく消えてしまう……姿形も、映像であれば後から細工が出来ますからね……?」
 ライとレオンハートは現れた夜妖が偽物である、と言いくるめる。
 更には厳つい表情と共に、凄んで睨み付けるジェイクが。
「いいか……この事件は忘れろ。お前等にとって、良く無い事が起きても……知らんぞ?」
 と言い捨てるが、編集長は。
『っ……そ、そんな暴力に屈して溜まるかよ!!』
『へ、編集長っ……そ、そんな事言っちゃっていいんですかい?? そういうのって、後々色々と怖いって言いますよ!?』
『煩いなっ!! その程度、覚悟の上だっ!!』
 ……意外と胆力はあるらしい編集長。
 恐怖スポットを巡りに巡り、深夜のオバケの類いにまけじと写真を撮り、雑誌の記事にしてきたのだから……戦う力は無いにせよ、肝が据わっていなくては務まらない事だろう。
 そんな編集長への交渉を更にジェイクが圧で圧していく中、レオンハートと白妙姫は周りのしがない記者達に。
「まぁ……好奇心は大変結構だけど、中途半端な覚悟で関わると命を落とす事になるよ。それが百歩譲って自己責任で終わるのであればまだ良いけれど……キミ達が面白可笑しく書いた記事が、他の誰かを殺す事になってしまうかもしれないんだ……判るよね? ボク達は、みんなの安全を守りたいんだ。いい……この剣を、キミ達に向けさせないでくれ」
「うむ……この事を言いふらせば、本当に祟られ、今晩のような事が頻繁に起きるようになるじゃろう。今回はわしらがいたから良かったが……その内本当に死ぬ事になりかねん。そうはなりたくないじゃろう?」
 ちらりと闇の中で鈍く輝く剣を見せ、白妙姫も髪を掻き上げ、赤い角を見せると……流石にそこまで肝が据わっていない記者達は、こくりこくりと頷く。
 彼らは、これで諦めてくれるだろう……残るは編集長。
「全く……仕方ないな」
 とジェイクと口八丁で言い争う彼の視線を見定めながら、ジェイクは一枚の写真をひらり、とこれ見よがしに落とす。
 その写真は、どこかの墓場で撮影した幽霊写真……オカルト雑誌の一面を飾れそうな、渾身の心霊写真。
 ……そんな写真に。
「んー……そうかそうか。お前にはこれ以上の幽霊写真が撮れるって訳か」
『え……お、おいおい……!! これ、マジモンかよ……!!』
 瞬く間に驚きの表情を浮かべる編集長。
「マジモンだぜ? ま、俺も同業者なんだがよ……金になると思うぜ? この話よりも、よ? 今日の深夜の時間も残り少ないし、調べるなら善は急げ、だぜ?」
 とヴォルコットが促すと、周りの記者達からも。
『編集長ー……そ、そっちの話の方にしましょうよ!』
『俺達、この場で終わりにしたくないっす!! だから、頼みますよぉ……』
 そんな周りの記者達の言葉に逡巡した編集長……いや、裏では目の前の恐怖に対し、どうにか逃げるやり方を考えて居たのかも知れない。
『……わ、判った。よし、お前達、急いでこの写真の場所に向かうぞ!」
 とイレギュラーズ達から逃げ去るように、その場から逃げ去って行く。
「……特ダネを渡しちゃって、大丈夫なのだ?」
 とヘルミーネの言葉に、ヴォルコットは。
「ああ。あの写真は作りもののだし、0時を過ぎれば真っ黒だ。そうなりゃ手がかりもなくなって、どうしようもなくなるって訳さ」
「ほう……それはすごいのだ!」
 笑うヘルミーネ、そしてミヅハとヴォルコットが。
「ま、あいつらがこれで懲りなきゃ、次はないって事でいいんじゃないか? それじゃ後片付けをしてから帰るとするか」
「ああ……そうしよう」
 と頷き合うと共に、その場の後片付けを始めるのであった。

成否

成功

MVP

ハインツ=S=ヴォルコット(p3p002577)
あなたは差し出した

状態異常

なし

あとがき

再現性東京依頼に参加頂き、ありがとうございました。
今回のオカルト雑誌の編集長は中々に肝が据わっている設定でしたが、同業者が来るとは思って居ませんでした。
まぁ……彼らも自分達が生きる世界の事を判って居ないだけかもしれませんが……ね。

PAGETOPPAGEBOTTOM