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シナリオ詳細

船喰らいの後に

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●船喰らいのあとに
 ……船喰らいと呼ばれる狂王種がいた。
 活動周期はおよそ10年に1度。
 正体はイカに酷似したものと思われ、全長はおよそ40Mほどと思われる。
 大型船を締め付け真っ二つに折る程の怪力と、乗員を誰1人逃さぬ大喰らいという特徴を持っている。
 恐らくは視力や注意力の類にも長けているだろう。
 いざという時のファミリア持ちからの連絡が届いたという報告は1度もない。
 船喰らいの能力なのか、出現するときは必ず嵐という特徴があるらしい。
 それもまた、被害船が増える原因ともなっているのだろう。
 そして……今年の今頃が、そのちょうど10年目になる。
 なる、のだが。
 その船喰らいはイレギュラーズと幽霊船アリエス号の共闘により、海の藻屑と化した。
 アリエス号も未練を失くし成仏し……それで解決、のはずだった。
 その船喰らいの消えて安全になった海域を通る船は……その夜、それを見てしまった。
 無数の幽霊船。およそ7隻にも及ぶ幽霊船団が、その海域に居たのだ。
 しかも、何かと戦っている。
 響く砲撃音は、何処に向けて放たれているのか。
 少なくともこちらではないことは救いだろうか?
 船員は急ぎ船長に報告し事なきを得たが、その日より毎日のように「何かと戦っている幽霊船団」の報告が届くようになる。
 海域はバラバラ。しかし、どうやら……狙われているモノがあるようだった。
 そしてその情報は、天城・幽我の耳にも届くことになった。

●幽霊船団への対処
「船喰らいの被害者と思われる船の幽霊が、出るみたいなんだ」
 幽我のそんな言葉を、チーサ・ナコックが引き継ぐ。
「情報を精査してみたいですが、確かな話です。過去の船喰らいの被害者リストと一致するです」
 全部で7隻。以前出たアリエス号を除く、全ての被害船が化けて出たことになる。
 しかし彼等を殺した船喰らいはすでに死んだ。
 一体何が未練で彷徨っているのだろうか?
 そんな当然の疑問に、チーサは複数枚の資料を机の上に置く。
 それは様々な船の資料であるように思えたが……添付されているのは船首像の写真、だろうか?
「船喰らいが消えて、当然船喰らいに沈められた船を『どうにか』するための妨害も消えたです」
「つまり、どうやら沈んだ船から色んなものをサルベージした人たちがいる」
 それだけならまだいいだろう。
 いいかどうかはさておいて、よくある話だ。
 沈没船からのサルベージ品など、然程、珍しい品でもない。
 ……しかし、どうしても「持っていくことを許せない」ものがあったようだ。
「船首像。船の象徴であるソレを持って行って自分の船に飾る悪党どもを許せなかったみたいです」
 そう、一部の海賊どもが船首像を沈没船からサルベージして、自分の船につけたのだという。
 そのうちの幾つかは沈められ、海の藻屑となった。
 しかし、あと1隻残っている。
 その船の名前は「雄々しき騎士号」。
 本来であれば「海騎士号」と呼ばれる勇壮な武装船につけられていた、凛々しい騎士の船首像だ。
 これに関しては盗賊ではなく海洋商人の船であるため、今までスケジュールが合わず海に出ていない為助かったようだ。
 船首像に関しても、何処かのブローカーが売り付けに来て買ってしまったようだ。
 勿論海に出れば狙われるだろうが……近日出航予定がある。
「幽霊船団はかなり怒っているようです。そのままでは話し合いすら難しいかもですが……」
 しかし、事情を思えば問答無用で戦うというのはあまりに酷だ。
 何かの策をたて話し合いのテーブルに持ち込む手段があれば、どうにかならないだろうか?
「出来れば静かに成仏してほしいです」
 チーサも幽我も、そう願わざるを得ない。
 しかし、それも場合によっては可能だろう。
 まずは海洋商人を説得する必要は当然、あるだろうが……。

GMコメント

幽霊船団を納得させて成仏させましょう。
このシナリオは心情や交渉などを重視したシナリオとなっております。
以下、必要データです。

●海洋商人デーマン
雄々しき騎士号をドックにて改修中の海洋商人。
主に鉄帝などと取引をしているようです。
商売自体は真っ当なのですが、変な商人から変なものを買うこともしばしば。
今回の船首像もその1つです。
なんだかんだ商人なので、情に訴えるだけでは船首像を渡してくれそうにはないです。

●幽霊船団
合計7隻。前回シナリオのアリエス号は含まれていません。
海騎士号の船首像を付けている船を探して毎夜ウロウロしています。
昼には見つかりませんが、夜になると何処かの海域に出現します。
海騎士号の船首像を付けた船がある場合は、どういう理屈か向こうから向かってくるでしょう。
ただしその船に乗っている人間と話し合いをしてくれるかはかなり疑問です。
そうでない場合は「船乗りらしい」説得方法などが有効かもしれません。

もし交渉が決裂した場合は大型船相当の武装船7隻と幽霊船員との総力戦になります。
幽霊船7隻による一斉砲撃は、高い確率で皆さんを劣勢に追い込むと思われます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • 船喰らいの後に完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年12月03日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
志屍 志(p3p000416)
遺言代行業
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
天城・幽我(p3p009407)
孔雀劫火
釈提院 沙弥(p3p009634)
破戒求道者
國定 天川(p3p010201)
決意の復讐者
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
タナトス・ディーラー
唯月 清舟(p3p010224)
天を見上げる無頼

リプレイ

●交渉のために
「ま、船首像ってのはその船の「顔」だからなぁ。名の知られた船ともなりゃぁ、船首像を見ただけでそれとわかるって話だ」
『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)は、そんな海洋の男らしい意見を口にする。
「そいつを勝手に持って行くようなやつらは、沈められても自業自得だが……知らずに買っちまったやつは、流石に助けてやらねぇと可哀想かね」
「うーん。大事な物なんですよ?それを取られたとあったら、確かに成仏できないですよ……」
「そういうことだな」
『エルフレームTypeSin』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)に、縁は頷く。
 こればかりは船乗りでないと分からない事だろう。
 縁が船首像の船の「顔」だと言ったが、まさにその通りで「あの船首像をつけているということは」で通じたりするのである。
 それは無用のトラブルを避ける事にも繋がるが故に、構造上つけられないといった理由でもない限り、船首像をおろそかにする船はあまりない。
 言ってみれば船首像は顔でありプライドであり、船乗りにとって「もう1つの自分」であるとすら言える。
 誇り高き武装船であった自分たちの船の船首像が海賊船に使われていると知った船員の幽霊たちの怒りがどれほどか、そう考えればよく分かるというものだ。
「うーん、お祓いとかお清めとかしておけばよかったのにね。海へ出る者は板一枚下は地獄と腹をくくってるものばかりなんだから。そりゃ亡くなった後も元気いっぱいだよ、ふふ」
 そして『若木』秋宮・史之(p3p002233)の言葉もまたその通りであっただろう。
 霊が成仏していれば今回の問題は起こらなかった……かもしれない。
 まあ、大問題なのは船首像を悪用した海賊どもであって、彼等が余計なことをしなければ化けて出なかったのかもしれないが……。
「沈んでなお海の誇りは捨てられねぇってか? まぁテメェの生命より大事なメンツってぇなら盗られて平気なわけねぇわなぁ。よっしゃよっしゃ、代わりに取り戻して逝かせてやろうじゃねぇの。男、唯月清舟……同じ男として無念を晴らしてやろうじゃねぇか!」
「ブランシュ、メイスで叩いて解決出来ない事を考えるのは苦手ですよ……へいわは大事だけど、戦闘用兵器が考えるのは難しいですよ。でも、どうにかして何とかしてみるですよ!」
 唯月 清舟(p3p010224)にブランシュもそんな事を言うが、まあ実際どうにもならなければメイス……もとい実力でどうにかする羽目になるだろう。
 そうならない為には幽霊船団を納得させなければいけないと『疲れ果てた復讐者』國定 天川(p3p010201)にも分かっていた。
「幽霊船団を納得させる……か。交渉事だな。とにかくまずは聞き込みだ。話を聞かないことには始まらねぇ。なんか刑事時代を思い出しちまうな」
 元刑事だった時のことを思い出してか、天川はなんとも複雑そうな表情になるが……その心の内は、天川にしか分からない。
「んー……海洋商人デーマンと交渉し船首像を供養の為に捧げてもらう、ってことでいいのよね?」
「ん? まあ、そうなるな」
『特異運命座標』釈提院 沙弥(p3p009634)に天川はそう返すが、変わらず首を傾げている沙弥に「何か懸念でもあるか?」と聞き返してみる。
 現時点で気になることがあれば、此処で潰すか解決法を模索しておくのが一番だからだ。その場で慌てたところで解決策など出やしない。それは天川も良く分かっていることだった。
「7隻の幽霊船団は……みんな仲よしなのかしら?」
「まあ、そうなるだろうな」
「同じ敵に沈められた仲でもあるしね」
 縁と史之がそう答えれば、沙弥は「そうよね」と頷く。
「だったら海騎士号だけ説得しても終わらないじゃない。船喰らいの被害者の皆を納得させて、この前のアリエス号のように成仏させたいわ」
「……確かに、沙弥さんの言う通りだね」
『孔雀劫火』天城・幽我(p3p009407)も、そう頷き考える。
「全員が納得して成仏できないと意味がない。船乗りがどういう供養のし方をしているかはわからないけど、思いつける限りは試してみよう」
「その為にも、継続した事業としてサルベージと供養をしてもらいたいわね。海洋商人さんにも利があれば協力してくれるかしら?」
「……それは分からねえが、交渉してみる価値はあるかもしれねえな」
 幽霊船団との交渉材料にもなるかもしれない。縁だけでなく全員が頷き、ふと『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)が状況を纏めるように言葉を紡ぐ。
「死後も影響を残すほど執着できる物があったというのは、果たして幸福な事だったのか。まあ、出てしまうものはしようがないので、どうにかお引き取り頂くように相談しますか」
 そう、結局のところはソレしかない。その為には、情報を集め海洋商人デーマンと上手く交渉する必要がある。
 瑠璃の視線の先では、幻想の闇市に出入りする商人……カール・ラメンターの姿がある。
 商談の作法や人気のある菓子折り、木工職人など、聞ける情報を彼から聞こうと、たまたま近くに居た彼を呼んでいたのだ。
 他にも集めるべき情報はたくさんある。
 この交渉が纏まらなければ、幽霊船団との総力戦をせざるを得ない。それを回避するための、これは大切な戦いなのだ。
「まずは件の商人を説得しなけりゃならんのか。やれやれ」
 そんな縁の言葉に全員が苦笑するが……必要なことだと縁自身も分かっている。
 全員の言いたいことを代わりに言ってくれたという、ただそれだけの話である。

●海洋商人デーマンとの交渉、そして
「長年海に漬かっていた物だろうから修復しなきゃ使い物にならないはずだよねえ」
 モノによるが、船首像は木製である事が多い。
 数十年前の船首像が存在していると言う事は、何かの特殊な保存の魔法か何かがかけられているのは確実だが、それでも多少の損壊は避けられないはずだと史之は考えていた。
 海賊共が使える程度には損壊が少なかったのだろうが、商人に売るとなれば当然修復はしているはずだ。
「いくらアンティーク的な価値があるとはいえ修復しなきゃ高値で売れるわけないんだよなあ」
 だから海洋商人の仲間をあたってブローカーを調べるべく動いていた。
 見つければ懇切丁寧に脅すつもりだったが……きっとうまくいくことだろう。
 一方の瑠璃は、船喰らいの被害にあった7つの船に関する資料……特にいつ沈んだかとか当時の所有者、像の製作者が誰かなどといったものなどの資料と、サルベージした船主像をつけて幽霊船団に襲われた船に関する資料、具体的には彼我の船団の規模などの資料を捜索していた。
 船喰らいの事件は有名な上に撃滅された話もつい最近であったため、それ等の資料を集める事は比較的簡単に済んでいた。
 後からデーマンも調べることを意識して、公平な資料のみ集めたが……船喰らいの事件とその顛末に関する情報が再度精査されつつある現在、デーマンも同じ情報を得られるだろうと瑠璃は確信できていた。
 そして天川は元刑事らしく、街で聞き込みを行っていた。
 自らのギフトである「捜査は足でって言ってんだろ!」とタフネゴシエイトを使って1人でも多くの人間から情報を集めていた。
 それぞれの情報の精度がバラバラでも、集めて纏めることで情報の精度が高まると経験で知っていたからだ。
 此処で天川が重視したのは、3つの点だった。
 1つ目。デーマンが周囲から見てどんな性格で、どういう人物なのか?
 2つ目。デーマン率いる商会の評判。良いのか悪いのか。悪徳商人か否か? 真っ当な商人である証拠集め。
 3つ目。デーマンが今欲しがっているもの。船首像の対価として差し出せるものを探る。
 そうして集まった情報だが……まずデーマンは典型的な海洋商人であった。
 物事の基準は利益の一点にあり、そこから信用とか義理人情とかがついてくる。
 だからこそ商取引における信用は出来るが友人としてはどうか……という、まさに商人な人物評価であった。
 そして2つ目。デーマンの商会は、真っ当な商売をしているということが分かった。
 取引先に怪しいのが混じったりはするが、明らかな盗品は扱わない。
 ヤバいものは官憲に届け出る……と、リスク管理がしっかりしている商人であるようだった。
 最後に、3つ目。欲しい物は手に入ったので特にない……とのことだった。
 これは一見お手上げのようにも聞こえるがその実、「欲しかったものが何だったのか」を簡単に推理できる。
「船首像……か」
 それを欲しかったから、丁度イメージに合ったものを持ち込んだブローカーと取引したのだろう。
 引き上げ品自体に別に悪いイメージがないのも手伝ったのだろうか。
 とにかく、これで他のメンバーの情報と合わせれば交渉の材料も出来そうだった。
 ……そして、その間に幽我は幽霊船団への別方向からのアプローチを実施していた。
「灯篭流しからヒントを得たんだけど、ボトルメッセージみたいな感じで亡くなった方への想いを綴った手紙やメッセージカードをボトルに入れて流すのはどうだろう?」
 無論、当時の関係者などほとんど残っているはずもない。恐らく一番関係者が残っているであろうアリエス号はもう成仏している。
 しかし、それでも意味はある。今の時期、船喰らい事件は注目度が高いからだ。
 だからこそ自由参加という体で、メッセージを綴ること自体は無料で子供でも参加しやすい。
 文字が書けない人がいたら幽我が代筆するというサービスつきだ。
 小さい子にはまだ文字を覚えてない子もいるだろうし、お年寄りになると手が震えて上手く書けない人もいるだろうからね……という考えだったが、これは参加の垣根を低くする役にも立っていた。
 そして注目の船喰らい事件の関連イベントとあってか、参加者もそれなりにいたのだ。
(本来ならこれを港から海にそっと流すんだけど、今回は成仏できてない幽霊たちがいるから、メッセージを持って行って、少しでも目を通してくれないか呼びかけよう)
 そうしてあらゆる準備が出来た時点で、瑠璃がアポイントメントを取りデーマンに全員で接触していた。
「船首像を、ねえ。まあ、話は分かったが」
「船首像は相応の価格で買い取ったのでしょうが、ほぼ確実に一度の出港で被害額が上回る筈です」
「確かにな」
「コスト度外視で傭兵雇うなどすれば何度か撃退できるかもしれませんが、そのコストでいくら儲けられたか後々思い出すとつらくなりません?」
 瑠璃の説得にデーマンは「説得の仕方を分かってるねえ」と笑う。
「瑠璃さんの言うように、返さないと大変なことになるんですよ。だからどうにかしてこちら側に船首像をお渡しして頂けないですよ? ローレットに頼んで、代金以上で買い取りもさせて頂きますですよ」
 もし、幽霊船を見に行くつもりなら、沈められるかもしれないから護衛するですよ。その時は船首像は持たない事をオススメしますですよ……と続けるブランシュに「ふーむ」とデーマンは呟く。
「まあ、これも商談じゃ。今言ったがタダとは言わんし、手放すに相応しい時期と義理もある。そうじゃろ?」
 清舟も言いながら互いの妥協点を探るべく話を進めていく。高額で足元見られちゃ名を汚すだけじゃ……と無駄に金を積むことなく、海での流通が滞る事……滞る事によって高騰する商品。少なくともこの周囲での金の動きは変わってしまう事……船首像を買い取りという商談で向こうのメンツは守りつつ、売らないことのデメリットを並べることで今後の動きに支障がでる可能性を示すしながら話を進めていった。
「聞いたが、船喰らいの話は今有名なんじゃろ? 此処が時期じゃと思うがのう」
 ローレットに渡すのであれば面子は守られる。そう示す清舟に、天川も続ける。
「流石商人だな。これでも駄目か? ならこいつはどうだ。一度。一度だけアンタが望んだタイミングで俺がタダで商船の護衛に就く。オマケとしちゃ悪くないと思うぜ?」
「俺も海洋じゃ顔が通ってる方だが……そのコネクションで、“雄々しき騎士号”専用の船首像を代わりに用意してやる、あたりで手を打ってもらいたい所だが、どうだ?」
 縁もそう続け、デーマンの反応を見る。デーマンは笑顔だが、これをどう判断したものか。
「商船なら尚更ゲンを担ぎたいだろうからな……というか、闇市じゃ青海の女神像なんて品が出回ってるんだから、むしろあれを飾った方が縁起がいいんじゃねぇか」
「なるほど、なるほど。確かに儂に損はない」
 頷くデーマンに、史之も援護射撃をする。
「買った額じゃ足りないってんなら、この白紙の小切手に欲しい額を書くといいよ、俺が色付けてあげるからさ」
 そして最後に、沙弥もダメ押しのようにデーマンに語り掛ける。
「幽霊船は船首像を持って行かれることを許せないのでしょう? でも沈めた海賊船から、誰かがまたサルベージしてしまうかもしれない。それを繰り返している間は、彼らに救いは訪れないじゃないの」
 自分に出来る交渉能力をフル活用しながら、沙弥はデーマンへと畳みかけていく。
 利は充分に示した。理も示した。ならばあとは義だ。
「だからお願いよ、商人さん。その船首像、お焚き上げしちゃわない? 幽霊の彼らが船首像と一緒に逝けるように、ね」
 そう、慰霊祭。つまりはそういうことだ。今の時期にやるからこそ意味がある。
「うまみもなくはないのよ。船喰らい犠牲者の慰霊祭をデーマンさんが取り仕切るのはどうかしら。祭壇に供物、鎮魂と称して海に流す祭具、参列者の飲食や宿泊等々……それに最低あと6隻分はサルベージ業者の手配も必要になるわね。海難事故者の慰霊祭を定例行事にして、その元締めになれるかもね? なにより、この海域の航路の安定のお金でも買えない一番の功労者になるわ」
 どうかしら、と。そう問いかける沙弥に……デーマンはついに笑い出す。しかし、それは不快感を催す類の笑いではない。
「はははは! なるほどなるほど! ローレットの方々に商人の論理がどれ程分かるかと身構えとったが……いやはや実に素晴らしい!」
「なら」
「おうおう、持っていくといい! 儂は精々『義の人』を演じさせてもらうとしよう!」
 そう言うとデーマンは使用人に手を振り、即座に船首像を取り外し持ってこさせてしまう。
 更には船まで用意してくれるという気に入られっぷりであったが……そうして、沙弥たちは船首像を持って件の船喰らいの海域近くへと進んでいく。
 そうすると……何もない場所から、7隻の大型船が近づいてくるのが見えた。
「こんばんは、初めまして」
 まずは敵意がないことを証明するべく、史之がそう呼びかける。
「船首像の事ですが、まず攻撃するのは待って欲しいですよ!船乗りの魂が込められた物なのはわかりますですよ。だから、此処に持ってきたです! 大事なのは海を愛する魂……船乗りの心意気が重要だって、聞いたですよ。これで鎮まってほしいのです!」
 ブランシュが船首像を掲げそう叫ぶと、幽霊船団から幽霊船員たちが顔を出しこちらを見ているのが見えた。
 そして、幽我が集めたメッセージを掲げる。
「船喰らいがいなくなったことで、貴方たちへの想いをこうして届けられるようになったんだ――どうか、その手紙だけでも目を通してはくれないか」
 そう言うと、メッセージの紙がふわりと浮き……そのまま幽霊船団へと流れていく。
 天川も対話の意思ありと気付き、更に呼びかける。
「俺はどっちかっていうとな、アンタら側さ。誰だって自分の誇りを大事な物を……汚されたくないよな」
 そう、今回の事件はそれが発端だった。
「俺が捜査した結果、アンタらの船主像の持ち主はただの商船で真っ当な商人だ。前科もない。船首像も此処に在る。どうかこれで矛を収めてはくれねぇか? どうかこの通りだ。アンタらとは戦いたくねぇ。もし何かあれば俺がキッチリ落とし前は付けさせる。どうか」
「お前さん方も船乗りなら、これ以上大事な相棒に“呪われた船首像”なんて不名誉な噂を背負わせたくねぇだろ。どうだい、こいつを連れて大人しく帰っちゃくれねぇかい?」
 最後に、縁がそう呼びかけて。やがて、1隻の幽霊船が接舷してくる。
 船首像のない船。恐らくは、この船が。
 こちらに渡ってくる幽霊船員に、ブランシュはそっと船首像を渡す。
「……我々の意思を尊重してくれたこと、感謝する。貴方達の旅路に、幸運を」
 そう言うと船員は船に戻っていき……どういう理屈か、船に船首像がスウッと現れる。
 そうして7つの船は幻のように消えていき、もうそこには何も残らない。
「……ゆっくり眠ることじゃな」
 清舟が、そう呟いて。彼等を乗せた船はまた、街へ向けて戻っていく。
 これ以降、幽霊船団の騒動を海洋で聞くことはなく。
 また、それ関連と思わしき物を取引する者も、居なくなったそうである。



成否

成功

MVP

志屍 志(p3p000416)
遺言代行業

状態異常

なし

あとがき

コングラチュレーション!
見事幽霊船団を成仏させました!

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