シナリオ詳細
<ダブルフォルト・エンバーミング>約束されし破滅の剣
オープニング
●覇王の襲来
鋼鉄帝国を巡る終焉獣デカラビアとの戦いが終局を迎えつつある、その一方。
帝国をはさんだ東北側、ヴィーザル地方前線監視塔より知らせあり。
――『ノーザンキングス連合王国初代覇王リズリー・グレイグ、襲来せり』
●空白と油断
帝国は完全に油断しきっていた。
国家最大戦力とすら言われるザーバ軍閥に勝利し併合、更に南西部の荒野及び砂漠地帯ではそれらの元凶であったパラティーゾトモコの撃破に続き、国家転覆(テロリズム)を計画したエーデルガルト大佐や『プロモーター』たちの魔の手を払い、そのことごとくを撃滅したからだ。
更には最大の敵であり最大の脅威であった終焉獣デカラビアまでもを撃滅し、帝国軍は残る戦力をかき集め砂嵐盗賊団が支配していた砂漠地帯へと援軍を送り込んだ。
そのために最強戦力であるヴェルス、ザーバ、ガイウス、ビッツ、その他大勢のスーパーファイターたちが砂嵐へと終結し最終決戦の様相を呈する――まさにその瞬間こそが。
「喉元に剣を突きつける、最大の好機」
眼帯をつけた女、リズリー・グレイグは片目を大きく見開き、喉を刺し貫いた兵士から剣を引き抜いた。
どさりと崩れ落ちる兵士。リズリーを完全武装の兵士たちが取り囲むが、彼らにあるのは恐怖と焦りの色だった。
「なんで、いま、ここに」
この三言が、彼らのすべてである。
帝国軍はみなこう思っていた。ヴィーザルの軍勢やシャドーレギオンの軍勢が現れた西南地方に全ての敵が集中したはずだと。
ヴィーザルの覇王リズリーもまた、そこにいるはずだと。『わざわざ』国家を逆側にまで回り込み終焉獣戦力と合流してから帝国への進撃をはかったのだと。
だが違う。彼女は最初から、何もブレてなどいなかった。
一直線に。実直に。まるで放たれた矢のように……しかし慎重に慎重に機をうかがい、一撃必殺の時を待っていたのだ。
「撃てッ――!」
一斉射撃が行われる。
リズリーは見開いた目で振り返り、紅蓮の眼光が軌跡をひいた。
銃弾はすべてリズリーへと命中した――が、その全てを『無視』してリズリーは兵すべての首を切り落とし、切り落とし、切り落としていく。
たった十秒たらずの間に全滅した兵たちが、最初に喉を貫かれた兵と同じように崩れ落ちた。
「今こそ……今こそだ。今こそ始めよう。ノーザンキングス連合王国の……独立と、静かなる戦争を」
●緊急招集
「まじで……!?」
知らせを受け、アトランティスサーモンに乗って大急ぎで対ヴィーザル前線基地へと訪れたリゼ(p3x008130)はその光景と知らせに驚愕した。
覇王リズリーは少数ながらヴィーザルの精鋭部隊を率い、主力や兵の大部分を失った帝国へと進撃をはかったのだ。
その確証として、前線基地には死体と灰と、いまだ燃える小屋の残骸だけがある。
リゼは深く呼吸を整え、そしてここに『自分の戦い』が在ることを確信した。そして同時に、自分達が敗北すれば帝国が蹂躙されることを確信した。
「そうか、そうかい……」
誇りも、矜持も、その全てを捨てて『帝国への憎悪』だけを抱えた怪物となってしまったリズリー。帝国の仕掛けた狡猾な(そして卑劣とすら言える)戦略によって滅びたベルゼルガ一族の仇を討たんがために……。
「アンタはもう、本当に『ベルゼルガ』を捨てちまったんだね」
剣を手に、伸びる足跡を睨む。
まるで『止められるものなら止めてみろ』といわんばかりの足跡だ。
自分が失った『なにか』が、自分を呼んでいるようにすら、それは見える。
「ケジメ、つけようじゃないのさ」
こうして、ヴィーザル王国と鋼鉄帝国にわたる『静かなる戦争』が幕を開けた。
- <ダブルフォルト・エンバーミング>約束されし破滅の剣Lv:40以上完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2021年12月18日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●レールロード
長く伸びた足跡をたどる。土にしっかりと刻まれた軍靴の跡は、まるで自分達を追わせようとするかのように『夜告鳥の幻影』イズル(p3x008599)にもみえた。
「戦争というのはこういう事だ。
傷つけ合い、殺し合い、誰もが誰かへの加害者となり、誰もが誰かの被害者となる。
結ばれた因縁は廻るごとに捩れ、縺れて引き攣れ、より強固に絡み合う、もはや断ち切らずには解けぬ程に」
現に今、自分もまた追う側に回ってしまっている。元を辿れば練達からの依頼であるとはいえ、憎しみの連鎖に加担したことは否めない。
そう簡単に、この連鎖がとまることはないだろう。
たとえリズリーの死をもってしてでも。
「…………」
同じく足跡を追いながら、『優帝』いりす(p3x009869)は通ってきた前線基地のことを思い出した。
前線基地といっても簡単なもので、さほど兵力も割かれていない。世界が滅ぶか否かという瀬戸際で余らせる兵力もないということで、ただでさえ少ない兵力が大きく砂嵐側への支援部隊に回されたのだと聞く。無理からぬことだ。実際、自分達もそのようにして支援に向かったのだから。
けれど……。
(全てが終わる瞬間に立ち会わせることが出来なくさせてしまって、ごめんね……)
死んでいった彼らの無念を晴らすためにも、リズリーをここで止めなければならない。
それに、ここまで積み上げてきたものを総崩しになんて、させられない。
彼女はどう思っているのだろうと『虎帝』夢見・マリ家(p3x006685)の横顔を見たが、マリ家はまっすぐに前だけを見ていた。
一人のイレギュラーズとしてか、それとも少なからず本件に関わってきた人間としてか。
だがキッと燃えるまなざしは、現代皇帝のそれに見えた。
そして間違いを正すためではなく、何よりも向き合うために、ここにいるようにも。
「あの日」
仲間と共に歩きながら、『屋上の約束』アイ(p3x000277)はぽつりと呟いた。
「選挙で言った言葉に嘘はない。
この国に居て良かったと思える様に。誇れるような国に」
それは、アイだけに限った話ではない。ほぼすべての候補者たちが、あの公約を本気で掲げていたのだ。民主主義的な選挙で国の王を決めるというスタイルにおいて、そうなることはきわめて珍しい。色々と奇跡的な要素が重なったとも言えるのだが……。
「少なくともこの鋼鉄帝国での終焉獣とのけりもついタ。
イノリの方もどうにか制しテ、後はジェーン達の所って辺りって感じデ。
そウ、あと少しで良い結末が迎えられるってタイミングで的確に狙うリズリ―は戦略的には正しいんだろウ。
だがそれを見逃す僕らじゃぁないんだヨ!
此処で止めルッ!!」
その決意を聞いて、『(二代目)正義の社長』崎守ナイト(p3x008218)は小さく笑みを作った。
ステージで掲げた公約を、今も忘れていない。
「どんな大義があろうと、復讐ってのは全てをどす黒く塗り潰しちまう。
たとえ帝国が滅んだって、心の渇きは癒されねぇよ」
『復讐は無意味だ』と誰かが言った。けれど、だとしたらどんな人生だって等しく無意味なのかもしれない。指針や目標を失ったひとが、生きていくために獲得した目的論的生き方だとすら、それは言えた。
けれど、だったら。
「俺(ORE)が受け止めてやろうじゃねーの! 同じ人生(dance)を送るなら、幸福(happy)じゃねーと笑えねえ」
「ま、私は正義とか悪とかどーでもいー畑の住人なんだけど」
『サラダ無双』きうりん(p3x008356)が自分の爪をかりかりといじりながら後ろを歩き、自分達の足跡と混ざったリズリーたちの足跡を振り返った。
「クレバーな感じ見せときながら余裕そうに足跡残してるのが気に入らないなあ」
「二律背反。けどそれって、人間らしいよ」
それまで黙って歩いていた『Brave Saw』グレイ(p3x000395)が会話に加わり、そして回転のこぎりのセーフティーを解除した。
砦が近い。
それに、強者の気配がびんびんに伝わってきたからだ。
「終焉獣デカラビアの勝利に酔いしれていたいって時に戦士が少なくなった国を蹂躙しに行くっていう蛮族行為。
まさにノーザンキングススタイルじゃない? ねえ?」
呼びかけると、砦からぞろぞろと何人かの戦士が姿を見せた。
頭に獣の骨めいた兜をかぶった戦士や、耳の長い弓兵。体中をなにかのジャンクガジェットで包んだ犬の獣種もいた。
そして彼らの中心に、堂々と現れたのが……。
「追いついたよノーザンキングスの王!
そっちのこれまでの都合なんて知ったこっちゃないけど。
奴ら(帝国)の帰る場所を失わせないこっちの都合は通させてもらうよ」
武器を構え、スロットルを握り込むグレイ。
『熊大将』リゼ(p3x008130)は彼らより前に出ると、背負っていた剣を手に取った。
(同じ人物であっても、辿って来た道行が違う以上別人ってことさね。
アタシは”リズリー”の事を理解できないし、逆もまた然り……)
リズの瞳に映ったリズリー。その憎しみに濁った瞳に、どこか挑戦的なリズの笑みが映っている。
暫し見つめ合い、リズリーもまた剣を抜いた。
「今、これまでにないほど人生が豊かだ。
『帝国を潰す』。皇帝も、その民も。殺せる者はすべて殺し、そうでない者も二度と寄りつかぬように心を折る。そこに並ぶ皇帝どももだ」
剣を突きつけ、どこか素の心を取り戻したかのように、憎しみに見開いた目をしたまま、口だけで笑った。
「やっと、やりたいことができる。生きてるって感じがするぜ」
「そうかい。そりゃあよかった。むしろ安心したよ」
リゼは握りしめた剣に力を込め、走り出した。飛んできたアトランティスサーモンへととびのり、同じくこちらへと突進してくる戦士達へと突撃する。
「バトル(ころしあい)ってのは、イヤイヤやるもんじゃあないのさ!」
●地獄への片道切符
砦の塀の上より、長耳の弓手が矢を高速で三連射した。
わざと狙いをブレさせながら放たれた矢はリゼを狙って飛ぶが、リゼはそれを剣で払って二本たたき落とした。最後の一本が直撃し、アトランティスサーモンから転げ落ちる。
「チッ――!」
「リゼさん、伏せてください!」
すぐさまライフルを構えるいりす。
レバー操作によってビーコン弾を装填すると、弓手めがけて発射した。
落ちたリゼへ追撃を放とうとしていた弓手は塀から飛び降り、そのあとを応用にして改造ビーコン弾が爆発した。
光に包まれるなか、土の上を前転する弓手。そこへイズルが光の翼を広げて突進を仕掛けるも、横から飛び込んできた鳩頭の飛行種によるタックルをうけ回転。
突き飛ばそうとするイズルの手を掴み、鳩飛行種はそのままイズルを空中まで引っ張り上げる。
「離――せっ」
やや乱暴にその手を振り払うと光の翼を部分的にパージ。至近距離から鳩飛行種へと飛ばして牽制をはかった。
翼を羽ばたかせ制動をかけた鳩飛行種は最初の一撃を回避。すぐに腰から抜いたサブマシンガンをイズルめがけて乱射してくる。
残った翼で身を覆うようにしてガードしたイズルは、そのまま落下を始めた。
「そのまま撃ってろハトォ! 俺様がブッコロして――」
巨大な骨の斧を握った戦士が落下地点目指して走る。獣の骨を被った戦士だ。
「そういうわけにはいかないんだよ」
ザッと両足でブレーキをかけるようにして間に立ち塞がったのはグレイだった。
機械鋸を起動しうなりを上げると、魔法の刃を纏わせ振り込んだ。
そこを退けとばかりに大上段から撃ち込まれた斧を、機械鋸の刃で受け止める。激しい火花が飛び散り、グレイの眼前へと徐々に迫る。
腕に力を込め、こらえるグレイ。表情には何の動揺も浮かばないが、顔にかかる火花
は何よりも雄弁だった。
「死に行く前の遺言は聞き受けてやる、思いっきり叫んでみろ」
そんな危険なつばぜり合いに割り込んだのはきうりんだった。
骨の戦士を蹴りつける形で押しのけると、くいくいと手招きをして挑発する。
「憎しみは何も産まないよ! 復讐なんて辞めよう!!
……とかこっち側が言っても説得力ないよね! 別に辞めなくてもいいよ! 止めるから!!」
骨の戦士は蹴り倒されはしなかったものの、ややよろめいた後に怒りを露わにし、地面をズンと足で叩いた。
その一方で、マリ家はジャンクガジェットで身を包んだ犬頭の獣種と向き合っていた。
「拙者にとって、貴方も大切な鋼鉄国民の一人です! 投降する気はありませんか?」
「冗談じゃあねえ。おれは帝国民じゃない。ノーザンキングス連合王国の民よ。皇帝陛下のおことばでも、ここで覇王サマを裏切るわけにゃあいかねえな!」
両手に回転のこぎりを出現させ、うなりを上げながら斬り付けてくる犬獣種。
マリ家はそれを飛び退くことで回避すると、ツインタイガーバルカンを乱射。
犬獣種は展開した増加装甲でそれを防御した。
(分かっていますとも。大切な物を奪われた悲しみ。怒りや憎しみが言葉などで覆らないことなど! ……それでも!)
マリ家は串状の槍を装備すると、犬獣種へと突進した。
「鋼鉄民全てを憎む必要はないでしょう!」
そんな彼女たちの左右を抜け、アイとナイトはリズリーめがけて躍りかかった。
「戦争をするなら上等ダ。ノーザンキングス連合王国初代覇王、リズリー・グレイグ!
我が名はアイ! この叡智の魔眼が開いてるうちハ、汝の野望は叶わないと知レッ!!」
アイの刀が、常人ではおよそ回避不能な速度で繰り出された。
確実に相手をとらえた……かに思えたアイの剣が、空振りする。リズリーの残像を斬り付けていたと気付いた時には、リズリーはその背後へと回り込みアイの首めがけて剣を振り込んでいた。
咄嗟に抜いた短剣が刃を受け止め、首の皮にふれた刃が一筋の血を流す。
「憎しみの連鎖の先は果て無い絶望でしかナイ。だから此処で連鎖は終わらせル!
僕は是が非でモ、ハッピーエンドが欲しいんダッ!!」
「ハッピーエンド? ふざけるな……この物語は全員が地獄に落ちて終わりだ」
素早くその場から飛び退くリズリー。
ナイトの連続フィンガースナップによって放たれた『社長☆gun』が空中で炸裂し、スピンを挟んで突きつけた指鉄砲とポーズが特大の社長☆gunとなってリズリーの眼前で炸裂した。
が、それを剣で撃ち弾くリズリー。
剣の表面に映ったのは、憎しみに濁りきった目だった。
強い。だが、それよりも強い感情をナイトは知っていた。
(俺は復讐者になる前に、仲間達が止めてくれたから今ここにいる。復讐に勝るは強い絆だッ!)
ぎゅっと拳を握り、構えを変えるナイト。
リズリーはアイとナイトをそれぞれ見ると、チッと強く舌打ちをした。
●人生の終着駅
リズリーがアイとナイトに舌打ちをしたのは、なにも突破できないと踏んだからではない。
今すぐに皇帝を手にかけたい感情があるのに順序を踏まねばならないという理性が邪魔をしたためだ。
そして現実問題、非常に高い戦闘能力をもつアイとナイトをもってしても、リズリーを止め続けることは不可能に思えた。
それは、先ほど短剣で攻撃をとめたアイが身をもって感じている。一瞬でも気を抜けば、首を落とされるだろうと。
そして、リズリーの視線は今まさにノーザンキングス精鋭たちと戦っている仲間のほうへと向いていた。それも、いりすやイズルといった防御の薄いところを狙って。
「時間を稼ぐには、攻め込むしかナイ……命がけだけど、手伝ってくれル?」
アイの問いかけに、ナイトは二本指をピッとたててウィンクした。
「社長(president)の命は皆の命。俺(ORE)のデスカウントで国が救えるなら、安いもんじゃねーの!」
ナイトは社長武空術で空へ浮きあがると、踊るようなステップでリズリーの周囲を飛び回る。そして乱数起動を描きながらも社長☆gunを様々な方向から打ちまくった。
殆どを回避されるが、それは狙いの内。アイが己の力の全てを剣に込めて飛びかかるその一瞬だけピタリと止まり、両手を揃えたスペシャル社長☆gunを放った。
ドッという衝撃がリズリーの姿勢を僅かに崩す。その僅かな隙がアイの剣が付け入る最大の隙となった。
アイの剣が振り抜かれ、リズリーの横を通り過ぎていく。
対するリズリーは剣を振り抜いたままの姿勢で止まり、ぶしゅんと頬から血を流した。
「強いな。だが……」
ズバッと遅れて斬り割かれるアイの身体。
ナイトが飛び退こうとしたその瞬間、リズリーは彼を斬り割きその背後へと抜けていた。
だがそのままいりすたちの元へは行かせない。
「命なんていくらでも投げ打ってきたんだよ!! 今更こわかねーよ!!」
きうりんのタックルがリズリーの腰へと浴びせられ、リズリーはその場に思わず転倒した。
空で幾度もぶつかり合うイズルと鳩飛行種。
そしてその下で幾度も武器をぶつけあうグレイと骨の戦士。
幾度めかの交差がおきたその直後、イズルは決死の覚悟で鳩飛行種を掴み急降下をしかけた。
(サクラメントのあった前線基地は遠い。どれだけ急いでも、おそらく戦闘への復帰はできないだろう。なら、命の使い処はここだ……)
「くうう……!」
もがき、逃れようとする鳩飛行種を抱えたまま、イズルが突っ込んだの骨の戦士へだった。
激しい突進は、骨の戦士による対空斬撃によって破られる。だが同時に、鳩飛行種を斬り割くことにも繋がっていた。
「テメェ! 自分事俺のところに……!」
驚きに目を見開く骨の戦士だが、満身創痍のグレイはそんな彼めがけて炸薬式光刃機械鋸を振り込んだ。
「チェックメイトだ」
マリ家の串状武器が、犬獣種の装甲を無理矢理に貫く。
更には、いりすの射撃が浴びせられ犬獣種のガジェットが爆発を起こした。
「ちゃんとした戦いをしに来たんじゃないんです。だから、『絶対に勝つ』ためにやるなら徹底的に……!!」
爆発がはれたその先に、リズリーが立っている。
しがみついて動きをとめていたきうりんは、ずるずると崩れ落ちて消えてしまった。
ツインタイガーバルカンを構えるマリ家。
「貴方が間違っているとは言いません! 拙者が貴方と同じ立場なら同じになっていたかもしれない!
明日は我が身なのです! ですが、拙者も拙者の大切な物を譲るわけにはいかないのです!!」
マリ家のバルカンといりすの射撃がリズリーへと浴びせられる。
その全てを剣で打ち払いにかかるも、払いきれずにそのいくつかが着弾。体勢が大きく崩れた所で、リズリーの手から剣がはじかれ飛んでいった。
「リズリー!」
リゼの剣がたたき込まれる。が、直前でその刃もろとも握り込んだリズリーによって剣がへし折られ、血塗れの拳がリゼの頬へとめり込んだ。
常人ならば吹き飛ばされるか上半身がなくなるかという衝撃だが、リゼはそれを気合いでこらえた。
(戦えば勝ち負けがあるし、誰か死ぬ。こっちのリズリーだってそれは十分理解してたはずさ。
それでもこうまで憎むなら、それ相応の目に遭ったんだろうね。
比べりゃ現実のアタシは相当恵まれてる……)
ぎろり、とリゼの目がリズリーを睨んだ。
「リズリー。あんたが捨てて、アタシがまだ抱えてる物がある。なんだか分かるか」
さして長い付き合いがあるわけじゃない。
二度三度と殺し合った仲でしかない。
けれど、リズリーとリゼの間には不思議なシンパシーがあった。
だからこそ。
「負けるわけには行かないのさ! 『アタシ』が!」
全身全霊をこめて撃ち込んだ拳が、リズリーの鼻っ面へと直撃した。
そのまま拳を振り抜き、突っ伏すようにぶっ倒れるリゼ。
そしてリズリーはといえば、仰向けに倒れ、花から血を流しながら青い空を見ていた。
何か、言うべきなのかもしれない。
リズリーは何かに気付いたように『あ』とだけ呟いて。
そして、目を瞑った。
こうして、人知れずおこされた戦争は終わった。
ノーザンキングス連合王国はその名だけを残し、蜂起は鎮圧されたという。
覇王リズリーの姿をその後見た者は……今のところ、いない。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
――覇王リズリーを倒しました。
――その後、リズリーの行方は知れていません。
GMコメント
●オーダー
ヴィーザルの覇王リズリー・クレイグの部隊へ戦いを挑み、これを撃滅してください。
この作戦に失敗した場合、鋼鉄帝国はリズリーによって蹂躙される危険を負います。
●エネミーデータ
・リズリー・グレイグ
己のベルゼルガ一族が帝国によって滅ぼされたことへの憎しみによって魔種のごとき怪物(バグエネミー)と化し、ノーザンキングス連合の各部族長を抹殺したことで初の『ノーザンキングス連合王国』国王となった女。
しかし帝国とヴィーザルの戦力差を理解していた彼女は大部分のヴィーザル兵をデカラビアの戦場へ送り込み、己とわずかな数の精鋭のみで帝国の破壊へ乗り出した。
魔種並の戦闘力をもち、一般の兵が束になってもかなわないとされる。
もし彼女と戦うならば、全員が力を合わせ、時には命すらなげうって戦い抜く必要があるだろう。
・精鋭ヴィーザル兵士
戦闘民族ノルダイン、高地部族ハイエスタ、獣人族シルヴァンスという三大部族の中から『戦闘力に優れるが素行が悪い』として部隊への編成を見送られた札付きの問題児たち。
全員がリズリー同様帝国に深い憎しみを持っており、帝国との戦いで家族や友または里を失った過去をもつ。
緊急のことでデータが不足しているが、およそ5名前後で構成されているとされている。
●フィールドデータ
・対ヴィーザル第二前線基地
今回の場合、一般兵がどれだけいても死体を増やすだけになるので事前に撤退させ、追いついたリゼたちイレギュラーズの力だけで覇王リズリーたちの部隊を叩く作戦がとられました。
基地は石を積み上げた作りの簡単な要塞ですが、石壁を容易に破壊するだけのパワーをリズリーたちはもつため要塞としての用はなしていません。すごくメタにいうと今から戦闘の余波で徹底的にぶっ壊される場所です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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●ROOとは
練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline
※重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
R.O.O_4.0においてデスカウントの数は、なんらかの影響の対象になる可能性があります。
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