シナリオ詳細
Carnival『TRAP』
オープニング
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「なに――!? 魔物の群れが街に向かってきているだと!!?」
「は、はッ! あと数時間もあらば街へと到達すると報告が!!」
幻想北部の一角を収めるカルウェン男爵は部下の報告に驚愕していた――
30体以上の魔物が街に向かって進撃してきているというのである。それは決して少なくない数だ……カルウェン男爵の治める街には城壁の類はないため、今すぐにでも兵を出し、水際で食い止める必要があるだろう。
しかし。
「ぐ、ぐぐ……なぜこのようなタイミングで! 今主力は山賊どもの討伐に向かっているのであろう? 呼び戻すのは間に合わんのか!」
「恐れながらまもなく接敵の段階です! 今からでは連絡が辿り着くころには戦闘が始まっており……そこから退却しようとすれば後ろを突かれて壊滅の恐れもあります!」
なんの偶然か、あまりにもタイミング悪すぎた――現在カルウェン男爵が保有している私兵の戦力は、近隣を騒がせていた山賊団を討伐するべく街を離れていたのである。
つまりは無防備。
このままでは魔物達が街になだれ込んできてしまうのは時間の問題――で、あれば。
「男爵様! ここは、ここは他家に援軍でも――」
「むぅ……いやそれはならん……近くの貴族共たるや碌でもない連中ばかり。そんな連中に借りを作ってしまっては、今を凌げても将来的にどのような災厄が降りかかるか……!」
対応としては部下が言ったように、どこかに援軍を要請するのが一番だ。
しかし幻想は貴族社会。様々な事件の解決を経て、ある程度マシになってきては居るとはいえ――まだまだ腐敗も多い国だ。簡単に近隣に援軍を求める、とはいかず……
いやそもそも――時間に余裕がない。仮に他家を頼っても軍勢を整え、援軍の為にこの街に来るのも間に合うかどうか。駄目だ。すぐにでも戦力を用意できて、援軍に来てくれるフットワークの軽い者など……
「……そうだ! ローレットがいるではないか! 至急、ローレットに依頼を出すのだ!」
一つしかない。
数多の事件を解決して来た――勇者たるローレットに便りを出すのだと、男爵は連絡を急いだ。
●
そしてカルウェン男爵からの依頼を受けたイレギュラーズ達は、街は仔細を聞いていた。
敵はあと約一時間から二時間ほどで街に到達するという……
数は最低でも30体以上。マトモにぶつかり合えば不利は否めない、が。
「しかしもう少しだけ時間に余裕はあります……こちら。魔物共が向かってくる方面には林があり、今すぐ向かえば罠を設置する事も可能でしょう。また……非常に古ぼけたものではありますが、小さな砦もあります」
「――砦?」
「随分昔に建築されたもので、正直かなり破損もあるのですが……
平地で大群を迎え撃つよりかはマシになるかと」
地図の上を指差せば、街から少し離れた所に林が広がっているという。
そしてそこには小さな砦――と言っても関所ぐらいのレベルだが――が、あるそうだ。石の壁で囲まれたその砦は、長年使われておらず破損も酷いそうだが……しかし、男爵の言うようにただ平地でぶつかり合うよりはマシになるだろう。
そして幸いな事に時間にある程度もう少しだけ余裕がある。
林に罠を設置したり、或いは砦の補修やバリケード建築などを行う時間があるという訳だ。そういった工作に長けた者などがいれば、迅速に事を進める事が出来るかもしれない。そういった事に必要な資材は男爵から提供してもらえるとの事なので、上手く準備を整える事が出来れば……
「十分に勝機はある、か」
もう一つ幸いなことに、魔物達はあまり知能の高さを感じさせないタイプとの事だ。
罠などがあってもあまり警戒せずに突っ込んでくるかもしれない。
落とし穴、トラバサミ、仕掛け弓……などなど。
無論、数が多い故に罠だけで勝利は掴めないだろうが。
しかし色々とやれることはありそうだと――イレギュラーズは策を練るのであった。
- Carnival『TRAP』完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年11月30日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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魔物の群れが近づいてくる――接敵まで最速一時間程度――
「ハッ。時間もある、場所もあるなんてよ、罠を作るのにお誂え向きだな。
精々派手に歓迎してやろうじゃねぇか――」
しかしそれだけの条件があれば勝機なんぞ幾らでもあるものだと『帰ってきた放浪者』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)は確信していた。無論、お出迎えの為の準備はそれなりに行う必要があるかもしれない、が。
「よぉ。手が空いてる奴は手を貸せ――勝つぞ」
己一人で戦う訳ではないのだと、バクルドが視線を巡らせれ、ば。
「うう。魔物の群れ……確かにたくさん来たら怖いですよ。
でも、たくさん罠を張ったらたくさんかかるですよ!
みんなで頑張りましょうです!!」
「ああ――敵の総数が不安要素だが、なぁに多く見積もってもおよそ50体前後って所だろう。最悪の場合でも1人辺り4~7体実力で倒せば余裕だな。できるかは知らんが」
そこには『エルフレームMarkSin』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)や『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)など罠の準備に取り掛からんとしていた面々に溢れていた――
まずはと世界が取り出したのは、周辺の地図だ。
幸いにして依頼主がこの辺りの人物であった為に地図の入手は容易であった……故、世界は己が目を巡らせて効率的な罠の設置場所を割り出さんとする。戦略的にどこに敷き詰めるのが正解か――どう誘導するのが正解か――
思い思いの場所に設置していては乱雑になる危険もあるからだ。
更には、お互いの罠の位置を把握できなければうっかりと自ら達も罠にかかってしまう可能性があり――非効率的。それを防ぐ為にも世界は思考を高速で巡らせ、最善を模索しているのである。
そして地点が決まれば後はバクルドの巧みな指先の技巧が光るものである。
落とし穴に油を仕掛けて容易に戻れぬ様に。ああ後はロープも用意しておこうかと。『物』に関してはブランシュの出番だ。資材を大量に運搬し、それらの行動の補助とならん――更には。
「ええ。ええ! 魔物が押しかけてきているという状況は非常に愉快とも言えるのですけれども、冒険にはありがち、ファンタジーにはありがちというもので御座います……書物でよく読みました――ええ。お姉様の部屋の本棚にあった物を拝借した際に、ええ」
ならばこの経験。お姉様にお教え出来るのでは!? しきみ、参ります!
――『お姉様の鮫』花榮・しきみ(p3p008719)さん? あの、ちなみにそれってお姉様の許可はとってらっしゃるんですかね? まぁともかく、しきみも目を輝かせて罠の設置に取り組む所存である――
「わわ、わ……みなさん、お上手ですの……! 罠が、どんどん、設置されていきますの」
「罠の配置に穴が出来ない様には気を付けておきたい所だよな――まぁノリアがいるんなら、多少は集中的にぶつける事が出来るかもしれねぇけどよ」
その様子を『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)は目を輝かせて見据えるものだ。残念ながら自らには罠作りを得手とする様な技術はない……が。後で『出来る事』をする為に――彼らが設置する罠の位置をしっかりと覚えるものだ。勿論、可能な範囲で罠の準備は手伝うものだが。
さすれば『餓狼』シオン・シズリー(p3p010236)もまた動き出す。
世界の戦略眼にそって、シオンは周囲を俯瞰できるような観察眼と共に。世界の目が広大な地図上からの視点であれば、シオンは少しミクロな視点から罠を考えている――と言った所だろうか。
バクルドらが落とし穴を設置しているのなら、馬防柵なども準備しておこうかと思案するものだ。
「頭が回らねぇ魔物なら、こういうのもきっと有効だろうさ――
柵に突っ込んでくるなら時間稼ぎになるし、柵を避けるなら落とし穴に、って感じにな」
「ああそれが良さそうだな――連中が縦に長くなるように巡らせておこうか」
その発想に同意するのは『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)だ。丈夫で地面に深く打ち込んだ柵を設置する、その為の動きは非常に俊敏。まぁ落とし穴にハマったままでいてもらえるなら楽ではあるが――それはそれとしてあらゆる準備はしておくべきだと。さすれば。
「……とはいえ。相手の数をまともに受け止めたらこっちが瓦解する。やつらの進行時間をばらけさせる為にも、色々準備したいところだな……さて。この砦もどれぐらい使える様に復旧できるだろうか」
『虹を心にかけて』秋月 誠吾(p3p007127)は、いざという時の戦闘場として――砦の修復をせんと取り掛かるものだ。小規模な補修なら領地でやっていたのだと、手際よく準備を進めていく。
崩れかけている場所を水と藁と粘土を練ったもので補修。
大きな穴が開いていれば土嚢を積んでおくとしようか――
流石に時間がないので完全修復とはいかないが、これで少しでも時を稼げる筈だと。
「……俺の居場所を作ってくれた『領主』は、民と仲間を思いやる人物だ。ここの領主もきっと民を思う気持ちは同じなのだろう――要望に応えるべく、頑張らないとな。一匹たりともこの先を通す訳にはいかないよ」
彼は全力だ。ここにはいつも見守ってくれている仲間の姿はないけれど。
だけど――独りでも大丈夫だと皆に思って貰えるように。
『黒狼』の名に恥じないように……全霊を尽くそうと、彼は目前の作業に取り掛かる。
――時計の針が進む。
罠を設置し、砦を補強し。
ブランシュが多くの資材を持ってきて、最早往復の時間がなければ罠を手伝い。
バクルドやモカなどの設置能力が高い者達は時間まで只管に能力を振るう――
「さて一時間強あるんだ、それ相応のもので歓迎してやらんとな」
「ええ。ええ。堡塁は戦場における重要物と聞き及んでおります。可能な限り設置しましょう」
バクルドなどからの指示を聞いて、しきみも周囲を少し高く盛り立て壁を作らんとし。
そして。
「来るぞ――敵だ! よし、作業を片付けて応戦体制を取ろう」
時刻を確認した世界が皆に声を掛けるものだ。
――気配も感じる。魔物達が、戦意高々にこちらに来る気配が。
いよいよ戦闘だ。さて、どのように罠が上手く機能してくれることやら……
「さて……ジビエにもならない狩りを始めようか! でも折角だから食べられると良いんだがな――」
「えっ?」
「えっ? ……いや、食べられるなら解体・調理して皆で食べるぞ……食べようよ?」
気合を入れるモカ――が、発した言葉、には、えっ? 疑問を呈する所があるものだ。
え。正気か? ゴブリン……ゴブリンだよ……?
他の面々を見渡すモカ。
――さて賛同者がいたかいなかったは、あえて記述しない事にしよう……!
●
ゴブリン達が突き進む――街を略奪する為に。
林の中をまっすぐに。なぜならここが最短ルートなのだから、と。
下卑た笑い声と共に歩を進め続け……しかし。
「さぁ、こちらにようこそ、ですの」
その、眼前。
現れしはノリアであった――ゴブリンらの前に無防備にも出た彼女は、魅惑に溢れている。つるんとしたゼラチン質のしっぽに振りかけた特級天然海塩が空より降り注ぐ陽だまりに照らされ、まるで真実光り輝いているかのようだ――
「ゲ、ヒャ!? 狩レ、狩レ!! 逃ガスナ――!」
「ふふ。追いかけっこ、開始ですの。でも、そう簡単には、捕まりませんの」
突如として現れた贅沢品にゴブリン達の目が変わる――
彼らに知恵は回らぬ。ただただ欲望の身がその中に渦巻いている……
故、何の疑問もなくノリアを追うものだ。
まずは腹ごしらえでもしようかと。
横たわっていたノリアが立ち上がり逃げれば、それを皆が追って――と?
「ン、ギャ!!?」
さすれば、早速に引っ掛かった――それは世界が設置した、とっておき。
「精霊爆弾さ。存分に味わっておくれよ」
少量の火薬に上位精霊の力を籠めて作られた、高火力かつ小型の爆薬である。
遠くからでも分かる炸裂音――そう。ノリアが後で行おうと思っていた『出来る事』というのがこれだ。
自らを囮に敵を罠に嵌める。コース取りも検討し、頭の中で往くルートを構築していたのである。自らは罠に掛からないように……しかし不自然にはならないように敵を誘導しよう――
如何に頭の回らない個体が中心とはいえ、効率的に引っかかってくれるとは限らないものであったが。しかしノリアの行為により大多数をトラップ・ルートに引きずり込めた。
「危険を承知でブービートラップを前の方に仕掛けた甲斐があったもんだな。
さて。後はどれぐらい此処に来るまでに引っ掛かってくれるか、だが……」
そして世界は様子を見据える。何もトラップはアレだけではない。
わざと見破りやすくしたダミー・トラップの類もあるぐらいだ。流石に見えてる罠に近づく程馬鹿でも無いだろう――しかし、見破ったなら驕りを覚え油断が生じる筈だ。そして避けた所にもう一つの本命トラップを……と。
「さあ、わたしには、おやつの、砂糖菓子も、ありますの……存分に、うばいにくると、いいで……もうちょっと、お手やわらかに、お願いしますの!?!? ちょっと、いくら何でも、罠が見えませんの!?」
「追エ、追エ――ッ!」
それらに引っかける為にも更に奥へ奥へと引きずり込まんとノリアは往く……が。
ゴブリン達。罠をも恐れずノリアを更に追ってくる――ッ! そんなに奪う欲望の方が強いのか。罠に引っかかった仲間も見えただろうに――! 弓が投じられ、幾つかがノリアの身へと到来する。尤も、頑強たる彼女の身はその程度で揺らぎはしないが。
「ひゃー……凄い数がくるものですね。ブランシュも行くのです……!」
「早めにリーダーを見つけたい所だな。何とも数が多くてどれなのかよく分からないが」
そして。引き付けるのはノリアだけではない――機動力に優れるブランシュもだ。
罠の奥から出てわざと敵の注意を引きつけように立ち回れば、おお簡単に来るわ来るわゴブリン達が。ダッシュして戻って落とし穴やトラバサミコーナーへと叩き込んでやる――さすれば動きの鈍った所へと、モカが一閃するものだ。
それは蹴り。彼女の、雀蜂の群れが如き蹴突が敵陣へ襲い掛かる――
頭・眼・腕・脚。全て叩き折る。全て砕いてみせるとばかりに。
「こんだけ大量にいりゃ、テキトー撃っても当たるもんだな。
数を率いるんなら、ちっとぐらい頭を動かせばいいものをよ――宝の持ち腐れだぜ!」
「と言っても数は流石に多いな。無理をせず、ある程度の所で砦側に戻るか」
直後。バクルドが散々仕掛けた罠の数々に嵌っているゴブリンがいれば、彼の銃撃が奴らへと降り注ぐものである。ロープで足が引っかけられた個体達へと、まるで暴風の如く。特に罠の外側へと逃げんとする個体を狙い定めて。
そして逃亡しようとして、しかしモカやシオンが設置した柵に阻まれ固まった個体共にはシオン自らが襲い掛かる。刃を奴らの首へ。首級を挙げて派手にやれば――敵の目もある程度引くだろうかとも思考。
「ギャ、ギャギャ――!! 落チツケ、敵ガイルゾ、殺セ――!」
とはいえ。ゴブリンらも流石に自分たちが罠の中に誘い込まれたと気づいたようだ。ノリアやブランシュに大分誘導された後で気付いたのは、もう遅いとかいうレベルではない気もするが……
ともあれ気付けば彼らもイレギュラーズに抵抗を見せる。
一体一体の能力はそう高くなくとも――やはり数は暴力だ。
罠を圧し潰すばかりに前進すれば、やがて突破する者達も出始めるものであり……
「とてもお元気なご様子ですね。楽しそうで何よりです――あっ。落とし穴に落ちた方もいらっしゃるようですね。ふふ――では、ごきげんよう」
が。そこを狙い定めて魔力を収束させていたのがしきみであった。
膨大な魔力。数多を貫く魔砲の一撃が、多くのゴブリンを薙ぎ払うのだ――
色々と罠の手伝いはしたが、迎撃こそがしきみにとっての本番。落ちて落ちてと願っていた落とし穴に引っかかった者は纏めて根こそぎ抉り取ってしまおう……それでも恐れぬ個体がしきみに近付く、も。
「ええ、申し訳ありませんが。私、此れしか取り柄が御座いません故……
此処でお命頂戴致します。来世があればまたお会いしましょう」
然らば御免、と。
ステゴロ上等の拳がゴブリンの首を飛ばす――しきみ、ステゴロも得意でございます。
ええ! これもあれも全てお姉様をお守りする為に! 『うんうん、しきみちゃんは凄いね!』って言って頂けるでしょうか、お姉様――! しきみはお姉様の為にゴブリン達を殲滅します!
眼を輝かせるしきみの精神は高揚に満ちている。
そして――ゴブリン達の勢いが少し、衰えている様な気がしていた。
やはりイレギュラーズの仕掛けた数々の罠が功を奏しているのだろう。
「さぁ、まだまだ、こちらですの! 鬼さん、こちら、手の鳴る方へ……ですの!」
そしてノリアの引き付けも十分機能していた。
多くのゴブリンは、隙だらけ――なのに倒しきれぬ彼女に引き付けられ各所の罠に嵌められている。どこまでも続く鬼ごっこ。しかしノリアはまだまだ余裕層である……
幾らかは辛うじてという雰囲気で砦にまで接近するゴブリンもいる、が。
「逃げるなら追わない――けれど、どうしても進みたいなら覚悟してもらおうか」
そこにはバリケードの隅に身を潜めていた誠吾がいるものだ。
自らを強化する加護を齎し、万全をもってして――ゴブリンを薙ぐ。
決して一人で突出する事が無いように。皆と連携できる位置を保ちながら。
「よし、行けるぞ――罠の方に押し込むんだ。そうすれば動きを制限できる!」
「リーダー格! リーダー格を倒したい所ですよ! どちらです……!?」
「ふむ――あちらの中央で叫んでいる方。少し強めですね。あの方かもしれません」
さすれば。世界がイレギュラーズ皆に活力を齎す号令と共に総攻撃の合図を。
世界の治癒もあればイレギュラーズの被害は軽微だ――ブランシュが速度を活かし敵へと撃を重ねれば、拳を叩き込み目前のゴブリンを倒したしきみが敵の強き者を見据える。
強さを測る目をもってして。さすればいるものだ、リーダーの様に見える存在が。
「よう、アンタがリーダーか! って言っても通じねえかもしれねえがな――
まぁ宣言しとくぜ。今からお前をぶっ潰すッ!」
「ンギャ!? マ、マモレ!!」
で、あれば。シオンが跳躍し――リーダー格へと接近するものだ。
出会い頭から全力の一撃。逃しはしない――一気に畳みかけんとする。
「行かせないぞ。お前達の歩みは、ここで止まってもらう……!」
「その脳天――叩き割りますですよ!」
周囲の者と共に抵抗するリーダー格――しかしその防御の裏から誠吾とブランシュが迫った。
誠吾の斬撃一閃。次いで、ブランシュは己が安全装置を外すが如き加速を。
超越のスピードに達したブランシュは跳躍。天より至りて――敵を粉砕する。
――断末魔を挙げる暇すらなく散るゴブリン。
「ギャ!? タ、退却!! 退却――!!」
「逃がすかよオラァ! 徹底的にぶちのめさせてもらうぜ!」
「さっきの、お礼を、させてもらいますの……! 囲んで、一網打尽ですの!」
であれば残存の魔物にどよめきが走り、逃げんとする――
だがバクルドが銃撃の雨あられを降らせれば、ノリアの海水放出が彼らを襲うものだ。
彼らを掃討するように。さすれば、世界は皆の傷を見据えて……
「……よし。負傷したのは俺が治癒しようか。敵ももういなければ街に帰る。以上だ」
「中々無い経験ではありましたが……野営、ふむ、様々な技能が必要ですね。
彼らの迎撃が主でしたので、普通の野営とは異なるのでしょうが……お姉様がもしも野営を行う事になった際にお役に立てるようにしきみ、これからも切磋琢磨学んで参ります! ああ! お姉様のお外でのお肌を守るために!」
であれば、しきみは元気一杯である。彼女の脳裏にはどこまでもお姉様一筋。
ブランシュもいい感じに罠の設置なども覚える事が出来――満足げだ。
と、その時。
「ふむ。よし! これだけあれば幾らでも肉が手に入るな――!」
言うはモカだ。彼女はゴブリンらをまじまじと見据えながら――え、やっぱ本気だったんですか? 一番最初に言ってた奴?
「ん? なんだその視線は? ああさては量が多くて調理しきれないと不安なんだな――? よろしい、ならば保存食にしよう。ああ安心してほしい! こうもあろうかと保存食レシピは十分にあって……どうした? なぜ離れる? 大丈夫だ、旨いぞ!」
力説するモカ。塩を振って~保存できるように~
いやぁ、でもなぁ。ゴブリンはちょっとなぁ……
何はともあれこれで奴らは退けた。
幻想北部の、カルウェン男爵の統括する街の平穏は――守られたのである。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!
敵の数が多くても事前の準備でかなり敵の総力を削ぐこともできるものですね……
非戦が中々活躍した依頼でした。
ありがとうございました!
GMコメント
●依頼達成条件
全ての魔物戦力の撃退!
●フィールド・シチュエーション
幻想北部、カルウェン男爵という貴族が統括している街の近くです。
魔物達が接近してきている方角にある林の中に、小さな砦があります。その中か、近辺で戦闘を行って頂きます。時刻は昼です。
魔物達が到達するまで約一時間~二時間程の猶予があります。
それまでになんらかの準備を整える時間はある事でしょう。
一番簡単なのは林の中に落とし穴、トラバサミ、仕掛け弓……といった罠を仕掛ける事でしょう。これらに必要な資材は男爵から提供してもらえるとの事なので、皆さんが特別に用意する必要はありません。
ただ、強力な爆弾などといった非常に効果が高いであろう、或いは珍しいモノなどに関しては皆さんでの用意か、独自の『コネクション』が必要だったりするかもしれません。
『罠設置』や『陣地構築』などの非戦スキル、或いはそれらに類するなんらかの技能があると迅速に行動を進めていくことが可能となるでしょう。(必須ではありませんのでご安心ください)
●砦
林の中に存在するオンボロな砦です。
砦というか……実際は小さな関所、と言った所です。
石造りの壁に囲まれていますが、長年放置気味による劣化なのか所々壁が崩れています。壁内部には二階建ての建物がありますが、そこも窓や扉が結構ボロボロです。修繕したりバリケードを築いたりすればある程度マシになるかもしれません。
この中で戦っても砦の外で戦ってもOKです。必要に応じてご活用ください。
●敵戦力
・魔物×30~??体
ゴブリンの様な魔物が街に接近しています。
簡易な弓や槍、剣などを所持している様です。戦闘能力自体はそう高いものではありませんが……ご覧の通り非常に数が多いです。マトモに相手取れば些か不利ですが、幸いなのは接敵まで一時間以上ある事でしょうか。
また、あまり頭がいい類の魔物ではないようです。罠などを設置すれば奴らとの戦闘開始までに数を減らしたり疲弊させたりすることが出来るかもしれません。
尚、一体だけ周囲を鼓舞・指揮するリーダー格がいる様です。
この個体は周囲R2内のゴブリンの戦闘能力と連携力を強化します。
ただし、この個体が倒れた場合、士気がガタ落ちする事でしょう。
なお。このリーダーも別に頭がいいという訳ではないようです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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