シナリオ詳細
ブッシュ・ド・ノエルの屠殺
オープニング
●ユールの群れには花束を
とても、とても、たくさん飾られた、鈴の音が世界に響き渡っていた。
ひどく、ひどく、醜く思えた、肥え太った樹木が人々に讃えられている。
何の日だ、何の日だ、どんな毎日がやってきた。
――ユールには木材がたっぷり必要なんだ!
ことこと、ことこと、異常なまでに大きな鍋の中、何かしらの臓物が煮込まれている。
この部位は此方の何某さんに。あの部位は彼方の何某さんに。そっちの部位は私が貪り尽くそうね。
愉しそうな皆々の面、なんと半生らしい生臭さだろうか。
――そんな、これじゃあ臓物が足りないじゃない!
ブラック・ペッパーをぶちまけても汁気たっぷりな諸々は追加されない、橇から落っこちた豚の中身は既にからっぽだ。老若男女が肩を落としてぶらり・ぶらりと雪景色を眺めている……明日のスープが作れない。
もくもくと天へ昇っていく煙が祝福を踏み躙っていた。欲しいよ欲しいよ、したたる臓物。
――そうだ、あの子を使おう。肉々しいあの子を。
●ブラック・サンタの生贄
「ふんふんふーん。ふんふんふーん。ふっふふーんふふーん……」
くるくると踊るように、境界案内人は上機嫌な様子だった。
しかし、彼女の目は何処か、遠く遠く、正気ではない世界に向いている。
「皆、ユールに集まってくれてありがとう。今回の物語は『サンタクロース』って言えば好いのかしら? そのお手伝いよ。最も、アナタ達は『贈り物』なんだけどね。そう、いつもの通りに投身万々歳な気分ってワケ」
取り出した大きな鍋には何も入っていない。一人、誰かを指差した。
「お入りなさい、そういう事よ。なんでも『まいにちがユール』な世界では臓物が不可欠なんですって。それが足りないっておはなしよ。このままじゃあ皆臓物食べれなくって死んじゃうわ! ふふふ、ふふ、ふふふふ――ちゃあんともつ煮になって食べられなさいよ? 大丈夫、きっと正気で帰ってこれるから」
頁が開かれる。
- ブッシュ・ド・ノエルの屠殺完了
- NM名にゃあら
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年12月18日 22時05分
- 参加人数2/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 2 人
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参加者一覧(2人)
リプレイ
●こんなにメデタイ年中だと謂うのに君達は今を反芻出来ていない
空っぽの鍋に肚減りの人々、それに混在した異教徒はどんな末路を迎えるのか。
派手々々しくも宣言された闇鍋の愉悦感、優越感を越えていく背徳の奇祭。
サラダ油の金色も今宵には不相応で、相違工夫をした果実こそが良質だ。
汁気いっぱいを夢に見つつ、どうにか胃液をせき止めた。
――愛していると思えたの。
神様をただの人にした責任はちゃんと取るよ。
――ほんとうに?
ひどくのんびりなブラック・サンタクロース、ユールだと知っていたのに寝惚けていた。
煙突の形を無視して身を投げた莫迦だ、つまったものを残すほどの高笑いだろうか。
●時代遅れの脳味噌が星を讃えている、幻視した両手いっぱいの生煮え
シナプスを邪悪性だと断言する事は簡単だが、ニンゲンを聖善と見做すのは中々に難しい。幾等か咀嚼したところでタンドリー・チキンは自動にならず、ぐるぐると焼かれていくザマは醜いとしか表現しようがない。アルミホイルの内側でふたり、くるまるのは愉しそうだが、もう『そんな』幻想には浸れやしないのだ。無気味なほどの量、花束が背後へ消えていく。トリカブト・トリカブト・トリカブトの洪水。はべらせた騎士道精神とやらが膨張してしまった、縛り付ける為に力をこめようね――根っこがニコラウスの髭をしていた、不安定な復活の兆し。
プレゼント・ボックスの中身を今更、他人に訊ねる事など、恥ずかしくて君達にはとても出来ない。使い、遣い、旧されたリボンの薄汚れた赤になんとも奇妙な蝶々がくっついていた。何が起きようとも悉くは夢の中の泡で在り、素晴らしいほどの幸福も虚空へと失せて終うのだろう。聴こえる、聞こえた忌々しい鈴の音、これがロゴスだなんて謂われたら信じるしかないね。ユールなるものを僕は知らない、わかっているのは偉大な神様の祝祭っていうだけ。ほら、彼方側を覗き込めば煌びやかな宇宙への思い、くつくつと嗤っていた人々の注目を浴びて。誰かのためになれるだなんて、なんてすてきなことなんでしょう。それは何者かが唾棄した呪いの類ではなかったか、模倣された丸太が誇大の貌を再現していく。ご覧ください皆さま――聖なる夜にふさわしいグラデーションだ、爽やかなのはきっとノドゴシに違いない。パチ・パチ・ザァーザァー、つたない拍手が場を埋めて緊張感を突き破った。笑って、カンちゃん。君だけはちゃんと笑ってくれ。華奢な體にたっぷりと歓喜を集めてくれ。かわいいね――はらわたが御入用だ、神様の子のはらわたが不可欠なんだ、三位一体の一でも齧れば毎々と木材が仕込まれてくれる。異教徒の僕でよければ喜んで差し出しましょう。三唱された言辞にならない言辞、いかれた頭の裏側には既に妄想がでっぷりだ。沈んでいくのか飛ばされていくのか、全てを定めるのは星でしかない。ようこそ三角形と呼ばれる真実へ――さあ。メインディッシュには時間がかかる、鮮度が要と彼等もしくは彼女等は謂うが『加工』する側はたいへんなのだ――それじゃ愛しの君を八つ裂きにしようね。抱くように構えた得物が柔肌の獲物を撫でツけて這う、それをしていいのは俺だけだから。邪魔は要らないしさせるものか。からからと回り始めた熱病が一種の安堵を孕んでいく。カプセル剤をごくりする所以はない、ドクターも健康体だと肩を落としていた筈だ。おいしくおいしく料理してくれるはず。包丁のお名前を伝えてください、あなたがしーちゃん。おどり喰い出来ない事を悔やみつつの嗤いはぐつぐつへ、ところで杭はチョコレートで造られた。逆さに組まれた魔障のコク、充実した作業が君達を待っていた。
恐怖と呼称されたスパイスは今宵、己の在り方を鏖にされてしまった。つぅつぅと遊ばせた優しさがさっくりとこめかみを裂いていく。続け様にあてられたのはくるぶしだろうか。大きく大きくぽっかりとあいた世界、ちょっと前までの君達を観ているかのようだ。ぶらり、ぶらーり、もみの木に吊るされた女の子、なんだか顔色がおかしいよ。鍋の中身になるのですね、それなら問題ありません。どうかおいしいと言ってください――時計に視線を投げればナント、人々が騒ぎ出すハギス刻、こくこくと頷いている貌の機械的な事か。勿論、したたる血だって無駄にはしない。腸詰のうまさを俺はよく知っているから。マスタードとケチャップの調達も万全だろう、何せこの麺麭は生でこそのお手製だ。ふとももはユールフィンカにしようか。ぎゅうぎゅうと括り憑けた欠片の艶やかさに涎をのもう。細くて細くて愛で易い二の腕はぺらりぺらりとマリネの宝玉、じゃあ肝心の臓物は? ぼとぼととこぼれた襞元は素早く回収するに限る……嘘だろう、人々の喜びは嘆きに変わっていく。そりゃあそうだ、腹を裂いたら血肉代わりの薔薇々々、アハハ、綺麗だね。ぶぅ、ぶぅ、文句が垂れたって問題ないの一点だ。よぉく見てご覧なさい、お隣の肉らしさも香り高いと思えないのか。兎にも角煮も意識あるままでとけだすとけだす大鍋のお布団。血も肉も上手に使ってくれた、それなら骨はどうするの? よくわからないからこつこつとお任せ、ぜんぶ・ぜんぶ・ぜぇんぶ――雪の彫刻みたいな骨はユール・ゴートの飾りにピッタリだよ。迷える子羊は火刑なのか?
罅も割も赦してはいけない、熱を帯びて歪ませるなど以ての外だ。もつに火を通しながら蝋燭を掲げるのは如何だ、肋骨を映えさせた灯の、美しき哉ユールへの返礼ごっこ。真冬の暗夜を灯していく君のあたたかな反射、俺の手元にもひとつちょうだいな。ぐるりと底まわしたらぷかり浮かんだ赤、君を傍らに感じながら君を細切れにしている――どうか吐き出さないでね。ちろりとみえた舌の先端が甘さを望んでいたとしても、僕の血の一滴は苦々しさの塊でしかない。吐物になるのはさすがにさみしい。欠片まですべて活かされたら御辞儀をしよう……味噌汁になったのは偶然じゃない、喜びに昇華するならそれは大切な出来事だ。存分に腕をふるってね――ふるえていた唇はもう見当たらない。
一輪の悪魔が筆舌に尽くし難い声でブラック・サンタごっこを嗾けて魅せた。ふらついたオツムに這い寄った、名状成せないほどの朦朧が男の子の松果体を叩きノメシテ狂う。お嬢さん、お嬢さん、赤い薔薇を髪に刺してごらんよ、お嬢さん。イマジナリー・フレンドじみて出現した知らない子、逸らされた意識は若干の焦げすらも許容してしまう。きれいだねかわいいね。矢鱈と撫でる事も滅裂と食む事もなかったが、しかしとても似ていると妄躁して止まらない。お嬢さん、君もばらしていい? ふと謳いたくなって天を見上げた。ありがとう※※※※、ありがとう※※※※、ようやく俺は降誕の意味を理解出来たのだ――当たり前みたいな顔してアハハと笑わないで。紅葉の色を忘れたとは言わせたくない、言わせない、どうして羊羹が緑色なのかも知らないクセに、勝手気儘に解釈しないで。すらりと構えられた包丁の行き先、いやだ、そんなにぶいもの、わかりたくはない。
本当はあなたに食べられたいの。どろどろになった具材の群れはただひとつの思いに支配されていた、たくさんの貌に濡れた怪物のように、思考回路が異常だなんて進化はありえないのだ。お願い、お願い、すがる事も不可能な半液体の君に声帯を泳がせてみせる。一口だけ、一口だけでいいから。そろそろ食べ頃だと自分が教えてくれる、仕上がった僕は絶対にあまいのだ。ねえ、杞憂だというのならば証拠を見せて。見てるからね、見つめているからね、真っ黄色な脂質の上品さをアピールしていく。ゆらゆら漂いながらしーちゃんを見てる。とけ崩れて煮えながらしーちゃんを見てる。それでも愛してくれるかな。だからこそ愛してくれるのかな。銀色のカトラリーが近づいてくる。それだけで僕は救われる。それだけが僕を掬ってくれる。ねえ、早く、早く早く、早く早く早く、はやく……。
ハラキリみたいでちょっと笑えるじゃんね。大鍋用の臓物が不足していた事に気付かない、そんな愚かなイレギュラーズは存在しない。贄はひとりよりもふたりだ、いろいろ誓ってるんだよ、愛とかさ。ざらざらと目分量でブチ混まれた、薔薇ではない不純物の登場だ。鍋の底でカンちゃんと再会したいしね。ぶちぶちとあふれた小腸が君達の関係性を象徴している、ああ、臓物はちゃんと洗って汚れも穢れも落としておいてくれよ。何せこちとら腹が黒いから――洗った方が好いのは頭の中なのでは? ※※※※は哀れな食材を指差した。もう君には贖罪なんて出来ないのさ――そのまま食べてあたっても知らないよ。無慈悲な運命がサイコロを転がし、仰々しい百八をつけた。浄化されるつもりはない、たとえ無意識だとしても。
こわれかけのお飾りが鍋の中から棄てられた、人々はおたまを両手に掴んで君達の臓物を掻き乱していく。再会出来ているのか出来ていないのかを気にする様子もなく、ただ甘い甘い、不運の汁気を啜り続けるのだ。ブラック・ペッパーの擽ったさすらも胃に収まった頃合いにブッシュ・ド・ノエルが完了した。ネクタイのスライス、色々と犠牲になったブラウンブレザー、こんなに硬くなった心臓は要らないよ。始末におえない幽世がテキトウさに嘔吐していた。かみさまありがとう、お役御免だよ。
――愛していると思えるの。
責任はしっかりと、取れているのだろう。
●まるで喜劇だと※※※※は告げた、福音はおそらく断頭台だろう
よごれに穢れたからっぽ鍋、満腹の人々が異教徒を招いた。
植物性で胃を洗浄したならば、異の一番に肚中を肥るだろう。
大好き、大好き、大好きなザクロ、杞憂だった事など一度もない。
――アハハ、アッハハハ、アハハハ、ハ。
ファム・ファタルになったミュトスは削除されていた。
当たり前。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
にゃあらです。
ブラックなのは冗談だけにしてくれ。
●まいにちがユール
毎日ユールな世界です。毎日臓物を食べます。
●目標
臓物が無くなってさあたいへん! サンタクロースなあなたが臓物になりましょう。
生でも生焼けでも黒焦げでも構いません、人々はおいしく召し上がれます。
●サンプルプレイング
人間種。
「いや如何いう事だよ、臓物がねぇなら豚とか牛を持ってこいとかにはならねぇのか?」
仕方がないので大人しく捌かれます。
おいちょっとまて、せめて絞めてから解体してくれ。
不思議と怖さはなく、黙々と鍋へと投げ込まれる肉片を眺めています。
「――なんで煮込まれてんのに意識あんだよ」
口に吸い込まれて往く自分自身、他と同化するのもある意味では悦びだろうか。
旅人。
「食べないでください!!! いえ、食べられるのは性ですけど」
食材適性と料理を活かして自分の美味しい食べ方を伝授します。
この部位とあの部位は別個にしてこの肉はとても柔らかい。
この骨は砕いてスープに入れて筋張った部分は破棄。
「だからって意識あるのは如何なのよ!!?」
最後まで美味しく食べられました、これで皆満足でしょう?
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