PandoraPartyProject

シナリオ詳細

-月面城塞都市-Dreamlands

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●それはいつ、何処にでも起こりえる悲劇
 私は、存在するのかな。
 家族も友達も、全部ぜーんぶ消えちゃった。
 穴だらけの月面に、ひとりぼっち。ひとりきり。
 血の通わない身体でも、自動人形(アンドロイド)は生きている。
 だけど……誰にも知られない一生なんて、死んでいるのと同じこと。

――救ってやろうか?
「……誰?」

"かみさま"と会ったのは、心が折れそうな時だった。

――我は遠き星の王。存在の証を欲すなら、我がそなたの元へ参ろうぞ。
「来てくれるロボ? ひとりぼっちじゃなくなるロボ?」

 囁きは慈雨の様に耳へ届く。嗚呼、それが地獄の始まりだと気づかずに無垢な少女は手を伸ばした。

「かみさま、かみさま。どうかお願いしますロボ。証をください。シロロがここに生きてる証を……」

 掴んだ手は、しかし――ぬらりと妖しげな、白い鱗の異形の掌。鋭い爪がシロロの手に食い込み、ギチギチと軋ませる。

「い、痛い! やめて……どうして、っ!」
――逃さぬぞ、鋼の兎。我との契約からは何人たりとも逃れられぬ。そう、奇跡でも起きぬ限りはな!
「ぁ……あぅ……」
――ククク……アッハハハハ!!

●願いの代償
「特異運命座標とシロロの元へ、貴方達へ月面から招待状が届いたわ」

 血の様な紅い封蝋を見せ、『境界案内人』ロベリア=カーネイジは口元にゆるりと笑みを浮かべた。

「差出人は『嗜虐王』ムーン=ビースト。あらゆる望みを歪に叶え、獲物がもがく様を見てたのしむ愉悦の王。
 奴は今、月面の住人シロロとの契約を盾に異世界ドリームランドを侵略している。貴方達をお城へ招待するそうよ」

 不吉な名の響きの通り、向かえば特異運命座標は文字通り"歓迎"されるだろう。ムーンビーストの奴隷"人間もどき"の猛攻で。

「奴は王でありながら、恐るべき邪神を崇拝しているわ。捕まれば恐るべき神の贄にされるか、奴隷にされるか……想像したくもない未来が待っているでしょうね」

 言葉とは裏腹に、ロベリアの声は楽しげに弾む。

「貴方達が絶望に歪む顔も、それは大切な物語のうち。嗚呼、でもぽっと出の悪王ごときに奪われるのは癪よ。
 私だって、まだ貴方達と"たのしい事"をし足りていないのだから」

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 少女の寂しさにつけ込んだ悪を倒しましょう!

●目標
 敵の城塞『ドリームランド』に突入し、襲い来る人間もどきを倒しながら、最深部にいるムーン=ビーストを討伐する

●ライブノベル『Dreamlands(ドリームランド)』
 月の裏側を切り出したような異世界です。城内は不思議な力で引力が働き、足場のペナルティもありません。
 視界も良好で見通しはよく、柱などはあるものの、大きく遮蔽物として邪魔になるような物はなさそうです。
 一階の入口から道なりに続いている赤い絨毯にそって行くと、ボスであるムーン=ビーストのいる『王座の間』へ辿り着けます。


●特殊ルール『未知との遭遇』
 このシナリオで登場する敵は遠い宇宙からの侵略者達。無辜なる混沌の常識は通用しません。
 転じて――敵に対しては、宇宙人が触れた事のなさそうな文化を見せつけると衝撃を受けてデバフがかかります。

●エネミー
 人間もどき×いっぱい
  角と蹄を有する人間のような生物。ムーン=ビーストの奴隷であり信仰者です。
  みな一様に太い首輪を首につけており、角での頭突きや蹄での蹴りのほか、ボウガンで遠くの獲物を攻撃してくる個体もあります。
  攻撃には【出血】のBSがつく場合があるようです。

『嗜虐王』ムーン=ビースト
  爬虫類の肌をした女型の化け物。二枚舌での攻撃や血を固めて作った槍の投擲で攻撃してきます。
  攻撃力はさほどではありませんが、城内にいる信者達の信仰の力で自身を癒すため非情にタフです。

●その他登場人物
 シロロ
  ふわふわの兎耳をもつ少女。口癖は「ロボ、メカ」で、自身を子兎アンドロイドと認識しています。
  大好物はニンジンで、月面基地(小型船)に暮らしながらニンジンを食べて生活しており、今回はムーン=ビーストに呼び出されたため、おっかなびっくりついて来る事になりました。戦闘力はないようです。
  シナリオ『月面からのSOS』で特異運命座標に出会った事をきっかけに、懐いています。
  
『境界案内人』ロベリア=カーネイジ
 元いた異世界では『解放の聖女』と呼ばれていた妖しげな境界案内人。
 善意で働いているというより、何か目的があって特異運命座標たちに力を貸し続けているようです。
 いつも足をベルトで拘束しており、神秘術を使って浮遊して移動しています。
 戦闘力は自衛が出来る程度。呼び出されれば簡単なサポートを特異運命座標にしてくれるようです。

●補足
 こちらは『月面からのSOS』の続編となりますが、前回未参加の方もお楽しみいただけるシナリオです。
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/6814

 説明は以上となります。それでは、よい旅路を!

  • -月面城塞都市-Dreamlands完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年01月02日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ボーン・リッチモンド(p3p007860)
嗤う陽気な骨
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
首塚 あやめ(p3p009048)
首輪フェチ

リプレイ


 月面に聳え立つ白亜の城は、『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)が想像していたテーマパークよりも内外共に寂しげな景観をしていた。ポップコーンワゴンも無ければ、ライド系のアトラクションもない。
「ドリームランド……ゆめのくに…もみっ●ぃーまうす…」
 連れて来てもないのに鼠耳の( ・◡・*)の姿が脳裏を過る。いけない、敵に未知との遭遇をさせる前に自分が危ないナニカと邂逅してしまいそうだ。
「異界の類は未知の危険に満ちている事が多いが、ここはことさらに危険があぶない……」
「おい、何で侵入した時点でもうそんなに疲弊してるんだ?」
 突飛な彼の思考を流石の『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)も読み切れず、また何か妙な事を考えているなと半眼になった。
「さて、今回の雑魚的枠の人間もどき。俺の記憶が確かなら以前戦った奴と同様。となればその親玉のムーン=ビーストとやらがすべての元凶ってわけか」
 当時の映像(ログ)を見返すまでもない。獣じみた唸り声と共に訪れた特異運命座標を囲みはじめる人型の異形達は、以前このライブノベルを訪れた時に見た姿だ。新たに追加された情報で弱点まで分かったとなれば、対策は容易いだろう。
(なんか宇宙人には無さそうな文化を見せればどうにかなるらしいが、面子の中に明らかにやべー奴いるし、それこそアイツ一人でどうにかなるだろう)
 噂のアイツこと『首輪フェチ』首塚 あやめ(p3p009048)はある意味、世界の期待通りだ。襲い掛かる人間もどきの首輪に繋がれた鎖を引いて引き寄せ、一纏めにして投げ飛ばす。
「えぇ、えぇ! 前回同様、素敵な首輪を着けているじゃありませんか!
 クヒヒ!『嗜虐王』ムーン=ビースト直々のお誘いとは、奴隷商人冥利に尽きますが……かの王は私と相容れない様で、残念ですよ…とてもねェ!」
 嗜虐王は、人間もどきの戦闘力では招待客を止めるに至らないと分かっている。それでいて逢えて防衛に寄越したのだ。――使い捨ての駒として。
 あやめはそれを許容しない。奴隷とは家族に等しいものだ、消耗品の様に扱われては、『慈愛のザントマン』として見過ごせない。
「シロロさん、私より前に出ないで下さいねぇ。貴方への詐欺師紛いの不当な契約も一商人としては看過出来ない事ですから」
「ありがとロボ。シロロ…寂しかったけど、やっぱりこんなの間違ってるロボ。人間もどきさん、何だかとっても辛そうロボ」
「シロロちゃんがそう言うなら、何も遠慮はいらねぇよな。俺達に任せろ!絶対に助けてやる」
 名乗り口上であやめがシロロを守る限り、彼女への危害は心配ないだろう。ならばと『嗤う陽気な骨』ボーン・リッチモンド(p3p007860)は骨の指先を虚空に差し伸べ、Etheric O――青白い霊体のヴァイオリンを顕現させる。
「それで、皆どうやって人間もどきを弱体化させるか考えて来たのか?」
「嗚呼。あやめ一人に負担をかけるのも何だからな。来れるか、ロベリア」
 世界に呼ばれ、ふわりと隣にロベリアが現れる。
「貴方が私に声をかけてくれるなんて、珍し……きゃっ!?」
 事前に何も聞いていなかったようで不思議そうな顔をする彼女をいきなり抱え上げ、ベルトで束縛された足を人間もどきへ見せつける。
「首輪しか束縛の深みを知らない宇宙人ども、刮目して見ろ! これが本格的な緊縛プレイってやつだ」
 それは確かに人間もどきにとっては衝撃的な文化だった。ざわめきと共に動揺が広がり動きが鈍る。確実に効いている!
――が、その代償は計り知れなかった。
「んぐー!」
『Japanese DOGEZA』で謝りお茶を濁そうとしていた世界だったが、ロベリアの反応が早かった。
 口にボールを噛まされ腕をベルトで縛られ、ガチガチに戒められて床に転がる!
「そんなに縛られているところを見せつけたいなら、先に言えばよかったじゃない」
「世界の旦那、よかったなァ。そいつはロベリアちゃんなりのご褒美だぜ」
「むぐぐぐー!!(いや絶対、怒ってんだろこれはー!)」

 宇宙人は異なる文化からの精神的衝撃に弱い。練達のてれびとやらで見た通りだとアーマデルは今回新たに仕入れた弱点の情報に納得していた。あの番組になぞらえるなら、まず服装はそう――アイドルの服でなければ!!
「こす…ぷれ…? あらいぐまでる……み、みこめいど…くっ(苦悶)」
 確かに自分の故郷には無かった文化だ。宇宙規模となっても見目新しいに違いない。
「しかし、何故ミニスカなんだ? 男が着るんだから、こう……他になかったのか?」
 事前に相談した『境界案内人』蒼矢(あおや)がノリノリで用意してくれた歌姫の服を纏い、事故が起こらない様にと内股気味に立ちながらアーマデルはキラッ☆とポーズで身構えた。おぉーっと人間もどきの間で歓声があがる。
「しかし、歌……歌か…」
「曲の演奏は任せとけよ、アーマデルちゃん」
「ボーン殿、俺は男であって『ちゃん』付けはどうかと思うのだが」
「このまま歌って王座の間まで進もうじゃねぇか、音楽っていう文化の偉大さ、見せつけてやろうぜ!」
 コンサートマスターたるボーンのヴァイオリンの音は、戸惑っていたアーマデルさえも本気にさせる。フリルの付いた和巫女アイドルコスチュームで振り付けさえも完璧に、ローアングラーを蹴散らしながら、旋律を奏でて進む! 目立ちまくる行軍に、ふとあやめが閃いたのは。
「王の王たる所以は下々の者がいてこそ。……クヒヒ! いい"策"を閃きましたよぉ!」


 人は欲なくして生きられない。明日を生きるというささやかな願いすらも言い換えれば欲望だ。
 王座の間では儀式の準備が粛々と進められていた。嗜虐王の崇拝する邪神は常に変化を望み、代わり種を好んだ。
「心を持つアンドロイド、異世界からの来訪者。それらを生贄に捧げれば、月の覇権は我らが手中!」
「それがアンタの目的か、嗜虐王」
 バンッ! と音を立てて開け放たれる扉。流れて来るアイドルソングと共に、拘束された世界が部屋へ転がされる。
「……何?」
「むぐぐ……ぷはっ! 見世物じゃねぇぞ!」
 ようやく口を塞ぐボールが外れ、ぜぇはぁと肩で息をする世界。その後ろから現れたのは、心弾む旋律を奏でるボーンと、フリルを揺らして歌い踊るアーマデルだ。
「いや、どう見ても見世物であろう?」
「くっ……少しでも大衆の目を逸らそうと囮(同人Blu-ray)まで用意したのに、無駄にボーン殿の奏楽で盛り上がりすぎて囮の意味を成さなかった。お前たちには書店で原作本の隣に積まれたあんそろむっくとやらを間違えて購入してしまう呪いをくれてやろう」
「カッカッカ! そりゃアーマデルちゃんの歌とダンスが可愛かったからじゃねぇのかい?
 さて、チェックメイトだ嗜虐王。大人しく縛につくなら痛い目見ずに済むぜ」
 縛につく、と言われて思わず世界を見る嗜虐王。こっち見んなと睨みつける世界。
「フン。ここまで無事に切り抜けられた事は褒めてやろう。だが、警備にあたっていた奴隷は我が駒のうちの一握り。さぁ、王たる我が命ずる! レンの人間もどきよ、客人を屠れ!」

 しん……と水を打った様に一瞬、辺りが静まり返る。
「どういう事だ? なぜ命令をきかない!?」
「当然でしょう、彼らは駒でも消耗品でもない。主人の嗜虐を辛いと思えば"新たな主人"につくまでです」
 多数の人間もどきを従え、あやめがシロロと手を繋いで現れる。信仰蒐集――歌と踊りに惹かれた人間もどきへ、あやめはより良い労働環境と福利厚生を提示し、特異運命座標の方へと寝返らせたのだ!
「ムーン=ビースト……貴方はここで終わりなさい。私としては貴方の首輪のセンスは結構好みでしたが…奴隷の扱いがなっていません。来世からやり直しなさい!」
「おのれ小癪な真似を――ッ、!?」
 二枚舌を露わにし、吠えたくりながら紅き槍を現わすムーン=ビースト。彼女はそれが、あやめの『名乗り口上』による挑発だったと気づけない。ほぼ同時、白蛇がその腕に絡みつき、深々と牙を立てて噛みつく。『身軀を黒き呪に染めて』――放った世界は、ニヤリと唇の端をつり上げた。
「……おっと失礼、正々堂々奇襲を仕掛けるのが俺の出身地の文化でね」
「貴様ぁあっ!」
 怒りに生まれた隙は一瞬。されどそれを見逃さぬ戦歴の猛者がそこには居た。
「ボーン殿、行くぞ!」
「応とも、アーマデルちゃん!」
 アーマデルの蛇鞭剣ダナブトゥバンが鱗状の刃を煌めかせ、ボーンの落首山茶花が軌道を惑わす。鋭い双撃は王の急所を逃す事なく。
「馬鹿、な……」
 ゴトン、と重い音をたて、その首は地へと落ちた。


「よし、こんなモンか」
 嗜虐王は、人間もどきの意向もあってそれなりに丁重に弔われた。完成したばかりのお墓へ祈りを捧げた世界は、五体満足に動ける自由を噛みしめる。背後ではボーンが賑やかな一曲をシロロへ贈り、早くも宴会が始まっていた。
「戦いは終わったのだろう。俺は着替えても良かったのでは?」
 歌姫のコスプレをしたまま、死んだ様な目でファンサを振りまくアーマデルと、それをカメラで激写する人間もどき。彼らの首にはあやめが新調した、新しい首輪が光っている。
「嗜虐王の首輪が知能低下の呪い付きの代物だったとは! 人間もどきさんも、本来は人並みに知能があったのですねぇ」
「お友達、いっぱい出来たロボ! 皆、ありがとうロボ!!」
 シロロも友達が沢山出来て嬉しそうだ。無垢な笑顔を目にし、ロベリアの口角がほんの少し上がったのを、ボーンは見逃さなかった。
「ロベリアちゃんも嬉しそうで良かったぜ」
「まさか。物語がひと段落して安心しただけよ。……ただ」
 その瞳が遠い場所を映す。月よりも果ての、弾き出された故郷の異世界。
「もっと早く、ボーン達と出会えていたら……私にも幸せがあったのかしら」

成否

成功

状態異常

なし

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