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シナリオ詳細

<Noise>再現性東京2010:闇の中の凶手

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●仮想と現実
 R.O.Oに生じた異変は、現実の練達全体に広がりつつあった。
 停電やネットワーク障害、信号機の混乱など、希望ヶ浜の住民たちの日常にも支障が出始めている。佐伯製作所は、『何らかのネットワーク攻撃を受けている可能性』を示唆しているが、住民の困惑は大きい。
 異変に晒される希望ヶ浜では、悪性怪異――夜妖<ヨル>の動きも一部で活発化していた。

 希望ヶ浜の某所にあるアーケード商店街。多くの客で賑わうその場所でも停電が頻発し、住民たちを悩ませていた。
 帰路に着く多くの客がアーケードの中を通行していたその日も、辺りは一瞬で暗闇に包まれた。何度目かわからない原因不明の停電に、悲鳴をあげる者、嘆息してぼやく者の声があちこちで聞こえる。携帯端末のバックライトを利用し、光源を確保する者の多くは再び帰路を急いだ。その暗闇の中に、人ならざる者が紛れているとは誰も思わずに――。
 日常茶飯事と化していた停電の最中、その存在に気づいたのは1人のサラリーマンだった。その男性が最後に見たのは、真っ暗な闇の中で異様にくっきりと浮かぶ目。恐ろしいほどに血走り、濁った目が男性を捉え、男性は腕をつかまれた瞬間に硬直し、その場に倒れた。
 薄れゆく意識の中で、男性は気づいた。闇の中に浮かんでいるように見えた目の主は、炭のように真っ黒に焼け焦げた体をしていた。
 闇の中に溶け込む夜妖は、停電が解消された頃には姿を消していた。

●暗闇の中で
 停電直後、男性1人が感電死している姿が発見され、件のアーケード商店街はウワサの的となった。しかし、感電死の原因は究明されないまま、間もなく営業は再開された。
 怪異との因果関係を懸念して、カフェ・ローレットを通じて招集されたイレギュラーズ一行の姿がそこにはあった。アーケードの下の人通りはそれほど減ることもなく、帰宅する学生やサラリーマン、買い物をする主婦の姿など、日常の風景が繰り返されるように思われた。だが、またも停電の瞬間は訪れ、いくつもの悲鳴とどよめきが起こる。
 各々が光源を手にし、暗闇に包まれた周囲を照らそうとした。
 周囲一帯の地域ごと停電しているらしく、深い暗闇の中で照らすことができる視界は限られている。そんな中、イレギュラーズは強い悪意に似た不穏な気配を感じ取る。同時に、複数の影が闇の向こうで揺らめく。
 石畳の道を擦る靴底の音が、徐々にイレギュラーズへと近づいてくる。その音を頼りに照らした先には、ゾンビのように虚ろな目で並び立つ通行人の姿があった。
 イレギュラーズに危害を加えようと手を伸ばす、老若男女様々な一般人たち。鈍重な動きはゾンビそのもので、到底イレギュラーズを捕らえられるものではなかった。
 自身の意思で行動しているとは考えにくい一般人の凶行。これも夜妖の仕業なのか――?
 限られた光源によって照らし出されたのは、何人もの手首に目立つ火傷の跡――そして、一瞬の内に閃いた、闇夜に浮かぶ不気味な目だった。

GMコメント

●R.O.Oとは
https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。


●成功条件
 最低限の条件は、夜妖を排除すること。くわえて、一般人の救出もできれば望ましい。

●戦闘場所について
 日没後、アーケード商店街の中。
 周辺一帯は停電しているため、通常の目視で相手を捉えるのは困難。
 ローレットから懐中電灯、もしくはヘッドランプが全員に支給される。ただし、レンジ1の範囲外にいる相手に対処する場合は、マイナス補正を受ける。
 停電状態がいつ復旧するかは運次第。強運力(クリティカル)が最も高い方の数値を成功値とし、ターンを終えるごとにGMがダイスを振って判定します。数を重ねるごとにプラス補正ありで、成功するまで続けます。

●一般人について
 夜妖の能力によって操られている一般人は10人。
 戦力としては激弱だが、夜妖が肉壁として利用する恐れあり。夜妖の感電攻撃によって気絶している状態。意識を取り戻せば、夜妖の能力から開放されるかもしれない。つまり、HPを××させれば……。

●夜妖について
 真っ黒に焼け焦げた焼死体のような見た目。暗闇を利用して攻撃を行う。触れた相手を自在に感電させる(神至単【感電】)ことができ、任意の暗がりからガラスのような刃を飛ばす(神中列)能力も有している。


 個性豊かなイレギュラーズの皆さんの参加をお待ちしています。

  • <Noise>再現性東京2010:闇の中の凶手完了
  • GM名夏雨
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年11月30日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)
神殺し
砂蕨 茉莉(p3p008570)
新しい世界で
山本 雄斗(p3p009723)
命を抱いて
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標

リプレイ

 危惧されていた停電と共に現れた夜妖。暗闇の中でも目が利く『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)は、周囲の異変に気づいて毛を逆立てた。
「ぞ、ゾンビ?! こわい……」
 意識を失った状態で操られている一般人の様子を見て、リュコスは言った。更にリュコスは、一般人の中に紛れるようにしてこちらを見つめる夜妖の姿に気づいた。
「ぴえ……まっくろこげな上にまだ動いて……うええ……」
 リュコスが思わず焼死体そのものの見た目の夜妖から一瞬目をそらすと、夜妖はその姿をどこかにくらます。
 ――こわいけど……それでも、助けないと……。
 リュコスは自身を落ち着かせるように言い聞かせ、驚いた弾みで飛び出してしまった狼の耳をしまう。そして、状況を正確に把握するために、五感を研ぎ澄ますことに集中した。
「フラッシュ! 皆と協力して、一般人の回収の方に回れ!」
 そう声を張り上げる『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)も、暗闇の中を不自由なく動き回れる視界を有していた。葵たちをサポートするために駆けつけた閃洞 光――通称『フラッシュ』は、葵の指示にはつらつと答えたが、
「任せて、キャプテン! ……って何アレー!?」
 懐中電灯で暗闇を照らした光は、ホラー映画のような光景に面食らう。光が自分自身を落ち着かせている間にも、葵は夜妖に対し行動に出る。
 一般人の向こうへと回り込む葵は、暗闇と同化する夜妖の輪郭を捉えた。迅速に夜妖へと迫った葵は、ガントレットをはめた拳から鋭い一突きを放ち、夜妖をけん制する。
 明確に敵意を向けられた夜妖は、葵に対して身構える。夜妖に向けて拳を掲げる葵は、一般人に手出しをさせないように目の前に張り付き、動きを阻むことに傾注した。
「R.O.Oの動乱が現実の練達に伝わってこの騒乱――」
 『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)は支給されたヘッドランプの明かりを頼りにしつつ、取り憑かれたように腕を伸ばす一般人の動きに目を凝らす。
 注意深く周囲の様子を見定めながら、エーレンはつぶやく。
「――あっちが安定すれば収まるものだと思いたいが……ま、踏ん張りどころだな」
 暗闇の中、どこからかチッチッと舌を鳴らす音が響く。それは音の反響から物体の位置を把握するために、『新しい世界で』砂蕨 茉莉(p3p008570)が発しているものだった。茉莉は聴覚も駆使することで、夜妖の位置を正確に把握することができた。
「ロール、チェンジ!!」
 その掛け声と共に、『燃えよローレリアン』山本 雄斗(p3p009723)は瞬時に武装したヒーロースーツ姿に変身を遂げていた。更にサイバーゴーグルを装着した雄斗は、暗闇に怯むことなく夜妖の姿を捉える。
 一般人を飛び越えるようにして夜妖の前に降り立った雄斗は、
「これ以上お前の好きにはさせないぞ、僕が相手だ」
 葵と同様に夜妖を引きつけることに傾注する。
 ――い、一般の人達を操るなんて、イヤらしい手を使ってくる夜妖ね……!
 夜妖に操られる人々、ゾンビのように虚ろな眼差しを前にして、『比翼連理・護』藤野 蛍(p3p003861)は一歩身を引いた。しかし、全員を助け、夜妖も打ち倒すという強い決意を持って、蛍は奮い立つ。
「いきましょう、珠緒さん!」
 蛍の言葉に快く頷いた『比翼連理・攻』桜咲 珠緒(p3p004426)は、蛍と共に戦線に加わる。
 人々の正気を取り戻すためには、治癒の能力が鍵となるはず――同じ考えを共有する『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)も、自らの能力を発揮しようと戦線に臨む。
 どちらかということもなく子どもらしい見た目でありながら、華蓮はあふれる母性を発揮する。
「大丈夫……悪い夢はすぐに覚める、すぐに皆お家に帰れるのだわよ」
 そう呼びかける華蓮は、自身の力を引き出すため、その澄んだ歌声を響かせる。
 苦境を打ち破る祈りが込められた華蓮の歌は、徐々に夜妖の影響を受けた人々を開放していく。
 脱力して座り込む一般人らの姿を捉えた夜妖の動きに反応し、目の前に進み出た茉莉は懐中電灯を向けながら、
「衛生状態が良くても清潔感ないと嫌われちゃいますよー」
 夜妖の血走った目を照らし、ライトの部分をチカチカと点滅させることで余計に煽る。
「みんなー! ここはあぶないよー。はやくひなんしてー!」
 暗闇で状況を理解できず、まだ周囲でざわつく通行人の気配を感じながら、リュコスは避難を呼びかけた。それと同時に、リュコスは自力で動けない一般人を、エーレンと協力してアーケードの外に運び出そうとしていた。
「大丈夫、安心しろ。安全なところに連れていく」
 感電させられ、意識朦朧とした状態の相手に声をかけながら、エーレンは魔法によって生み出された不思議な木馬に救出対象を乗せていく。
 葵、茉莉、雄斗の3人は、絶えず夜妖に張り付くことで、一般人に手出しできないようけん制を続けていた。
 夜妖は救出を阻止しようとする動きを見せた。しかし、夜妖の行動を巧みに遮る葵は、サッカーで培われた守備力を発揮する。夜妖は忌々しげに、闇の中で異様にぎらつく眼差しを葵に向けていた。
 夜妖が葵たちと睨み合う間にも、華蓮は癒しの力を持つ歌声を響かせる。その澄み切った歌声に魅了されるように、ゾンビのようにうごめいていた一般人は次々と動きを止めていく。救いの歌声を届ける華蓮は、後光が差すほどの神々しさに包まれていた――というように見えるのも、その後光の発生源は珠緒が操る能力によるものだった。
 一般人に向けて、神々しい光を放つ珠緒は言った。
「皆さんを包む闇は、私たちが払ってみせます!」
 光に包まれた複数の対象は、確かにその顔付きを変化せていた。
 珠緒と華蓮の働きによって正気を取り戻した者は、よろめきながらもエーレンやリュコスの補助を受けて離脱していく。
 操られる一般人を救うために行動する珠緒のそばで、蛍は珠緒を警護するように身構えていた。
 珠緒や華蓮の能力の影響が及ばない範囲から、ふらふらと目の前に飛び出す相手を認め、蛍は珠緒の盾になろうと進み出る。
 ――操られたとはいえ、誰かを傷付けた事実に後で心を痛める人達がいないとも限らないもの。
 闇雲に腕を突き出す相手を振り払う蛍は、自身が負担を負ってでも一般人からの攻撃を防ぐ構えだった。
 ――それなら、元から頑丈で傷付き難いボクが盾になっておけば、きっとお互いに心を悩ませずに済むわ。
  葵から一般人の対処を任された光は、
「ちょっと、大人しくして……うわぁ!」
 残る対象が珠緒たちの力の影響を受けるように、ゾンビ状態の相手をどうにか誘導しようと奮闘する。
 各々の働きが実り、イレギュラーズは多くの一般人の救出を達成していく。
 目論見通りに行かない展開に、夜妖はどこか焦りを覚えているようだった。目の前に立ち塞がる葵に攻撃を仕掛けるが、葵のガードを崩すまでには至らない。
 夜妖はイレギュラーズの注意を別に向けさせようと、姑息な手段に走る。
 ヒュンヒュンと空を切る何かの音を聞き取り、珠緒は蛍に警戒を促す。蛍のヘッドランプの光は、刃物のように鋭利なガラス片が暗がりから飛び出すのを照らし出した。その行く先を見極めた蛍は、ためらうことなくガラス片が飛んだ先へと滑り込む。
 自在にガラス片を飛ばす夜妖は、イレギュラーズの消耗を狙うように一般人に狙いを向けた。
「危険です! 夜妖を止めてください」
 珠緒は一般人への攻撃を阻止するように、夜妖に張りつく者らに向かって声を張り上げた。
 卑劣な夜妖に対し、雄斗は怒りに突き動かされるままに拳を振り向けた。夜妖は瞬時に迫った雄斗の一撃をまともに食らい、衝撃に包まれた体は勢いよく突き飛ばされた。
「これ以上罪のない人を襲うなら、僕たちが許さない!」
 両足をつけて踏み止まる夜妖に向けて、雄斗は言い放つ。 
 相手を射抜かんばかりに鋭い眼光を放つ夜妖の双眸は、そこだけ夜闇を切り抜いたように浮かび上がり、雄斗を凝視していた。
 夜妖の顔に向けて何度もライトをちらつかせる茉莉は、夜妖の怒りを一層煽る。
「私たちと正々堂々戦う勇気もないんですかー?」
 茉莉は挑発を繰り返しながら、さり気なく避難途中の一般人をかばいやすいように移動する。
 葵はガラスの刃を繰り出す夜妖を警戒し、一層神経を尖らせる。葵が救出対象の状況を把握しようとしたところで、珠緒からテレパスの能力による伝達を受け取った。
 避難を完了させた旨を知らされ、葵は本格的に夜妖に攻撃を仕掛けようと動き出す。
 葵が夜妖の目の前から飛び退いた瞬間、アーケード内は再び照明に照らし出される。停電からの復旧により、炭のように真っ黒な全身をした夜妖の姿も露わになった。
「もう……足止めは終わりっス!」
 夜妖に向けてその一言を発した瞬間、葵の右脚から強烈なシュートが放たれる。赤い輝きを帯びた葵のサッカーボールは、弾丸のように凄まじいスピードで夜妖の体を打ち倒した。
 咄嗟に防御態勢を見せた夜妖だったが、葵の一撃に耐え切ることはできず、石畳の上をバウンドするように転がった。
 照明の下で夜妖の全貌を捉えたエーレンは、膝をついて起き上がろうとする夜妖に向けて斬撃を放つ。エーレンの一太刀は、空間を切り裂く衝撃波となって夜妖へ向かう。膝をついて起き上がろうとしていた夜妖は、瞬時に飛び退いて身を翻す。
 エーレンの攻撃はわずかな差で夜妖の体に達し、その片腕に裂傷を刻んだ。夜妖の腕の一部は炭のようにボロボロと砕け散った。
「遅ればせながら……」
 攻撃を受けてもなお、身動ぎせずにエーレンを見据える夜妖に対し、エーレンは啖呵を切る。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。お前を守るものはもう何もない。覚悟することだ」
 夜妖は剣を構えるエーレンに躊躇なく迫り、エーレンの体に触れようと手を伸ばす。機敏に反応するエーレンは、執拗に自身を狙う夜妖をかわし続けた。
 リュコスも人狼の爪牙を以て夜妖を引き裂こうと、積極的に夜妖に攻撃を仕掛ける。
 獣の如く荒々しい動きで飛びかかるリュコスに対し、夜妖も隙のない動きで対処する。互いに一進一退の攻防を繰り広げる中、雄斗も夜妖を打ち負かそうと攻防戦に加わる。入れ替わり立ち替わり夜妖に向けて攻撃を繰り返し、リュコスと雄斗は反撃の隙を与えなかった。
 夜妖は攻防を繰り返しながら、攻撃の機会を狙っていた。不意に空気を切るような音がどこからか聞こえ、リュコスと雄斗は夜妖の狙いを察知する。
 夜妖は複数のガラスの刃を自在に操り、引きつけていた2人に向かって次々とそれは放たれた。
 放たれたガラスの刃は、急所をかばうように体をそらした2人の皮膚の上を浅くなぞる。夜妖は連続で周囲に刃を放ち、イレギュラーズを寄せ付けないよう立ち回る。
 ガラスの刃が飛び交う間にも、夜妖は妙な動きを見せた。体中をけいれんさせ、その真っ黒な体を何かが突き破る。夜妖の両脇腹からは新たな腕が2本生え揃い、地を這うクモのように身構えた。
 変異した夜妖の姿を見て、あからさまに表情を引きつらせたリュコスだったが、ガラスの刃に対しても俊敏に反応していく。
 夜妖は4本の腕をバネのように利用して飛び上がり、アーケード内の店の壁面の上を這う。一層クモのように縦横無尽に動く夜妖に向けて、葵は再度シュートを放つ。どこまでもカーブする葵のシュートは、鋭い一撃となって夜妖を捉え、壁面を這い続けていた夜妖を弾き落とした。
 落とされてもなお夜妖の立ち上がりは迅速で、地面を這う姿勢でありながら、恐ろしいほどの速さで葵に迫る。
 ――まるでホラゲーじゃないっスか……!
 葵は目を見張りながらも、クモ人間と化した夜妖にも冷静に対処し、腕や足をつかもうと這い回る夜妖の手から逃れ続ける。
 ひとりでに飛び出すガラスの刃は、葵を援護しようとする者らに向けて次々と襲いかかり、不気味に血走り濁った夜妖の双眸は、葵を捉えて離さなかった。
 蛍は果敢に夜妖の至近距離へと踏み出し、夜妖の注意を引きつけようと剣を振り下ろす。すでに有り得ない方向に関節を曲げ伸ばしている夜妖は、片手で蛍の剣を受け止める。その拍子に剣をつかんだ夜妖は蛍を感電させようとしたが、蛍は瞬時に剣に力を込め、そこから夜妖の手を切り崩した。
 攻守は目まぐるしく入れ替わり、夜妖は蛍に足払いをかける。蛍は受け身を取った体勢から夜妖の体を蹴り飛ばし、その弾みで体をスライドさせた状態から即座に起き上がった。ほんのわずかな間に態勢を整えた蛍は、隙のない構えを対峙する夜妖に見せつける。
 葵も夜妖から再度距離を取り、確実に夜妖を葬る一撃を狙おうと、機会を窺う。
 剣を構える蛍の周囲には、幻想的な桜吹雪と共に、激しく火の粉が舞い上がる。 蛍が生み出す光景、その能力によって夜妖の視線は引き寄せられる。
「どんなに狡猾な手段を使っても、負けはしないわ――」
 自身に見入る夜妖に向けて、蛍は言い放つ。
「ボクたちは、イレギュラーズなんだから!」
 一層激しい攻勢を示すイレギュラーズに対し、夜妖も反撃を繰り返す。特に攻撃の合間を縫うようにガラスの刃を飛翔させ、イレギュラーズの動きを阻むことに集中していた。
 蛍らが粘り強く食い下がる夜妖に挑む一方で、華蓮と珠緒は治癒の力を注ぐ自らの力を申し分なく発揮する。
「大丈夫……焦らず確実に、状況は私達に傾きつつあるのだわよ」
 華蓮はそう言って、すべてを包み込むようなその柔らかな歌声に癒しの力を込め、傷の治癒を促進させていく。
 イレギュラーズを執拗に狙い続けるガラスの刃は、途切れることなく夜妖の周囲を飛び回り、その攻撃や接近を幾度となく阻む役割を果たしていた。クモのように這い回る動きに衰えは感じられなかったが、イレギュラーズは訪れる反撃の瞬間を逃さず、果敢に戦いを掌握しようとする夜妖を阻んできた。
 確実に消耗しているはずの夜妖を追い詰めようと、雄斗は率先して拳を振り向ける。その動きに反応し、夜妖のガラスの刃は雄斗へと向かっていく。雄斗はギリギリまで攻撃を引きつけて身をそらそうとしていたが、不意にガラスの刃が音を立てて石畳の上に落下した。それを見た茉莉は、じわじわと夜妖を蝕んでいた自身の魔法が効力を発揮したことを確信し、ひとりほくそ笑む。
 ガラスの刃を封印され、夜妖はイレギュラーズからじりじりと後ずさる。エーレンは攻撃の機を逃さないよう、瞬時に身構えた。
 勢いよく振り下ろされたエーレンの剣は衝撃波を放ち、夜妖の側頭部を砕くようにかすめた。一見無防備に見えた夜妖は、攻撃直後のエーレンを狙うように瞬時に迫る。捨て身の動きを見せた夜妖は、地面すれすれを跳ぶようにして一気に距離を縮め、イレギュラーズにわずかでも報いるかのように狙いを定めた。
 茉莉はエーレンと腕を突き出す夜妖の間に滑り込み、夜妖の攻撃を阻むように立ち塞がった。夜妖は反射的に目の前に飛び出した茉莉の手首をつかみ、電流を送り込んだ。
 茉莉は感電によって全身が引きつる感覚に襲われる。だが、茉莉は強靭な意志によって突き動かされ、茉莉も夜妖の腕を力強くつかんだ。
 ――私を体の芯から痺れさせるファンくんの笑顔に比べたら、こんなの按摩にもなりませんー!
「推し活で鍛えた根性を、舐めないでもらいたいですねー!」
 茉莉は自身をつかむ夜妖の腕を決して離さず、夜妖をその場につなぎ止める。夜妖を拘束することで、茉莉はある狙いを果たそうとしていた。
 茉莉の視界の端には、すでに葵が放ったボールがあり、夜妖の死角に回り込むようにして急速にカーブを描く。
 茉莉と揉み合う夜妖は、葵の動きから完全に意識を逸らしていた。強烈な衝撃をまともに食らい、夜妖の上半身は大きく砕け飛ぶ。上半身がもげた夜妖は、人型を保てずに崩れ落ち、そのまま最後を迎えた。
 炭そのものの塊と化した夜妖の最後を見届けた蛍は、夜闇に乗じて現れた夜妖を思い返してつぶやいた。
「なかなか狡猾な夜妖だったわね――」
 ――文明がどこまで進んでも、闇は人に仇なす存在なのかしら。だから人は闇を光で満たすために、文明をますます発展させるのかな。

成否

成功

MVP

藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました。リアルでも東京とかで停電が発生した時期がありましたが、その出来事からもいろいろ連想しました。

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