シナリオ詳細
おやさい賛歌:開墾魂
オープニング
●
ㅤレジェンダリア、もしくは伝承と呼ばれる地に存在する森の中。
ㅤ小鳥の囀りが鮮明に聞こえるほどに静寂しきったその森には、湖が一つ存在した。
ㅤ水面に波紋が一つ落ちる。
ㅤそれに連鎖するようにあちこちに波紋は広がっていき、それは水面ばかりでなく、辺りの空間にも作用した。やがて世界にノイズが走る。
ㅤ自然界には存在しないはずの原色で描かれた泡状のエフェクトともとに空間が徐々に崩れていき、そして再構築がなされて行く。
ㅤやがてその場には先程と同じような、しかして全く異なる森が広がっていた。なるほど、これが噂に聞く「隠しエリア」か。あなたはそう思った事だろう。
ㅤそんな中、唯一少しの変化を見せることも無かった湖。
ㅤその湖の中からひょこっと「大根」が飛び出した。
●開墾魂
「今しかないんよ」
ㅤ大根が喋った。否、それは大根では無い。……いや大根ではある。
ㅤ彼はでぇ根。菜種、もしくはフィールドセルと呼ばれるROO固有の種族である。
ㅤ元は翡翠に多く生息していた彼らであったが、森を耕そうとしたことで耳長(ハーモニア)に住処を追われ、新天地となりうる楽園をさがして旅を続けているという。
「わんらの悲願。フィールドセルの楽園作るんは今なんよ」
ㅤどこの訛りかさっぱり分からないがとても訛っている。かろうじて聞き取れる話を解読していけば、どうやら偶然見つけた湖の中に存在する隠しエリア、そこを自分達の住処にしようと画策しているらしい。
「まずはここの主倒してほしんよ。あれつよいんな」
ㅤ隠しエリアには、そのエリアを守るボスモンスターが存在する。それは巨大な猿の様な姿をしており、配下の猿を連れて森内部を徘徊しているという。
「あれね、毒あんの。つよんな毒」
ㅤ猿達は爪先に毒を持つらしい。引っ掻れればたちまち毒におかされてしまうことだろう。注意してかかるべきだ。
「お願いね。やってね」
ㅤなんとも気の抜ける物言いと共に両手(?)を擦り合わせるでぇ根を背に、あなた達は森の奥へと歩を進めた。
- おやさい賛歌:開墾魂完了
- NM名七草大葉
- 種別クエストテイル
- 難易度-
- 冒険終了日時2022年01月16日 22時10分
- 参加人数4/4人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
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参加者一覧(4人)
リプレイ
●
「はーい大根ちゃん!『耳長』が来ましたよ!」
ㅤ『再現性母』イルシア(p3x008209)がにこにこと話しかける。なんというかこう、目が笑っていない感じがするのは気のせいだろうか?
「すこしまえにやんごとなきじじょーでとある方のパラディーゾをしょくしたりしましたが……ダイコンもいいものですよね?」
「だよね。私はステーキ派かなぁ、おろしバターポン酢かけて。あ、スライスに味噌マヨつけて食べるのもいいよね、生で」
ㅤじゅるりと舌なめずりをするのは『シュレディンガーのようじょ』樹里(p3x000692)だ。その問いに答える『夜告鳥の幻影』
イズル(p3x008599)と共にでぇ根をじっと見つめる。
「な、なんねみんなして……やぁよぉ」
「大根、美味しいよね。色白だね、みずみずしいね、すべすべだね。こんなにもっちりして……」
「ひぃ!」
ㅤでぇ根が冗談だよね?ㅤと問いかける。二人の目は割と本気だ。本気と書いてマジだ。
「……なぁ、大根。お前、親戚にきうりんってヤツがいたりしねぇか?」
ㅤいやまぁ、ほら、なんとなくな。と。
ㅤ依頼主の危機を察した『Lightning-Magus』Teth=Steiner(p3x002831)が、空気を変えるようにそう問いかける。これ幸いと話題に食いついたでぇ根によると、どうやらきうりんなるきうりとは知った間柄のようだ。
「あれね。あれは外来のやさいんね。でもつよんだよ。なかよしなかよし」
ㅤまぁなんかそんな感じだ。
「私は火の扱いも碌に知ろうとしない頑固者達とは違うから、勝手に森を拓こうとした事は許してあげる……」
ㅤエルシアはエルシアで、翡翠を開拓しようとしたことに対して言いたかったらしい。
「そ、それはきうりんが主導でやったからあれに言ってね」
ㅤちょっと含みのある言い方に危機を察知したでぇ根がさらっと責任転嫁をする。割とふてぶてしい。
「まぁダイコンはもうちょっとあとまでおあずけしておさるさんたいじですね」
「え、倒すのは猿なの?ㅤそっかぁ……」
ㅤそして樹里とイズルはずっと怖かった(でぇ根談)。
●ともあれよ
「それじゃあ、焼畑農業しましょうか!」
ㅤその言葉と同時に、森が業火に包まれた。まるで幻想のように燃えたぎる炎渦は、逃げ場を無くすように猿達の周りを囲いこむ。
ㅤそれは炎の嵐。火の精霊の力を借り、その権能を行使した彼女は、戦場の形を変えてしまった。
「ふふふ、私達は焼き猿を食べないけれど、大根ちゃん達はきっと「おいしい、おいしい」って言って根っこで栄養分を吸ってくれるから、命を無駄に奪った事にはならないわ!」
ㅤでぇ根の「えっ」という声は一層激しく燃え盛る炎に掻き消された。
ㅤそれに続くようにエルシア(8歳)がてしてしと業火を投げている。かわいいね。
ㅤやがてその場は更地と化した。猿達にとっての木々というアドバンテージはこの時点で完全に崩れ去ったのだ。
ㅤ──同時だった。
ㅤ二つの影が太陽の一部を隠す。
ㅤ一つはイズル。彼は聖晶の翼をはためかせ、上空へと飛びたった。夜告鳥の権能を身に降ろし、扇状に羽毛を振りまけば、たちまちのうちに猿達の動きが止まる。
ㅤそしてもう一つは──ドローンだ。しかし、それは陽動、いわば囮。
ㅤ本命はその下。猿達よりもまだ下。
ㅤ姿勢を低くして気配を殺しながら獲物の背後へと回り込んだTethは、呪詛を伴う雷をバラ巻き、猿達に迫る。
ㅤ上空にはイズル。
ㅤ背後にはTeth。
ㅤそして正面には──
「聖句より一節、『幾度の戦場を越えて不敗』」
ㅤ耳元に声を感じた大猿は、二度弾けた。
ㅤ樹里の放つ聖なるなんたらにより、言霊の弾を側頭部にぶち当てられたのだ。
ㅤそれを開戦の合図として、猿達が散開する。大猿はイズルの元へ。なんのことはない、適材適所だ。小猿はイズルに届かないが、大猿は届く。
ㅤそして小猿はTethへ。
「連れないなぁ。私では力不足かい?」
ㅤTethが嘯くが、大猿は意に介さない。
ㅤそのままイズルの足を掴むと、叩きつけるように地面へと振り下ろす。
「くっ、そ!」
ㅤ身を捩り受け身を取るイズル。
ㅤ多少のダメージを負ったイズルではあったが、それは大猿に明確な隙を作ったということでもある。Tethは小猿を掻き分けて大猿へと呪雷を放った。
ㅤ痛みに喘ぎ、イズルから手を離した大猿は横凪に腕を振るう。爪より分泌された毒が少量撒かれ、Tethへと迫る。
「オラオラァ! そんなんじゃ俺様は止まらねぇぞ!」
ㅤが、そんなものは無視だ。ノリと勢いで毒の効果をかき消したTethが大猿へと迫る。
●みんなやるみたいです
ㅤ戦況はイレギュラーズが優位だ。地の利を潰され、毒を気合いで跳ね返すイレギュラーズ達に猿たちは劣勢を強いられている。
ㅤがしかし、それでも抵抗はする。数の暴力によって少なくない傷をイレギュラーズへともたらし、確実に有意差を縮めようとしていた。
ㅤ傷を癒す必要がある。
ㅤそしてでぇ根へと視線が集まる。
「な、なんね」
「タバスコかけていい?」
「なんでぇ!?ㅤやぁよ!」
ㅤTethの問いかけに即答するでぇ根。
ㅤとかなんとか言ってる間に樹里がマヨネーズを背中にかけた。
「やぁヌメっとん!ㅤ背中が!」
「まずはひとくち。いただきます」
ㅤ樹里がでぇ根の背中をそのまま齧る。
「大丈夫、おいしいですよ」
ㅤサムズアップする樹里。どさくさでTethも齧る。
「……誰かさんを思い出す味なのは気のせいか」
ㅤなんか黄緑の女が手を振ってる気がした。
ㅤ言ってる間にも手は休めない。呪雷がイズルを避けるように飛来し、猿達に襲いかかる。
ㅤそしてイズルが戻ってくる。
「やぁでぇ根さん、ちょっとだけ齧らせてくれない?」
「なんねもう……なんなん」
ㅤ背中に噛みちぎられた痕を残したでぇ根が、まだやるかと信じられないものを見るような目でイズルを見る。
「大丈夫ちょっとだけだし、切れ味はそこそこいいからそんなに痛くしないからね……」
ㅤ切るってなに……とでぇ根が目で訴える。イズルはアルフュールを刃に見立て、でぇ根の右腕?ㅤを切り取った。
「ところでここにポーションがあるんだよ……大丈夫、光るだけだからね……」
ㅤカラフルに光りだしたでぇ根はなんとも言えない表情をしながら、同じくカラフルな腕を咥えるイズルを見ているしか無かった。
●ってことでね
ㅤ戦況も大詰めだ。小猿はほぼほぼイルシアの炎とTethの雷にて肥料にされてしまったし、大猿も幾度と傷を負い、ボロボロの状態だ。
ㅤだが、手負いの獣は恐ろしいもの。大猿は生命を燃やすように猛攻を繰り広げ、小猿の死体を振り回しながら4人に相対していた。
「さぁて、そろそろ終わらせるか」
ㅤTethの号令を合図に、全員が大猿を仕留めにかかる。
ㅤ口火を切ったのはイズルだ。持ち前の反応速度によって誰よりも早くその場を動かしたイズルは、大猿へと急接近した後、翼を大きく広げる。
ㅤ大量の羽根が指向性を持って襲いかかるが、猿はそれを振り払う。
ㅤだが、それだけで燃料としては充分だった。
「さぁ、最後はあなたですよ」
ㅤ肥料さん、と。イルシアが炎を投げ入れる。
ㅤイズルの羽根を可燃物として炎はより一層燃え盛り、とある物質を分泌する。
ㅤそれは致死の意をもった毒だ。燃える羽根を振り払おうとする大猿だったが、これもいわば囮である。
「これで終いだぁ!」
ㅤTethによって瞬間に2度打ち込まれた雷は、左右から同時に大猿へと叩きつけられる。
ㅤ結果、衝撃の逃げ場を失った二つの雷は大猿へ強烈にヒットし、その両腕を吹き飛ばして尚胴体へと炸裂した。
ㅤその場に倒れ伏した大猿だったが、まだ息がある。その生命力は凄まじかった。だが、それでも勝者は決まっていた。
「まだ動きますか。ではひとつ、『書き手はここに孤り』」
ㅤ口元にマヨネーズを残したままの樹里の聖句によって、大猿は完全に息絶えたのだった。
●
ㅤ大猿の討伐に成功したイレギュラーズのもとにでぇ根がてててと駆けてくる。ちなみにまだカラフルに光っていた。
「やったんね!ㅤこれでここはわんらのものね!」
ㅤぴょんぴょんと跳びながら喜びを表現するでぇ根。エルシア(8歳)も一緒になって跳んでいる。かわいいね。
「これで晴れて、ここはでぇ根のテリトリーって訳だ。で、この後はどうするんだよ? 畑にでもすんの?」
「それも含めて、ここをわんらの国にするんよ!ㅤ楽園ね!ㅤ名前は……まだなんよ!」
ㅤよかったら名前考えて!ㅤとテンションが高いでぇ根に問われる。
「つってもなぁ……名前か」
「らくえんのなまえ…スズシロの地、あるいはスズシロ農場とかどーでしょう」
ㅤシンプルなものの方が愛着もわくだろうと樹里が提案すれば、他のものも案を出す。
「『家庭菜園』とかどうかな?ㅤ親しみやすい名称で脅威を感じさせず、現実に気付いた時にはすっかり根付いているという訳さ……いや私は外来植物の定着には手を貸していないからね?」
ㅤフィールドセルという名の外来植物による遺伝子汚染に手を貸す事になってたりしないか心配するイズル。まぁここ隠しエリアだし大丈夫でしょ。多分。
「楽園の名前……翡翠の名前も入れてネックエメラルドはどう?」
ㅤ最後にイルシアが答えて、でぇ根がしばし思案する。
「じゃあ……国の名前はネックエメラルド!ㅤ通称家庭菜園!ㅤんでこの辺一帯をスズシロ農場っていう畑にするんね!」
ㅤ全部使うんよ、とでぇ根が嬉しそうに跳ね、ここ隠しエリアでのクエストは終了した。
ㅤ……その後、エルシアが作った鍋のようにしか見えない自称風呂にでぇ根が入れられたのは完全に余談である。
「私、森を拓いた事は許したけれど、耳長呼ばわりされた事は許してないもの……さあ、美味しくなりましょうねー?」
「ひぃ……!」
ㅤやっぱり耳長は怖かったということで。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
七草大葉です。開墾の時間です。
まずは邪魔なモンスターの討伐から。
●成功条件
隠しエリアにおけるボスモンスター「大猿」の討伐
●ロケーション
湖の中にある隠しエリアです。サクラメントはエリア入口である湖付近に存在します。
内部には外と同じように森が広がっており、そこかしこには木々が立ち並んでいます。
木々を利用した立体的な戦闘を行っても良いですし、邪魔なら辺り一帯を薙ぎ払っても構いません。翡翠じゃないので怒られることもないです。
●エネミー
・大猿
2mほどのおっきい猿です。手先が器用で木登りが得意です。武器は持ってませんが爪で引っ掻いたり木の枝などを武器にして襲ってきます。
爪先に毒を持っています。毒無効があれば確実に防げますが、無くても「むんっ」ってやったら気合いで何とかなります。
・小猿(いっぱい)
配下の猿です。いっぱいいます。大きさは1mほど。
特に猿同士で連携などはしませんが、ときどき大猿の武器にされます。
大猿と同じような毒を持っています。
●フィールドセル
植物の因子を強く発動させた種族タイプです。要は獣種や飛行種のようなもので、菜種と呼ぶこともあります。ROOにて自然発生した種族であり、混沌にはいません。
●でぇ根
本名デコンヌ・ラパーヌス。フィールドセル開墾代表の若大根。味方のNPCです。
切ってもすぐ再生します。食べたらHPとBSがいい感じに回復するので適宜活用してください。
尚、切られたら信じられないものを見るような目で見てきますが無視してください。
●おまけ
「フィールドセルの楽園」の正式名称募集中です。プレイングが余ったらでぇ根くんにこんなんええんちゃうかとか教えてあげてください。
●サンプルプレイング
……???ㅤよく分かんねぇけどあのボスモンスターをぶっ飛ばせばいんだな!ㅤ楽勝だぜ!!
木々を利用して三次元的な動きで敵を翻弄してやる!ㅤうりゃ!ㅤとりゃ!
毒?ㅤんなもん効くかぁ!ㅤふんっ!
よし!ㅤ死角に潜り込んで必殺の拳を叩き込むぞ!ㅤうおおおおおお爆発しろおおおおおおおおおお!!!!
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