PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<濃々淡々>めざめぬひと

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●雪初めて
 桜の精霊たちも寝かしつけたなら、次にやることは決まっている。
 春を迎えるまで眠っている桜の精霊達にかわって、この世界を見守る精霊達の存在が必要なのだ。
「さて、仕事の続きをしようか」
 絢がただの飴屋でありながら、名前を持ち妖の中でも力を持つ理由。それは、世界が円滑に動くための協力を惜しまないからなのだ。
 ただの化け猫などこの世界には吐いて捨てるほどいる。そのなかでも絢は運のいい化け猫なのだ。その分、苦労も多いのだが。その証拠に、最近は気の休まるときが無い。というわけで少々お疲れ、本業だったはずの飴屋はいったん休業なのだ。
「今日は、ええと……」
 どこからか届いた地図を読みながら、ふらふらと歩いていく。
「ここ、かな。結構寒いなあ……」
 猫らしい、というか。寒いところが苦手なのだ。くしゅんとくしゃみをしながら、絢が足を進めたのは、彼の目的である雪の精霊──雪童子たちがそこにいるからなのである。
「もしもし。ごめんください。雪童子の住処は此処であっているかな?」
「はい、あっていますよ!」
「あなたはどなたですか?」
「おれは絢。君達を迎えに来たんだ」
「ああ、もう冬でしたか。ここはずっと寒いので……って、おにいさん?!」
「あはは……寒くて、少し、休ませてほしいな……」
 ぱたりと倒れた絢。雪童子たちが掌を額にくっつければ、彼は高い熱を出しているのがわかった。
「みんな、あったかいもののじゅんびをしてください。それから、かれのおむかえを!」
「うん!」「わかった!」

●低体温症
「あ、お前さん、あの黒猫を……絢を知らねえか?」
 傘を持った男があなたをみつけると、かけよってきた。首を横に振ると、男は悪態を隠しもせずに舌打ちをして。
「あいつ、俺に注文をしておきながら失踪しやがったのか」
 曰く、その絢といわれる男が失踪したのだという。そういえばこの世界の境界案内人だったような。
「おい、あんた。ちょっとでも知ってるなら、あいつをひっつかまえてきてくれ。俺だって暇じゃないんだ、いつまでも商品を握っておくのはこまるんだよ!」
 はい、これ。と、押し付けられた傘。おそらく絢が注文しておいたのであろう、薄い水色の番傘だ。
「これをもってけ。雪が続いてるからな、これさえあれば雪なんてへっちゃらだ」
 そういえば、雪のあるところにいくっつってたような。男はぶつぶつと呟きながら、その姿を消してしまった。
 致し方ない。絢を探しに行こう。

NMコメント

 冬になりましたね。鍋が食べたいです。

●依頼内容
 絢を見つける

 絢は雪山で意識を失ってしまったようです。迎えに行ってあげましょう。
 道中は険しいですが、雪童子たちの住処まで無事に辿り着くことができれば依頼は達成です。

●ロケーション
 鏡の山

 雪が降り積もる山です。煌めく雪が人を惑わせることから鏡の山と呼ばれています。
 奥には雪童子と呼ばれる精霊が住んでいるようですが、人間たちにはあまり知られていません。

●世界観
 和風世界『濃々淡々』。

 色彩やかで、四季折々の自然や街並みの美しい世界。
 また、ヒトと妖の住まう和の世界でもあります。
 軍隊がこの世界の統制を行っており、悪しきものは退治したり、困りごとを解決するのもその軍隊のようです。
 中心にそびえる大きな桜の木がシンボルであり神様的存在です。
(大まかには、明治時代の日本を想定した世界となっています)

●絢(けん)
 華奢な男。飴屋の主人であり、濃々淡々生まれの境界案内人です。
 手押しの屋台を引いて飴を売り、日銭を稼いでいます。
 屋台には飴細工やら瓶詰めの丸い飴やらがあります。
 彼の正体は化け猫。温厚で聞き上手です。

 日頃の疲れがたまったのか、雪も合いまった低体温症で倒れてしまいました。
 雪童子たちの献身的なサポートにより、今は熱も落ち着いたようです。

●雪童子
 冬の間、桜の精に代わって世界を見守る精霊。
 普段は鏡の山にいますが、冬の間だけ街に下りてきます。

●サンプルプレイング
 さあて、あいつを迎えに行ってやるとするかね。
 この傘もあればいけるだろ。まってろよ!

 以上となります。ご参加をお待ちしております。

  • <濃々淡々>めざめぬひと完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年11月21日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
メルバ・サジタリウス・サーペンタリウス(p3p007737)
自称パッショニスタ
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切

リプレイ


「ええっ! 絢さんが帰ってこない!? 雪山にいったまま!?」
 素っ頓狂な声を挙げ、『自称パッショニスタ』メルバ・サジタリウス・サーペンタリウス(p3p007737)はおろおろあわあわと忙しなく動き回った。
「大変! 早く迎えにいかないとっ!」
「絢様、一体どこに、行ってしまったのでしょう」
 とても、とても。不安だと、呟かずとも。『うさぎのながみみ』ネーヴェ(p3p007199)は不安げな表情をして、荷物を用意して。
 聞いたところによると、雪山にいくとの情報を残し音信不通。明らかに遭難している。もしかしたら、今はもう氷漬けのしたいかもしれない。ネーヴェはみるみる顔を青くして、悪い想像を頭から追いやった。
「優しい絢くんの事やから、いつも向こう見ずで……誰かのために一生懸命頑張ってしまう事が多いやろうねぇ……」
 傘屋から手渡された傘を見、俯いて。黒髪が揺れた。其れは、友の為に。
「……はよ迎えに行ってあげましょ、善は急げや」
「ああ。其れじゃあ、往こうか」
 小さく頷いた『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)を先頭に、雪山への旅路は始まった。


 其々に赤を纏い、雪山への道程は開かれた。鏡の山。煌めく雪が降り注ぐ大地。
「雪山は迷いやすいし、崖が雪に隠されてたり…危険が多いから慎重に進もう!」
 メルバの明るい声掛けに一同は頷き。降り続く雪を傘で凌ぎながら、白い世界を進んだ。
 松明の灯りで道を照らせば、屹度彼が見つかるような気がした。掲げれば己の心まで奮い立たせてくれるような気がして。
「絢様……絢様!」
 手首に赤い布を巻いたネーヴェの感覚を頼りに、声かけに対しての応答があるかを探る。が、其の耳には、絢の声は届かない。蜻蛉の金色の瞳にも絢の姿は映らず、助けを求める姿は見当たらない。
「絢くん、どこにおるの! また美味しい飴ちゃん食べさせて貰わんと、元気出んのやから!」
 紅が雪にさらわれる。其れでも。まだ。諦めたくはないのだ。
 銀雪降り積もる世界。生きているのならば。鼓動波うち、吐息を漏らしているのならば、声を。否、声などなくとも構わない。助けを求めているのなら、いつだって力になりたいのだから。
 託された傘の下。寒さが奪われることは無く、かじかんだ手をこすり合わせれば、仄かにあたたかくなる気がした。
(……何か、おまじないがされてるんやろうね。絢くんのことやもの)
 ふ、と笑みが零れた。此れは、早く元の主の元へ届けなくては。

「ねぇ、此れってお酒?」
 アーマデルがざくざくと道を切り拓いていた最中、酒蔵の聖女が甘ったるくアーマデルの耳に囁きかけた。頷き示し、酒の入った瓶を掲げれば、酒蔵の聖女はきゃらきゃらと声を挙げてはしゃいで。
「身体を温めるやつだ、俺はまだ飲めないが」
「ふうん……!」
「だから酒蔵の聖女、これはあんたのじゃないぞ…!」
「え~? だめなんっすかぁ? でも此れくれたら、ちょこ~っとだけ力を貸してあげなくもないんっすわぁ?」
「……」
 其れは、少々なりとも、否、だいぶ魅力的な提案だ。
「…仕方がないな、少しだけだぞ? その代わり、気合入れて仕事して貰うからな?」
「嬉しいっすわぁ、張り切っちゃいますわぁー」
 くんくんと酒の匂いを嗅ぎ、舌なめずりをして。其の力を存分に振るうべく、酒を舐める。
「……さて、俺も仕事をするかな」
 霊魂操作。あまり考えても心地の良いものではないが、此の雪山で嘗て命を落としたであろう人々の声。
「……黒猫の男を見なかったか」
 霊達は答える。指さし示し。礼をすれば、気にすることは無いと手を振って。
「どうやらあっちみたいだな」
「おっけー! じゃああたしは空から探してみるね」
「吹雪いてきてるから、気ぃつけてね」
「大丈夫! それじゃあ、いっくよーっ!」
 大きく翼をはためかせれば、雪すらも越えて。
「おぉい! 絢さぁん! 迎えにきたよぉ!」
 メルバが睫毛に乗る白い雪を払い、瞳を開けたその先。

「────あった!」

 人里離れた、隠れ里。
 屹度其処に彼が──絢が、居る。


「あの……此処に、絢様は、いますでしょうか」
 おずおずと尋ねたネーヴェ。不安気な顔をしたネーヴェ。蜻蛉がそっと肩を叩き、頷いて。
「黒猫の男の人なんやけど……」
「背が高くて、いい意味で気の弱そうな!」
「それから……嗚呼、飴職人だ。手がぼろぼろだったりした男はいないか?」
 メルバが。アーマデルが。隣に並べば、雪童子たちはわらわらと足元に集い、頷いて。
「きっとあのひとのことだよね?」
「でもねこさんじゃないから、かぞくではなさそうだ」
「いいや、ねこさんもいるけど……でもそうじゃなくって!」
「とりあえず、おむかえにきたのなら、あがってもらうのがいいんじゃないかな」
 雪童子のひそひそとした声が、氷の国に響き渡る。茅葺の屋根。氷の柵。
 おずおずと一歩前に出た雪童子のひとりが、四人を手招いた。
「ええと。ぼくがご案内します。さ、此方へ!」


 雪童子に案内された先。すうすうと穏やかに寝息を立てて眠る絢の姿。
「此方のお方で間違いありません、よね?」
「はい、……はい!」
 こくこくと頷いたネーヴェ。ひとまずは、依頼達成だ。
「雪童子ちゃんたちのおかげで体調も安定したんだね…良かった…」
 一等大きな其の家で、暖かい布団の中で。隣には鍋を用意し、いつ絢が起きたとて食事が出来るようにしていたのだろう。
 額には丁寧に布が置かれ、彼の恐らくは高かったのであろう熱に対する手厚いケアの様子がうかがえた。
「無事で良かった…息災とはいかないようだが」
 はぁ、とため息を吐いたアーマデル。だが其の顔に浮かぶのは呆れではなく苦笑。どうしようもないことだと解っているからこその。
「……あ、れ? 皆が居る……?」
 ぼんやりと身体を起こした絢。慌ててネーヴェが駆け寄った。
「怪我は? 具合は? もう何事もないですか?!」
「ね、ネーヴェ?! ちょ、ちょっと!」
 身体を冷やすからと持ち込んだコートを肩に羽織らせて。気迫すら感じられるネーヴェの様子。どうやら何も理解していないようだ。
「どうしてみんなが此処に……?」
 薄く首を傾けた絢。困ったように笑った蜻蛉は、ことの発端をかいつまんで話しはじめた。

「……ほんっっっっと、ごめんね」
 耳を、尻尾をしゅんと下げて。申し訳なさそうに、否、本当に申し訳ないと思って居るのだろう、酷く落ち込んだ絢の姿が、其処には有った。
「大切な友人を……大切な人を、失うのはもう勘弁ですから。気を付けて、ください、ね?」
 ぷう、と頬を膨らませたネーヴェ。絢は頷いて。
「ネーヴェもごめんね。心配をかけたし……寒かっただろう」
「そんなことよりも、お熱を下げることのほうが、大事、です!」
 もうっ、と、己のことよりもネーヴェの心配をする絢。ネーヴェはふてくされた様にそっぽを向いて。
「それにしても、ほんに……無事で生きとってくれて良かった。ひやこおなった絢くんとご対面やなんて、うち……そんなん嫌よ?」
 絢の分も用意しておいたのだという温かい手袋。絢は嬉しそうにはにかんで。
「ありがとう、蜻蛉。おれ、なんとか生きてるみたいだ」
「体調管理もしっかりせなあかんよ。絢くんが倒れたら、皆心配するんやから」
「はぁい……注意するね」
「約束よ?」
「うん」
 ぐつぐつと煮えた鍋をよそっていたメルバは、溌剌と笑った。
「麓まではあたしが背負って帰るよ! 背が一番高いし」
「……さ、さすがにそれは」
 一応は男なのに、と困ったように頬を掻いた絢にメルバは首を横に振って。
「まだまだ病み上がりだから無理しちゃダメだよ! ほら、あったかいもの。用意してもらったんだから、食べて元気になって!」
「うん……それじゃあ、お言葉に甘えて」
「仕事は大事だ、だが、健康はもっと大事だ。ほら」
 アーマデルがとりわけた鍋を、五人で一緒につつく。しょうがたっぷりの、身体あたたまる味。
 身体も温まり、絢も幾分か体調がよくなって。すぐに動こうとする絢を窘めて。
「…ね、絢さん」
 メルバが、思い出したように声を挙げた。
「なんだい?」
 きょとんと、首を傾けた絢。ふふ、と笑ったメルバは、茶目っ気たっぷりに笑って。
「あたし、また、絢さんの飴が食べたいな!」
「うん? それくらい、いつでも」
 ちっちっち、と指を横に振って。メルバは続けた。
「そのためにはいつまでも元気でいてほしいから、もし困ったことがあったらいつでもあたしたちを呼んでね!」
 ね! と語尾を主張して。
 笑顔を浮かべたメルバ。頷いたネーヴェ。くすくす笑った蜻蛉。穏やかに佇むアーマデル。
「……うん、わかった」
 絢は頷いた。
 己にはこんなにも頼もしい仲間がいるのだからと。
 だから、もう気負う必要はないのだと。

 吹雪いた鏡の山。手探りで進んだ銀雪の世界。
 寒く、凍てついてしまいそうな気温の中でも。確かにそこに、絆は有ったのだ。

成否

成功

状態異常

なし

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