＜星屑綺譚スタアライト＞ Shall we dance？

オープニング

●星屑のドレス
　朝が来ない街、スタアライト。
　空から降る星の雨は輝きを放ちながら宙に弧を描いて大地へ墜ちる。
　それを拾い上げてはバスケットの中に放り込んでいく。一つ、二つと増えていった星屑は籠の中で煌めいてカンテラの代わりになっていた。
「これだけあれば素敵なドレスが作れるわ」
　手を止めて一息着けば澄んだ空気に白い吐息が溶けていく。魔女が屋敷に戻るとひとりでに灯る星の灯りが主人を出迎えた。
　拾い集めた星屑を鉢の中に入れて丁寧に砕いていく。煌めく粒に変わった星々を拾い上げてふっと息を吹きかけたら瞬く間に煌めきを放つ糸へと早変わりした。それを織り機に丁寧にかけると踏木に足を置いてぐっと踏み込んだ。

　かっこん、かっこん。

　冬の静寂に魔女が布を織る音だけが響いている。数十分後、星の輝きを宿した一枚の布が出来上がる。出来上がった布にサッと目印を付けたならステッキを一振。ふわりと使い慣れた道具達が浮かび上がって「待ってました」と言わんばかりにひとりでに動き出す。
　
しゃきん、するっ、しゅるり。

　道具達の奏でる音は宛ら指揮者のタクトに合わせて演奏を披露するオーケストラの様に統率が取れていた。やがてその音も止み、道具達が元いた場所に捌けていく。
　演奏が終わった壇上には主人を待ちながら光を浴びて煌めく星屑のドレスが立っていた。
「うん、とっても素敵」
　後はこのドレスを注文した彼女が来るのを待つばかりだ。

●星空の下で貴方と
「あっという間に一年も終わろうとしているな。早いもんだぜ」
　暖かい珈琲を貴方に出しながら朧は赤い印が着けられたカレンダーの日付をなぞる。
「今年もスタアライトでは聖夜祭……星屑祭をやるらしいぞ」
　星屑祭。
　スタアライトで聖夜を祝う祭の事だ。
　毎年広場に大きなツリーを飾って、小瓶に星の欠片を詰め込んで祈りを捧げる神聖な儀式。
　今年の催しは星空を見上げながらダンスパーティーを開催するようだ。
　星の光を編み上げた夜空のドレス。
　硝子の靴に負けないくらい透き通ってキラキラ輝く星屑の靴。
　瞼には星空を描いたシャドウを載せて、口許には微笑みを。

　そっと手を差し伸べて、恭しく脚を引いてドレスの裾をつまみあげて。

「星空の下で、今宵私と踊ってくれますか？　……ってな」
　胸に手を当てた黒衣の男は戯けた様に貴方に手を差し出した。

• ＜星屑綺譚スタアライト＞ Shall we dance？完了
• NM名白
• 種別ラリー（LN）
• 難易度-
• 冒険終了日時2022年03月11日 16時15分
• 章数3章
• 総採用数6人
• 参加費50RC

第3章

第3章 第1節

●第三章目標
　ダンスパーティに参加する。

　たいへんお待たせしました。
　いよいよダンスパーティが開催されます。
　お相手様と楽しくでも、おひとりでダンスパーティを眺めるのも良し。
　・同行NPC
　朧
　ご指名があれば連れていけます。
　彼は黒衣の衣装のままですが星の贈り物をすれば受けとり身に着けてくれるでしょう。ダンスもできます。
（男性でも女性でも踊ります）

　尚、星屑の魔女はダンスパーティには参加しない様です。

　この旅が貴方の思い出の一部になります様に。
　それではいってらっしゃい！

第3章 第2節

「舞踏会か……武闘ならばいざ知らず、舞いであるか。ある程度の真似事は出来れども、元となる教養も無ければできる気がせぬ」

　広場のベンチに腰掛け、カップに注がれた温かな茶を啜りながらレオナは楽しげに踊る人々を眺めていた。物心ついた時から父と共に戦いに身を投じていたレオナにはダンスの相手をエスコートする術も、相手を信じ身を委ねる術も持ち合わせてはいない。見様見真似で動きを真似をする事は出来るだろうが、型だけ真似ても滑稽なだけだろうと再度茶を啜った。
　
　男性が楽しそうに女性の腰を引き寄せる度に。
　女性が嬉しそうに背を逸らす度にチカチカ星が散った。

　星、星。

　濃紺の生地にパールの様に縫い付けられた星々が、彼女らの動きに合わせ煌びやかな軌跡を描く。
　詩的な表現は得意ではないが、星々も共に踊っている様だと思った。
　その眩さにレオナは「実に見事である」と呟き、そういえばと己の衣装を見た。
　背中の翼と尾に引っかからない様に作られたバックを大胆にくり抜いたドレス。軽やかな生地は華やかなのに動きやすく、あしらわれた小さな星がレオナの動きに合わせて小さく揺れている。
　本来はあの二人の様に星空の下で踊る人々の為に織られたドレスなのだろう。
些か申し訳なさを覚えつつも着心地の良さから鑑みるに、自分の意を酌んでくれているからかもしれないと、レオナは目の前の星の軌跡を追いかけていた。

成否

成功

第3章 第3節

「魔女さん、素敵な星の贈り物をありがとう！　帰りにまたご挨拶に来るね！」
「こちらこそ素敵な時間をありがとう。貴方達に星々の祝福があらんことを」
　星空のリボンとドレスで着飾ったオフィーリア。
　星枝のヘアピンで髪を飾ったイーハトーヴは彼女とお揃いの生地を使った衣装を纏い、嬉しそうに駆けていった。

「それじゃあ、改めて……俺と踊ってくれますか、お姫さま？」
『よろしくってよ、王子さま？』
　見様見真似な下手くそなステップに不恰好なターン。一人で目を回している変人と思われているかもしれない。

「でも俺にとって、君はかけがえのない家族でお姫さまだから、周囲の目を気にするよりずっと、君の手を取ることが大切なんだ」
　イーハトーヴの言葉にオフィーリアがはにかんだ。
『言葉は満点だけど、ダンスは30点ってところね』
「ふふ、そしたら次の機会までに一緒に練習しておかなくちゃだね。
それにしても喉渇いたなぁ。お酒とかあったらいいのに……」
『ダメよ』
「えっ！？　今日は飲んでもいいでしょ？　お祭りだよ？」
『気分が悪くなっちゃうわ。ダメよ』
「そ、そんな……！」
『来年飲めば良いじゃない、その時には目を回さないくらいに上達してるわよ』
「約束だよ？　やっぱりダメは、なしだからね？」
『どうかしら』
「オフィーリア！」
　がっくりと肩を落とした王子さまにくすくすとお姫さまは笑う。
　
　星空の下で君と約束をしよう。
　来年も一緒に居ようね。

成否

成功