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シナリオ詳細

くらえ! なんか全員わんこになってしまうビームッ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ぐあー!
「わぅ!? わんわんわん、きゃう――!!」
 それは一瞬の事だった。
 幻想の街中を歩いていた貴方は横から奇襲気味に注がれた光に直撃してしまう――
 痛みは無い。だが眩い程の光を浴びれば反射的に目を閉じてしまい……

 次に目を開けた時には、自らが子犬になっていた。

「わう――!!?(なんじゃこりゃああああ――!?)」
「ふふふ。私はわんこ大好き大精霊(自称)! 突然だが君たちをわんこにさせてもらった!」
「わん!?(はぁ!?)」
 低い視界。四つの足に、全身のもふもふ加減……
 間違いない。確かに自らはわんこ(子犬)になっている様だが――なんだ『わんこ大好き大精霊』って! いや百歩譲ってそういう精霊がいてもいいが、どうしてこのような攻撃を我々にして来たと言うのだ――!!
「理由は二つ! 我が同胞『『リ』で名前が始まる女性をメス化させる大精霊』が人間にボコられた復讐が故……というのは建前で、ぶっちゃけ私は突然わんこの姿に驚く人間を見るのが趣味でね」
「わう!!(くだらね――!!)」
 なんだその『リ』で名前が始まる女性をメス化させる大精霊って。そんなのいるのか。あ、そういえばそういう事件に巻き込まれたイレギュラーズがいたようないなかった様な……いやとにかく過去の事は関係ない。とにかくコイツを今は何とかせねば!
 ぶん殴れば効果が切れて元の姿に戻るだろうか――
 そう思い襲い掛からんとするが、身体能力も子犬基準になっているのか上手く動かない。子犬ぱんち、子犬かみつき! あ、だめだ足元ぺしぺしするのが精一杯である!!
「きゃうーん!!(戻せよ!!)」
「ふはははは、無駄だ。その効果は約一時間程続く……
 それまで精々子犬タイムを楽しむんだな。私は陰からその様子を観察させてもらう!」
 逃げる精霊。アイツ、こっちが困っているのを楽しんでやがる!!
 駆け抜けていく奴めを追いかけんとするが――く、くそう! だめだ、追いつけない!!
 息が切れてしまうイレギュラーズ達。
 おのれ……だが、一時間我慢すればいいだけなら大したことは――
 そう思っていれ、ば。

「ふぅ――さて。ここら辺だったかね、確か野良犬が多いってのは」
「ああ。野良犬が増えすぎると治安も乱れるからなんとかしろって、男爵様の仰せだったからな。気合入れて捕獲していかねぇとな」

 ……なんか大型の虫取り網みたいなの持った騎士っぽい連中がやってきた。
 え、ちょっと待って。なんて? え、このタイミングでそんな偶然ある?
 ま、まずいぞ! 我々は違うと誤解を解かねば! おい、おーい!
「わんわんわんきゃうーん!!」
「おっ。早速いたぞ野良犬だ」
「可哀想だけど男爵様の命令じゃ仕方ないよな――捕獲だ! 逃がすなー!」
「わうーん!!?」
 だめだ全然話が通じない!! ここは逃げねば!!
 全速力で駆け抜けるイレギュラーズ達。一時間で戻るのならばまぁ、一時間後に事情を説明すれば捕まっててもどうとでもなろうが……けれどどこに連れていかれるかも分からないし、連れていかれたなら何より――
「ぐるるる……!!(あの野郎をぶん殴れないッ――!)」
 恐らく今もこの混乱を草葉の陰で見ているであろう精霊。
 あの顔面に一発殴りつけてやるまで逃げるんだと――子犬の姿で必死に走っていた。

GMコメント

 わん!? わんわんわん、ぐるるるる……!!
 わうーん!!(以下詳細です!)

●依頼達成条件
 元の姿に戻るまでの一時間乗り切る!!

●シチュエーション
 なんか全員子犬になってしまいました。
 それは『わんこ大好き大精霊(自称)』の仕業です!! 一時間ぐらいしたら元に戻るそうですが、どういう偶然か、この地を統括する貴族による野良犬捕獲大作戦が始まったようです。
 別に捕まっても一時間後に戻るのなら大した被害はないかもしれませんが、捕まったらどこに連れていかれるか分かったもんじゃありません。まぁ一時間、なんとか乗り切りましょう!

 ちなみに皆さん全員今は子犬の姿です。
 なんだかほんのり、元の姿だった頃の特徴がある様な気もします……(例えば髪が青い人は、体毛が青かったり。飛行種だったりすれば、なんか小さな翼っぽいのが背中にあったり……)
 身体能力も子犬相当の様です。ただ、スキルなどは自在に使用できます。

●フィールド
 幻想の街中です。時刻は昼。
 住宅街やら商店街やらが立ち並んでいます。ですが何故か今日は騎士達があちこちにいて、野良犬達を捕まえようとしている様です……今日に限ってなんでー!

●わんこ大好き大精霊
 とにかくわんこが大好きな精霊です。
 時折人間たちを勝手にわんこ(子犬)にするビームを放つのだとか。ただ、めっちゃクールタイムが必要らしく、一日一回しか撃てないみたいなので、二撃目を心配する必要はありません。元の姿に戻ったらボコってもいいかもですね!
 戦闘能力の類はないので『ボコる』と書いたら容易くぶちのめせます!

 余談ですが『リ』で名前が始まる女性をメス化させる大精霊とかいう奴とは親友なんだとか。(シナリオ:『リ』で名前が始まる女性をメス化させる大精霊~私は『リ』の女性が狼狽える姿を見たいんだ~)
 その精霊が出てきたりはしないので、シナリオを読んでおく必要は一切ないです!

●野良犬捕獲作戦に参加している騎士達
 なんか貴族の命令で野良犬を捕獲に来てる騎士さん達です。
 おっきな虫取り網みたいなの持ってます。保健所か……?
 ドッグフードを用いた罠とかも仕掛けてみたいです。ご注意を!

●野良犬
 この街に住み着いている野良犬達です。なぜか知りませんが結構多いです。
 余所者を見かけたりすると威嚇する奴から、友好的な奴まで色々。
 わんわんきゃうーん!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はW(わんわんお!)です。
 わんわん。くぅーん? きゃいんきゃいん!!
 わふ?

  • くらえ! なんか全員わんこになってしまうビームッ!完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2021年11月30日 23時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)
老練老獪
Road=Roller(p3p006957)
クレイジー・キャット
ライ・ガネット(p3p008854)
カーバンクル(元人間)
リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)
花でいっぱいの
暒夜 カルタ(p3p009345)
花合わせ
ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)
愛花
ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)
陽気な骸骨兵

リプレイ



 にゃぁぁあああ!!
 吾輩はァ! 猫であるぅぅぅぅぅ!!! ニャ。
 名前はァ↑ ロードローラーだァッ!!!! ニャ。

 そんな感じの事をぶちまけているのは『筋トレだァッ!!!!!』Road=Roller(p3p006957)である――こら! これはわんこになるビームだって言ってんでしょ!!
「わんわふ!!(犬……? 知らんなぁぁぁ? ニャ)」
 くっ、こやつどこまでも猫のつもりかッ――!
 誰が何と言おうと猫であるとRoad=Rollerは魂の自負と共に此処に在る。いや犬だ君は。
「あお――ん! あおんおんおんおんあお〜〜〜ん! はふっはふっはふっ!!」
 ともあれ『わんわんお』リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)も逃げる――けど。あれぇ? なんかちょっと頭身が低くなって四つ足になっただけでいつもとさほど変わらない気がするぞ? あれれぇ???
「わふわふぅん……」
 ともあれリコリスとて心は誇り高き肉食獣。ハンターの中のハンター(爆笑)。自称孤高にして至高の一匹狼、こんな無様な仔犬の姿で首根っこの皮をつままれて保健所送りになるなどといった体たらくは死んでも見せつける訳にはいかない。いかないけれど、その光景はすぐ想像つくぐらいのイメージが既にリコリスには纏わりついてるので手遅れだと思いまよ!
 閑話休題。リコリスはそんな光景を避けるべく逃げていて――同時に。
「わ……わん! わん!!(な……なにこれ? なにこれー!?)」
 『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)はパニック状態。
 視点が低いし動きにくいしバランスが悪いし……普段犬たちはこんな視界で生活しているのか!? 驚きに包まれながらなんとか体を動かそうとしてみれば……わああ転んだ! たすけてー!
「わふ、わふ……わんわん!(ふぅ、ふぅ……とりあえず皆、逃げよう! 騎士達が来てるよ!)」
 わたわた。慌てながらもなんとか態勢を取り戻した――瞬間。
 彼の瞳に見えたのは大量の騎士達。その手には大型の捕獲網。
 まずい、と直感した。故にまずはこの場を離れんと翼をはためかせ、飛行する――!
「わふー!(飛べたー!)」
 あ、でも速度が遅い! 翼が小さいからか、飛翔速度が出ない!
 それでも懸命になんとか皆逃げ出す様に動いて――さすれば。
「わんわん、わふ……わん(はぁ……人気のないところで一寝入りしてぇところだが……まあ追っかけてくる奴らがいるよな。早い所諦めないもんかね、連中もよ……)」
 『帰ってきた放浪者』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)は騎士らの目から巧みに逃れつつ、時間までどうにか逃げに徹する事が出来ないかと思案するところであった。
 前足が義足。顔に傷跡があって毛が長い灰色の子犬――それがバクルド(犬モード)だ。
 彼の目的は一つ――なんかよく分からんがこんな姿にさせたあの野郎を後でボコす事だ! が、その目的の為にも捕まったら面倒な事態になるので逃げに徹する!
 屋台が多い通りに逃げ込んで人の目から逸れる様に。とにかく周囲を警戒しながら。
「くぅ~ん、がるる……(ふぇえん、わんこになってしまったですぅ! りりしさが5も下がったのですぅ……頭蓋骨の丸さも頬骨の高さも違うし、狼の掌球は犬と比べて趾球よりも離れた位置にあるんですよぉ! こんなの耐えられないですぅ!)」
「わふわふわふ?(なんでそんな詳しいんだ一体)」
 そして、やたら現状の状態に詳しい『花合わせ』暒夜 カルタ(p3p009345)は嘆いていた。ぴええ~だってだって! 見てくださいよ『カーバンクル(元人間)』ライ・ガネット(p3p008854)さん!!
「わふ。(これは犬)
 わふ。(これは狼でこういうのが狐)
 わふ。(それは狸)
 わふ。(あれはコヨーテですぅ)」
「くぅーん?(全部同じでは?)」
「わふ!? ぐるぐるぐるがるる!!(これだからしろうとはダメなんですぅ! もっとよく見てください!)」
 全部同じじゃないんです! と。前足で激しく主張するカルタ。しまったなぁと一瞬ライは後悔するものだが――とりあえず白熱するカルタの主張はともかく、これからどうしたものかと思案するものだ。
 というよりもカーバンクルの姿に変えられて……そこからまさかまた姿を変えられるとは思ってなかった。しかもまた可愛い感じだし……せめて大人の犬にしてほしかった所だ……どうしてこう、可愛い方向性にしか縁がないんだろうか? 呪いかな?
 と。人の気配を感じたので一端移動を行うライ達。飛行しつつ家の屋上側へ。
 一方で『粛々たる狙撃』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)と『陽気な骸骨兵』ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)は突然巻き込まれた辻犬ビームで己の姿が変わっている事を――近くにあった商店街のガラスの反射で確認していた。
「わふわふ……わふ……?(あぁ、もう、ついてない……どうしてこのような事に……)」
「わんわんきゃうん!?(道を歩いていただけなのになぜかいたいけな仔犬の姿に!? おのれなんとか精霊とやら……あっ、それでもスケさんは骨だけ……そんな……やはり肉は付かないと……?)」
 深いため息。ジョシュアは知り合いに会おうものなら笑いの種にされてしまうと――こういうのはなりたい者だけがなればいいのに。ひとまず優れた視覚をもってして騎士がいないかを確認。
 そしてヴェルミリオは――やはり元の姿が原型になってしまうが故か『骨犬』とも言うべき姿になっていた。フードとマントがあるが故に遠目から見ると洋服を着た犬にしか見えないかもしれないが……ちょっとしょんぼりである。
「わふぅ……(ともあれ騎士達に捕まって保健所送りは勘弁ですな! 逃げましょう!)」
 ともあれ気配を極力殺しつつ一気に道を移動。
 広く、周囲を俯瞰するように見渡す観察眼もあれば――しかし騎士らの人数もまた多い。囲まれれば流石にどれだけ気配を隠そうとしても難しいか……
 慣れぬ身体ながらなんとか最善を模索すべく――動き出すのであった。


「わふー! わんわんわんわん!!」
「うん? キミ……なんニャ? 餌でも欲しいのニャ?」
 そして暫く。アクセルは逃げ続けていた訳だが――そこでなんと知り合いに遭遇した。
 『ツナ缶海賊団』甲板長クロだ。まさかこんな所で会うとは!
 ――しかし言語は通じない。クロはアクセルをただの犬としか思っていない様だ。
 故に吠える。吠える。吠え続ける――ぐるりと一回転。
 伝えたい事があるのだと全力で示せ――ば。
「んニャ? ん~~……よしよし~でもウチでは飼えないから残念ニャ。
 騎士に引き取ってらもうニャ!」
「わふうううん!!?」
 抱きかかえられるアクセル! あ、止めろ、止めて!! いやああああ!!
 全力で暴れる。まさか知り合いに売られようとするとは――! 子犬とは言え犬と猫なのでその辺りもダメだったのか!? 近づいてくる騎士に光をブチ当て。怯んだ一瞬でまた草むらの中へと駆けていけば。
「わんわん! くぅ〜ん……きゃいんきゃいん! きゅるん?
 (ボク野良犬じゃないよ! 野良狼だよ! 信じてよお兄さん!)」
 その先で見た。リコリスが――捕まってる!!
 なので上目遣いの愛くるしい顔としいたけお目目に免じて見逃してくれることを一縷の望みに賭けて只管に媚びる――! ええい生き残れば勝利である。この際狼の誇りは――戸棚の三番目に仕舞っておく!
 え? もう既に色々BUZAMA? 知らん! 注射器を前に脱兎と化した過去など都合良く忘れたのだ。今度の燃えるゴミの日にその記憶出しとくんだい!
 さぁ騎士さん、この愛らしさに免じて放して――!
「わふぅん☆」
「うふふ。かわいいなぁ――よし捕獲! 捕獲――! 一匹捕まえたぞ――!」
「ぎゃいーん!!」
「きゅうーん!!(リコリス、逃げるんだー!)」
 そんなに甘い世の中じゃないよね知ってた。( ‘ᾥ’ )解せぬ…!
 だけど――飛び込んできたアクセルが再び敵のみを弾く光にて救わんとする。それに乗じてリコリスも自らを練達製ドローン『自我蜂』をリードに。強引に騎士の手から引っ張って離れさせ、あ、でも引き摺られガガガ――!

「クゥ――ン! わんわんキャイーン!!」

 瞬間。逃げたリコリス、アクセルらを大量の騎士らが追いかけてくる――
 それを見て周囲に警告を発したのがヴェルミリオだ!
 犬の姿においても出し得る極大の声にて周囲に警告を出そう……
 人間が――攻めてくると!
「わふ、わふわふ!!(さぁ、そこの野良犬の方々も逃げるのです! 逃げるが勝ちですぞ! そう、全ては――生きてこそ!)」
「がるる……?」
 そして彼の声は犬にされてしまった者達のみならず野良にまで通じる。
 そう。声が人の危険を周囲に知らせ……多くの犬を救う事になるのだ。
 ――各所で動き始める。自らに危険が迫っている事が分かった、犬たちが。
「わふ? わんわんわん(待ってください。移動もいいですが……ここはまだ隠れられるはずです。動かないのも手の一つですよ)」
 だが、地元の野良犬と接触を果たせていたジョシュアは下手に動かないのも手だと思考するものだ。家と家の狭間の、しかし草で隠れているこの場所ならば……何かあった時に別の道に逃げられそうだと。
 騎士達とて夜通しまで狩りを続ける訳ではあるまい――ここまで己が足を強化する加護や、わんこパンチの衝撃波による弾幕攻撃で騎士達を退けてきたジョシュアだったが。野良犬達を前に言葉を紡いで……
「くぅーん。くぅーん」
「わん? わんわんわん……(お、おおっと……これはどうしたものでしょうか)」
 で、あれば。
 どこにも行く所がない、自らよりも更に小さい子犬たちが寄り添ってくるものだ。
 ここまで受け入れられるとは予想外だったが……しかしなんとなし、温かさも感じる。
 ……まずいな。動き辛くなってしまうのは、と思いもするのだが。
「……わふん(少し位、いいですかね……)」
 今少しばかりは――一緒にいても大丈夫かと。
 微かな生命の灯りと共にするのであった。


「わふ! わんわんわん――くぅーん!!」
 同時刻。ライは小動物として可愛さをこれほどかとばかりに振りまきながら――追手を引き付けていた。
 犬の姿ならではの事をして楽しんでる奴もいる様だ――
 ライ自体は人間だった頃の自分を見失いそう(現在進行形だし)だからやらないが。やりたい者達を否定する程の事もない。やりたい奴の手助けはするつもりだ。それに、どういう振る舞いが受けがいいかはカーバンクルの時によく学んだからな。うん。
 ……なんだか複雑な気分になるライだが、しかし今はこの力が役に立つならと全力。
「まてー! 俺んちで飼うんだー!」
「うおおお何言ってやがる、飼うのは俺んちだー!」
「……わん?」
 あれ。なんだか愛嬌を振りまきすぎて追手の息が荒くなっている様な……
 ――なんだか嫌な予感がし始めたので、聖なる光をぶち込んで退散! と、すれば。

「きゃうーん! きゃいんきゃいん!」
「まてーこらー!」

 大通りの方で――カルタが陸鮫に乗りながら陸サーフィンしてた!
 こんな連中に追いつかれてたまるものかと。
 だって、いくら男の子がいつまでも少年とは言っても……
「わんわふーん!(女の子を追いかけてくるなら虫取り網じゃなくて薔薇の花束を持ってくるべきでしょう!)」
 なので陸鮫サーフィンであの連中は犬の幸門を見つめてるのがお似合いなのですぅ。もののついでに無数の瞬き放って目を潰し。乙女心の分からない人には……これでも喰らえですぅ! がるる!
「わふ、わんわふ(あからさまなドッグフードの罠……ハッ。どこの素人がやったかしらねぇが……甘いな。ちょっと弄っておくか)」
 同時。バクルドは街の隅でドッグフード――の、罠を見つけた。
 成程。手を出せば捕獲されてしまう寸法か……
 故に利用する。いつもと違う指先では上手く行かぬが、しかし近くに騎士がいないのであれば焦る事もないと――人が手を触れれば逆にそちらが『噛まれる』カウンター・トラップを作り出して。
「あっ、ドッグフードだけ取ろうとしてるな! まてー!」
「あおーん、わん!(おせぇよ! これでもくらいな!!)」
 直後。騎士がやってくる――が。
 想定していたバクルドは用意していたロープを引っ張るものだ。そうすると、支えを失って、位置を調整されていた大量の樽が騎士達の方に転がり込んでくるものであり……
「ぎゃあああああ――!!」
「わふわふ(まったく爪の甘い連中だぜ――もっと訓練するこったな。っと、こいつぁいいリンゴだ、うめぇ。今度戻った時には買っておくか)」
 余裕綽々。罠の餌として置かれていたリンゴを丁重に回収して噛めば――芳醇なる香りがバクルドの口内に広がるのであった。

「ぬ、ぬううう! なんだこれは!
 どうして貴様ら、そうも冷静に行動できるのだ……!」

 と、その時。
 街の影から現れたのは、わんこ好き大精霊だ! しかし想定と違うイレギュラーズの奮闘に業を煮やしたのか迂闊にも出てきてしまった様であり……
「ンニャアアアアア――!!」
「ぎゃああなんだこいつはあああ!?」
 瞬間! 家の屋上より振ってきたのは――やっぱりRoad=Rollerダ!
 Road=Rollerは悟っていた――野犬はめっきり減ったが野良猫は見腐るほどいると。
 それはつまり猫の方が筋力があるということだ。
 筋力は世界の正義であるから! この方程式に間違いはない!
 そして――という事は鍛え抜かれた筋肉の私は猫にみえるのだッ! ニャ!!
「ンニャ、ニャャニャ、わふ――!!」
「く、くそこいつ! 馬鹿な! わんこ姿の筈なのに……猫耳だと!!?」
「ニャニャニャ」
 それはRoad=Rollerが所有していた卜口の着ぐるみが故! 更にとらぁ君クッションもブースト掛ければOh! クレイジー・キャットッ! 心の底から猫の様にあっているRoad=Rollerは――犬の魔力を超越したのだ――
 これむしろ卜口の魔力怖くね? とらぁ君ブーストも凄くね? ていうかとらぁ君は虎じゃ……
「にゃぁぁあああああ!!!(虎と自称されたら猫であると突き返すのがこの混沌の”礼儀(マナー)”であると習ったのでなァ!! それに乗っ取ってるに過ぎん――ニャ!)」
「ぎゃあああ、眼が、眼が――!!」
 更にそれだけで終わらない――発光で点滅しながら尻尾をブンブンと振り回すのだ――! それはまさに荒ぶるサイクロンの如き回転力ッ!! どうだ!! これでもまだ我が猫であると認めないか! だったらなんだ! 完璧を立証する為に腕立て伏せでもみせてやろうかああこれぞ猫の証!!
「わふー!! わんわんわん!!(見つけましたよこの――!)」
 更に。カルタも大精霊の足元に襲来! 一気に襲い掛かる――!!
「わぅーん! くぅーんくん!」
 彼女は語る――そもそも犬は捕まえるのはおかしくないですか! と。
 だって領地経営の時だって皆さん、にゃにゃにゃ? な猫の大量発生には食料や衛生を犠牲にしてでも全力で保護して可愛がるのに、わん、わん、わんな犬の大量発生は捕まえて、保護施設に送るだけなんて差別じゃないですか! 絶対おかしいですよこんなの! 猫ですか? この混沌は実は猫たんがトップに君臨しているとでも言うんですかぁ?!
 世界的な陰謀を感じるカルタ。許せない。こんな世界、間違っている――!
「がるる、わんわん!!(だから! そんなにわんこが好きなら、わんこ大好き大精霊さんにも一緒に猫尊犬卑な混沌の社会問題に立ち向かって欲しいものですぅ! こんな趣味だけに力を注いでないで! 早く!)」
「えーだってそこまではめんどいし……」
「キャン! わふうっ!(革命魂を燃やしてくださいよおおお! 貴方が! 世界を! 変えるんですよ! この! 矛盾に塗れた! 世界を――!)」
 熱弁。はーっ、はーっ……
 こんなに暴れても子犬にしか見えないなんて、同胞ながらわんこ大好き大精霊、地味にすごいですぅ……! やっぱり絶対革命に駆り立ててやるとカルタは思考を巡らせるものだ――!
 ある程度知能がある動きを見せているのに獣種であるかもしれないという考えにすら至らないお役所騎士共とは違う!

 ――と、その時。街の中央にある時計が時間を指し示した。

 一時間経った事をも知らせる鐘の音も鳴り響いて……それはつまり。
「――ようやくテメェをぶん殴れる、って事だよなぁ」
 皆が元の姿に戻るという事。
 丁度この場に至ったバクルドが拳を鳴らしていて。
「やれやれ……そうだ。カーバンクルにされた時もこんな憤りがあったなぁ。
 ――思い出させてくれた礼をしないとな」
「ふふ。随分と騎士に追いかけられて大変だったなぁ……あっ。精霊体って穴が開くかなあ? 試してみても面白そうだとオイラ思うんだよねぇ……」
「ああ! 空中でゲッダン! してしまう!
 まずいよ! ここで戻るのは! まずいよ! あッ――!」
 昔の記憶も思い出し憤怒するライ。魔力を収束させるアクセルも現れ――ドローンに相変わらず引き摺られてるリコリスは途中で姿が戻っちゃってゲッダン! ぐええ!
「待つんだ諸君――これは、話せば分か――」
「スケさん的には大満足でしたぞ……! ですが……それはそれ、これはこれ!
 私欲を満たす為に斯様な力を振るうのは危険であります! お仕置きですぞ!」
 大精霊のいう事など誰がきくものか――!
 全員の一撃。丁寧にぶち込まれ続ければ、仕舞にはヴェルミリオが往く。
 まずは正座! 手は後ろに! 膝の上に犬さんをのせて……っと……
「反省するまでそのまま『お座り』! ですぞ!」
「アッー! そんなー!」
 こんな可愛いわんこを膝の上に乗せたままだなんて、鬼――!
 ボコボコにして反省させてやると――しようではないか。
 そしてイレギュラーズ達の(犬の時の)反撃もあって騎士達もボロボロ。あっ。一回帰るみたいである……公務員(?)は大変だなぁ。
 やれやれとんだ一日になったものだと――誰かが吐息を零していた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 わん! わんわんわんわん、わぅーん!
 きゃいん、きゃいんきゃん!(訳:ありがとうございました!!)

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