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シナリオ詳細

壮絶! 鉄帝カニこうせん!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●わかりやすい現在の状況説明

 ――貴方達は様々な理由でちょっとした借金をおってしまった! その返済のために蟹工船に乗せられたのだ!!!

「どうして……」
 あなたの仲間であるローレットのイレギュラーズが呆然とした様子で言葉をあげた。雪ちらつくゼシュテルの港、そこからゆっくりと、巨大な蒸気船が出港する。
 何でだろう……と、あなたは思う。なんでだろう……なんか胡散臭いシスターとか赤毛のシスターとかの酒代を押し付けられたような気がする……いや、もしかしたら、依頼で壊したらいけないようなものを壊してしまったかもしれない。
 あなたがどのような理由で借金をこさえたのかは、あなた自身が知ることだ。それは身に覚えのある事かもしれないし、そうでないかもしれないが……なんにせよ、この船に乗ってしまったなら息つく先は同じである。
 ゼシュテル、鉄帝国の港。冷たいその海では、『カニ』が採れる。カニ。それは冬の味覚。地球世界でも、似たような生き物はいて、冬には鍋にぶち込まれて調理される甲殻類である。カニ。それは美味しい。かなりおいしい。すごく……おいしい。
 この船は、そのカニを取って、缶詰に加工する大きな船だ。内部には缶詰工場施設もある。昼はカニを取り、夜は缶詰を作る。地獄の生活! 其処に労働基準法などと言った暖かな言葉は無い。カニを取って缶詰を作るか、死ぬかしかないのだ。
「いいか、野郎ども! この船に乗った以上、お前らに人権は無い!!!!」
 船長ががなり立てた。あなたは死んだ魚みたいな目で船長を見やる。周りを見てみれば、大体似たような目をしたプロレタリアート(労働者の事)たちが、夜の柳のごとくゆらゆら揺れて立っている。
「カニを取れ! さもなきゃ死ね! 生きたかったらカニを取れ! わかったか! カニを取るまで陸地には戻らないものと思え!!!!」
 どうしてこんなことに――貴方は思う。考えることは自由だ。この抑圧された職場で、考える事だけが、あなたに残された自由だったのだ……という事はさておき、一週間ほどのカニ漁ははじまった。

 地獄のような日々であったが、平和ではあった。代り映えのしない地獄。起きてカニを取って、缶詰を作って寝る。劣悪な作業環境は日に日にプロレタリアートたちの体力と精神を削り、やがてその不安が爆発、赤毛のシスターに扇動される形で大規模なストライキと暴動が起きたが、すぐに鎮圧された……平和だった。このストライキと暴動すら、ちょっとしたたのしいイベント、と思ってしまう位には、皆精神が摩耗していただけなのだが。ちなみに、暴動を扇動した赤毛のシスターは倉庫にぶち込まれた。どうして……?
 さておき、そんな平和な日々が五日ほど続いたころ、海に異変が起きた。突如うねる海。波が高々と踊り、船がぐわぐわと揺れる。まるで嵐の前兆のような海もよう。
「間違いねぇ……大物だ」
 船長が言った。
「この海域には、伝説の大物ガニがいるんだ! そいつを捕まえられれば、お前らの借金を帳消しにしておつりがくるくらいの稼ぎになる……いいか! 死ぬ気で捕まえるぞ、クズ共!」
 船長の大声に、プロレタリアートたちは心底疲れた声で返事をした。あなたも、この船から降りるために、海の上に目を凝らす。ぐらぐらとゆれる海。巨大な波。その荒れ狂う海の中から。何か巨大な、丸い光が輝いて、こちらを覗いているのを、あなたは察した――。
 居た! と、あなたは叫ぶ。するとどうだろう、その言葉に返事をするみたいに、海がざばぁ、と盛り上がった! ざざん、と巨大な波が巻き起こる! 船が揺れる――するとどうだろう! 目の前には、巨大な、ああ、本当に全く、一般家屋ほどに巨大なカニが! 三体も!
「いたぞ! カニだ!」
「これが!?」
 プロレタリアートが悲鳴をあげる。デカい。デカいにもほどがある。
「クラブ!!」
 カニは叫んだ!
「キャンサー!」
 カニは叫んだ!
「カニカマ!」
 カニは叫んだ!
「おお、こいつは大物だ……それがまさか、三杯も!!」
 カニを一杯二杯と数えるのは、商品としたときの数え方だ! つまり船長にとっては、もうこの巨大カニも商品という事である!
「おら、行くぞクズ共! あのカニを捕まえるんだよ!」
「マジで言ってんのか!!」
 プロレタリアートが叫んだ。だが、お金に目のくらんだ船長の目はぎらぎらと輝いていたし、確かに、こう、このカニを捕まえなければ、あなたの借金も帳消しにはならず、しばらく蟹工船で海上生活を送らねばならないだろう!
「気をつけろクズ共! あのカニは蟹光線を放つからな!」
「何言ってんだ!?」
 プロレタリアートが叫ぶ。が、カニたちはその鋏をチョキチョキすると、目と目の間あたりにはさみを掲げた! するとどうだろう、触れるギリギリぐらいのカニのはさみの間から、強烈な閃光が迸り、光線を放ったではないか! 蟹光線は、海の上を走る! ずばぁ、と海水が一瞬で蒸発! 爆発が巻き起こる!
「マジか!?」
 プロレタリアートの言葉に、船長は言った。
「だからこのシナリオのタイトルに書いてあるだろうが! 『壮絶! 鉄帝カニ光線』――」
 畜生! クソ依頼だ! あなたは頭を抱えた。いや、そもそも確定ロールで借金を背負わされている段階で、クソ依頼なのだ! あなたはここまでオープニングを読んでしまったことを後悔氏かもしれないが、とにかくもう、こうなったら、このカニをぼこぼこにするしかない!
「ああ、一応言っとくが、ぶっ壊すなよ!? このカニは商品だからな! 『不殺』とか、頑張って低威力の攻撃で締めるんだぞ! カニが採れなかったら減給だからな!」
 くそ! クソ依頼の上に手加減必要依頼だ! クソ依頼のくせにメンドクセェな! あなたは内心でぼやきながら、武器を抜き放つ!
 こうなってはやるしかない! あなたは荒れる北海の船の上で、カニと戦うのだ!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 カニ漁です。

●成功条件
 最低1匹のカニを獲る。

●特殊失敗条件
 すべてのカニが売り物にならなくなるくらいにボロボロになる。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 何らかの理由で借金をこさえてしまったあなた――それが、事実であっても濡れ衣であっても構いません。
 なんにせよ、鉄帝蟹工船に乗ってしまったのは事実です。
 劣悪な労働の日々。しかし、その労働を終わらせるチャンスです。
 突如現れた大物、巨大カニ。このカニたちは、一獲千金を狙える高級魚介類。
 上手く仕留めれば、借金帳消しの上に、普通にお給料が出ることも間違いありません!
 ですが、あくまでこのカニは商品。乱暴な手段で破壊しては、売り物にならないので失敗です。
 さぁ、イレギュラーズよ! 上手いことカニを獲り、この地獄のような船から下船するのです!
 作戦決行タイミングは昼。作戦エリアは巨大な船の上。カニたちは、船の左右、船首に張り付くように、此方を攻撃してきます。
 遠距離攻撃があれば動きやすいですが、近接攻撃が当たらないという事はありません。

●エネミーデータ
 カニ ×3
  カニです。多分きょうだいです。それぞれ「クラブ!」「キャンサー!」「カニカマ!」と鳴きます。
  強烈なはさみによる打撃や、泡を吹いて『足止め系列』を付与したり、強烈な蟹光線で『火炎系列』のBSを付与してきたりします。
  HPや防技は高めです。ただし、あまり強力な技を連発して止めを刺してしまうと、売り物にならないくらいにボロボロになってしまうかもしれません。そうなれば、お仕事は失敗です。
  なので、『不殺』を使ったり、トドメは威力の低い攻撃で加減するなどすると安心です。
  なお、此方がカニにBSを付与したりしても、売り物になるので大丈夫です。とにかく重要視するのは、見た目です。


 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングをお待ちしております。

  • 壮絶! 鉄帝カニこうせん!完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年12月31日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)
あいの為に
ニル(p3p009185)
おかえりを言う為に
マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)
永久の新婚されど母
ナール・トバクスキー(p3p009590)
ろくでなし
ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)
にじいろ一番星
ティヴァ(p3p010172)
enigma box
滋野 五郎八(p3p010254)
ぼんちゃんといっしょ

リプレイ

●ここが地獄だ
 カニを獲る。缶詰を作る。わずかな時間だけ寝る。
 カニを獲る。缶詰を作る。わずかな時間だけ寝る――。
 それはあまりにも壮絶な、あまりにも壮絶な労働環境だった。いっそ幻想あたりの奴隷の方が、まだちゃんと眠れるだけましなのではないか? という気持にすらなるほどの、労働地獄。自然、労働者(プロレタリアート)達の精神は摩耗し、体力は減少し、目もだんだんすわってくる。
 例えば、詐欺にあい、不幸にも借金を背負わされたと語る――本当はギャンブルで大損して借金をこさえた――『あいの為に』ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)。普段は穏やかな微笑を携えた、まさに聖女と言った面持ちの彼女も、すさんだ生活にだんだんと目のあたりにクマができ始めていて、自然と舌打ちが……まぁそこは流石に、バレないようにしていたが、思わず出てしまいそうになるのも仕方ない。
 嘘と演技で塗り固めた聖女の看板も、割と限界に近かった。缶詰にカニを詰めながら、「あの船長この場で海の藻屑にしてやろうか」と呟いているのを、目撃されたとかされなかったとか。まぁとにかく、ライですらそうなってしまうほどに、この現場は苛烈であったわけだ。
 さて、夜は缶詰を作り、昼はカニを獲る。今は昼なので、労働者たちは船上に出て、網を投げてカニを獲っていた。
「ふふ、一杯とってはヴァリューシャのため! 二杯とってはヴァリューシャのため!」
 この状況でも元気なのは、流石の『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)である。いつも通り、愛しい人の借金の連帯保証人になって蟹工船にぶち込まれたマリアであるが、こういうのはいつものことだし、愛しいあの人のためになるなら、と、マリアにとっては幸せな労働に過ぎない。つよい。
「ヴァリューシャもお酒を飲んだら合流するって言うからね! がんばらないと!」
 きらきらと、輝く汗が、さわやかです。マリアはにこにこと言うが、たぶん愛しい人はとっくに船から逃げたか、プロレタリアートに暴動を扇動した罪で倉庫にぶち込まれている。そもそも依頼メンバーにいないので、愛しい人は登場しない。でもそれもマリアにとってはいつものことなので、幸せな労働にすぎない。
『私、聞きましたわ! 貴女が私の連帯保証人になってくれると!
 嗚呼、持つべきは友……主が私のために貴女を遣わして下さったのですね! やはりこれは運命……!』
「なるほど、運命ならば仕方ないですね」
 若干疲れた様子でそういうのは『永久の新婚されど母』マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)。ちなみに『』内のセリフは、友人――これはマリアの愛しい人と同一人物であるらしい――からかけられた言葉である。元気で楽しいマリアと違い、マグタレーナにはいささかの疲労が見える。とはいえ、マリアとヴァリューシャ、2人の友人のためなら、労働に殉じることもやぶさかではない。
「いえ、殉じたらまずいのですが」
 セルフでツッコミなどを入れつつ、マグタレーナが網を引っ張る。カニと目があった。可哀そうにね。と、カニが言った気がした。お互いにね。
「カァー! あの店主(ジジイ)! ちょーっと酒代のツケを払わなかったら、こんな船にか弱い老人を放り込むとは外道の極みじゃ!
 ちゃんと賭場で稼いだら原うっつうとるのにな! 嬢ちゃんもそう思うだろ!」
 カニをカゴにぶち込みながらそういう『ろくでなし』ナール・トバクスキー(p3p009590)の横には、死んだ目をした『ぼんちゃんといっしょ』滋野 五郎八(p3p010254)がいて、なんかずっと、
「ニンゲンコワイ……ニンゲンシンジナイ……」
 とか言いながら、網からカニを外していた。五郎八は鉄帝のぼったくりバーで思いっきりぼったくられて身ぐるみはがされた上に蟹工船にぶち込まれたのである。
「そうかそうか! じゃが、人間捨てたもんじゃないぞ!」
「ニンゲンコワイ……ニンゲンシンジナイ……」
 がはは、と笑うナールであったが、五郎八はニンゲンコワイしシンジナカッタ。五郎八のあしもとで、ぼんちゃんもカニと格闘している。
「拝啓、ニルは今、蟹工船にいます――」
 と、どこか遠い目をして呟く『おかえりを言う為に』ニル(p3p009185)。どうしてこんないい子が蟹工船に乗っているのだろうか。きっと悪い大人に騙されたかなんかしたに違いない。許さないぞ、悪い大人。洗井落雲が成敗してやりたい。
「ニルは、一生懸命、おいしいカニ缶を作っています。
 すこしだけ、暖かい練達の事が恋しくなることがあります。
 けど――誰かの『おいしい』っていう笑顔のために、ニルは頑張るのです」
 なんていい子なんだろう。この悪辣な資本主義的ブルジョア共に利用されながら、ニルくんは、誰かの笑顔のためになると精一杯働いているのだ――生命活動に食事や睡眠は不要だし、精神的にも強かったりするので、ニルくんはこのような劣悪な環境でも、その純粋さを失ったりしないのである。流石にちょっと疲れてはいるものの、それでもにこにこ、優しい笑顔で働くのです。
「うわーん! もう海の香りは嫌でしてーーー!!!」
 と、泣き叫びながらカニのつまった網を引き揚げる『にじいろ一番星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)。ルシアは以前、どこぞのコテージを全損させた件で借金をおったらしく、その返済のために蟹工船に乗っているのである。割と自業自得だ! 大失敗判定だったらしいし。
「全然休ませてくれないし、代わりの服もなければ働きづめで汚れてもお風呂なんて当然ない! 日課の魔砲を撃つことも出来ない……!
 こんな毎日もうイヤでして! 早くお家に帰りたいのですよー!」
 うわああん、と嘆くルシア。とはいえ、働かなければ帰れない。魔砲も打てないし、お風呂にも入れない。ここは地獄。この世の地獄。解放されるにはカニとをるしかない。
「ティヴァ、モ、辛イ。コノ船、歯車いっぱい。デモ、貰エナイ。ティヴァ、コウイウの知ってる。生殺しって言ウ」
 こくこくと頷く、『enigma box』ティヴァ(p3p010172)。ティヴァは、鉄帝の港にあった蒸気船の歯車を取っ……貰った所、普通に怒られて修理代を請求されたのである。歯車一個、船の命。その代償は大きかった。
 とはいえここは工船。歯車やネジがあちこちにいっぱいあるというのも、ティヴァのストレスというか、収集欲を刺激した。いるだけで辛い。働くのもつらい。ここは地獄である。
「ティヴァ、はやく帰リタイ。海の上、好きじゃナイ」
 ロボットとしては、やはり水や潮は錆などを引き起こす大敵だろう。 
「まったくです。労基も航海法も無視無視無視、あり得ませんよこんなの」
 流石のライもイライラが限界に達している。このままでは第二の暴動が起きてもやむなし――といった所まで一同が追い詰められていた時!
「クラブ!!」
 カニは叫んだ!
「キャンサー!」
 カニは叫んだ!
「カニカマ!」
 カニは叫んだ!
 そう、オープニングでも描写した、巨大カニが現れたのはそんな時だ!
「すっごくおおきなカニさんなのです!」
 わぁ、とニルが声をあげる。カニのサイズは家屋ほど。まさに巨大カニだ。
「ティヴァ、歯車ホシイ。オオキイノ、カニ倒すしたら、貰えるカナ」
 ティヴァが言うのへ、船長ががなる。
「おう! こいつら捕まえたらボーナス付きですぐに陸に返してやる!!」
「なるほど……このふざけたカニたちを捕まえられれば、すぐにでも解放されるのですね……!」
 状況を悟ったライが、にこやかに笑う。そう、目の前にいるのは、カニではない。自由への切符だ!
「ならやるしかないの! 流石は儂、運が向いてきたわい。
 缶詰を作るのにも飽きてきたし、ここはあのデカイ蟹をとっ捕まえれば付けは借金もパーになって有り余る!」
 ナールが魔導銃を高らかに掲げた。
「ふふっ、おまけに報酬上乗せも期待できるなら、ヴァリューシャの酒代にもなるというものだね!」
 マリアはいつも通りであるが、それ故に頼もしい!
「まぁ、それで借金を帳消しにできるなら、捕まえない手はありませんね」
 マクダレーナも、流石に乗り気である。この地獄労働から解放されるなら、どんな手段でも行使したい所だ。
「とにかく、さっさとカニを捕まえて、陸に戻りましょう!!!」
 ルシアが叫び、
「ニンゲンコワイ!!!!!!」
 五郎八も叫んだ!  かくして一同は、手に手に武器を構え、船上にて立ち上がった! 自由を目指すための戦いが、今ここに幕を開けたのだ!

●自由への闘争
 さて、カニの数は三杯……いや、三匹である。とにかくクライアントからのオーダーは、最低でも一匹、捕まえろという事だ!
「長い監禁生活の運分を晴らしたいわけでして!
 喰らいなさい、五日分の恨みつらみのつまった破式魔砲ーっ!」
 ルシアがぶっ放す、極太の魔力の破砲! それは自由を求める方向のようにも見えた! かくして砲撃はクラブに直撃! どかん、と爆裂音が鳴り響き、クラブがのけぞる! が、クラブも黙ってはいない! 目のあたりにはさみを掲げるや、その隙間からお返しとばかりに放たれる蟹光線!! 高熱の光線が、イレギュラーズ達を撃ち抜いた!
「ぬぅわーなんじゃ、あれは、はぁ! 蟹光線? バカか、何処の世界に蟹工船にかけて光線を撃つ蟹がいるというのじゃ……混沌じゃな!?」
 ナールが叫ぶ! そうだね、混沌だね。
「ニンゲンコワイ……かにもこわいーーっ!」
 五郎八が爆発に身を晒しながら叫ぶ!
「ぼんちゃん、はやくやっつけましょう! もう嫌です! ニンゲンコワイし、カニも怖い!」
 五郎八の叫びに、ぼんちゃんもコケッ、と頷く。掲げた五郎八の指先がルーンを描き、放たれた氷の礫がカニたちに降り注いだ!
「カニカマ!!」
 カニが叫ぶ!
「そこのカニカマって鳴いてるヤツ! お前カニじゃないだろ! カニっぽい別種でしょ! こちとらそういうのに敏感なんだぞ!」
 五郎八も叫ぶ!
 一方で、振り下ろされるカニのはさみが、甲板を叩いた。前述したように保護結界により船体へのダメージは無いが、激しく揺れる船上に、ライは身構えた。魔弾による銃撃を敢行するライ。鋭く打ち当たった魔弾が、カニの装甲を削った。
「おい! やりすぎるなよ!?」
 船長からオーダーが飛ぶ。ライは天を仰いだ。神に祈る様に。
「あぁ……やってられません……。給料貰って帰ったら、ギャンブルで憂さ晴らしをしましょうそうしましょう……」
 ほんとは誰にも聞こえないように愚痴っただけだが。さておき、イレギュラーズ達の攻撃は続く。目指すは完全漁業、カニ三杯獲得! である。
「クラブ!」
 カニが叫んで、その鋏を振り下ろす。甲板が激しく揺れるなか、マリアは跳躍してそれを回避!
「うおおおお!!!! ヴァリューシャの酒代!!!!」
 雄たけびを上げて突撃する紅の雷! 酒代を求めて飛翔! そのまま一気に接触するや、カニの甲羅に強かな拳の一撃を叩き込んだ! 叩き込まれた拳から、内部に雷が奔り、気力を削り取られたクラブの体内を強かに打ちのめす!
「クラブーッ!!」
 カニが悲鳴をあげる! 目をバッテンにして感電!
「しまった! やりすぎたかな!? このままじゃヴァリューシャの酒代が!」
 マリアはヴァリューシャの酒代の心配しかしていない。
「大丈夫なのです、ニルが今からかちこちに冷凍するのです」
 ニルくんが天使のような笑顔を浮かべた。えいっ、と両手を掲げると、巻き起こる氷の嵐が、クラブを包み込む! その強烈な氷のナイフがクラブの甲羅に突き刺さり、そこを基点に瞬く間に凍り付かせた! クラブが目をバッテンにしながら昇天!
「クラブーっ!」
 断末魔の悲鳴!
「船長、判定は!?」
 マリアが叫んだ。
「うーん、まぁ、これくらいなら良し!」
 船長が大きく丸を書いたので、ニルは嬉しそうにぱーって笑った。
「よかったのです」
「キャンサー!!!」
 仲間がやられたことに気づいたキャンサー、そしてカニカマが怒りの声をあげる! ぶくぶくと泡を吹きだし、船上を埋め尽くす。イレギュラーズ達は動きを制限される。
「泡、嫌イ。ティヴァ、アレ止めたい」
 ティヴァが声をあげるのへ、マグタレーナが頷いた。
「では、わたくしも尽力いたしましょう。
 まずは、動きを止めるのですよ」
 マグタレーナが、小さく口中で呟く。それは呪い言葉。その呪言は力を持ちて唇を震わせ解き放たれ、大きな呪いとなってキャンサーにのしかかる! 果たして呪いはキャンサーの身体を石化させたかのように硬直させた!
「よーし、私も手伝いますよ!
 帰るんだ……アイツらを倒してっ! 温かいオフトゥン……温かいご飯……揺れない大地……うわぁぁぁぁ! おうちにかえりたいーーーー!」
 何かトラウマ……いや、現在進行形で進行中の精神的ダメージから逃れるように叫びながら、五郎八はルーンを描いて射撃! 氷片が弾丸のように解き放たれ、カニのはさみを狙い撃つ! 振り上げられたはさみが、衝撃に後ろに追いやられ、キャンサーがさらに体勢を崩した!
「チャンス。止め、サス! オイシイカニさんなってモラウ、ノーギルティシテ、オイシイゴハン代にナッテモラウ~!」
 ティヴァが飛び掛かった! 手にした刃の背をキャンサーに向けて、上段から振り下ろすは不殺の一撃! ごんっ、という音がして、キャンサーの目が真っ白になる。
「キャンサー……!」
 キャンサーが断末魔をあげて昇天! ぷかぁ、とその身体を海に浮かせる。ティヴァはすたっ、と船上へと着地。
「大丈夫。体壊してナイ」
「そのようだな! 二杯目だ! いいぞ労働者共!」 
 船長が大喜びで酒をラッパ飲みした。さて、残るはカニカマのカニである。カニカマのカニは最後という事もあり猛烈に抵抗! 極太の蟹光線が戦場を奔る! 強烈な熱量はイレギュラーズ達に確かなダメージを与えたが、此方も自由がかかっているのである! そんなもんで足を止めてはいられない!
「はーっはっははぁ、カニ漁じゃぁっ!!」
 ナールが叫び、魔力銃をぶっ放す! オプションパーツにより威力を抑えられた一撃が、カニカマの命を奪わぬ銃撃を加えて、徐々に弱体化させていく!
「カニカマ―っ!」
 カニカマは叫び、再びの光線! 戦場を奔る光線に、イレギュラーズ達は身構えた!
「ずるいですーっ!」
 ルシアが叫んだ。
「ルシアはこうして、魔砲を撃つのすら我慢しているわけでして!
 そんなルシアの目の前で、好き放題魔砲みたいなのを撃つのは許せません!
 ……けど、そんなルシアは魔砲を封じられているわけでして、これはがんじがらめでしてーっ!!」
 苦悩するルシア。そろそろストレスが限界っぽいわけでして。
「まずいね、ルシア君が爆発する前に、決めよう!」
 マリアが声をあげた。
「そうですね。ではもう一度、わたくしが足を止めましょう」
 再びのマグタレーナの呪言が、カニカマの動きを凍り付かせる。石化したように硬直した体に、ナールが、ティヴァが、着実にダメージを与えていく!
「そろそろ仕留め時か!?」
「ィヴァ、カニカマタベタイヨ! カニカマ、名前美味しそうダヨ!」
 果たしてカニカマは身をよじった。「カ、カニカマ……」弱々しく声をあげるのへ、突き刺さる魔力の弾丸。ライの放った銃弾が、その眉間に突き刺さった。
「いい加減に……」
 わずかに眉根をひそめていたライが、こほん、咳払い。
「……いえ、殺生は悲しい事ですが、これも人の営み。許してほしいとは言いません。疾く倒れてください」
 若干本音を見せながら。ライが言った。刹那、いよいよ生命の糸がぷつんと途切れ、カニカマは仰向けに会場にぶっ倒れた。ざばん、と波しぶきが上がり、カニが浮かぶ。
「やったな労働者共!」
 船長が叫んだ。ライは、はぁ、と息を吐いた。
「やっと帰れます……」
「ほんとに!? ほんとに!? 陸に帰れるんですか!?」
 五郎八が喜び飛び跳ね……うっ、とトラウマを思い起こされた。そのままスムーズに体育すわりして、「ニンゲンコワイ」と呟きだす。
「よかった、これでお仕事も終わりなのです。
 それに、これだけ大きいカニさんなら、いろんな人たちの「おいしい」になるのですね」
 ニルがにぱーっと笑った。天使……どうしてこんな船に乗ってしまったんだ……。
「お? って事は、これで種銭ができたってわけだな! 丘に戻ったら一勝負するか! ガハハ!」
 というのは、ナール。こっちは悪い大人だった。
「もう船の上なんてこりごりですよー!
 はやく帰るのでして!」
 ようやく解放された、とルシアがにこにこと笑った。今度はコテージを爆破しちゃだめだよ。
「ティヴァも、ようやく帰レルヨ。帰ったら、お給料で歯車、買ウヨ!」
 ティヴァも嬉しそうに頷く。
「うーん、ヴァリューシャは間に合わなかったけど、でもヴァリューシャの借金はこれで帳消しだね!」
 一瞬しょんぼりしたマリアが、でもすぐに気を取り直して笑って言うのへ、マグタレーナも頷いた。
「ええ。これでこの借用書ともおさらばです」
 と、借用書を破り捨てた。借用書は海の風に乗って、冷たい海の上に落ちて、しばしぷかぷかと浮かんでいるのであった――。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 生還おめでとうございます!
 もう借金こさえちゃだめですよ!

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