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シナリオ詳細

豊穣の祭囃子に悪は潜みて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●悪の鼓動
 豊穣グルメ祭。
 そう呼ばれる大規模イベントがあった。
 魔種の佐藤 太郎の企みの総仕上げであったソレはイレギュラーズの手によって砕かれ、魔種集団『食の簒奪者』と対抗する組織『グルテンリッター』の存在が歴史の表舞台に出てくる結果となった。
 世界のあちこちに存在するという『食の簒奪者』の1人である太郎。
 だが、その太郎自身は何処に隠れたか姿を見せず……ただ、その影のみがちらついていた。
 つい先日暴かれた「モミジ村事件」などは、その片鱗と言えるだろう。
 観光地として少しばかり有名なモミジ村の住人の多くが「黒子」と呼ばれる太郎の手下たちに入れ替わっていた事件。
 その企みは宮内省の宮内卿候補である榊 黒曜と部下である水無月、そしてイレギュラーズによって砕かれた。
 だが、何処に同様の事件が潜んでいるか知れたものではなく。
 年末に向けて忙しくなるこの時期、かの『冥』ですら手が回らなくなってしまう。
 それほどまでに豊穣の地はまだ平穏とは言い切れない。
 しかし、しかしだ。
 繋いだ絆が事件の鍵となることは、ままある。
 たとえば、新年に向けた熊手などを扱う祭はこの時期、豊穣の各所で開催されているが……その中でも一番早い祭がある。
 カルタ町熊手市。そう呼ばれるこの祭りは、正直然程の規模ではない。
 ない、が……この街で過ごす人々にとっては、大切なイベントでもある。
 大小様々な熊手と、ちょっとした食べ物を扱う屋台。
 子供用の風車などの玩具。
 そうしたものを扱う屋台も出ており、街の人々も楽しく参加できるお祭り……なのだが。
「なーんかきな臭ぇんだよな……」
『焼き鳥屋』立花・五郎兵衛。
 カイト・シャルラハと縁を繋いだその男は……丁度リトル・リリーより要請を受けて調査していたリトル・ランと出会うことになる。

●五郎兵衛からの依頼
「と、いうわけで拙者が来たでござる」
「ですね。あーしはふぇにっくす。五郎兵衛さんとこのますこっとです」
「いや待つでござる。此処は拙者の自己紹介が先でござろう」
「早いもん勝ちです。五郎兵衛さんも処理は早くするに限るって言ってたです」
「それは食材の話……いやいいでござる。拙者は……あー、ランと呼ぶでござるよ」
 何やら変なもふもふ……ふぇにっくす、というらしいが。
 そんなモノと一緒に来たランは、集まった者達に今回の件について話していく。
「どうも立花殿は、豊穣グルメ祭の際に感じた不穏な空気を感じておられるようでござる」
 黒子。
 そう呼ばれるモノに五郎兵衛はあの時襲われた。
 それと同様のものを感じたというのは、あまり愉快な話ではない。
 そして立花の焼き鳥屋【鳥銀】のあるカルタ町にそういう危険が迫っているとすると……それは、モミジ村の件も合わせれば、今度こそ五郎兵衛が「成り代わり」の被害にあう危険すらはらんでいる。
「今回の事件。榊 黒曜様にも使者が向かっているとのことでござるが……そこから兵部を動かすとなると、簡単な話でもござらん。そもそも確証も無き事。故に……」
 そう、故にこれはイレギュラーズへ五郎兵衛からの個人的な依頼だ。
 カルタ町の熊手市を守ってほしい。
 そしてそれは、魔種の太郎の企みを砕く事にも繋がるだろう。

GMコメント

カルタ町の熊手市を守りましょう。
皆さんの到着は、熊手市の前日となります。
立花・五郎兵衛の店舗兼自宅、焼き鳥屋『鳥銀』を拠点に定める事が出来ます。
カルタ町は標準的な町で、観光地ではありません。
着物屋や八百屋に肉屋、旅人用の宿など、そうした市民生活に必要な店などが主となっています。

熊手市は大通りで行われるため、到着日はその準備のための屋台の組み立てなどが行われています。
鳥銀も焼き鳥屋を出店するようです。

ですが、町の住人の一部、あるいは近隣から来る屋台の店主などが黒子になっている可能性があります。
彼等を放置すると、カルタ町の黒子による浸食度が高まる結果になってしまうでしょう。
とはいえ、今回は五郎兵衛からの個人的な依頼です。強制的に押し入ったりするのは町の人からの信用を失う為、少し難しいかもしれません。
とはいえ、強硬手段に出てはいけないというわけではありません。
世の中にはバレなきゃいいんだよって言葉もあります。相応の確証を掴めるなら、そういう手段もありでしょう。

●今回の舞台「カルタ町」
一般的な町。特に何か産業があるわけでもなく、特色らしい特色も無し。
ただし音に聞こえる名店、焼き鳥屋「鳥銀」はこの町にしかありません。

●今回の敵
・黒子(総数不明)
文字通り黒子のような恰好をした人型モンスター。隠密技能に非常に長けています。
また、他の人間の姿に化け成り代わることが出来ます。
成り代わった黒子は声色では判断が出来ませんが、体臭は無臭。
親しい人が見れば多少違和感を感じる程度には擬態できます。
料理などの技術もほぼ完ぺきに真似をしますが、特にその技術に対する理解があるわけではなく模倣です。
戦闘時には影を操り武器の形に変化させてきます。
なお、黒子に入れ替わられた人達は殺されて黒子の「影」に収納されています。
倒す事で本人の遺体を取り戻す事が可能です。

●今回の依頼人
・立花・五郎兵衛(たちばな・ごろべえ)

焼き鳥屋【鳥銀】の7代目。豪快で細かい事はあまり考えたくない性格。
考えたくないというだけであって、実は結構考えている。
古くから続く名店なだけあって、豊穣ではかなり広いネットワークを持っている。
どのくらい広いかというと、情報屋を出来そうなくらいである。
なお、変な鳥の使い魔を連れている。
そのせいかは分からないが、昔から命に関わるような怪我はなんとなく回避できている。
なお、焼き鳥の腕前は超特級。豊穣にこの人ありと言われる程である。
食への探究心が強く、食材を美味しく調理することが敬意を示す行為と信じている。
近所でのあだ名は「にこやか筋肉親父」。言った奴は大抵シメている。
好物はねぎま。勿論自分で焼いたやつである。

飛行種を喰う趣味はまったくないが、
見知らぬ赤い鳥はどう焼いたら美味しく食べられるのか少し気になったりする。


・ふぇにっくす

焼き鳥屋【鳥銀】の看板ペットであり家畜であり使い魔。
アホでバカで口が軽くて余計な事を言うので、すぐ焼かれる。
しかし、焼かれても何食わぬ顔して復活する謎の鳥。
その正体はどうやら霊獣の類のようではある。
もっとも死から遠いとされる「ふぇにっくす」と呼ばれるモノであるようだ。
断じてフェニックスではない。
伝説通りなら焼かれて食べられて骨も残らない程度なら普通に蘇ってくる。
というか蘇っている。戦闘能力はたぶんほぼゼロなのではないだろうか。
【幻の食材】であると同時に【禁断の食材】であるともされている。
別に食べても不死の力は得られないようだが、色々な邪悪に狙われた過去もある。
もしかしたら何か不死の力を得る方法があるのかもしれないが、焼かれても口を割らないので永遠に口を割らないだろう。
あとバカなので本人すら忘れてる可能性もある。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • 豊穣の祭囃子に悪は潜みて完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年12月18日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
鹿ノ子(p3p007279)
琥珀のとなり
胡桃・ツァンフオ(p3p008299)
ファイアフォックス
ロウラン・アトゥイ・イコロ(p3p009153)
キルシェ=キルシュ(p3p009805)
光の聖女
星芒 玉兎(p3p009838)
星の巫兎

リプレイ

●黒子発見作戦
「また黒子の事件かぁ……ラン、報告ありがとねっ。ついでに協力もお願いっ」
「えっ、結局戦闘もしろって事でござるか!?」
『マスターファミリアー』リトル・リリー(p3p000955)とリトル・ランがそんなことを言いあっているが、まあつまりはそういうことである。
 そう、リリーたちがいるのはカルタ町の焼き鳥屋『鳥銀』の2階。
 今回の依頼人である立花・五郎兵衛の店であり家でもある。
 何故か部屋の隅にふぇにっくすがいるが、邪魔なので2階に上げられたと思われた。
 街が熊手市の準備で盛り上がる中、何故リリーたちが此処に来ているのか。
 それは「黒子」と呼ばれるモンスターの影がチラついているからであった。
「コャー、この前の豊穣グルメ祭の時の黒子がまた出てきてるのね。美味しい焼き鳥屋さんが不幸な目に遭うのは見過ごせないのよ。がんばるの」
『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)が言うように、あの豊穣グルメ祭以降、黒子による事件がポツポツと起き始めている。
「今回の仕事は、カルタ町の中に紛れ込るかもしれねえ黒子を炙り出し、倒す事なわけだが……」
『“侠”の一念』亘理 義弘(p3p000398)はあらかじめ受け取っていた資料を手に、小さく溜息をつく。
「奴らは成り代わった人の姿形、技術までコピーしてしまうらしい。厄介な相手この上ないが、何とかしねえとな」
「そうッスね。中々厄介な相手だったッス」
『琥珀の約束』鹿ノ子(p3p007279)は、前回のモミジ村の事件を思い出す。
 アレはとんでもない事件だったが……今回はああなる前に手を打つことが出来そうだ。
「さて、モミジ村と違ってここは観光地ではないッスから、あんまり動き回ると怪しまれる可能性があるッスね。五郎兵衛さんのお手伝い……という名目で来たってことでいいんスかね? だとしたらそれっぽく振舞いつつ、屋台の組み立て作業をしているひとたちにおやつや飲み物の差し入れをしにいくのはどうッスかね」
「そうですね……その作戦が良いと思います」
 ロウラン・アトゥイ・イコロ(p3p009153)も鹿ノ子に同意する。。
「恐らくは相手としても、お祭りの中で一気に成り代わっていく作戦ということでしょう。黒子というのはよく知りませんが、厄介な相手であるのはわかりました」
 ではこの豊穣の地の一領主として、成り代わる黒子を炙り出すとしましょう……と。ロウランは一層気合を入れる。
「モミジ村だけじゃなくてこの町も! たい焼きおじさん、今度会ったらみんなに謝って貰うのよ! でもまずはカルタ町守らなきゃ!」
「此処にも黒子が。思いの外、散らばってしまっているのでしょうか。黒子の存在を明らかにすれば民心に疑心暗鬼を呼びそうですから、なんとか秘密裏に処理出来れば良いのですが」
『リチェと一緒』キルシェ=キルシュ(p3p009805)と『光華の導き手』星芒 玉兎(p3p009838)が頷きあうと、『空の王』カイト・シャルラハ(p3p000684)が手を叩く。
「よし、作戦は決まったな! この熊手市……つまりはお祭りみたいなもんだろ? 楽しいことなんだから、邪魔させるわけにはいかねえな?」
「なんか偉い人が集まる町でも今度盛大にやるらしーです」
 カムイグラのことだろうか。思わぬところで思わぬ情報が入ったが、要はそれの地方版ということなのだろう。
 楽しいお祭り、つまりはそういうことだ。
 そう、結局のところそれに尽きる。楽しいお祭りに邪悪なものの介入は許せない。悪の企みは、叩き潰さねばならないのだ。
「……ところで五郎兵衛の旦那が俺を食材を見る目で見てくるんだが……どう思う?」
 頑張って生き残ってほしい。
 全員の気持ちは1つであった。
 ……ちなみにだが、ふぇにっくすは胡桃とキルシェにモフモフされてまんざらでも無さそうだった。

●黒子を見つけ出せ
 カルタ町の神社に繋がる大通り。
 明日の熊手市に向けて露店の準備が始まっている。
 五郎兵衛の鳥銀も、明日の露店開店に向けて準備中であり、カイトとリリー、そして少し離れた場所でランがその護衛にあたっていた。
 勿論、設営の手伝いもしっかりと行っている。
「報酬は美味しい焼き鳥な?」
「ん? ああ、アンタを焼くって話だったか?」
「言ってねえ!?」
「姿焼きとかなら売れるのか……? いや味付けが難しいな。塩味強めだな?」
「あーしとお仲間ですね」
 ふぇにっくすに全く援護にならない援護射撃を受けたカイトが慌てているのをリリーは笑いながらも、周囲の警戒を怠らない。
 マスターファミリアーとして、仲間の調査結果を待つだけで満足できるわけがない。
 鷹のファミリアーの二羽態勢で、周囲の偵察と警戒を行っていた。
(隠れてるのがまだいるだろうしね。たとえ隠密が得意だろうとも、この空の眼からは逃さないよ)
 どの程度の黒子がいるかは分からないが、まだ成り代わっていない黒子もいるはずだ。
 もし見つけたらしっかりマークするつもりだし、近くはカイトの眼に頼ることにしていた。
 更に他のところはランに頼る、という作戦だ。皆で視野をお互いに補えば、死角など生まれるはずもない。
「人気店だから様子見に来るヤツもいるだろうが、怪しい動きをするヤツはしっかり警戒しないとな。そもそも衛生的に関係者以外はご遠慮願いたいしな……俺? 俺はほら、鳥だし? 一応清潔にはしてきたぞ!! 鳥臭くないはずだ!!!」
「いや、鳥だな。臭うぜ」
「旦那ァ!? いや、ていうか旦那はこのあたりの人間なんだろ? 変身してるやつもいるだろうから、ちったあ気をつけようぜ。でも「にこやか筋肉親父」のあだ名で呼ぶやつなら大丈夫……あでで、締めるな、鳥の俺を締めるなぁ!?」
「素焼きにしてやろうか。あ?」
「勘弁!」
「あ、終わったら焼き鳥でも食べよっか……どうしたのカイトさん、そんな顔して。カイトさんの事は食べないよ?」
 裏切られた目をしているカイトにリリーはそう笑って。
 そうしてカイトやリリーたちが五郎兵衛の護衛やら漫才やらをしている間にも、周囲の調査は進んでいた。
 町内の巡回班。こちらは二班に分かれていた。
 1班は義弘、ロウラン、玉兎。
 2班は鹿ノ子、胡桃、キルシェ。
 この2班で、徹底的に潰す。そうして、熊手市を守るのだ。
 1班は義弘を中心に祭りを見に来た観光客や、出店の下見に来た業者など……そういった業者の裏にいるヤクザの演技をしていた。
 元々強面の義弘には少しばかりハマり役でもある上に。
「……まあ、ヤクザは昔からの仕事なんだが」
 任侠の世界に生きてきた本物でもある。これ以上の適役は居ないだろう。
 ハイセンスのスキルで、視力、嗅覚、聴覚を研ぎ澄ませて周囲の観察に努め、そういった素振りを周囲に気付かせないように、自然体の演技をしてもいた。
 何しろ相手は入れ替わりの達人だ。こちらが探していることは、可能な限り知られない方がいい。
 そしてロウランは胡椒を一瓶持ち込んでいた。
 これは屋台の店主が入れ替わられている可能性を考えての事であり、義弘が所謂ケツ持ちヤクザの演技をしていることに合わせたものでもあった。
 料理の事前チェックと言って、アレンジなどを要求する気なのだ。
(料理を真似ても技術に関する理解がない、ということは客のアレンジ注文に対して眉一つ動かさない方は怪しいと見ました。よって、調査として料理屋台には胡椒二振り追加と飲料屋台なら砂糖13杯を言って見ましょうか)
 それに応えるだけでも相当怪しいし、事実これで食品系の屋台に関してはかなり絞れるだろう。
 そして玉兎としても、食品系の屋台は怪しいと睨んでいた。
 何しろ相手は「食の簒奪者」だ。それに関わる者を怪しむのは当然の流れだった。
(綿菓子屋台に持ち込み胡椒の振りかけ注文、は応じることがおかしいですしね)
 祭りとその準備の時の独特の熱気の中で汗の臭いがないのも怪しいが、義弘が常に気を張っている。
「……なるほどな」
 義弘が拳をゴキリと鳴らす合図に、ロウランと玉兎がピクリと反応する。
 その視線の先に居るのは、慌ただしく準備をしているお好み焼き屋の店主。
「よお。ちょっと鳥銀の大将が祭りの事で確認したい事があるらしくてよ。ちっと来てくれねえか?」
 呼び出しのパターンは色々ある。場合によってはロウランや玉兎が呼び出してもいいだろう。
 重要なのはできる限り人気のない場所に誘き出す事だ。
(黒子を倒せば、成り代わられた方の遺体も戻ってくる……助けられなかったのは残念だが、せめて仏さんだけでも取り戻さなければよ)
 そして静かに戦闘が始まった頃。2班は1班と合わせてカルタ町全体をカバーできるような動きをしていた。
 具体的には町中の店だ。
「様子のおかしい人ねえ……あ、そういえば隣の旦那さんと向こう隣の奥さんが最近」
「コャー……それはセンシティブなの」
 知り合いに様子のおかしい人がいないかとか、最近外から来た美味しい屋台の情報とか。
 鹿ノ子のアイデアによる『毎年開催される熊手市、貴方の一番のお目当ては!?』というインタビューに付随する世間話として異形琴瑟をも活用して、胡桃は聞き込みを開始していた。
 勿論聞く相手が黒子ではないという証拠もないが、胡桃の超嗅覚、そして鹿ノ子がハイセンスとエネミースキャンの二段構えでチェックしている。
(これは前回モミジ村で成果が得られたので、やる価値はあるはずッス。被害を増やさせはしないッス)
 そして今みたいに話が変な方向に行きそうな場合は言いくるめや腹芸で方向修正するという念の入れようだ。
 その上で、キルシェはこっそりあちこちに居る霊たちに呼びかけていた。
「あのね、この町で最近死んじゃった人教えて欲しいの。怪しい黒い人たちに殺された人よ。その黒子さんたち、殺した人の遺体と姿奪って成り代わってるの。それだけじゃなくてね、町の人殺して成り代わろうとしてるのよ!」
 言いながらキルシェが思い出すのは、モミジ村のことだ。
 住人のほとんどが黒子に入れ替わっていたあの事件のことは、中々忘れられるものではない。
「前に行った村はね、7割の人が黒子さんたちに殺されてたの。カルタ町も、これ以上被害出さないために町の人たちに隠れてこっそり黒子さんたち倒して、みんなの遺体取り返したいの! 協力してくれませんか?」
 どの霊も比較的好意的な反応が返ってくるが、相手が相手だ。
 中々良い情報はゲットできてはいないが……こうして虱潰しにしていけば、必ずどこかで引っかかる。
 そうして見つければ道を知りたいから案内して欲しいとか、一緒に来た人と逸れたから探すの手伝って欲しいなどと言って近くの人気のない場所に誘い出し暗殺するつもりだった。
(あんまり目撃者を増やしたくないので、できれば人気のない所で襲撃して暗殺したいところなの。家人が怪しんでるとかそういう場合はちゃんと説明した方が後腐れがないとも思うけれども)
 そういった情報も、この調子であればゲットできるだろうと考えていた、その最中……ついに、「それ」に当たる。
「……コャー」
(これは……当たりッスね)
 胡桃と鹿ノ子が、ほぼ同時に「それ」に気付く。
 そしてキルシェも、気付く。
 胡桃たちが相対している人物と、そっくりの霊に。
 軽く目線だけで頷きあい、鹿ノ子が代表して前に出る。
「そうだ。今のお話で出てたの、ちょっと案内してほしいッス」
「お願いするの」
「お願いします!」
 胡桃とキルシェにも言われ、肉屋の主人……いや、それに成り代わった黒子は仕方なさそうに頷く。
(楽しいお祭りの前の日に、家族や親しい人が遺体になって帰ってくるなんて残された家族には受け入れたくないかもしれないけど……ちゃんと、家族の元に帰してあげたいの)
 そうキルシェは思いながら、燈杖を握って。
 そうして、街中の入れ替わった黒子や、戦闘中に加勢に来た黒子も含め相当数を撃破した後、夜を含め巡回し……ようやく、カルタ町の黒子を全て排除できたと確信したカイトたちは、今回の事件について伝え各家庭に遺体が戻るように取り計らっていた。
「こればっかりはな。正直にご家族に報告しねえとな」
 流石の義弘も、こういった仕事は気が重い。しかし、やらざるを得ない。
 家族の居た被害者の……その遺族の涙は、慣れるようなものではない。
「そうそう、被害者が出店する予定だった屋台などがあれば、そのままにしておく訳にはいきませんし。片付けるか、何か有効活用するか。祭りの責任者と話して決める必要がありそうですわ。代わりの出し物? わたくしは星占いぐらいしか出来ませんわ」
「それでいいじゃねえか。よし来い」
「へっ!?」
 現れた五郎兵衛に玉兎が引っ張られて行き、鹿ノ子が薄情にもヒラヒラと手を振って見送る。
「お祭りが台無しにならなくてよかったッスね」
「全ての技術は始祖の模倣よりなりますが、始祖の理念を理解しない模倣などは完璧にはなり得ないものです」
 だから見つけるのも簡単でしたよね、とロウランは答える。
 胡桃とキルシェはふぇにっくすを連れて熊手祭へと繰り出し、カイトはバイトとして先程五郎兵衛に捕まっていた。
 リリーとランは今後の情報共有の為に動いており、それぞれが、それぞれの気持ちで今日という日を迎えていた。
 聞こえてくる祭囃子は、この町を襲った悲しみ全てを吹き飛ばす事は無理だろうけども。
 きっと、新たな年を迎えるための力になるのだろう。
 今は……それを祈るしか、なかった。

成否

成功

MVP

カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽

状態異常

なし

あとがき

コングラチュレーション!
見事黒子をカルタ村から排除しました!

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