PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ぬくぬく初夢パジャマパーティー

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●赤信号の意外な弱点
「ふえぇ……もう無理だよぉ」
「おい、ぐったりしてないで手を動かせ。仕事が片付かないだろ」

 境界図書館の事務机に並んで座り、『境界案内人』の神郷 蒼矢(しんごう あおや)と神郷 赤斗(しんごう あかと)は積み上げられた報告書の山と格闘していた。
 普段から怠惰な蒼矢はもうぐったり。集中力の糸が切れ、机に上半身を貼り付かせたまま一向に起き上がろうとしない。

「赤斗はよくそんなに長く集中力もつよね。僕はもーダメ。ちょっと寝かせて」
「なに言ってるんだ。俺達は無機物から生まれた存在なんだから、睡眠なんて必要ないだろ」
「は?」

 さらりと赤斗が告げた言葉に蒼矢は怪訝な顔をする。よくよく赤斗の目元を見れば、くっきりとクマが出来ていて、顔の血色もよくないようだ。睡眠が不要かと言われれば、答えは明らかにNoである。

「いや、赤斗。僕ら一応は人間みたいなものだからね?
 もしかして、同じ身体を共有してた時は僕が睡眠をとってたからよかったけど……分離してから、一睡もしてない?」
「そういえば、最近は突然意識が途切れて暫く時間が過ぎてる時があるな。そうか、俺も眠ってる時があったのか」
「いやいやいや! それ絶対、過労で気絶してるじゃん!!ちゃんと睡眠とろう!?」
「そう言われてもなぁ、どうやって寝たらいいんだか」

 こいつが雷に打たれたような衝撃というやつか。蒼矢は大きくのけぞった。
 いつもバリバリ仕事をこなして、クールな顔で何でもこなすあの赤斗が……眠り方が分からない? 本当に??

「仕方ないなぁ、そんなに眠り方が分からないなら、特異運命座標と僕が睡眠のよさを教えてあげようじゃないか!」
「はいはい。この書類が片付いたらな」
「だーかーらぁ、仕事より先に寝て休んでってばぁ!」

●初夢も近い事ですし
「そんなわけで、特異運命座標! 年末だし、初夢みたいし!一緒に年越しパジャマパーティーやろうよ!」

 異世界に行く前から眠る気十分、緑と白の水玉模様のパジャマを着こんだ蒼矢が、枕を掲げて無邪気に笑う。一方、突き合わされた赤斗はというと、いつも通りの仕事着のままだ。

「ちょっと赤斗、寝るための気合が足りないよ?」
「いや、寝巻とか特に持ってねぇし……」
「これだから睡眠肯定Lv.1は」
「勝手に変なステータス付けんなよ」

 悪態をつきながらも、赤斗は彼なりに、蒼矢が気遣ってくれているのだと察していた。
 はしゃぐ蒼矢を叱れもせず、集まってくれた特異運命座標へ少し申し訳なさそうに視線を送る。

「そういう訳で、蒼矢は俺達と一緒にパジャマパーティーとやらをしたいらしい。俺も勝手がよく分からなくてな。手伝ってくれるか?」

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 おそと寒いし、年末だし。一緒にパジャマパーティーを楽しみませんか?

●目的
『境界案内人』神郷 赤斗(しんごう あかと)にぐっすり眠ってもらう
 パジャマパーティーを楽しむ!

●登場人物
『境界案内人』神郷 赤斗(しんごう あかと)
 ワーカーホリックな境界案内人。信号機の赤信号が流れ星の奇跡を得て人の姿になった存在。
 口を開けば仕事の話ばかりで、元々無機物が人の姿を得た存在だからという理由で必要な睡眠をまったく取っていなかった。
 昼は境界案内人として忙しなく働き、夜は異世界にある自分のBarでバーテンダーをしている。
 本人は健康に異常はないと言っているが、目元にくっきりクマが出来ている。
 パジャマもなければ眠り方も分からない。寝る事に対して恐ろしくずぶの初心者です。

『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)
 仕事はしたくないが、困っている人がいれば一歩を踏み出すための力になりたいと思っている境界案内人。信号機の青信号が流れ星の奇跡を得て人の姿になった存在。
 ちょっと前まで赤斗と同じ身体を共有していたため、彼とは腐れ縁。はしゃぐのも眠るのも大好き。

●パーティー会場
<おやすみの国>というライブノベル。地面がふわふわの雲で出来ている夢かわファンタジーな常夜の世界です。
 ここにあるロッジを貸し切って、一晩を過ごします。リビングは集まった特異運命座標と境界案内人2人が寝ても特に問題ない広さで、お風呂やキッチン、生活に必要そうなものは大体そろっています。

●楽しむためのヒント
 ロッジの外には果物のように「枕のなる木」があったり、ホットミルクの流れる滝があったり、添い寝が大好きな夢ひつじの群れが歩いていたり。
 眠るために欲しいものは探索してみればいろいろ手に入りそうです。皆さんのイマジネーションが、きっと快眠の助けとなるでしょう。
 また、この世界にあるか分からないものも、蒼矢に頼めばきっと用意してくれます。もちろん、持ち込みも大歓迎です!

 説明は以上です。それでは、よい夢を!

  • ぬくぬく初夢パジャマパーティー完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年01月13日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
首塚 あやめ(p3p009048)
首輪フェチ
大蛇森 トーラ(p3p010285)
酒豪

リプレイ


 コテージのバルコニーで伸びをして、『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は一息ついた。
「足元がいつ抜けるか分からん妙な雲の地面だったり、空がやたらファンシーなピンク色ではあるが、空気は存外わるくないな」
「クヒヒ! 眠るにはいい環境ですよねぇ!さっきリビングを見てきましたが、皆で寝るには充分なスペースがありましたよ。赤斗さんも繋がれてとっても嬉しそうでした」
 と世界の言葉を受けて嬉しそうに笑う『首輪フェチ』首塚 あやめ(p3p009048)。最後の不穏な一言に世界はリビングの方へ振り向き、うわって顔をした。
 部屋の隅っこに鎖で繋がれ、赤い首輪をした赤斗が、死んだ魚の様な目で読書をしている。あれは完全に尊厳を諦めた男の顔だ。
「で、今回はどういう話をして赤斗に首輪を付けたんだ? 大体予想はついてるが、一応聞いといてやる」
「勿論、私の奴隷になりませんかぁって勧めたからですよ。調教して躾ければ、ちゃーんと眠れる様になる筈ですし!」
「時間はかかりそうだが、それなら依頼完遂だな。よし帰ーー」
 ドドドドド!
 帰宅しようとする世界を引き止める様に地鳴りが起き、遠くの方から砂埃を上げて何かが向かってくる。その正体を探るには非戦を使うまでもなかった。めぇめぇべぇべぇ、混乱の声が重なる。この国に生息しているという『夢ひつじ』の群れである。
「世界君、あやめ君、どいて〜~!」
 群れの方から聞こえた声は『酒豪』大蛇森 トーラ(p3p010285)だが、肝心の姿が見えない。
 とーー羊が一匹、群れからはぐれて逃げだした。すると群れの後方から灰色の影が飛び出し、羊の前に立ちはだかる。アライグマの着ぐるみパジャマを着た『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)だ。
「シャーッ!」
 彼の威嚇ではぐれ羊は群れに戻り、開いていた玄関の扉へ仲間と共に押し寄せる。ロッジが衝撃でびょんって跳ねた。最後に羊の追い立て役をしていたトーラが扉を閉めて退路を断つ。
「最初はね、ふわふわだし、ベッド代わりにいいかなって思ったの。こんなに羊を集めるのがハードだなんて……」
 脱力するトーラ。わかってたから留守番しましたって顔の世界とあやめ。ふと、アーマデルがコテージの方へ視線を向ける。
「そういえば、赤斗殿はどこに居るんだ?」
「コテージの中ですよ。首輪と鎖で括り付けておいたので――あっ」


「死ぬかと思った」
 羊の群れにもみくちゃにされた赤斗は、ぐったりしながらトーラへ借りていた本を返した。ちなみにこの一冊、トーラが読めば数ページで寝れるぐらい小難しい本なのだが……そこは流石の境界案内人といった所だろうか。興味深くて目が冴えた様だ。
「何はともあれ、これでベッドの準備は整った。赤斗殿、この夢ひつじを枕にしてはどうだ? 蒼矢殿にちょっと似てるから落ち着くだろう」
「本当だ、殴りたくなる顔してる」
 アーマデルはハッとした。そういえばこの境界案内人、赤斗と蒼矢でペアのわりにあまり仲良くないのだった。

「それにしても、依頼を聞いた時は驚きましたよ。眠るという行為は体全体を休め、調整する所謂『体のリセット機能』。最高のパフォーマンスを仕事で発揮する為にも、最高の眠りは必要不可欠なんですよ? 出来る仕事人は休みをちゃんと取るものです。そんな訳で引き続き首輪ライフを謳歌しながら私の奴隷になりましょう」
 あやめも赤斗を想って言ってくれているのだろうが、後半に余計な話が加わる事で不信感が拭えない。いつも以上に眉間に皺を寄せて疑りはじめた赤斗の方へ、
「まぁ、任せておけ。俺に秘策がある」
 そう言って一歩踏み出したのは世界だった。懐をまさぐり、パッキングされた小さな袋を取り出す。
「コレを渡しておこう。どうしても眠れぬ時に飲むがいい」
「世界君、それって睡眠導入剤? 確かに眠りやすくはなるけれど……パジャマパーティーは?」
 トーラは確かに的確な指摘をした筈だった――が、世界は眼鏡のブリッジを人差し指で押さえてフッと笑う。
「そもそも、パジャマパーティーというのは仲のいい友人と行うものであり、そいつらと夜遅くまで楽しい会話で盛り上がるものなんだろう?
 だがここに集まったメンバーを見て欲しい。俺にとってはそれなりに面識のある相手が多いが、特に目的もなく一緒に過ごすとなるとさすがに気まずい」
――そう。彼は『恋愛絶縁体』という言葉をわが物とする男。一緒に名声を稼いでも、イコール好感度が上がる……とはならない!
 ふむ、とアーマデルが考え込む。
「世界殿の知っているパジャマパーティーは、俺が知っているものと少し違うな。夜を徹して語り合い、寝ようとする者がいれば「眠るな、眠ったら死んでしまうぞ」と叩き起こし、「ゆうべはおたのしみでしたね」と送り出される厳しい集いだと聞いていたが」
「夜に語り合う、という点でいえば世界さんもアーマデルさんも意見は一致という事ですねぇ」
 うんうんと二人の意見を聞いて頷き、無理くりまとめてくれる『首輪が絡まなければマトモ』なあやめ。
 それなら、とトーラは何処からともなく立派な日本酒の瓶を取り出して、仲間達へと掲げてみせた。
「パーティと言ったらお酒、睡眠といったら寝酒でしょ? ノンアルも持って来たから、皆で盛り上がりましょ!」
「ハラショー! これ以上ないってくらい最高の作戦っすわ!!」
 突然テンション高めに拍手する女性が現れる。アーマデルと行動を共にする霊魂、酒蔵の聖女である。出会ってしまった酒豪と酒クズーーこうなれば、夜の宴は止まらない!
「クヒヒ! それじゃあ着替えが済んだら皆さんこのリビングに集まって、お酒を飲んでぱぁっと眠りましょうか! 赤斗さん&世界さんと仲良くなるために!」
「おい待て、俺の事は余計――」
 世界の話を聞く前に、行きましょうとあやめはトーラの背中を押して脱衣所に行ってしまった。言い逃げされたと半眼になる。
 男性陣が淡々と着替えを終えた頃、お色直しした女性陣が戻って来た。
「お待たせー!」
 明るく笑うトーラの姿は――そう。
「出立前と変わらないジャージじゃねぇか」
「えー、世界くんもジャージ派だったんだ」
 トーラにとっては使い慣れたジャージこそが至高の寝巻だったのだ! イモいだなんて言ってはいけない。彼女いわく、中身は結構凄いらしい。
 対して世界は青いズボンのジャージだが、トーラと違う点があるとすれば『脱力主義』とでっかく描かれた白いTシャツである。これはこれでダサ……個性があると言えよう。
「クヒヒ! 世界さんはそういうTシャツがお好きなんですね。今度『あやめの奴隷』と書いたTシャツを贈っても?」
「届いたら、その日のうちに刻んで雑巾がけに使うからな」
「それは残念です。まぁ、私の奴隷になった暁には上等なパジャマを用意して差し上げますけどね!」
 と言うあやめは本当に上等そうなバスローブを着ている。愛らしい狼の耳と尻尾も相まって普段以上のセクシーさだ。なんだか敗北感を感じて、トーラは視線を赤斗へ逸らした。
「赤斗くんは普通のメンズパジャマなんだね」
「別にジャケット脱げばそれでいいと思ったんだが、アーマデルが……」

『良質な睡眠をとるには、着るものも大事なのだそうだ。絞めつけ過ぎず、暑過ぎず寒すぎず、寝返りを阻害してはいけない
 細分すると……男は自分の城(自室)では常にフリーダム全裸派、寝る時全裸派、ぱんつだけは穿く派、逆にぱんつは穿かない派がいる』

「とか言い出すから、在り合わせで着ざるを得なかった」
「アーマデル君の作戦勝ちだね!」
「北風と太陽、というやつだな」
 全裸を勧める事によって、あえて最適な服へと着替えさせる――交渉の上級テクニックである。

 夜のコテージから賑やかな宴の音がする。
 かんぱーい! と重なる元気な声と、グラス同士がかち合う音。ハイペースで飲むトーラと酒蔵の聖女はすっかり意気投合して、あれやこれやと盛り上がっている。
「トーラさんのお酒のチョイス、わかりみ深くて聞いてるだけで酔えるっすわ~」
「でしょう? 聖女ちゃんにも楽しんでもらえてよかった! それにしても、寒い日は日本酒が身体に沁みるよね。おまけに世界くんがくれた麦チョコ、これが肴にピッタリで本当にびっくり!」
「個包装で配りやすいしな。そのメーカーのは俺も気に入ってる」
 世界は団らんの輪から一歩退いたところで、ホットミルクを飲んでいた。穏やかな時間を好む彼なりに、パーティーへ参加しようとした結果だろう。
 アーマデルはというと、あやめに何やら吹き込まれている様だった。
「大切だと思う人が何処かに行ってしまいそうなら、首輪をプレゼントすればいいんですよぉ! これなんかどうですか?」
「そうか、首輪か……。着け心地が悪くなければ着けるだろうし、贈ってみるのは確かに良いのかもしれない」

 こんなに賑やかな夜を過ごしたのは久しぶりだと赤斗は思う。トーラに勧められたラクは口当たりもまろやかで、酒だと忘れる程についつい飲み進めてしまう。
「赤斗さんは普段、どういうお酒飲みますー?」
「酒は仕事で飲む事が多い。普段はバーを経営していて、カクテル…を…」
 うとうと船をこぎはじめる赤斗。横になろうとした所へ、あやめが寄り添いポンポンと頭を撫でる。
「何も心配いりませんよ。貴方は今は私の奴隷なんですから」
「そうか……そうだな…」
 優しさに包まれ、そのまま目を閉じる赤斗。仲間達が静かに目配せする。依頼は文句のないくらい成功のようだ。
 起こさないようにそっと彼の方へと近づき、コンシーラーでクマを隠してやるトーラ。ついでにオマケで額へと、こっそり「肉」と書いてみる。
 翌朝どんな反応が返ってくるだろう? 特異運命座標は互いに予想を語り合う。楽しく過ごそう、眠くなるまで。パーティーはまだ続く――

成否

成功

状態異常

なし

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