シナリオ詳細
<ダブルフォルト・エンバーミング>再現性東京2010:Real
オープニング
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練達は混沌内でも有数の高度技術によって支えられている。
故に――その高度技術が反乱を起こした時、成す術がないとも言えた。
「うわあああ!! 窓が、窓が破られるぞッ――!!」
「伏せろ――!! 手榴弾だッ――!!」
練達首都、セフィロト。
その各所を――本来護るべきはずの軍事用ドローンが襲っている。
鳴る銃撃。直後に悲鳴。
響く衝撃。直後に悲鳴。
轟く爆発。直後に悲鳴。
――マザーによって齎されていた平和はマザーによって瓦解したのだ。
『クリミナル・カクテル』に浸食される彼女が完全反転するも時間の問題。
無論、それを防ぐべく練達首脳部やローレットは動いている訳だが……それはそれとして現在進行形でドローンや練達技術の反乱が進んでいる。彼らは生きている人間たちを見つければ即座に攻撃を仕掛けている訳だ。
建物の中に隠れ潜んでも突破を試みてくる。
窓が一つでも開いていれば飛行型のドローンが侵入し。
扉が脆ければ設置された爆薬が全てを吹き飛ばす。
練達は外の世界より訪れた『旅人』が中心で構成されており、つまりそれはイレギュラーズである者が多いという事でもあるのだが――誰も彼もが戦闘に優れているとは限らないものだ。現に、ある建物に籠った市民たちはドローン達の攻撃から身を潜めるだけでもやっとであり……
そしてその牙は再現性東京――希望ヶ浜にも辿り着いていた。
「わあああ!! なんだあれは……に、逃げろ!! 扉にカギを、早く!!」
「バリケードをもっと築くんだ!! 必ず外から救援が来てくれるはずだ!!」
「救援だって!? 一体どこの誰が来てくれるって言うんだよ!!」
希望ヶ浜。再現性東京(アデプト・トーキョー)2010街『希望ヶ浜』地区の総称。
ここも練達の一部だ。
外に眼を背け、内に閉じこもる選択をしたこの地域も――例外ではない。
セフィロト方面から機械仕掛けの……つまりロボット達が押し寄せてきた。
銃を向け。警告も無しに次々と撃ち抜いていく。
――であれば市民たちが恐慌状態に陥るのに、そう時間はかからなかった。
止む無く一部の市民たちが近くのビルに立て籠もる。扉にカギをかけ、机や本棚などとにかくバリケードを築いてなんとか『敵』を押し留めているが……しかしこれもどれ程保つものだろうか。
扉の外から聞こえてくる悲鳴や銃撃が近づいてくる程に焦燥が増していく。
どうにかしなければ――しかしどうすれば――
「はっ……静かに! ドローンだ!!」
瞬間。誰かが気付いた。
窓の外に何か『影』が見えたと。
それはドローン。空中を飛行し、生存者がいないかと探している様だ――
奴らに見つかれば容赦なく銃撃されるだろう。が、奴らの探知能力自体はそう高くはない筈だ。熱源探知などはせず、生きている者がいないか有視界で探しているだけ……気配を殺して潜み続ければ凌ぐことは出来よう――
そして実際、ドローンは気付かずに別の場所を探しに行ったようだ。
……しかしいつまでも凌げるとは限らない。
徹底的に捜索されればいつかは見つかってしまうはずだ。
その前になんとか安全な所まで逃げたい所だが――!
「――そこに誰かいますか?」
瞬間。外の方から聞こえてきた――のは人の声だ。
それは音呂木ひよの。練達の異変を機敏に察知した彼女は周辺の者達の避難誘導の為に駆けていたのだ。
「聞いて下さい。裏口の方がまだ空いてますので、危険です。
――ですがそちらを塞いでも逃げ道を失うだけです。南の方へ向かってください」
「南……ああ、そっちにシェルターがあるのか!」
「はい。そちらは避難者を受け入れる態勢を整えていますので、そこまで逃げれば――
少なくともここよりは安全でしょう」
絶対に安全、などとは言えなかった。
練達自体が危険ならばどこに逃げようと大なり小なり危険はあるものだから……
しかし今そんな事を伝えても不安を煽るだけならば、と思考して言を紡ぐ。
「裏口の方に救援の方々が来てくれています。その人たちの指示に従いながら――避難を」
誰も彼もこの地でずっと生きてきた。目を逸らしながら生きてきた。
――だけど今だけは見なかった事になど出来ない。
異変を異変として認識し、歩みを止めてはならないのだ。
生きたければ。
明日も、明日の光を見たいのならば――閉じこもらずに外へ。
さぁ、一歩を踏み出して。
- <ダブルフォルト・エンバーミング>再現性東京2010:Real完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年12月07日 22時25分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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どこか。遠くから爆発音が聞こえた――気がする。
混乱は此処だけではなく、きっと各地で未だ収束の目途を見せないのだろう……
「ん、ロボット達が、暴れてる……の? 調子、悪いの、かな。
練達の、色んな所で、こんな感じ、なの? このままじゃ、いけない、ね」
「そればかりか現実もR.O.Oも混乱ばかりだ――こうもあっちとこっちを行ったり来たりこき使われてると、どちらが現実なのかフワっとしてくるね。ま、それでも『やるしかない』のだろうけども」
空を見上げれば太陽が沈む夕焼けの中で。『憎悪の澱』アクア・フィーリス(p3p006784)と『閃電の勇者』ヨハン=レーム(p3p001117)は周囲に敵影が確認されないか警戒しながら進むものだ――
あちらこちらで大混乱。それでも人命がかかった大事な仕事だと。
瞳に決意を抱きながら件の取り残された者達がいるであろうビル方面へと向かいて。
「R.O.Oではない、現実の街がこんな大変なことに……なんて、なんて状況でしょうか……」
そして同じく行動を共にするのは『華奢なる原石』フローラ・フローライト(p3p009875)もだ。再び聞こえてきた、遥か彼方からの不穏なる爆発音があれば……それはまるで彼女の心の背筋を撫ぜるが如く。
怖い。足が竦んで動けなくなってしまいそうな感覚が過る。
心の臓の鼓動が早いのは不安に焦燥。喉の奥が渇くような心痛が――しかし。
「……っ、いえ! こんな、状況だからこそ……私が、できることをやらなくては……!」
奮い立たせる。この先に助けを待っている人達がいるのだからと。
「……しかし。マザーの暴走一つによってここまで変化が起きるとは……
マザーありきの国だったとはいえ、厄介な物だ。高度な技術が反乱を起こす脅威だな」
同時。『知識の蒐集者』グレイシア=オルトバーン(p3p000111)は物陰から様子を窺いながら呟やくものだ。
練達とは快適な空間が保たれている、混沌世界屈指の技術国家――
それが一度崩れて斯様な惨状を齎してしまっている、と。
「久しぶりに来た希望ヶ浜だけど、酷い事になってるね……皆の避難、頑張らなきゃ。
ここは……現実の世界で、データじゃない世界だし、ね。皆を守らなきゃ」
「そうだな、皆が無事に避難できるよう、吾輩達も尽力するとしよう」
さすればグレイシアに続くのは『絶望を砕く者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)である――『此処』は電子で構築された虚ろなる世界ではなく、血肉ある『いきもの』の世界。
死ねば終わり。二度はない。
それは誰に対しても同じだ。イレギュラーズであろうが、なかろうが――この世の真理。
だから――ヘマなど出来ないと彼女は己を奮い立たせて。
「終わったら、ROOの世界ゆっくり歩きたい! 私殆どあっちのこと覚えてないんだもん……ね、おじさまいいよね?」
「――ならば、良い場所をいくつか知っている……事態が落ち着いたらROOで観光といこう。ああ、此処が安全になれば、必ずな」
故に往こう。勇者らしい意気込みに口端を緩めるグレイシアはルアナと約束を交わし。
辿り着くは件のビルの裏口側。
救助者たちをシェルターへの導かんと――足を踏み入れた。
●
同時刻。ビルから少し離れた所で行動していたのは『L'Oiseau bleu』散々・未散(p3p008200)だ。それは付近を捜索しているドローンを探し出す事と――
「……いました。東側方面に二体――いえ三体ですね。
これより『動き』ますので、暫くよろしくお願いします」
奴らを引き付ける為の行動故、だ。
幸いというべきかドローン達は無差別に人間を狙う所に隙があった。それはつまり殊更に弱い人間を優先して付け狙う訳でなく……姿が確認されればイレギュラーズの方へとも容易に接近してくる訳であるのだから。
故、未散は所持していたaPhoneにて救出班側へと連絡を一報。
――入れれば即座に往く。自らの姿が敵に見える様、存分に。
「さぁでは少しの間ですが追いかけっこをしましょうか。
――尤も。マトモに勝負する、という訳ではありませんけれど」
彼女の動きは正に迅速にして神速。圧倒的な機動力が敵を翻弄する――
いざとなれば壁を透過し建物の中へと避難しよう。
目的は彼らから注意を逸らし、救出班の援護をすることなのだから……さすれば。
「希望ヶ浜も、練達の一部ですから、被害があるのではと、思っていました、けれど……こうまで、混乱していては、わたしの姿を、見せてでも、動くべき時かも、しれません、ですの」
未散と同様にドローンらの排除を優先するのは『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)もである。希望ヶ浜は……この混沌世界という現実から目を逸らした者達で集っており『人外』を許容出来ぬ所があるものだ――
しかし彼らの信ずる日常が壊れてしまった今ならば。
「それに、あまり、目立ちすぎるようにさえ、しなければ、さほど、悪いことには、ならないでしょう……さぁ、こっちですの! 生きている、ものは、ここにいますの!」
動くに支障はないだろうと、その身を晒してドローン達を引き付けんとするのだ。
空中を浮遊する彼女は殊更に目立つ者……ドローンらが敏感に察知し――即座に襲来。
直後。放たれる銃弾がその命を奪わんと乱射されるものだ。
周囲に響く銃撃音……しかし元よりその攻撃が至る事を覚悟していたノリアはそれだけで崩れる訳もない。空を飛翔、いや、高速で泳ぎ回る様に動く彼女は己がヒレを巧みに捻らせ――銃弾を幾重か弾き返す。
であれば撃を放ったドローン側にもいくらかの被害が齎されるものだ。
高速で動くが耐久の低いドローン。対して山の如き耐久を持ち、攻撃を強く弾き返すノリア……数の差はあれど、時間さえ許すのであれば決して不利ではない――そして。
「未散さんやノリアさんの方でも動きがあったようですね……
敵が跋扈する中での移動は危険ですが、残るも有利と言えません。
――参りましょう。まずは適性存在を排除します」
ビル側の方でも救出の為の動きが始まった。派手に動くノリアたちが多くの敵の目を欺けば『月下美人』雪村 沙月(p3p007273)が、既にビルの付近にいる敵を打ち倒さんと跳躍する。
見つけたのは警備ロボットが一つ。しかしそのロボットは彼女に向けて背を向けていた――その理由は。
「幻影に惑わされますか。
臨機応変にまで対応しうる高度な知能を有していないのは、幸いでしょうか」
沙月が事前に用意していた幻影に、ロボットが引き寄せられていたからだ。
それは一分程度の動かぬ幻……殴りかかって感触がなければロボットも事態を察するだろうが、その一瞬程度でもいい。刹那に見うる隙を突く沙月の一閃は、まるで舞が如く。
流れる様な所作から掌底一撃。そのまま腹部に肘を入れ、勢いのままに背筋にて衝撃。
鉄山靠。加えられる連撃がロボットの身を大きく崩れさせて。
「ふむ。元は練達を護る善き存在だったのだろうが……やむを得ん事だ。許せよ」
「機械ごときに人間が負けてたまるか――さぁ行くぞ! 人間の力を知れッ!」
更に奴が態勢を立て直す前にグレイシアとヨハンも追撃する。
剛撃。そう表現しうる程の壮絶たる直死がグレイシアより放たれ。
秘めた力を解放せしヨハンの荒々しき一撃もまた――ロボットの身を抉れば。
「おぉ……! 凄まじい力だ! これなら……!」
「みんな! 近くにロボがいないから今から避難するけれど――じっとひと固まりになっていてね。安全を優先しながら、シェルターまで行くよ。先行隊が障害を取り除いてくれるし、漏れた障害はわたしたちが片付けるから安心してね」
救助対象の者達の中にも安堵の感情が見えてくる者がいるものだ。
彼らに安心してもらう為にもと、死力を尽くし機を見定め、先手を打った甲斐があったか――沙月にしろヨハンにしろ彼らに安心感を与えるのは大事であると思考をしていた所であった。そして、安全が確保されれば移動の為にと言葉を重ねたのはルアナだ。
周囲の状況を、まるで俯瞰するが如き観察眼にて常に把握しつつ前を進む。
未散達の引き付けが功を奏してか裏口側の制圧に関して、敵の数が多くなかったのは吉であった……が、まだまだ油断は出来ないのだから。敵が存在しないか捜索の力を重点的に。
「皆様、落ち着いて、ついてきて、ください……っ!
大丈夫、ですっ。こちらの方には、暴走している個体は、いないようですから……!」
そしてそれはフローラもだ。彼女は市民に随行しつつ――薄暗き箇所も見通し、なおかつ壁を透視する術を用いて周囲を警戒。遮蔽物の先すら見通せる目があるのであれば索敵としては十分以上の効果があったと言えるだろう。
「……後は、いざという時の為に、身を隠せる場所でも、見つかれば……とッ!」
瞬間。市民を護衛しやすい場所がないかとも探していたフローラは気付いた。
――敵だ。空中を舞うドローンと、地上を往くロボット達がこちらに接近している。
しかもドローンの中には手榴弾搭載型もいる程だ……!
「まずい、ですね。あれを放たれれると、皆さんが巻き込まれるかも――」
「じゃあ……先にこっちが壊して、みんなを、助けるの」
故に。アクアは機械の襲撃に備えるべく動くものだ。
それは丁度アクアが警戒していた方面でもあったが故に、彼女の動きは速かった――
生きているなら撃つロボット? そんなの、例え機械でも絶対に許さない。
――『誰でも良い』などという許しがたい理不尽は、絶対に。
「何も悪くない、ひと達は、撃たせない……! 絶対、絶対に……止めるよ……!!」
故に。喉の奥に引っ掛かった様な――何色とも知れぬ感情は飲み込んで。
彼女は穿つ。片腕に出来た黒き結晶を槍の如く形成しながら。
恐怖を与えてくる対象を――殴りつける様に。
●
aPhoneより連絡を受けた未散は、味方の現在地を目指していた。
ジェットパックも用いれば上空から敵の動向を監視も出来るものだ――故に急ぐ。全霊をもってすればドローンですら置き去りに出来る程の動きが彼女には可能であれば、合流の速度も凄まじい。
「さて――では混ぜていただきましょうか」
で、あればと。視界の先に見えたドローンへと――雷撃の如き一閃を。
移動と移動。ヒット・アンド・アウェイで攻撃の都度に距離を取らんとして。
「よし。更に味方が来たぞ! このまま押し切る――フルパワーで行かせてもらおうか!」
そして。未散を見て『援軍が来た』のだとヨハンは大声で周囲に伝えるものだ。
これもまた一般人たちの安心と希望を湧きたたせるため。パニックにならないように少しでもメンタルを保たせようという配慮だ――ある程度の傷は治療できるが故に、動きが鈍らない様にする事こそが肝要。
故に彼は一般人達を護り得る最終防衛ラインの様にすぐ傍にて奮戦する。
亡霊の慟哭が敵だけを狙い定めて穿つのだ。
耐久面に不安のあるドローンは纏めて攻撃されればバランスを崩す者が多々であり……
「大丈夫。絶対まもるから! 頭を低くしながら進んでッ! 絶対に止まっちゃダメだよ!」
「――そうだ。これは『悪い夢』だと思うのだ。
明日を迎えれば消えてなくなっている一夜の夢だと」
更にそこへ間髪入れずに撃を成すのがルアナとグレイシアだ。
崩れた敵陣にルアナが注意を引き付けながら斬撃一閃。地上に叩き落すばかりに薙げば、グレイシアが狙うのは、その地上にて阻まんとする警備ロボの方だ。
小さなドローンよりは巨体のソレを相手に紡ぐは三撃。
息をもつかせぬ――無論、ドローンと異なりそれなりに丈夫な身であれば一撃では終わらぬもの。衝撃に耐えきるロボが警棒をグレイシアの腹部へと横薙ぐ一閃を繰り出す――
激痛。されど、グレイシアも砕けぬ。
――仕事の後の褒美を約束しておきながら無様は晒せぬ。
「では。これまでの暮らしを守るために、心の平穏を護るために」
あと一手をと。振り絞る力から放たれた一撃が――警備ロボを頭より砕いた。
「わ、わわわ! みなさーん! こっちに、こっちに来たら危ないですのー!
まずは、このドローン達を、落としてから、行きましょうですの!」
と、その時だ。響いた声は――ノリアの声か!
ノリアは少し高い建物の上にいる――が、そこにはなんと複数のドローンに銃撃されながら追われている彼女であった。如何に不朽の如く体力がある身といえど流石に不利は否めなかったか。銃撃が幾度もノリアの身に放たれる様子が見て取れるモノ。
一般人を引き連れるイレギュラーズ達に声を掛けたノリアであれ、ば。
「纏わりついている、ドローンを、倒しましょう……!
ノリアさんも、一緒に、合流して、シェルターの方へ……!」
「撃ち落として、あげるよ……! そこから、どいて……!」
フローラとアクアが、ノリア周辺にいるドローンを狙い定めるものだ。奴らの銃撃は蜂の様に小さな、しかし確実な痛みを伴うものであれば見過ごしてもいけぬ。不可視の刃が如き、追い詰める一撃をフローラが放ちて。アクアもまた――多量の水にて敵を制圧せんばかりに。
さすればドローン達の身がまた揺らぐ。不安定になった態勢を立て直すのに微かな隙が出来……しかし。その内の一体が辛うじて波より逃れ――反撃のグレネードを放つ。
射出。着弾。炸裂。
――ノリアが事前に声を掛けたが故に一般人への被害はなかったが、代わりにイレギュラーズ達を吹き飛ばさんとする衝撃が発生する――アクアの足元付近にて爆発したソレは、はたして。
「――ただのガラクタ風情が!」
だが。彼女は爆炎の中より出でる。
されば同時――身に纏う漆黒の炎が猛々しく彼女に追随。
それは彼女の怒り。感情の一端。吹き出る意思――
「とっととスクラップになれ! なれないっていうなら……手伝ってやるよッ!!」
故、なれ、ば。
猛攻。完全に破砕せんとする猛攻がドローンに襲い掛かるものだ――
粉微塵にしてくれよう。歯車一片たりとも残すものかと、激しき衝撃音が鳴り響いて。
「わたしも、みなさんと一緒に、戦いますの……!
散々、銃弾を撃ち込んで、くれましたお礼、ですの……! 熱水噴出杖……ゆきますの!」
「これでドローン達はもうほとんど残存は居ない筈だ――潰すぞ!」
その動きと共にする様にノリアもヨハンも反撃に転じるものである。
ノリアが高温高圧の熱水流を顕現召喚。
ドローンに直撃させ――ヨハンの号令が傷を癒し活力を齎して。
「――ドローンはこれで相当数仕留めた筈。後は」
直後。爆炎の中より躱し、飛び出してきたのは、沙月だ。
彼女が見据える先にあるのはドローンではない。ノリアが引き付けていた個体達も壊滅状態に陥ったのであれば……後は残っている警備ロボのみ。警棒振りかざし襲い来るソレは一般人が受ければ腕など容易に砕けよう。
故に。
「ご安心を。私達が必ず守り通しますので」
沙月は避けぬ。沙月は退かぬ。
警備ロボに真正面から相対し――己が武技にて制圧せん。
市民を不安にはさせぬ。希望は必ずあるのだからと……紡ぐ掌底、貫手二閃。
それは三撃を展開する剣技の如き徒手の輝き。
『ギ、ギ――』
「ひ、ひぃ!」
されば、分かたれる。ロボの上半身と下半身が両断される様に。
――だが微かにロボはまだ動いていた。
上半身だけとなったロボが一般人を見据え、最後の一撃を――
「おや。まだしぶといのは流石ですが……
その仕事熱心ぶりはマトモな時に発揮してほしかったですね」
紡ごうとした、その時。
未散が直上より飛来する。雷の様な輝きと共に蹴撃を叩き込めば――ソレを足場にした続けざまの跳躍で、近くに居た一般人を抱えて逃げる。さすれば最早どう足掻いても手の届かぬ所へと……
意地汚いでしょう、醜いでしょう?
――目を逸らしていたいのは山々ですけど今日ばかりは意地汚く行きましょう。
「では、おさらばです」
直後、爆散。
最後の警備ロボが火に包まれ――そして見えてくるのはシェルターの入り口だ。
「おっと……その前、に……全員ちゃんと、いる……?」
「伏兵――の類はもういないだろうけど、一応周囲も警戒しないとね」
さすれば。そこへと皆を誘導する前に人数確認をアクアが。
そして予期せぬ敵影がいないかとヨハンが警戒を行うものだ――
情報通りであれば最早いない筈だが油断は禁物と。
「ご安心ください。この先で既に避難済みの方々とお待ちいただければ、やがて終わります」
「そうだよ。だから――安心してね!」
同時。沙月とルアナは生存者たちに最後の声をかけるものだ。
――必ず、また元通りの日常はやってくると。
励まし、希望を指し示して……
さすればフローラは思考する。
隠れて閉じこもっているだけでは道は開けないのだと。
みっともなくても……歩けるうちは、歩かなくては。
「一歩を、踏み出すのです。私も……イレギュラーズ、として……!」
心臓の鼓動は鳴りやまず。
けれどそれは、はたして不安や焦燥の類故なのか。
それとも自ら事を成し遂げることが出来た高揚であったのかは――さて。
彼女が歩き続けていれば、いつか分かるかもしれぬ事であった……
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ。
皆様のおかげで多くの市民の命が助かりました――
ありがとうございました!
GMコメント
●依頼達成条件
市民(救助対象)達を無事に避難用シェルターに逃がす事。
●フィールド
練達の一地区『希望ヶ浜』の一角です。時刻は夕方。
ロボットが押し寄せ、逃げてきた住民がビルに立て籠もっています。しかし裏口の一角が塞がれていないようです――今更バリケードを築く事も出来ませんし、そこから生存者と合流して、避難用シェルターへと導いてあげて下さい。
避難用シェルターは南側の方に存在しています。
周辺はビル街で、大きな建物なども多いです。
が、他に一般市民や生存者の類は居ないようですので、後述の救助対象以外の一般人などは気にしなくて構いません。
ただ暴走しているドローンなどが沢山いますので、注意してください。
●敵戦力
・飛行型ドローン×15
常に空中を浮遊しているドローンタイプです。
銃撃を行う事が可能な様であり、生存者を見つけると遠方からでも容赦なく銃撃してきます。反応、機動力に優れ数は多いようですが耐久力が低いようで、攻撃を受けるとすぐバランスを崩したりします。
また、この中は三体だけグレネード(物理範囲攻撃)を放ってくる攻撃力が強いタイプがいる様です。
・警備ロボット×5
飛行型に比べて数は少ないですが耐久力に優れており、接近戦に優れます。
巨大な警棒を所持しており、二人同時にブロックする事が可能な様です。
飛行型ドローンと異なり遠距離攻撃の類は無いようです。
●護衛対象
・市民×10名
練達に住まう住民です。戦闘力は無いようで、建物に避難していました。
彼らを戦域から離脱させることが今回の目的となります。
突如訪れた恐怖に怯えてはいますが、皆さんの指示には従ってくれます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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