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シナリオ詳細

<ダブルフォルト・エンバーミング>クライシス・ワールド

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 R.O.Oでの異変……それは、現実世界の練達にも伝播していた。
 希望ヶ浜で起きたような事態とは異なる。R.O.Oを通じたマザーへの攻撃は、すなわち練達そのものへの攻撃でもある。
 練達のシステムそのものを司るマザー……その混乱は、練達そのものの混乱であり、暴走であった……。

「うわっ!?」
 クロエ=クローズ(p3n000162)が、叫び声と共に飛びずさる。一瞬の痕に、クロエの背後にあった壁に、数本のフォークが突き刺さった。
 練達、セフィロトの街角。今は照明が弱々しく光り、薄暗くなったダイナーの中で、クロエは給仕ロボットから逃げ回っていた。
「くそっ、こいつもダメかっ!」
 クロエは悲鳴をあげて倒れたテーブルにもぐりこむ。たたたっ、と音を立てて、フォークがテーブルに突き刺さった感覚がする。
 練達の混乱に際し、クロエは希望ヶ浜を離れ、セフィロトの街へと出ていた。混乱する街中で、少しでも多くの一般市民を避難させようという目論見だった。それはある程度成功したが、未だ人々は逃げ遅れていると見える。
 だが、練達は前述したとおり暴走している。AI制御の給仕ロボットは、客に配るフォークやスプーンを高速で射出して人を撃ち殺そうとしていたし、道案内ロボットは手にしていた誘導棒を鈍器にして、あちこちを殴りまわっている。
 練達は高度に機械化された都市であるが、それがそれが裏目に出たともいえよう。火を映し出す天井パネルはほとんどが消えて、夜の様相を呈していた。だが、本来ならば、練達を指揮するマザーがここまで追い込まれることなどはなかったはずだ。まさに青天の霹靂のような事態。だが、だからと言って、ここであり得ないと嘆いていても始まらない。
「とにかく、あのロボットを無力化できれば……」
 護身用に持っていた遠距離用スタンガンを手にして、ごくり、と喉を鳴らした。とっさに飛び出す。クロエは狙いを定めると、目の前の包みたいな給仕ロボット目がけて、引き金を引いた。ばぢ、と音を立てて、電気を放つ銃弾が飛ぶ――が、外れた。慌ててもう一度引き金を引くも、それもまた明後日の方向に飛んでいく。
(ええい、どれだけどんくさいんだ、ワタシは!?)
 胸中で泣きごとを言うが、もはや後の祭だろう。ロボットはクロエに狙いを定めると、フォークを射出口に装填、撃ちだそうとして――。
 ぐわり、と青い影が、そのロボットにつかみかかった! 巨大な液体のような影がロボットに覆いかぶさると、そのままぐにゃり、と力を込めて握りつぶす。
「わふー」
 と、その影が言った。それは、スライム状の物体で、すぐに人の姿を取った。きゅ、と帽子を直す。
「レライムか……?」
 ほう、とクロエが安堵の息をついた。そこにいたのはレライム・ミライム・スライマル(p3n000069)だ。クロエと共に、逃げ遅れた人たちを探していたのだ。
「ん。よかった、間に合った。この辺にもまだ逃げた人がいるの?」
「ああ。このダイナーの奥もいるはずだ……だが、流石にワタシたちだけでは、もう動くのもきついな……」
「と言うと思って、ローレットに連絡入れておいたよ。すぐに助けに……お、来た来た」
 と、レライムは、走ってやってきたあなた達に手をふる。あなた達は周囲を警戒しながらダイナーに入り込むと、レライムに頷いた。
「ここにも助けなきゃいけない人がいるって」
「ああ、とりあえず、ワタシたちの管轄はこのエリアの確認だ。
 まだ逃げ遅れた人たちがいるから、このエリアを探索して、シェルターに送らないとならない」
 クロエが、あなた達にそういう。つまり、あなた達の任務は、逃げ遅れた人々の探索と救出、そして暴走したロボットの相手と言う事になる。
「キミたちを矢面に立たせるようになってしまうが……すまない、今は頼らせてくれ」
 クロエの言葉に、あなた達は頷く。どのみち、あなた達も、逃げ遅れた人たちをほうっては置けないはずだ。
 練達の危機を救うためにも、まずは逃げ遅れた人々を、無事にシェルターに送らなければならない!
「あたしも手伝うから、なんでもいってね。
 それじゃ、れっつごー」
 と、片手をあげるレライム。あなた達は頷くと、動乱続くセフィロトへと一歩を踏み出した。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 練達の危機です! まずは、逃げ遅れた人々を見つけ出し、シェルターに連れて行ってください!

●成功条件
 5名以上の一般市民を見つけ出し、シェルターへと連れて帰る。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 R.O.Oにおける異変に関連し、練達のメインコンピュータのマザーが暴走中です。
 これにより、練達内部のコンピュータやロボットは暴走し、市民に牙をむいています。
 多くの市民は逃げてシェルターへと非難しているようですが、まだ逃げ遅れた者がいるようです。
 其処で皆さんの出番です! この商店街一区画(1km四方程度)を探索し、逃げ送ら多人々を救出、最終的にエリア北のシェルターへと導いてあげてください。
 一般市民がどれだけ逃げ遅れているかは不明ですが、最低でも5名は残っています。少なくとも、この5名は助けてあげてください。
 商店街と言う事もあり、辺りにはショッピングモールや高層デパート、レストランなどがあります。皆こういった建物中に隠れているのでしょう。
 しかし、ただ探せばいいわけではありません。前述したとおりロボットは暴走しており、警備ロボットや給仕ロボット、道案内ロボット迄皆さんに牙をむいてくるでしょう。
 多くの人を助ければ、それだけ良い事ではありますが、沢山の人を引き連れて戦う事になれば、必然的に負担は大きくなります。
 自分たちの安全を優先するか、人命を優先するかは、ご随意に。

●エネミーデータ
 暴走ロボット群 ×???
  暴走したロボットたちです。レストランの給仕ロボット、警備ロボット、道案内ロボット、マネキン……あらゆるロボットが皆さんに牙をむいてきます。
  攻撃方法は、そのロボットによって違います。例えば給仕ロボットはフォークやスプーンを縦断のように発射してきますし、道案内ロボットは誘導棒で殴りかかって来るでしょう。
  ロボットなだけあってタフで、物理攻撃を得意とします。此方は、救助した人を連れているはずですので、彼らに流れ弾が当たらないよう気を付けてください。

●味方NPC
 レライム・ミライム・スライマル(p3n000069)
  ローレットの情報屋。イレギュラーズなので戦えます。
  バランス型の前衛タイプです。一応回復なども行えますので、便利に使ってやってください。

 クロエ=クローズ(p3n000162)
  練達の科学者。純種で、非イレギュラーズ。戦闘能力はありません。
  ただし、ちょっとしたエネミーサーチ(弱)が使えたり、傷の手当(弱)ができたりします。
  また、マップも持っていますので、迷ったら頼ってください。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • <ダブルフォルト・エンバーミング>クライシス・ワールド完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年12月07日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)
宝石の魔女
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
小金井・正純(p3p008000)
燻る微熱
リディア・T・レオンハート(p3p008325)
勇往邁進
星芒 玉兎(p3p009838)
星の巫兎
唯月 清舟(p3p010224)
天を見上げる無頼

リプレイ

●崩壊都市
 空が明滅している。かろうじて『青空』を映しているとわかる天井のパネルが、ジジ、と音を鳴らし、漆黒の虚無を晒している。
 薄暗くなった世界は、まさに終末の具現か。人気のない薄暗い街角は、しかし人ではないものが息づいている。
 ゴミ箱をひっくり返した様な図体の道案内ロボ。或いは、中途半端に人を模した警察ロボット。
 カゴにタイヤをつけたような給仕ロボットも、店を飛び出して道を徘徊し、カゴの中のナイフやフォークを無秩序に打ち出している。
 そんな街の中を、一組の男女が走っていた。どちらも、同年代の男女。服装から見るに、練達で暮らす一般市民だろう。
 昨日まで変わらずに続くと思っていた風景が、地獄に変わっている。スレイブに違いなかったロボットが、今主人に牙をむいている。
 いや……もしかしたらずっと、主人とは人ではなく、機械であったのかもしれない。そんな錯覚すら覚えてしまうような、光景。
 走る男女のうち、女性が倒れた。男性は、それに気づき、助け起こそうとする。が、すぐ後ろに、道案内ロボットが迫っていた。友好的なデザインが、今は恐ろしく感じる。鋭く振り下ろされる誘導棒は、殴られれば人くらいは平気で殺してしまうのだろう。
 ひ、と二人が悲鳴をあげた刹那、しかし吹き飛ばされたのは道案内ロボットの方であった。吹き飛ばされたロボットが、壁にたたきつけられてぐしゃり、と潰れる。無様に誘導棒を振り回しながら、それはやがて止まった。
「――レジーナ・カームバンクルが助けに来たのだわ」
 人影――道案内ロボットを吹き飛ばしたその主。『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)が優雅にそう言った。
「我(わたし)を知らない?
 なら今から覚える事ね。
 怪我は無いかしら」
 そう尋ねるレジーナに、男女はこくこくと頷く。満足げにレジーナは頷くと、
「ならシャンと立ちなさい。
 いつだって自分の命を助けるのは汝(あなた)自身よ」
 そう、檄を飛ばしてみせた。

『もしもし儂じゃ、今はJ19辺りを移動中じゃ。そちらは?』
 ファミリアーで共有した聴覚に反応がある。『宝石の魔女』クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)の言葉に、レジーナは頷いた。
「予定通り、その対角線上、H20近辺よ。今、2人保護」
 レジーナの後ろでは、先ほどの男女が立ち上がって、『神使』星芒 玉兎(p3p009838)の『妖精の木馬』が引っ張る荷台に乗り込んでいるところだ。
「たしかに、お怪我はありませんわね。もしどこか痛むようでしたら、遠慮なく仰ってください」
 玉兎がそう言うのを聞きながら、レジーナはクラウジアへと告げる。
「このまま探索しつつ、シェルターへ向かいましょう。可能な限り、救助者を見つけるのよ」
『了解じゃ。そちらも気を付けての』
 ひらひらと手をふるクラウジアが、ファミリアーの視界越しに見える。いったん視界の共有を解除してから、レジーナは仲間達へと向き直る。
「クロエ様の地図によれば」
 玉兎が、辺りの地図をそらんじて見せる。
「この先に、小さな……しょっぴんぐもーる? とやらがあるようですわ」
 言葉の意味は分かれど実感のわかなさそうな玉兎へ、
「いくつかのお店が、一つの建物の中に並んでいるような感じです」
 『勇往邁進』リディア・T・レオンハート(p3p008325)。
「屋内版商店街……と言いますか?」
「まぁ、なるほど。それでは、多くの人が隠れている可能性もありますわね?」
 玉兎が頷いた。
「……しかし、前々から、あの奇怪な絡繰共はいまいち信用が置けないと思っておりましたわ。
 こうも簡単に暴走してしまうとは……」
 むむ、と玉兎が唸る。これは、ハイテクに追いつけないローテク人間並みの感想、とは自分でもわかっていることのようだがさておいて。
「でも、元々練達は完璧なシステムだったからね」
 苦笑しつつ、『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)が答えた。
「それこそ、杞憂……空が落ちてくることを心配するような気持だったんだと思うよ、練達の人達も。
 ……でも、それがこうなっちゃうのは、本当に、練達の人達にとっては世界の終わりみたいな気持ちなのかもしれないね」
「だからと言って、本当に練達を終わりにしてしまうわけにはいきません!」
 と、リディアが笑いかけた。
「そのためにも、事件を解決することはもちろん、逃げ遅れた人たちを助けるのにも、全霊で臨みましょう!
 こういう時にこそ戦うのが騎士の本分です!」
「うん! 頑張ろうね、リディアちゃん」
 アリアが笑って答えた。さて、気合は充分。そしてイレギュラーズの実力も充分だ。
「では、しょっぴんぐもーるとやらに向かいましょう。皆様、窮屈な荷台ですが、しばしのご辛抱を」
 と、玉兎が荷台の救助者へと語り掛ける。すでに救出したものも含めて3人の男女が、荷台に座り込みながら、不安げに頷いた――。

●救出進行
「うむ、と言うわけでこちらは服飾品店のエリアじゃな」
 と、クラウジアが言う。ファミリアーと共有していた視界を解除。眺めてみれば、こちらには『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)、『未来を願う』小金井・正純(p3p008000)、唯月 清舟(p3p010224)。ついでにレライムの姿があった。イレギュラーズ達は、2チームに分かれて、それぞれ調査エリアをしらみつぶしに探していく作戦をとっていた。戦力的な面では分割されることである程度低下するが、それでも逃げ遅れた人々を確実に探すには、良い手段と言えただろう。
「チッ、薄暗い街じゃあ。随分としみったれたもんじゃな。これが服屋とは」
 清舟が言うのへ、傍らにいたレライムが答えた。
「ほんとはもっと明るいんだけどね。電気の供給が止まっちゃったんだろうね」
「なんじゃ、一つ所に全部任せるのも問題ありっちゅうことじゃな、やわっこい嬢ちゃん。しかし、妙な奴じゃな、アンタ。全身がそんな、やわっこいのか?」
「もちろん、スライムだからね。みる? 触る?」
 レライムが服をまくり上げようとするのへ、清舟は慌てて止めた。
「せんで良いわ! 儂が言うのもなんじゃが、ちったぁ恥じらいっちゅうもんを持たんか!」
「清舟さん、敵の感じはどうですか?」
 正純が尋ねるのへ清舟は、おお、と頷いてから、
「んー……どうじゃろうなぁ。気配は感じられん。元より絡繰じゃ、気配を消すのも容易じゃろうな。
 いや、まてよ? じゃが、エネミーサーチには引っかかっちょる。隠れちょるぞ」
「どの方向かわかりますか?」
 正純が言うのへ、清舟は店の奥を指さした。
「……結局、戦うのは避けられそうもありませんね……」
 正純が嘆息する。店の探索のためには、店の奥に行かねばならない、必然、店の奥で待ち構えている敵と遭遇する。
「人助けセンサーがあれば完璧でしたが」
「レライムさんは、人助けセンサーは持ってないかな?」
 モカが尋ねるのへ、レライムがプルプルと首を振った。
「そうか。ああ、いや、勿論責めているわけじゃない。となると、我々が取りうる手段は一つだね」
「気を付けておくに進む、じゃなぁ」
 クラウジアが言った。
「ま、このメンバーがおれば、そうそうやられはせんじゃろ。もちろん、油断はせん方がいいが。
 さて、皆。準備は良いかの?」
 クラウジアの言葉に、皆が頷く。果たして一行は、店の奥へとゆっくりと進んでいく。様々な文化の衣服が所狭しと並んでいる。棚。マネキン。一行がその前を通った瞬間、ぎぎ、と言う音と共に、マネキンがその腕を振り上げた!
「だ、ろうね!」
 モカが叫ぶ! 同時、高らかに蹴り上げた足が、マネキンの腕を蹴り飛ばした! 半ばからちぎれて飛ぶ腕、マネキンは気にすることもなく、もう片方の腕で殴り掛かる!
「申し訳ありませんが、意志も持たぬでくの坊に慈悲を向けるほど、優しくはありませんので」
 言って放たれた正純の矢。黒い、暗い星。闇夜に陰る星の一矢が、マネキンの頭部に突き刺さる、そのまま後方の壁へと縫い付けた。どろり、と呪いが全身を駆け巡り、マネキンの駆動をショート、殺してしまう。
 一方、もう片方から襲い来るマネキン。両こぶしを使って振り下ろされる叩きおろしの打撃を、清舟は刃を持って受け止めた。
「ハッ――案山子が人斬りの真似事とは笑わせる。案山子は案山子らしゅう、畑にささっちょれ!」
 刀でマネキンの拳を振り払いながら、拳銃を接射してやる。柔らかい鉄を貫いて、内部を踊る銃弾が、その内臓(きかい)を滅茶苦茶に撃ち抜いた。
「おっと、襲わせはせぬぞ?」
 ぐらりと揺れながらも未だ抵抗を止めぬマネキンに、クラウジアの魔術が続く。貴石の妄執、放たれた仮想宝石が魔力を充填し、臨界と共に敵の空に突き刺さる! 宝石は内部で爆発・魔力の奔流を巻き起こし、マネキンを内側から破壊した!
「うむ。こんなもんじゃな!」
 ぱんぱん、と手を叩きつつ、笑うクラウジア。奇襲にもかかわらず、鮮やかに反応し片付けたのは、流石歴戦のイレギュラーズと言った所か。
「清舟君。あれは案山子じゃなくてマネキンだよ」
 と、レライムが言うのへ、清舟は眉をひそめた。
「別に何だってええじゃろ。それよりやわっこい嬢ちゃん、怪我しちょる奴がおったら、クラウジアを手伝って治してやってくれ」
「はーい。クラウジアさん、お手伝いするよー」
 ぴょこぴょこと跳ねていくレライムを見送りつつ、清舟はあたりを見回した。
「あそこに扉があるな」
「スタッフルームか。もしかしたら、隠れてる可能性はあるね」
 モカが言うのへ、クラウジアがレライムの頭をポンポンしながら言った。
「鍵がかかっておるなら、対処できるかもじゃが」
「それもいいですが、まずは素直に声をかけた方がいいでしょう。もし隠れている人がいるのなら、安心させることもできます」
 正純が言った。
「モカさん、お願いできますか?」
「もちろん。客商売が本業だからね」
 にこやかに笑いつつ、モカはとんとん、と扉をノックする。
「どなたかいますか? よろしければ開けてください。私たちはローレットのイレギュラーズです。
 安心してください。私たちは皆さんを救助および保護しに来ました。これから安全なシェルターに案内します。付いて来てください」
 ぎっ、と扉が少しだけ平置く音がする。その隙間から不安げに覗いているのは、客だろうか、二人の女性だ。
「どうも、お嬢さん。助けに参りました」
 モカが笑って、手を差し出した。

●希望はここに
 イレギュラーズ達は、エリア内の調査と、逃げ遅れた人々の救出を進めていく。元より、誰一人、救い漏らすつもりはない。このエリアにいる全員を助けるという気持の下、しらみつぶしで建物を探していく。
 その結果、確かに、多くの人々が助け出されていた。元々の調査では5名ほどの人数が予測されていたが、その倍近い11名を、現状発見している。
 だが、救出した人数が増えたという事は、同時に護るべきものも増えた、と言う事になる。それは、負担が増える事とも同義だ。
 ……非戦闘員を連れて行けば、必然、移動速度も遅くなる。彼らを護るために、少ない戦力を裂かねばならず、自らの身を盾にしてでも、守らなければならない場面もやってくる。
 だが……その程度の傷が、彼らの足を止めるだろうか?
 一度護ると決めたなら、最後までやり遂げる。それが、彼ら歴戦のイレギュラーズ達の、決意であった。
 道路に展開する、警察ロボット。スタンガンを装備したそれが一斉に火を噴く――後方に隠すように展開した、救助者たちを乗せた荷台を護るべく、リディアが飛び出した!
「リディアちゃん!」
 アリアが叫ぶ。同時、撃ち放たれた電撃のスタン弾が、リディアへと迫る。咄嗟に構えた宝剣で打ち落とし、直撃は避けたものの、弾丸は電撃を発し、その電撃でリディアの身体を打ち据えた!
「う、うっ!」
 たまらず呻くリディア。ああ、と荷台の救助者たちが心配の声をあげる。激痛にさいなまれながらも、リディアは力強く笑ってみせた。
「大丈夫です! すぐに、安全な場所に送りますから……!」
 その健気な様子に、胸を打たれた救助者たちも居ただろう。一方、アリアは仲間を撃たれた衝撃と怒りを覚えながら、警察ロボットたちに反撃を行ってみせる。
「あなた達も、ただ暴走しているだけだとしても……!」
 手にした宝珠を掲げながら、歌いあげる絶望の青の歌。魔力を帯びたそれが警察ロボットの人工知能を激しく揺さぶった。途端、パトランプを明滅させながら、同士討ちを演じ始める。歌に秘められた魅了の力が、警察ロボットの思考を霞がかったようにしたのだ。警察ロボットが派手な同士討ちを始めた一方、警備用のロボットがさすまたの様なものをつきだしながら、レジーナへと迫る。レジーナは冷静に、冷たい目を向けながら、
「女王の前を塞ぐと言うならば、
 それ相応の覚悟は有るのでしょうね?
 無機物の頭に刻み付けなさい。
 蒼薔薇のタナトスの紋章を!」
 言葉と共に、放たれた毒手(あんき)が、警備ロボットの電脳を犯す。その抵抗力を著しく場われた電脳が、内部からその回路を腐らせていく。ぎぎ、ぎぎ、と悲鳴をあげた警備ロボットが、その筒のような体をでたらめに振動させたのちに、動かなくなった。
「ひとまず、片付いたようですわね」
 玉兎が言うのへ、レジーナが頷く。
「あちらの方にいたロボットたちは?」
「ええ、幻影を生み出して走らせたら、そちらの方へ。絡繰にはおんどせんさぁ? なる体温を感知する者もいるそうですが、どうやら視覚のみに頼る絡繰だったようです。
 ここまで来たら、要らぬ戦いは不要でしょう。エリアも探索終わりましたし、このまま北のしぇるたぁへと向かうべきですわ」
 玉兎の言葉どおりだろう。レジーナは頷くと、
「なら、移動しましょう。木馬の誘導をお願いするわ?
 アリア、リディアの様子はどう?」
「大丈夫ですよ」
 と、リディアは笑ってみせるが、アリアはそれを制した。
「だ、だめだよ。今は治療させて!」
 どうやら、ダメージは相応に受けてしまったようだ。恐らく、可能性の箱をこじ開けて立ち上がったのだろう。
「……すまない、ワタシも戦えれば……」
 救助者とともに隠れていたクロエがそう言うのへ、リディアは笑った。
「いえ、地図のナビゲート、助かっていますよ。
 こういうのは、役割分担ですから! 皆さんを護るのは、騎士たる私の役目で……痛たた……」
「も、もう! 無茶しちゃだめだってば!」
 笑うリディアに、アリアが釘を刺す。
「申し訳ないけれど、動けるようになったらすぐに動くわよ」
 少しだけ声のトーンを落とすレジーナへ、リディアは頷いた。此処でいつまでも回復を待っているわけにはいかないのだ。
『おー、儂じゃ! レジーナ殿、こちらL2のあたりにおる。シェルター近辺じゃが、そちらは?』
 レジーナの耳朶を震わせる、ファミリアーと同調したが故に聞こえる声。すぐに視界も共有すると、目の前にクラウジアの姿が見える。
「我(わたし)たちもそのあたりよ。いったん合流した方が良い? 敵は近くには?」
『こっちにはおらん。じゃが、合流よりも直接シェルターに向かった方が速そうじゃな』
「同感よ。シェルター入り口で落ち合いましょう」
 レジーナの言葉に、クラウジアが頷いた。

「しぇるたぁっちゅうのはこの辺りか?」
 清舟がそう言うのへ、モカは頷く。
「地図によると……そう、そこの建物。そこが避難用のシェルターになってるよ」
「では、此方の市民たちを、先に避難させてしまいましょう」
 正純の言葉に、二人は頷く。果たして清舟は木馬を止めると、荷台から5名の救助者を降ろしてやった。そのまま、建物の、分厚い扉を開く。仲は階段のようになっていて、なるほど、このまま地下への避難通路とシェルターになっているのだろう。
「すみません、ありがとうございます……」
 市民たちがそう告げるのへ、清舟は軽く手をふった。
「ええが、さっさと行け」
「……どうやら、あちらの班も、到着したようですね」
 正純が言う。その言葉通り、レジーナたちのチームも、荷台を伴ってやってきていた。
「おお、ご苦労じゃの!」
 クラウジアが手をふる。
「シェルターはここだよ。速く、皆を収納しよう!」
 モカの言葉に、
「わかったよ! 玉兎ちゃん、あそこにつけて!」
「かしこまりましたわ」
 玉兎が木馬をコントロールして、荷台をシェルターの前へと運ぶ。
「……リディアさん、少し傷が深いようですね」
 正純が言う。
「皆さん、リディアさんの傷を見てあげてください。残るメンバーで、周囲を警戒しましょう」
「ええ、わかったわ」
 レジーナが頷き、残る仲間達が警戒に入る。一方、市民たちの避難はすぐに完了し、やがてシェルターはその重い扉を再び閉められた。
「依頼は完了ですね」
 リディアが笑うのへ、アリアは頷き、
「だけど……このままじゃ被害が広がるだけ。
 元を叩かないといけないという決意がこれで強くなった。
 体はきついけど、出し惜まず中枢に行って終わらせよう!」
 そう決意の言葉を述べる。
 練達の動乱はまだ決着の時を見せず。
 戦いは続いていくのであった――。

成否

成功

MVP

リディア・T・レオンハート(p3p008325)
勇往邁進

状態異常

リディア・T・レオンハート(p3p008325)[重傷]
勇往邁進

あとがき

 ご参加ありがとうございました。皆さんの活躍により、予定より多くの人々を救出することができました。
 まだまだ戦いは続きます。皆様のご武運を。

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