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シナリオ詳細

雪だるま雪上の雪辱戦!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 混沌の地に冬が到来する。
 空から降る雪は寒冷地であればどの地帯においても降り注ぐが、やはり鉄帝という自然に厳しい地帯であれば、住む民は溜息をつかずにはいられぬ時季だろう。
 だが、冬であるからこそ、見られる光景というものも存在する。
 子供達が雪合戦を行うのもその一つ。
 雪を投げ合う遊び自体はかなり古くからあったとみられているが、やはり子供の遊び以上にはなりえないようだ。それだけ、鉄帝の民が今日を生きるのに大変な思いをしていたということだろう。

 それでも、ふらりと混沌へと立ち寄った者達の中に、雪合戦なる遊びを存分に堪能していた集団がいた。
「今年も冬が来たのである!」
 大きな雪だるま2体が多数の子供達を引き連れ、ぴょんぴょんと地面を跳ねるように移動する。
 彼らは冬になると、鉄帝の平原に現れ、主に屈強な鉄騎種を捕まえて雪合戦を挑んでいる。
 一時は平原を占拠していた彼らだが、最近では即席でステージを作り、去る際にはきれいに片付けるといったこともまで行う様に。
 そんな去る鳥ならぬ去る雪だるま後を濁さずといった作法まで学んだ彼らだが、雪合戦の実力向上には余念がない。
「さあ、今日も選りすぐり隊昇格目指して修行である!」
「「わかったのである!!」」
 今日もまた、雪上では多数の雪玉が舞い飛ぶようだ。


 幻想ローレットに届いた挑戦状。
 それは、鉄帝に滞在する雪だるま達から送られてきたものだった。
「ローレットイレギュラーズに対し、雪合戦を挑みたいと……」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が少し楽しそうな表情で集まるメンバー達へと話しかける。
 以前2度、鉄帝の雪原を占拠していた雪だるまの集団。
 それが今度は正々堂々と勝負を挑んできたというのだ。
「最近は、雪合戦の練習の後、しっかりと後片付けをするようになったそうです」
 鉄帝民の猛者もその雪だるま達の変わりように驚いていたようだったが、しっかりと勝負を挑まれてぐうの音も出ないほどに叩き潰されたという話も。
 それはそれとして。
 雪だるま達はこれまで、集団全員とイレギュラーズの体で雪合戦を挑んできていた。
 今回は集団全員の力量を上げ、選りすぐり隊という9名の選抜隊を編成した上で勝負したいとのこと。
「相手は9人ですから、私も参戦したいと思っています」
 ギフトの効果で落ち着いた対応をしているアクアベルだが、まだまだ少女である彼女は雪合戦を楽しみにしていた様子。
 ただ、敵はかなり強く、遊びでも本気で構えないとあっさりやられてしまいかねないので本腰を入れて準備したい。

 改めて、雪合戦の基本ルールについて確認したい。
 雪原を大きく縦に二分して敵味方の陣営とする。地上、上空を動き回るのは自由だが、指定された領域外に出てはいけない。
「基本は、雪玉で攻撃して相手を倒すことを求められます」
 直接相手に雪玉を触れさせること。雪を使った弾丸、矢、魔法は可。
 前回までは近距離武器がNGだったが、雪で作った武器に限り可とのこと。自分の愛用の武器を象るなどは自由だ。
 雪の武器は耐久性に乏しいはずなので、数本作っておくのは問題ない。直接武器はここぞというときに使うと大ダメージを与えられるだろう。
 なお、通常の近距離武器はルール無視となる。その際、雪だるま達に並々ならぬ強化がなされ、「成敗」されてしまう為、指定されたルールで勝負したい。
「今回、大型であるご夫婦は監督としての参戦ですね」
 前回は彼らのロケット砲などもあったが、今回は戦いを選抜した子供達に委ねている。それだけ自信をもって送り出すほどに実力をつけさせているはずだ。
「あと、参考資料としてこれを」
 今回初参戦という者に対して、過去の情報も提示するアクアベル。
 とはいえ、今回の選りすぐり隊は遊撃、狙撃、空中での役割を全員がこなすことができるという。
 夫婦が監督となり、全員が臨機応変に戦う術を持つ強者達。これまでとは違った戦略が必要とされるだろう。
「ただ、雪だるまさん達にもできないことはあります」
 基本、雪に当たらぬようにするのが彼らの戦略だ。その点を上手くつければ、突破口が開けるはずだ。
「それでは、今回は頑張りましょう!」
 オーと拳を突き出すアクアベルに合わせ、イレギュラーズも皆声を揃えるのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 今回で3度目、雪原での雪合戦バトルへの挑戦を願います。

●目的
 雪だるま選りすぐり隊を打ち負かすこと

●状況
 現場は、鉄帝付近で雪の積もった平原。
 過去2回は雪だるまの群れが占拠していましたが、今回はイレギュラーズの登場を待っていたようです(その間、鉄帝の猛者に勝負は吹っかけていたようです)。
 数では勝てないと、今度は多数の子供達を強化すべく修行し、選りすぐりの隊で勝負を挑みます。

 雪玉(及び、雪で作成した武器)を使って、全ての雪だるまのHPを戦闘不能とすれば勝利です。
 特殊ルールとして、雪合戦で彼らのルールにのっとったバトルで勝利することが依頼成功の条件です。
 雪は1m程度積もっており、所々に雪だるま達が作った大小の柱、バリケード(参加者にもよりますが、一番大きなプレイヤーの方が身を隠せる程度の大きさとします)があり、障害物として使えます。
 戦闘開始まで、開始後の障害物の新規作成も自由です。もちろん、雪だるまたちも自作します。
 イレギュラーズ、雪だるま共に、戦闘不能になった者(パンドラ復活はОK)は、戦場から離脱します。
 なお、雪を使わない近距離、遠距離武器(雪でできた弾丸や矢、投擲武器などはOK)で戦いに臨む場合、依頼成功の難易度が上がりますので、ご注意ください。

 過去2戦の模様は「白い大地で雪合戦!」、「雪原の雪合戦リベンジ!」を参照に。読まずとも、今作のみの情報でも問題なく参戦できます。

●対戦相手……雪だるま選りすぐり隊×9体
 今回は選りすぐりの子供のみが相手します。1.5~2m程度と一般成人人間種と同等程度の大きさです。
 いずれも個体差はほとんどありませんが、前作までにおける狙撃、遊撃、空中での動きを全てこなします。
 全員が同じ役割を果たすことはなく、分業するスタイルをとります。ただ、全員が役割をスイッチして戦えるようになっています。
 なお、ルール無視時は「問答無用、成敗である!」と超強化してこちらを戦闘不能へと陥らせてきますので、ご注意くださいませ。

●NPC
○アクアベル・カルローネ (p3n000045)
 イレギュラーズ側の人数調整の為、参戦。超乗り気です。
 水の術を応用して、雪玉も操ることができます。自分の判断で動きますが、テクニカルな動きを求めるなら彼女に指示をどうぞ。

○雪だるま夫婦、子供達×多数
 雪だるま夫婦は全長5mほど。子供達は選りすぐり隊と同程度です。
 旅人の一団で、大きな雪だるま夫婦が子供達を引き連れて混沌中を歩き回っています。
 これまでのシナリオでリーダー格となっていた夫婦と、選りすぐり隊から漏れた子供達です。
 今回、夫婦は監督の立場で参加。子供達は声援を送ります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 雪だるま雪上の雪辱戦!完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年12月29日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日車・迅(p3p007500)
疾風迅狼
エステル(p3p007981)
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
シャルロッテ・ナックル(p3p009744)
ラド・バウB級闘士
ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム(p3p010212)
凶狼
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
タナトス・ディーラー
シオン・シズリー(p3p010236)
餓狼

リプレイ


 鉄帝某所の雪原。
「今年もこの時期がやって参りました!」
 ヴィーザルの軍事国家『鳳圏』出身『挫けぬ軍狼』日車・迅(p3p007500)は故郷に降る雪に気分を高揚させる。
「大雪ですわ! クッソ寒いですわーーー!!!」
「ひゃっほー! ブランシュ、こんなに沢山の雪はじめてですよ!」
 一面の銀世界を前に、スタイルの良い大柄な少女『青白い令嬢』シャルロッテ・ナックル(p3p009744)、白髪ポニーテールの秘宝種『エルフレームTypeSin』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)が大声で叫ぶ。
「こんな素敵な物で遊べるですよ? すごい面白そうですよ!」
 前方の雪と同じくらいブランシュは目を輝かす。
「雪合戦か……昔はちょいちょい遊んだな……」
 鉄帝南部の寒村出身、『餓狼』シオン・シズリー(p3p010236)はスラムへと移り住んだ後、雪を武器の一つとして扱っていたそうだが。
「まあ、たまにはこういうのもいいだろ」
 無表情のまま、シオンは雪上に作られたステージを見つめる。そこにはすでにバリケードや柱がいくつも作られていた。
「雪だるまと本格的な雪合戦……ふむ? 面白そうだな!」
「わっはっはっー! 雪だるまと本格的な雪合戦とか面白そうで滾るのだ!」
 和装の旅人青年『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)や白狼系獣種少女の『呑まれない才能』ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム(p3p010212)が目にしていた相手、それは、選りすぐられた9体の雪だるま達である。
「「待っていたのである!」」
 自信ありげな雪だるま達は何とも可愛らしい。奥には監督役となる大柄な雪だるま夫婦やその子供達が観戦している。
「今回の相手もなかなかの猛者揃いのようでわくわくしますね!」
 戦いを控え、迅は待ちきれないと心を躍らせる。
「雪だるま……動くのですね」
 記憶喪失の鉄騎種、エステル(p3p007981)も物珍しそうに相手を見つめる。前回、雪だるまはイレギュラーズに負けたとエステルは事前情報で確認している。
 ただ、その後彼らは武者修行に出て、各所にて練習、後片付けを行っていたという。
「雪だるまと雪合戦……奇妙な光景だが、何だか面白そうだ」
 そんな誠実な彼らを音楽家の鉄騎種、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は尊敬し、その誘いを快く引き受けたいと語っていた。
「イレギュラーズになってから色々と経験しましたが、鉄帝でもこんな不思議なことがあるのですね」
 クールなエステルだが、仲間に感化されたのか少し楽しそうだ。
 寒いと否定的と思わせたシャルロッテもまた雪合戦は楽しみにしていたようで、やる気は満々といった様子だ。
「目標は一雪一殺、全力で遊び……頑張りますわよ、アクアベルさん!!」
「はい!」
 アクアベルもまた嬉しそうに笑う。
「では、時間である!」
 雪だるま夫婦の声を受け、出場する雪だるま、イレギュラーズが雪上の特設ステージに並ぶ。
「今回は負けないのである!!」
「慢心はしませんが、次も倒しましょう」
 鼻息荒い雪だるまに、エステルはあくまでクールに言葉を返す。
 ただ、他メンバーは並々ならぬ熱意を抱いていて。
「去年と同じよう楽しい戦いにしましょうね、雪だるま殿!」
「よろしくなのだ」
 迅が求める握手に、雪だるまは腕替わりの棒と手袋で応えてくれる。
「雪を使った職人技、とくと見せつけてやろうじゃないか」
「ルールを守って全力で……勝負だ!」
「頑張って戦うですよ! おー!」
 錬の呼びかけに応じる形で、イズマやブランシュが声を上げる。
「雪だるまだかなんだかしらねーが、鉄帝人に敵うと思うなよ!」
 シオンも気合を入れて構えをとると、並び立つ雪だるま達も臨戦態勢をとる。
「「望むところである!」」
「それでは……いざ尋常に勝負です!」
 迅の呼びかけに応じて、互いに散開し、戦闘準備へと移っていくのである。


 まずは下準備。
 現状、雪だるま達がある程度下地となる戦場を作ってはいるが、日々雪合戦に励む彼らのこと。生半可な準備で挑むわけにはいかない。
「まずは陣地構築!」
 錬は自らの職人魂によって、ただでは壊せない雪バリケードを相手の射線を遮る位置にいくつも設置していく。
「相手は空も飛んでくるんだろ? なら……」
 空を飛ぶ優位は直情から攻撃が可能なこととシオンは主張する。
 その為、空を飛ぶ相手にも対応できるよう、シオンは壁に少しだけ傾斜をつけることを提案する。
 また、シャルロッテが持つサバイバル技術で崩れにくいよう補強も行うが、錬も合いの手を入れて。
「相手の警戒は雪、そして遮蔽を取る程のバリケードを作れば相手は遊撃に来ざるを得ない……となればアクアベル」
「はい?」
 突然呼ばれて目を丸くするアクアベルに、錬は陣地前方へと水を撒くよう頼んでいた。
 それの効果は後程実証されることだろう。
 バリケード量産にはブランシュや迅も手伝いに当たる。
「壁を作って、隠れる場所を用意するのは射撃戦の基本だって、ブランシュの先輩に教わったですよ」
 頑張って障害物作りするブランシュは何やら戦いの際に試したいことがあるとのこと。
 迅もまた人出があればと手伝うが、彼の視線の先には別の作業を行うエステルがいて。
「積雪量は十分、スノードーム、発動」
 飛行できる相手の対応の為、エステルはギフトを使って屋根付きの遮蔽物をとかまくらをつくる。
 武器を手放すことが条件であるこのギフトだが、雪の武器なら問題ないと量産できるのが強みだ。
 そのかまくらの中で、今度は時間いっぱいまでメンバー達は武器を作る。
 せっせと雪玉を量産する迅。
 そばでは、手が悴まないようにと手袋をしたイズマも大きめの雪玉を作り、バリケード後方へと蓄えておく。
 極寒超越の影響で調子が上がってきたイズマもまた、小さな雪玉を作る海種情報屋に声をかけて。
「アクアベルさん、頼みがある。開幕で雪を巻き上げてくれないか? 相手の視界を覆うように」
 快く頷くアクアベル。
 その傍らで、先程彼女に声をかけた錬が鍛冶職人魂で雪製武器を作製していく。
 さすがに雪製武具だと、一、二発で崩れてしまうだろうが、錬が職人としての本領を発揮し、水行の呪符を使うなどして固めることで耐久性を高めていた。
 外では、ヘルミーネが忙しなく動き回る。
「ヴィーザル地方出身者の実力を思い知らせてやるのだ!」
 こう見えても、雪合戦に一家言あるというヘルミーネ曰く。
「つまり……『雪合戦とはゲリラ戦』だぞ?」
 味方陣地方面に何かを仕掛けるヘルミーネの戦法にも注目だ。


 雪だるま選りすぐり隊も、作戦を練っていて。
「4-2-3の布陣である!」
「「である!!」」
 4は飛行、2は遊撃、3は狙撃と数を表す。その表記は、練達の再現性東京で見たサッカーでも参考にしたのだろうか。
 そんな選りすぐり隊を前に、散開するイレギュラーズ。
「では、始めるのだ!」
 雪だるま夫婦の声によって始まる雪合戦。
 開幕してすぐ、アクアベルが水の力を行使し、大きく、そして高く雪を巻き上げた。
「「なっ!?」」
 雪だるま達が出だしから硬直してしまう中、イズマはその意表をついて飛行し、怯んだ相手目掛けて雪玉をぶつけていく。
「空中班、行くのである!」
 4体の雪だるまは巻き上がる雪を下に見ながら、イレギュラーズの陣地側へと飛ぶ。
「航空猟兵……空中戦のエキスパート部隊を作るという、ブランシュの先輩の考えを実証実験するですよ!」
 先ほど言っていた実験を行うべく、高く飛行するブランシュ。
「いくのですよ」
 上空40mから状況を仲間に伝えつつ、ブランシュは狙撃銃に詰めた雪玉弾で雪玉バージョンロングバレル・リコシェットを使い、雪だるま達を狙撃していく。
 相手の攻撃が届かず、こちらが一方的に攻撃できれば最高だと考えていたが、雪だるまも長距離狙撃スキルを備えており、ブランシュを狙ってくる。
 注意が上方へと向く敵には、迅が雷鳴を轟かせつつ跳び上がり雪玉を投げつけて牽制する。
「楽しんでもらえているでしょうか?」
「もちろんである!」
 制空権を奪われては不利になると、雪だるまもブランシュへと集中砲火を浴びせかけようと雪玉を飛ばしてくる。
「うふふ、選りすぐり隊の皆さん! ワタクシ、シャルロッテ・ナックルを倒せますかしら!?」
「ならば、勝負なのだ!」
 堂々と名乗りを上げて仁王立ちするシャルロッテに気を取られ、雪だるま達は彼女へとターゲットを移して雪玉を投げつけてくる。
 しばしの間、集中砲火を浴びることになるシャルロッテ。
 一方で、仲間の援護を受けたブランシュはすぐさま下降し、着陸していく。
「「いくである!!」」
 低空から一斉に雪玉を投げつけてくる雪だるま。
「選りすぐり隊、精鋭とあらば不足なし」
 だが、かまくらを作ったエステルはそのかまくら内に仲間達の作った反撃用の雪玉を十分備えている。
「落下物攻撃、来ます。かまくらへ。凌いでから反撃しましょう」
「かまくらにかけこめー!」
 一旦、安全圏へと駆け込んだブランシュは、エステルらと共に地上戦に切り替えることにしたようだ。
「魔刻開放……」
 別のバリケードに退避していた錬も自己強化する。
 対空に重点を置いていた彼は、雪玉の切れ目を見計らって反撃して。
「式符・炎星……ならぬ雪星!」
 普段は大砲から炎弾を発射する技だが、今回は神秘の力を籠めた雪弾を飛ばす。
 イズマやブランシュ、エステルの雪玉に、雪だるま達も斬弾が厳しくなる。空では雪玉の補充が難しいという難点があるのだ。
「空は対策されているのである!」
 ならばと、さらに低空から攻め来る雪だるま達だが、そこを広域俯瞰で戦場を見渡すヘルミーネの罠が襲う。
 柱の間を通り抜けようとする雪だるま。だが、そこに括りつけられたブービートラップによって雪玉が飛んでくる。
 それだけではない。そのすぐ上では時限式の精霊爆弾が小規模爆発を起こし、大量の雪が降り注ぐ。
「「のわーである!!」」
 それによってダメージを負う雪だるま達だが、倒れるほどではない。
(最高の結果だったが、最悪不発でも構わなかったのだ)
 しかし、ヘルミーネの思惑は別の場所にあった。
 大事なのは『罠が仕掛けられてるかも』という心理状態にさせること。
「そうすれば相手に余計な緊張状態を強いて精神的に消耗させるのだ。その隙を……突く!」
 瞳を煌めかせ、ヘルミーネは仲間と共に攻勢を強める。

 地上でも戦いは進む。
 遊撃は2体。彼らが囮となる間に狙撃役が狙う作戦のようだ。
「「のわーなのだ!!」」
 こちらでもヘルミーネの罠が起動しており、
「皆、落ち着くのだ!」
 監督である夫婦の声が響くが、戦場の選りすぐり隊は現状把握が追い付かず、混乱している様子。
 そこに、罠の制作主であるヘルミーネが奇襲をかける。
「ヒャッハー! ヘルちゃんのスピードと機動力はメンバー1なのだ!」
 錬が作ったナックル型の雪製武具を両手に装着した彼女は、それを使って殴り掛かる。
「雪狼アタック(フェンリスヴォルフ)なのだ!」
 幻視の魔狼が剥く牙の一撃は、さすがに雪だるまも未知の領域。
 いくら練度の高い雪製武具とはいえ強すぎる衝撃で砕けてしまう為、武器を失ったヘルミーネも全力で離脱する。
「ヒット&アウェイ戦法なのだ!」
「逃さぬのである!」
 追いすがろうとする雪だるま達。後方狙撃班の援護を受け、一気にイレギュラーズを攻め落とすつもりだ。
「さあ、踏み込んで来いよ……!」
 ただ、それは錬の狙い通り。踏み込んできた雪だるま達に、予めアクアベルに水を撒かせた場所を踏ませて態勢を崩させる。
「滑るのである―!」
 雪と並んで冬の脅威、氷。錬はそこに踏み込んだ雪だるま達へと雪玉の集中砲火を浴びせかけていく。
「戦いは砲(雪)を交える前に始まっているのだ」
 味方陣地へと雪だるまも雪玉すらも通さない。そんな気概を錬は感じさせた。

 倒れた敵への集中砲火は続く。
「狙いは外れたが、これも仲間の作戦あってこそだ」
 空の敵が遮蔽後方から狙ってくるのを想定していたシオンだったが、罠によって二の足を踏む飛行班へと攻撃を仕掛ける。
 その際、囮役は飛行するイズマが担う。
「俺なら狙いやすいぞ?」
 雪玉を投げつけて敵の注意を引くイズマへと攻撃を集める雪だるま達に対し、シオンは両手に持った雪玉をぶん投げ、一気に攻め落とす。
「やられた、のである……」
 倒れる雪だるまを確認するとすぐ、シオンは物質透過で遮蔽の陰に隠れる。
「姿を晒してるのはあぶねーからな!」
 実際、イズマにばかり注意を払ってはおらず、選りすぐり隊は夫婦や子供達の呼びかけで我を取り戻し、近づくメンバーに雪玉を乱舞してくる。
「我が【鉄の脚】をご覧あれ!」
 それに対し、迅はオオカミの動きで雪だるまを攻め立てる。
 雪上での移動は体力を要するが、迅は狩りで走り回ることを得意としている。
 ただ、迅にばかり気を取られてはいられない。
「今です。前方の敵に集中を!」
 攻撃を集めていたイズマは不滅の如く立ちはだかり、仲間と共に前方飛行班に攻撃を集める。
「やられたのだ……」
 浮力を失い、その雪だるまは地へと落ちていったのだった。


 雪だるま達はフォーメーションを変えつつ、応戦を続けるも、一度崩れてしまうと立て直しが難しいようで。
「ハニーコムガトリング雪玉バージョン!」
「無念である……」
 布陣の中で空を飛ぶ敵目掛け、ブランシュが弾幕を張ると、1体が力尽いて落ちてしまう。
「みなさんもふぁいおー! ですよ!」
 ブランシュは仲間達を元気づけ、さらなる敵の撃破を目指す。
 ただ、相手も身内の応援で力を得ていて。
 回り込むように遊撃、強襲してきた雪だるまの対応が遅れたエステルは雪の剣で応戦するが、もう1体の遊撃班に雪だるまを投げつけられ、パンドラの力にすがる。
「あの遊撃班に注意です!」
 迅の呼びかけもあり、遮蔽から物質透過したシオンが近距離から現れて。
「思いっきり叩きつけてやる!」
「なのだー!!」
 言葉通り雪の塊を思いっきり食らった遊撃1体が卒倒してしまった。
 錬もまたもう1体を見定め、式符・銀閃ならぬ雪閃……棒状の雪で滑った雪だるまを狙う。
「はっはっは、雪合戦と言えど手加減なんてするものか、これが戦略だぁー!」
「のわーであるー!」
 事前準備がものをいう試合は楽しいと、1体を仕留めた錬は楽しげだった。

 その後も攻防が続くが、イレギュラーズ側の戦略がうまくはまった形だ。
「フォーメーションを変えるのだ!」
 4体にまで減った雪だるま選りすぐり隊は狙撃を諦め、全員が空中、遊撃へと転じる。
 それらの攻撃を不退転の意志を強く持つシャルロッテが受け持つ間に、他メンバーが畳みかける。
「雪玉死世界なのだ!」
 雪合戦仕様にアレンジした氷魔法によって、雪だるまらへと大量に雪玉を降り注がせたヘルミーネは、さらに毒で浸された極小の雪玉の嵐で相手を攻め立てる。
「無茶苦茶なのだー!!」
「ヴィーザル地方ではこうなのだ! ヘルちゃんは悪くねー!」
 雪だるまに怒られて少し泣きはするが、ヘルミーネは反省することなく1体を倒してしまう。
 巻き込まれた1体は辛くも逃れていたが、イズマがそいつへと追いすがり、陣地の隅にまで追い込んでから顎のごとく象った一撃でトドメを刺す。
 数が減ってスイッチする雪だるま。
 残り2体は遊撃役……と思いきや、いつの間にか片方が距離をとって狙撃してくる。
「狙撃はさせませんよ!」
 陣はすかさずそいつの動きを察知し、一気に距離を詰める。
 敵が飛び上がればしめたもの。迅は真下から雪を叩き込んで。
「圧倒的であるっ!」
 その1体は雪に塗れて果ててしまった。
 気づけば、選りすぐり隊も遊撃を行う1体のみ。
 ただ、1体では遊撃は機能せず、立ちはだかるシャルロッテへと雪玉を叩き込むのみだ。
「こうなったら玉砕覚悟である!」
 シャルロッテが肉体言語で攻め立ててくるのを見た雪だるまは自らを弾丸として体当たりしようとするが、シオンがアポートによって引き寄せた雪玉で牽制する。
「最後まで有効活用しねえとな!」
「うぬうである!」
「倒すということは倒される覚悟があるということ、ならば全力をもってブン投げますわッッッ!」
 バランスを崩した相手に、シャルロッテが渾身の力で雪玉を叩き込む。
「かんぱい、なの、だ……」
「遊びも決闘も、本気で楽しんで本気で挑むことこそがシャルロッテ・ナックルの矜持ですの!」
 雪上に伏した雪だるまに、シャルロッテはドヤ顔で語ったのだった。


 勝敗はイレギュラーズの完勝。
「ああ、楽しかった! 本当に強いな、雪だるまさん達。試合してくれてありがとう!」
「うむ、得るものが多い戦いだったのだ」
 手を差し出すイズマに雪だるま達も手袋を差し出し、惜しみない拍手をメンバー達へと送る。
「いい試合でしたよ! また冬が来たら、お相手しますですよ!」
 互いの健闘を称え合うブランシュは、冬はこんなに楽しいと主張する。
 折角だから、もう少しだけ。
 シャルロッテの提案もあり、イレギュラーズと雪だるま達は後片付けをした後で一緒に雪だるまをつくり、かまくらで暖まったりとしばしの間、冬を満喫するのだった。

成否

成功

MVP

ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
タナトス・ディーラー

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 皆、勝利の為に全力を尽くしたプレイングであり、MVPは非常に悩みましたが、序盤に制空権を制したあなたへとお送りいたします。
 今回はご参加ありがとうございました!

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