シナリオ詳細
うなれ必殺! ジャージャー麵ェエエエン!!
オープニング
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「料理を極限まで極めたら、どうなると思う?」
唐突な問いに『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)は首を傾げた。
答えられないと悟った男――病院の入院患者バスクは、ベッドの上でも堂々と語る。
「料理を極限まで極めた奴は、神になれる」
大げさな、と笑い飛ばす事は出来なかった。
なにせこの『ハートフルキッチン』という名のライブノベルは、食を通じて人の心を揺さぶる事ができるお料理バトルの異世界なのだ。
魂をこめて料理を作れば超次元お料理漫画のような強めの幻覚を見る事になるし、語感がかっちょいい料理の名前を叫ぶとそれだけでエネルギー弾が撃てたりもする。
目の前のこのバスクという男も、前回のお料理バトルで特異運命座標が作り出した料理を食べ、病院送りとなっているのだ。彼の言葉には凄まじい説得力があった。
「神って、万能になれるって事?」
「嗚呼、そうだ。調理で国を滅ぼしたり、食レポで万物の真理を読み解ける。だから俺の記憶を捻じ曲げる事なんて、"アイツ"には雑作もない事だったんだ!」
悔しそうに拳を固く握るバスク。彼は初めて特異運命座標と敵対した時、自らを山賊と名乗った。
しかしその正体は――なんと、この世界の勇者だったのだ!
魔王にお料理バトルで挑み、敗北の代償として記憶を書き換えられた彼は、己の使命を忘れて山賊として長い年月を生きてきた。
「俺の目を覚ましてくれたのは、特異運命座標だ。アイツらの作った料理には、不思議な力があるに違いねぇ」
(まぁ、その料理を食べてお腹を壊しちゃったから、バスクはここに入院してる訳だけど……ポジティブに考えてくれてよかったぁ)
心の中でほっと胸を撫でおろす蒼矢に、バスクはずいっとベッドから身を乗り出して顔を近づける。
「ひっ!?」
「俺を救ってくれたアンタらに、折り入って頼みがある」
バスクは伝説の料理人の血を引く勇者だが、彼の力は大きく武器に依存している。
聖剣ならぬ聖包丁『マゴロクカリバー』――伝説の一丁は、魔王の配下である魔物たちが奪い去ってしまったのだという。
「頼む、俺の愛刀を取り返してくれ!」
「まぁ、僕の仕事はライブノベルの世界を収蔵できるようにハッピーエンドへ導く事だし……」
利害が一致しているなら、断る理由はなさそうだ。やれやれと蒼矢は溜息をついたのだった。
- うなれ必殺! ジャージャー麵ェエエエン!!完了
- NM名芳董
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年11月18日 22時35分
- 参加人数4/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
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悪魔の谷の底の底。不気味な瘴気が漂う中、モノリスめいた茶色いナニカが円陣を組んで喋りだす。
『勇者の洗脳が解けたようダ』
『となれば奴がこの谷に攻め入るのは必然』
彼らはこの地の全てを掌握するほど強力な怨念を抱く者達。パン耳の亡霊――その主格たるメンバーだ。
リーダー格の濃い茶色のサングラスをかけた霊が、ギラリとレンズを光らせる。
『好きに泳がせれておけばいい。丸腰の勇者など赤子もどうぜ――』
「U☆DOOOOーーーーN!!!」
どごがーん! と唐突に放たれた白い衝撃派が主格数匹を吹っ飛ばし、空の彼方へ飛んでった!
あれ何だ、流星か!? いやいやうどんだ、お狐様だ!
巻き上がる砂埃の中から堂々と仁王立ちで現れたのは、ご存じ『至高の一杯』御子神・天狐(p3p009798)である。
「おのれ西洋かぶれの食パン耳共め! お主等程度、燃え盛る大和魂でキツネ色になるまで焼き焦がしてくれようぞ!」
『くっ、何だこいつ……和風かぶれのくせに、俺達のほど良い焼き加減を心得ていやがる!』
亡霊達が警戒する中、天狐の隣に新たな影が並び立つ。
「あらー……おばさんこのテンションについて行けるかしらー?」
口元に手を当て、のんびりとした口調で喋るのは『お料理しましょ』嶺渡・蘇芳(p3p000520)。
ほんわかした空気を纏っているが、彼女のギフトは『キッチンマイスター』。その能力は"様々なジャンルの料理を美味しく手早く調理できる"という、この異世界においては転生モノの勇者ばりにチートな技を持っている。
『えぇい、見張りは何をしていた! 戦略班、分析を!』
『計測開始します! 1万、10万……いや、100万!? 駄目です司令!奴らの料理の腕は計り知れません!
しかしご安心を! 侵入者4人のうち、残り2人はお料理レベルが壊滅てk』「あーあーあーー! 聞こえません!聞こえませんってばー!!」
敵の戦略班が告げようとした数字を大きな声で上から塗りつぶす『しろがねのほむら』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)。
「なんて恐ろしい異世界なんでしょう。料理の腕前を数値化して観測できるなんて……! うう、婚約者を連れてくればよかったです」
彼の方がきっと適役だっただろう、としょげる睦月の肩へポンと手を置き、『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)がフォローに入る。
「まぁ、なんだ。今回の料理バトルというのは料理の腕を競うものではなく、料理で競うものらしいぞ。つまり料理の腕がなくても戦えるって事だ」
それでいいのかお料理バトル。異世界のトンチキルールに慣れてはいても、律儀にツッコんでくれるのが世界のいい所だ。故に、色々と面倒ごとに巻き込まれやすい体質ではあるが。
「本当なんでしょうか? 前回、勇者さんと戦った時はお料理の腕を競ったって聞いてますが……」
「狼狽えるでない、睦月殿! 料理には確かにテクニックが必要じゃが、もうひとつ大事な事があるじゃろうて」
天狐の助言にハッと目を見開く睦月。
「確かに……大事なのは心意気ですよね。料理へ込める愛情は、いや……愛情だけは任せてください!
この世界なら僕の料理だって誰かの役に立てる、そうですよね蒼矢さん!」
「えっ」
急に白羽の矢が立った境界案内人が冷や汗をかいて沈黙すると、睦月はガッと蒼矢の襟首をつかんで激しく揺さぶり始めた。
「そうだって言ってくださいよぉ!!」
「おい、それ以上蒼矢を虐めると帰れなくな――」
ばふんっ!!
睦月を止めようとした世界に突如大きな影が落ち、まっふりぎゅうぎゅう、右から左からプレス攻撃を仕掛けてきた!
「くっ、これは大きな食パン! 怨霊達の攻撃じゃ!大丈夫かのう世界殿!」
「ぷはっ! 何だこれ、水っぽい……草?」
メガネが潰れないように頭を庇いつつ世界は自分を押しつぶす物を観察する。外側がパン、内側がレタス。
『Boyを挟めばBLサンドってことダ!』
「ふっざけんな! この場でまともに戦闘できる男って俺しかいないんだが!?」
とにかく助けなければ。おろおろしながら睦月が両手を前に出す。
(料理は愛情……世界さんを助けたいって心を、ちゃんと込めてっ!)
「しっ……『四川麻婆豆腐』ーーッ!!」
刹那、ボゴゥッ! とパンの中から外へ向かって火の結界が巡り、世界を挟むレタスとパンを焼き尽くす!
『なっ、何だあれは!?』
「僕もよく分かりません、でも……」
ぎゅ、と睦月は自分の手を確かめるように握りしめる。たしかに辛い料理だけれど、炎の力になるなんて!
「ですがこれがこの世界の物理法則なのですね。わかりました、受け入れましょう」
助けを求める人がいる。邪魔をする人がいる。ならばやるべき事はひとつ――
「僕は僕にできる事を、精一杯に全力にっ! 『パンの耳をカラッと揚げて砂糖振ったやつ』になんか負けません!」
『なんだとぉ! 黙っていれば貴様ら……!』
睦月はただ亡霊達をけなしたかっただけではない。これは言わば名乗り口上だ。目論見通り、睦月の方へ亡霊達が寄ってくる。
「開戦の火蓋をきるってやつじゃのう!」
天狐がバッ! と構えた瞬間、料理道具のオーラが彼女から溢れはじめる。『料理』と『料理(悪)』――普段の戦闘であれば使いようがない非戦スキルも、今この世界の法則では強力なバフへと成り替わる!!
「目には目を、歯には歯を! ならば耳には耳じゃろうて! ゆくぞ、必殺……『耳うどん』ッツツツ!!」
ドゴゴゴゴォン!!
『ぎゃあああぁー!?』『空から無数のワンタンが!?』
「たわけ、ワンタンではないわ! 耳うどんは悪しき神の耳を模し、それを喰らえば悪い神に家の事を聞きつけられる事もない。魔除けの縁起物料理なのじゃ!」
隕石のように雨あられと降り注いだ耳うどんが亡霊達を押しつぶし、浄化の力で見事に成仏させていく。その光景はシュールだが、現場は亡霊の悲鳴で阿鼻叫喚の大混乱である。
「さて、さっきベーコンレタスサンド? BLとか抜かした亡霊よ。女子のGirl……もといGLサンドも可能性としては、あるじゃろう」
天狐の堂々とした物言いに、首を傾げる蘇芳と睦月。
「グレープかしらー? サッパリして食べやすそうではあると思うけど……?」
「ガム、とか流石に挟んだりはしないですよね」
ガールズの答えにチッチッと指を振り、空高く舞い上がる天狐。ヒーロー顔負けの飛び蹴りポーズで亡霊へと飛来する。その背にごまと魚のオーラを背負い――
「『G(ごまだしうどん)L(レタス)サンド』に決まってるじゃろうがあぁぁあーーー!!」
『流石にそうはならんダろぉおおおーーー!??』
叫びながら爆発する亡霊。くるんと回って着地する天狐。キメポーズとばかりに彼女は手を合わせ、うどん神へと静かに祈った。
「――ソーメン(so:'men)」
『なっ、こいつFUM教だったか! 道理で手ごわい訳ダ!』
「えふゆー……何だ?」
「フライングうどん・モンスター教、略してFUM教じゃ!」
えへんと胸を張る天狐に、世界は半眼になる。元いた世界でも宗教の自由は認められていたが、どんな神だか検討もつかない。というか無辜なる混沌だけならまだしも、ライブノベルの世界にあるのかFUM教。布教率恐ろしいぞFUM教。
「ツッコミ疲れたから次行くぞ。それにしても、事前に調べた通り、本当に料理の名を口にしただけで技が出るんだな。それなら俺は――『アイスバイン』ッ!」
ヒュキィン! と世界の周囲にいた亡霊達の足元が凍る。睦月の『クローデットクリーム』による回復で癒されながら、畳みかける様に世界は告げた。
「貴族ストロガノフ家に伝わる伝承奥義……『ビーフストロガノフ』!!」
凍った亡霊の足元が赤い光に包まれ、ちゅどーん! と大きな火柱が上がった。なお、ビーフストロガノフという料理の由来は諸説ある。
『くそっ! こうなったらヨーグルトソースで反撃ダ!』
空に現れる巨大なヨーグルトソースのボトル。『発射!』の合図で勢いよく放たれた白い一撃は――しかし。
「そぉりゃあ!」
『なっ、なにーっ!?』
天狐が取り出したどんぶりに受け、ちゃちゃちゃとうどんと絡めてヨーグルトカルボナーラうどんにしてしまう!!
『馬鹿な、俺達の攻撃を利用して美味しい料理を作る……だと……』
がくりとその場で膝(とおぼしき耳の下側)を折るサングラスのリーダー亡霊。その前に睦月が歩み寄り、手を差し伸べる。
「和解しませんか? たとえ食材未満扱いされたとしても僕は好きですよ、パンの耳さん」
「パン耳は揚げて砂糖やきな粉、チョコパウダーをまぶして食べれば美味しいおやつになるからのぅ。捨てた奴は見る目がなかったのじゃ」
『お、お前達……』
ほろり、亡霊の目元からパン粉が散った。かくして悪魔の谷の決戦は、特異運命座標の勝利となったのだ!
●
「……で、これが聖包丁とやらか」
帰り道、亡霊達から譲り受けた包丁を夕日にかざしながら世界は眉をよせる。見た目はただの包丁だ。本物かも疑わしい。
「それなら、試しに一度使ってみたらどうでしょうか?」
「確かにのぅ。勇者だけが扱えるとも聞いておらんし」
睦月の何気ないアドバイスに頷く天狐。伝説なら伝説らしい所以があるだろうと見込んでだ。
「それならひとつ試してみたかった技があったんだ。さっきは語感がいい名前を選んでいたが、和菓子の名前も試してみたくてな」
言うなり世界はチャキ、と包丁を構える。そして行く先に向かい、鋭く一閃。
「輝ける刃となれ――『金鍔』」
刹那、包丁の起動にのって金色の斬撃が現れ、その光は倍々に膨れ上がり――ドォォオン!! と轟音を立てて行く先の山にぶつかり、一太刀の間に切り伏せた。
あらあら、と様子を見ていた蘇芳は一言。
「あの山、バスクくんが入院している病院があるんじゃなかったかしら?」
「「「あっ」」」
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
魔物とのお料理対決、ファイッ!!(ゴングの音)
●目標
パン耳の亡霊×108匹の討伐
●できる事
いかにも強そうな『料理の名前』を叫びながら、スタイリッシュに必殺技をキメる!
今回の戦闘では、主行動でスキルを使用する代わりに、『いかにも必殺技っぽい名前の料理』や『強そうな名前の料理』の名をそれっぽく口に出す事で、強力な必殺技を放つ事ができます。
必殺技の内容はプレイングで細かく指定しても構いませんし、その場のノリと勢いに任せてお任せでも構いません。大事なのは勢いという名の隠し味!
●場所
異世界『ハートフルキッチン』
食を通じて人の心を揺さぶる事ができるお料理バトルの異世界です。
極端においしい料理or極端にまずい料理を真心を込めて作り、食べさせる事によって喜怒哀楽を呼び起こしたり悪人を改心させたり不思議な作用を起こす事が出来るのだとか。
食べた瞬間、超次元お料理漫画みたいな強めの幻覚まで見えることもあるそうです。
今回の戦場は『悪魔の谷』と呼ばれる霧深い谷です。パンを置いておくと二日ともたずにカビが生えそうなぐらいジメジメしています。
●エネミー
パン耳の亡霊×108匹
サンドウィッチのために切られて捨てられてしまったパンの耳の怨霊たち。茶色くて細長く、食パンから切り落としたばかりのパンの耳に目と口が付いたようなシュールな姿をしています。
彼らは神秘系の攻撃を扱ってきます。巨大なヨーグルトソースやケチャップを現して頭にかけてきたり、巨大なパンとレタスを現して、特異運命座標を具材にしようと左右からプレス攻撃をしてきたりするようです。
パン耳の亡霊すべてを倒すと、彼らが隠している聖包丁『マゴロクカリバー』が現れるといいます。
●その他
境界案内人の蒼矢は、呼ばれればサポーターとして色々手伝ってくれるようです。
この依頼はライブノベル『山賊たちの台所』の続編ですが、未読でもお楽しみいただけます。
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/5881
説明は以上となります。それでは、よい旅路を!
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