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シナリオ詳細

空飛ぶお刺身ちゃんキャッチャー!
空飛ぶお刺身ちゃんキャッチャー!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●オサシミィ
 見よ、あの大空を!
 かなたより来たるあまたの影を!
 毎年この季節になるとやってくる、『渡りオサシミ』の群れを!
「いい波がきとるわいィ……」
 年老いたオサシミハンターは、真っ白ふさふさな眉毛に埋もれさせた目をほんのわずかに、しかしギラギラに光らせた。
 右手には川魚さんをとるような大きいすくい網。
 左手にはお醤油の瓶。
 その後ろに並びまするは、毎年のオサシミ漁に心血をそそぐジジイ軍団。
 みんなして手に網を持ち、誰もが目をぎらぎらにしていた。
「とろけるトロの食感、ぷりぷりのエビの食感。それを思い出すだけで百歳は若返るわい」
「オレなんて一週間前から酒を断ってるんだ。とれたてのオサシミで呑む酒のうまさを思えば……へっ、なんてこたぁねえよ」
 鼻の大きなジジイが手をぷるぷるさせながら唱えた。武者震いである。禁断症状ではない。
「ワシらの青春がここにある」
「いざ共に参ろうぞ」
「オサシミ漁の」
「はじまりジャーイ!」
 遠くに見えまするは、空を舞う無数の魚群――否、オサシミ群。
 目をギラッギラに光らせ充血させまくったジジイ軍団は!
 一斉に飛び上がり!
 一斉に叫び!
 一斉に網を振り上げ!
 一斉に――腰をグキッてイわせた。
「「あっ」」


「かわいそうに、おじいちゃんたち……あんなに楽しみにしてたのに、今年のオサシミ漁ができなくなってしまったのです……」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はハンカチを目元にあてながら、しおしおとそこまでの経緯を説明してくれた。
「けれどおじいちゃんたちは諦めなかったのです。自分たちが動けないぶん、ギルド・ローレットに漁の代行を依頼してくれたのです。
 おじいちゃんたちのぶんまで……オサシミ漁に出るのです!」

 説明しよう、オサシミ漁とは!
 無辜なる混沌(フーリッシュ・ケイオス)ではわりかしポピュラーな漁のひとつ。
 オサシミという渡りサシミの一種を、丘をわたる際にとるという伝統漁業だ。
 みんなも知っての通り(知っての通り)オサシミとは海洋(ネオ・フロンティア海洋王国)の周辺海域で産卵し、成長して空を飛び、大陸を西へ一週してまた海洋へ戻ってくるという生物だ。
 トロやイカ、エビやホタテといった種類が有名だが、サーモンやフグやタイといった種類も人気がたかい。
 そのぷりっとして、いつ食べても新鮮なカンジがする食感。
 そしてどう見ても魚の切り身のちっちゃいやつなのにふわっふわ飛んでる不思議な姿。
 オサシミはこの地方にすむ人々にとってのソウルフードでもあるのだ。
 漁の方法は簡単だ。
 『オサシミ』が通過する高原地帯に待機し、群れでやってくる所を網でとる。
 巨大な投網やその他色々を試した者たちもいたが、オサシミの群れが警戒して丘を通らなくなってしまうことから、網方式が定着したという。
 オサシミは網で取れ、とはオサシミキャッチャーたちの格言だ。

「専用のとっても頑丈な網を貸して貰えるのです。これをつかって、新時代のオサシミキャッチャーになるのです!」

GMコメント

 ご機嫌いかがでしょうか、プレイヤーの皆様。
 どんな季節にもお刺身は美味しいもので、あのごちそう感はたまりませんよね。
 私はオーソドックスな醤油にワサビをきかせるのが好きなのですが、皆さんはどんな食べ方がお好きですか?
 あっそうおうお刺身と言えば前に美味しいお店を見つけまして、ホタルイカのお刺身を出してくれるのですがこれが恐ろしく美味しいのですね。なぜだろうと思って醤油をひとつまみしてみたら、なんとびっくりコクの塊。ご飯にかければ卵無しで卵かけご飯になるのではと思うほどでございました。さらには塩はゆず胡椒と混ぜたもので、そこいらの食卓塩が砂かなにかに思えるほど高級な岩塩が、刺身のおいしさを過剰なほどに引き立てるのです。どう過剰かって、しばらくの間その塩だけつまんで日本酒をあおるほどで……ハッ! 依頼解説がまだだ!

【オサシミ漁】
 アルプスの少女が駆け回りそうな丘の上、すくい網(棒の先端に輪っかと網がついたやつ)をもって、ふわーっと飛んでくるオサシミの群れをキャッチしてはカゴに入れキャッチしてはカゴにいれを繰り返します。
 沢山とれればそれだけおじーちゃんたちが喜んでくれます。っていうかおじーちゃんたちが(寝てろつったのに)総出で様子を見に来てくれています。わかんないことがあったら教えて貰いましょう。

 ただ網を振り回すだけじゃ芸が無い、とお思いの際はぜひぜひ攻撃スキルや非戦スキルと組み合わせてみてください。
 ちょっと変わったオサシミ漁スタイルが生まれることでしょう。

 沢山とれたらお裾分けタイムです。つまみ食いタイムともいいます。
 おじーちゃんたちが醤油や地酒をここぞとばかりに持参していますので軽く酒盛りっぽくなるのですが、『酒盛りの差し入れなら任せろ』という方はぜひぜひお持ちよりください。

 そういえば成功条件の説明がまだでした。
 『オサシミをたくさんとる』です。
 たくさんといったらたくさんなのです。

【余談】
 相談中、みんなして『渡りオサシミ』のことを昔から知っていたかのように会話すると、混沌世界感にどっぷり浸れてお勧めです。地球人っぽいウォーカーの皆さんが困惑するさまを楽しみましょう。
 あと言うまでもないこととは思いますが、オサシミは皆さんの想像するオサシミと大体同じ食感のヤツです。渡り鳥みたいにとんでます。

  • 空飛ぶお刺身ちゃんキャッチャー!完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年01月28日 21時25分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

カタリヤ・8・梔(p3p000185)
唇に蜜
セアラ・シズ・ラファティ(p3p000390)
flawless Diva
栂瀬・なずな(p3p000494)
狐憑き
ミミ・エンクィスト(p3p000656)
もふもふバイト長
モルフェウス・エベノス(p3p001170)
堕眠
ハウザー(p3p002546)
賢智の魔王
徨影 彌夜(p3p002745)
未熟なクノイチ
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
キールで乾杯

リプレイ

●渡りオサシミの季節がやってきたよ!
 風に靡くつば広帽子のふちをつまみ、『灰かぶりのカヴン』ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)は風になでられてゆく丘を見ていた。
 視線を上げれば白い雲。
 青い空。
 そして色とりどりの渡りオサシミ。
「オサシミって、お酒にとっても合って、大好きですわ。これでも私もオサシミキャッチャーになれますのね」
「海にいたころはよく見かけましたが……丘で見るオサシミは豪快ですね」
 おっとりと呟く『flawless Diva』セアラ・シズ・ラファティ(p3p000390)。
 青空のような髪がさらさらと風に靡いていた。
「これを今から網でとって、新鮮なものをいただけますのね。胸が高鳴りますわ」
「皆様、楽しみにしていらっしゃるのですね」
 振り向けば、腰にサポーターをつけたおじーちゃんたちが目をキラキラさせて並んでいる。
 楽しみにしているのはミディーセラたちばかりではないのだ。
 その一方。
「ほ、ほんとに浮いてる……飛んでる……現実ですか、これ?」
 『狐憑き』栂瀬・なずな(p3p000494)のめがねがおおきくずり落ちていた。
 両手でふちをはさむようにしてなおすなずな。
「やっぱり、ここは地球でも日本でもないんですね。皆さんこの光景を受け入れて――」
「飛んでるでありますな! どうやて飛んで……いやそもそもどうやって生きてるんでありますかー! オサシミー!」
 『未熟なクノイチ』徨影 彌夜(p3p002745)が目をくしくしとこすっていた。
 皆全然受け入れてなかった。
 きょうのウォーカーさんたちはオサシミが飛ばない系の世界から来ているらしい。
「俺様は突っ込まんぞ。絶対にな。突っ込んだら負けだからな」
 その横で堂々としている『魔王』ハウザー(p3p002546)。
 オサシミが単体で生きてて尚且つ渡り鳥みたく大陸を横断するとかどういうことだよ、という突っ込みをスルーパスしていた。
「いやはや……」
 くせっけを手でわしゃっとかき上げる『堕眠』モルフェウス・エベノス(p3p001170)。
「ながく生きてきた身ではあるが、こんな光景を見るのは初めてだ」
 かき上げる動作で服の肩紐がゆるんでずれかける。目を見開いて振り返るおじーちゃん勢。
「こっち見てください。この振り方で良いんでしょーか?」
 網をシャッシャッと降っていた『もふもふバイト長』ミミ・エンクィスト(p3p000656)がおじーちゃんの肩をつついた。
「おっといかんいかん。どれもう一回」
「こうですかー?」
 しゅわーんと網をふるミミに、おじーちゃんたちがうんうんと頷いた。
「筋がいいわい」
「若いと覚えが早いのう」
 そんな中、なんでか頬に十字傷のある傭兵みたいなおじーちゃんが腕組みしたまま黙っていた。
「こいつは気にせんでいいよ。一番腕のいいキャッチャーだけど、人見知りするから」
「あら、わるいこ」
 『唇に蜜』カタリヤ・8・梔(p3p000185)は髪を美しくかき上げると、腕組みするおじーちゃんの耳元に唇を寄せた。
「ねぇ、私たちだけのヒミツにしましょう? オサシミのとりかたを教えて、おねがい」
「ふへっ、しょーがねえなあ」
「「おちたじゃと!?」」
 カタリヤはハニーシロップのようにとろんと微笑んだ。

●オサシミを狩る者たち
 帽子を押さえて上昇するミディーセラ。魔法で飛翔した彼女の視界はみるみる丘の草を小さくし、大地を遠いものとした。
「みなさま、予定の場所へ」
 ミディーセラは腕を広げ、わざとオサシミを怖がらせるように威嚇を始めた。
 丘に入ると天敵に喰われないようにと大きく広がって飛ぶオサシミだが、ミディーセラが一部の流れを意図的に誘導したおかげで仲間たちの待機するエリアへといくらかのオサシミが集中した。
 その調子その調子と言わんばかりに、地に伏せた徨影が小さく手招きをする。
「今であります!」
 ぐっとひいたヒモに連動して持ち上がる網。
 集中したオサシミが動きをぐっと制限されるなか、徨影は絶妙な距離から襲いかかった。
 クナイを逆手に握った徨影は川の激流がごとくすいすいとオサシミの群れの中をすり抜けていく。
 大地に片手をついてブレーキ。背後では無数のオサシミがはらはらと落ちていく。
「むっ、あれは……!」
 おじーちゃんたちが額に何かをぴきーんとさせて身を乗り出した。
「かつては爆破や電流を用いた乱暴な漁法が横行しオサシミに嫌われかけていた丘を漁場として復活させた伝説の技――柳!」
「オサシミの筋を殺さず優しく切りつけ最低限に殺すその手際、見事なり!」
 なんだこいつらはという目でおじーちゃんたちを見るモルフェウス。
 彼女は彼女で網をとり、ひたすらにふりまくっていた。
 暫くふりまくってから息を切らして休憩。ドリンクをがふがふ飲んでエナドリチャージすると、キリッとした顔で振り返った。
「一人でとれる量には限界がありそうだ。協力しよう」
「いいだろう!」
 それまで網を投げては高いところのオサシミをとりまくっていたハウザーがカッと振り返った。
 モルフェウスの投げたドリンクをキャッチして飲み干すと……。
「遠術で撃墜する」
 だから着地点で構えていろとジェスチャーで示すと、ハウザーは頭上を通り抜けようとするオサシミへと遠術をうちまくった。
 術をくらって落ちてくるオサシミを広げたカゴで受け止めていくモルフェウス。
 それでも抜けていくオサシミたちは乱れて散ったが……。
「なんだかこれ、懐かしい感じがするですね……」
 網をしっかり握り込んだミミが逃げるオサシミを追いかけて走った。
 とうっ、とばかりにジャンプしてオサシミをいくつかいっぺんに網にとっていく。
「むむっ、うまいぞ!」
「いい目をしておる!」
 ガッツポーズで声援を送ってくるおじーちゃん勢。
 ミミは照れたように自分の獣耳を撫でた。
「実家のチビ助たち相手にきたえた技ですが、どんな経験が役立つかわかんないものですね」
 そこまで呟いて、ハッと耳をたてる。
 おじーちゃんたちの歓声に混じって……否、それをかきわけるほど綺麗な清涼で、誰かの歌が聞こえてきたのだ。
 木箱の上に乗って、楽器片手に歌をうたうなずな。
 彼女に重ねる形で歌をあわせてくるセアラ。
 効果云々以前に、二人の美しい歌声にミミの心がむくむくと反応していた。
 今にも踊り出しそうな気持ちだ。
 漁に参加してないのにやる気が漲っちゃったおじーちゃん勢が立ち上がって威勢のいいガッツポーズをとりはじめる。
「漁はかつてより歌と共にあった」
「歌は苦労を忘れさせ、皆の心を一つにする」
「若返るわい、若返るわいぃ!」
 なんでワシらは腰やっちゃったんかのおと嘆くおじーちゃんたちをよそに、なずなとセアラの歌は続く。
 彼女たちの歌でやる気をだした皆はカゴをつぎつぎイッパイにして、カタリヤはイッパイになった籠と空の籠をどんどん交換していった。
「網を振り回すのは向いてないと思ったけど、こっちも随分な肉体労働ね」
 などと言いながらなずなとセアラを見やる。
「先人方(おじーちゃんたち)に教わった歌がいいのかしら。なんでも聞いてみるものね」

 渡りオサシミは群れで大陸を移動するが、気流をとらえて編隊を組む都合上いくつかのブロックに分けて移動している。
「次のウェーブが来るわ。備えて」
 カタリヤが指をさしたのはホタテオサシミの群れだ。
 丸くぷっくりとした身をもつホタテオサシミは飛行の勢いが強く、網への手応えも重いという(カタリナ調べ)。
 よって、一気に沢山とるよりも確実に一個一個打ち落とすのが最適なのだ。
「ではここから、二人組での漁に移りますわ。ご準備は――」
「いつでもどーぞ」
 カゴを構えて大地を走るミミ。一方ミディーセラは空を飛びながら目に付くオサシミを次々に打ち落としていく。
 ぽろんぽろんと落ちるオサシミがそのまま地面に落ちないよう、素早く下に滑り込んでキャッチしていくミミ。
 コンビ漁の具合は良好だ。
 少し早くその体勢にはいっていたモルフェウスとハウザーも、途中から打ち落とし役とカゴキャッチ役の立場を交代していた。
 額の汗をぬぐうようにして手首を払うと、モルフェウスは深く息をついた。
「筋肉痛で苦しむことになりそうだ。しかし、美食の前には苦労はかすむというもの」
 そっちへ言ったぞとモルフェウスが声をかけると、なずなとセアラのコンビがカゴを持って走り出した。
「セアラさん、いつでも大丈夫です! うっちゃってください!」
 カゴを構えて後ろ向きに走るなずな。
 片手の中指でずれかけた眼鏡のブリッジをぴっと押すと、頭上のオサシミの群れに集中した。
「では……」
 セアラは深く空気を吸い込むと、歌うようにして遠術を無数に発動させていった。
 術にかけられてぱたぱたと落ちていくホタテオサシミ。
 セアラはどうやらオサシミの中ではホタテが好物のようでやる気もひとしおだった。
 一連の様子を観察していたカタリヤが、彌夜へと振り返った。
「さあ、仕上げね。やっちゃいましょ」
「とっておきのトラップでありますな!」
 彌夜がトラップを固定していた縄をクナイで切ると、勢いよく飛び上がった無数の網がオサシミをとらえていく。
「せっかくの美味しいオサシミでありますから、味を落とさず美味しくいただくのであります! そこのオサシミ逃がさーんでありますー!」
 罠を抜けたお刺身に飛びかかり、勢いよくかりとっていく彌夜。
 カタリヤはそうして落ちてきたオサシミたちを籠でひょいひょいと受け止め、大きなボックスの中に詰め込んでいった。
「身の大きなオサシミがこんなに沢山。贅沢な光景だわ」
 カタリヤはこの後に催されるであろう宴会を思い、唇をぺろりと舐めた。

●漁師たちの憩い
 太鼓の音と弦の音。手を叩く男たちと、肩を揺らして歌う女。
 古今東西、もしかしたらどんな世界にだってあったかもしれない、憩いの風景がそこにはあった。
 オサシミが沢山詰め込まれた冷却ボックスのわき。ゴザを敷いたおじーちゃんたちは酒や醤油を手に歓迎のムードを作っていた。
 誰への歓迎かって、それはもちろんイレギュラーズ――いや、新しいオサシミキャッチャーたちへの歓迎である。
「こうして渡りオサシミの旬に立ち会えるなんて、幻想にきて良かったわ。私の知ってるオサシミって、海洋への戻りオサシミだったもの」
 カタリヤはそう言っておじーちゃん勢に酒をつぎ、渡りオサシミの歴史や伝統についてぐいぐいと聞き出してはメモしていた。
 記事は生声生の味。現地で直接聞く話や、現地で実際に食べたものはとても鮮明な情報となってカタリヤに記録されていくのだ。
「炊いたお米を握ってオサシミを乗せるでありますか? んっ、これは?」
 彌夜はおじーちゃん勢になんかどっかで見たことあるようなオサシミ料理をもぐもぐやりながらおじーちゃんたちと打ち解けていた。
 そこへ、ミディーセラが酒瓶を掲げてみせた。
「わたし、合うお酒を持ってきておりますの」
「酒」
「酒とな」
「お酒でありますか」
 シャシャッと同時に振り向くおじーちゃん勢と彌夜。
「元の世界では成人してたでありますし、お酒もちょっとくらい……いいであるます、よな?」
「おぬし年齢は」
「17であります」
「むーん……」
 お酒に関する法律はお国柄で色々違ったりするものだが、それ以前におじーちゃんたちの価値基準として『若者にお酒を飲ませるのは健康上よくないんじゃない?』という気持ちがあったようだ。
 そんな中で、頬に十字傷のあるおじーちゃんがスッと茶色い瓶を取り出した。
「それはっ、バンビール!」
 説明しよう。バンビールとは子供でも安心して飲めるお酒っぽいノンアルコール飲料である。しゅわしゅわするよ。
「のめ」
「いただくであります!」
 人見知りするおじーちゃんも彌夜の手際や心意気をみて心を開いてくれたようだ。それは他の皆も同じで、ミディーセラにも地酒を突きだしてくる。
「まあ、ではお言葉に甘えて……」
 ミディーセラはコップに地酒をもらうと、カツオやアジのオサシミを手に取った。
「わたし、オサシミのなかではこれが好きなのです。皆さんは?」
「地元の基準でいうなら……なんでしょう。けどこちらに来てから急にいなり寿司? が美味しくなりましたね」
「大人になると味覚が変わるっていいますものねえ」
 そういうものかなあと思いつつもとりあえずで頷くなずな。
 勧められるままにトロのオサシミをお醤油につけて食べてみた。
 すると。
 なんということだろうか。
 舌に乗った瞬間にしゅわっと溶けるようになじみ、まるで身体と一体化してしまったのではと思うほどに味や香りが広がっていく。
 口いっぱいに広がるなんてものではない。喉、頬、脳髄や背骨、指先に至るまで広がったのではと錯覚するほどの衝撃がなずなの味覚神経を走って行った。
 そう思った頃には既にトロは油をひろげ、名前の通りにとろんとした食感と良質な油が自然と喉へと落ちていく。
 ため息をつくのも、自然なことだろう。
 同じようにオサシミの味覚に酔いつつあったモルフェウスたち。
「こうも美味しいと土産にしたくなるな。しかし生ものは傷みやすい……燻製にできるだろうか」
「それなら作り方を教えてやろう。帰りにちょっと寄って、燻製機を貸してやるぞ。ついでに氷を使った保冷袋もな」
「おお……スモークサーモンができるか」
「スモークサーモン!」
 目線カットインが入るかというほどのテンションで振り向くハウザー。
「サーモンはそこそこ好物だ。が……」
「今食べたサーモンは極上に美味」
 うんうんと頷きあうモルフェウスとハウザー。 
「えっと……」
 『ミミもうサーモンしか食べないのです』といってサーモン食べるマシーンと化していたミミが、はっとしておじーちゃんのほうを向いた。
「うむうむ。今回は思った以上に沢山とれたからな。沢山持って帰ってやるといい」
 そう言ってオサシミを包んで渡してくれた。
「お土産までもらえるなんて……」
 包まれたオサシミを手になんだかじーんとなるなずな。
 そんな中で、ホタテを重点的にいただいていたセアラに声がかかった。
「おじょうさん。あの歌をもう一度歌ってもらえんか」
「求められたなら……」
 セアラはふわりと立ち上がり、タンポポの綿毛が飛んでいくかのような美しい声で歌い始めた。
 それに併せて楽器演奏を始めるなずな。
 自然と手拍子がのる。
 ここは幻想の丘。
 渡りオサシミ漁の、風景である。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お帰りなさいませ、イレギュラーズの皆様。
 実に見事なオサシミキャッチャーぶりでございました。
 いっそ称号やお土産を配ってしまいたくなるほどでございましたが、いささかそれも乱暴でしょうから、非アイテムとしてスモークサーモンと保冷オサシミパックをお土産にお配りしたという判定にいたしました。
 そしていつでも好きなときに、オサシミキャッチャーを名乗ってくださいませ。

 それではまたお会いしましょう。
 混沌のどこかで、お待ち申し上げております。

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