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シナリオ詳細

<lost fragment>涙の友の思いを喰らう

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●<lost fragment>涙の幼き思いを喰らう
 R.O.O Patch3.0『日イヅル森と正義の行方』。
 そんなアップデートが行われた世界の一つ『正義』だが……街の人達からすれば、そんなのは自分達に関係無い話。
 彼らは極々普通の生活を、前も昔も代わらず過ごしているだけであり、アップデートなど関係無い。
「ほら、ポチ。餌よー。こっちに来なさいー」
『わぅ? ……わ、わんわんっ!!』
 そして、純真無垢な犬や猫と共に過ごす生活も又、この町の人達からすれば生活を華やかに彩る一つのアクセントでもある。
 ……だが、そんな生活を蝕む影。
 深夜の刻……大きな獣の姿形をした影が、家の外で寝て居る飼い犬へと接近。
『……ぅぅ? ……フゥゥゥ……!!』
 その影が近づいて来て……威嚇する様に唸り声を上げる飼い犬だが、その大きな図体は、自分より数倍レベルの巨躯。
 更にその影は一体だけでなく、数十体という群れで包囲網を築き、接近してくる。
『ワンワン……キャゥウウウウン……!!』
 威嚇の鳴き声が、断末魔の叫びへと変わる。
 ……そして犬が食われた次の日。
「……あれ? 何で家に、犬小屋があるんだ?」
「知らないわよ。誰かが勝手に置いたんでしょ? ほら、さっさと撤去するわよ」
 ……昨日まで過ごしてきた、飼い犬との生活の記憶はどこかへ消え失せる。
 そして飼い主達だけでなく、その周りに住まう人々も、その事がまるで無かったかの如く……記憶から消え失せていたのであった。


「あー……君達、ちょうどよかった。ちょっと話を聞いて貰っていいだろうか?」
 そう君達に声を掛けるのは、すらっとした服装と共に、腰から下げた短剣は騎士の様な印象を受ける男。
 極々普通のNPCか、とも思いはしたが、何か他のNPCとは違う雰囲気を受ける。
 ……それもその筈、彼は今この国で起きている異変(バグ)を感じ取れる、数少ない者達の一人、リンツァトルテ・コンフィズリー。
「ログインした君達なら既に認識はしていると思うが、今この国は侵略されている。大司教アストリアが構築した『短期未来予測術式」』『【偽・星読星域】(イミテイション・カレイドスコープ)』の結果が見せた者は、正義国の国土の七割が虚空に飲まれるという悲しき状況だ」
「その状況を引き起こしているのは『ワールドイーター』という者達。彼らは世界のデータを喰らい尽くし、その喰らったデータを元に、でたらめなバグの世界を生み出し、正義国の国土を侵略している様だ」
「そんな危機的状況ではあるが、正義国の聖騎士団たちは動く事をしない……なぜならばこの異常、R.O.Oに住む住民達、つまり殆どのNPC達はバグを認識する事が出来ない、という事のようでな……この危機に抵抗出来るのは、私の他、極々少数の世界の歪みを認識出来る者達だけなのだ。だが、俺達の力だけで立ち向かうには手が足りない……そこで、君達にも力を貸して欲しいんだ」
「君達は元々R.O.Oの世界に居た存在では無い。ならばそのバグを認識し、対抗することが出来る筈だ。そのバグを認識する力を利用し、ワールドイーターの侵略を止めてきて欲しい、って訳だ。ぶしつけな話で申し訳無いが、頼めないだろうか?」
 リンツァトルテの言葉に、君達は頷く。
「そうか……良かった。ならば君達にはこの地に向かって貰いたい」
 と彼がマップから指さした場所は、この正義の国の極々普通の町。
「この町に住む、極々普通の一般家庭……それだけ聞くと些細な話だと思うだろう。しかしこういう些細な話ですら、ワールドイーターは餌食にしている様でな」
「ワールドイーターが食べているのは、一般家庭で買われている動物達……そう、飼い犬、飼い猫、とそういった類いの動物達をターゲットにしている様だ」
「飼い主との愉しい記憶……皆も心当たりがあるだろう? しかしこのワールドイーターに食べられてしまうと、飼い主は『そんなの飼ってなかった』という認識になって仕舞う」
「確かに小さな事件ではある。だがワールドイーターが味を占め、そのターゲットが小動物から人間へ、と変わっていって仕舞えば……更なる大被害が出てくるのは間違いないだろう。そうなる前に、芽が小さい内に摘んで置いて欲しい、というのが今回の願いだ」
 そして、最後にリンツァトルテはもう一度皆を見渡しながら。
「ワールドイーターの侵略が一気に拡がる前に対処する為には、君達の力が必要だ。どうか宜しく頼む」
 と、頭を下げた。

GMコメント

●成功条件
 R.O.Oの『正義国』の、極々普通の町に現れた『ワールドイーター』を討伐し、彼らの『正義国』の侵略を食い止める事が目的です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●周りの状況
 『正義国』では極々一般的な、普通の町が舞台となります。
 宗教色の強い町故、中世ヨーロッパの様な石造りの建物が並んでいる状態です。
 『ワールドイーター』が現れるのは、人々が寝静まった深夜の刻です。
 彼らは飼い犬、飼い猫などを探すと共に、それを喰らう事で、世界の侵略を進めています。
 今はまだ動物達だけではありますが……このまま味を占めてしまうと一般人達も喰らい、町に人は居なかったんだ……なんて羽目になってしまうかもしれません。
 また町中という事もあり、余りに大きな音を立ててしまうと、一般人達が起きてしまい、ワールドイーターがそっちにターゲットを向けてしまうなんて可能性もありますので、注意して下さい。

●討伐目標
・ワールドイーター『悪夢の扉』 x 1体
  ワールドイーターの一人であり、配下に対象物を喰らわせる事で、その者が『世界に居なかった者』として扱わせる能力を持つ者です。
  ただこれは一般人に向けての能力故、イレギュラーズの皆様には効果はありません。
  彼の姿は、まるで道化師(ピエロ)の様ですが、基本的には姿を隠している状態です。
  彼を誘い出すには、配下の者達を半壊させて危機的状態と思わせなければなりません。
  戦闘能力は攻撃力と回避力が高めですが、体力は少し少ない様です。
  その手から悪夢の化身を呼び出し、皆様を頭から丸呑みする様な攻撃(単体遠隔攻撃、『狂気』BS付与)を行います。

・ワールドイーターの配下『喰狼』 x 20匹
  ワールドイーターの配下で、同じく『世界に居なかった者』として相手を喰らう能力を持ちます。
  又、彼らは狼(柴犬とかより2周りほど大きな身体)の姿形をしており、またかなりスピード(反応)が高い敵です。
  戦場を飛び回ると共に、対象物を喰らおうとしてきますので、彼らを抑えないと被害は拡大の一方でしょう。
  ただイレギュラーズの皆様への攻撃手段としては噛みつく(単体遠隔攻撃、『出血』BS付与)と、咆哮を上げる(遠隔範囲、『麻痺』BS付与)の二つのみとなります。

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • <lost fragment>涙の友の思いを喰らう完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年11月21日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

梨尾(p3x000561)
不転の境界
エクシル(p3x000649)
ツナ缶海賊団見習い
樹里(p3x000692)
ようじょ整備士
スティア(p3x001034)
天真爛漫
九重ツルギ(p3x007105)
殉教者
カノン(p3x008357)
仮想世界の冒険者
イズル(p3x008599)
夜告鳥の幻影
天狐(p3x009798)
うどんの神

リプレイ

●心の友
 R.O.O Patch3.0『日イヅル森と正義の行方』。
 このアップデートが行われた世界の一つ『正義』において……突如発生していた事件『ワールドイーター』。
 彼らが餌食にするのは、この『正義』で普通に生活する一般人達が共に生活を過ごす愛犬やら愛猫等……。
「……本当、抵抗出来ない弱者を。家族に助けを求めても言葉が通じない者を狙うとは……」
「そうだね。大切な家族の存在と、それに関する記憶まで消えるなんて……経たしたら、ここでの相手は現実側より強力に干渉してくるんだね……」
 『ここにいます』梨尾(p3x000561)と、『ツナ缶海賊団見習い』エクシル(p3x000649)が零す二人の言葉。
 さらに『天真爛漫』スティア(p3x001034)と『仮想世界の冒険者』カノン(p3x008357)の二人も。
「ええ……ゆっくりと、気付かれないように思い出を奪って行くなんて……其の上、デタラメな世界を作ろうなんて、許せない……!」
「小さな命だけではなく、記憶まで喰らうとは……どの様な結末だとしても、それは彼ら自身の物であるべきだと思います」
「そう! ここは現実の世界とは違うとは言え、正義の国は私の故郷なんだ。絶対に食い止めてみせるよ!」
「そうですね。早急に対処して、始末を付けなければ、ですね」
 家族とも言える愛犬やら愛猫。
 今回のワールドイーターはそれらを喰らい、居なかったものとして扱わせるという……そんな非道な行いを繰り広げている。
「ええ。わんこにゃんこのことが、きおくからもきろくからもなくなるのは背後にききます、となにやらセンサーが受信したので、これはせんめつあんけんですね」
 『シュレディンガーのようじょ』樹里(p3x000692)は無垢な言葉を紡ぎ、うんうんと頷くと、それに梨尾とエクシルも。
「そうですか……自分は四足の犬や猫と一緒に暮らした経験はありませんが……家族の、我が子の名を思い出せなかった事があります。名前以外は思い出せるのに、最後に名前だけが思い出せない……それは、致命傷なんかより、思い出せない事がとても苦しかったんです」
「そうなんだ……それにこれって、この世界に住むNPCが認識出来なくなるというのも大変。どうにか出来るオイラたちでなんとかしないとね」
「そうです。だから、静かに、冷徹に……灰も残さずに燃やしましょう」
 ぐっ、と拳を握りしめて、並々ならぬ気合いを込める梨尾。
 そして、そんな仲間達の言葉を聞いた『うどんの神』天狐(p3x009798)が。
「うむ……生命やモノはたとえ消えようとも、記憶がある限り生き続けるモノ。誰からも忘れ去られた時に、本当の意味で死ぬのだ、と……そんな言葉を聞いた事があるのう……即ち、これは全ての生命の尊厳を護る為の戦い。この異常が何処まで影響があるのか予想が出来ぬ以上、負ける訳にはいかん。必ず食い止めねばなるまい」
 真摯な言葉を零す天狐。
 そんな各々の覚悟を聞いた『夜告鳥の幻影』イズル(p3x008599)は。
「そうだね。想い出は紡いだ糸で織り上げた生き様で、記憶は想い出を織る糸……それは生きた証。ただの『記憶』ではなく、誰かと繋がり、それからさらに誰かと繋がる。それは巨大なネットワークと言えるだろう……そのネットワークをぶち壊しにするのを許す訳には行かない。その為にもどうにかして彼らを誘い出す必要があるかな……」
 そう言いながら、周りを見渡す。
 ……と、そこに。
「ワンワン! お散歩お散歩! 夜のお散歩ねぇ楽しい楽しい! 楽しいよイズルさん! ねぇってばイズルさん!!」
 まるで大型犬の如くイズルにじゃれついてくる『特異運命座標』九重ツルギ(p3x007105)。
 R.O.Oの世界だからこそ出来る、自分のアバターの姿を犬の精霊クー・シーに変えてきたのだが……己が性格も何故か犬に凄く引っ張られている様な気がする。
 そんなツルギのに仲間達がえっ……という表情を浮かべるが、イズルは顔色一つ変えず、手慣れた様子で。
「めっ! ツルギさん、ちょっと犬すぎじゃない?」
「はっ、いけない。身体だけでなく、心まで犬になってしまう所でした。しかし本気で犬のフリをしなければ、喰狼と囮に気付かれてしまいます!」
「うんうん、そうだね……よしよし。ほら、お手?」
「ワンッ!!」
 自然な動きで、お手をするツルギ。
 ……どうやらイヅルは、そういう作戦も手慣れているのだろう……そう思う事にしよう。
 ともあれ、今回の依頼は、最愛の家族を記憶から無き物にする非道な行いをするワールドイーターを倒す事が目的。
「可愛い愛犬、愛猫を傷付けるのは許せません! 喋るお父さん犬九重ツルギ、世のため人のため、忠犬となります! キャウン! キャワワン!!」
 尻尾があってれば振っているであろう位の勢いで鳴くツルギ。
 そしてイレギュラーズ達は……『ワールドイーター』が蔓延る『正義』の街へと赴くのであった。

●友の鳴き声
 そして、深夜の刻も深まる頃。
 イレギュラーズ達が辿り着いた『正義』の街は当然寝静まっており、静けさに包まれている。
 勿論、そんな環境においては、小動物達も寝静まっており、静かな限り。
 そんな静けさの中、イレギュラーズ達は皆纏まって移動。
「さて、と……何処にワールドイーター達は居るのでしょうか……」
 と耳を欹てるのは、梨尾。
 鋭い聴力で物音を聞きつけ、暗視の視界で暗闇に目を凝らす。
 さらにはスティアは精霊を使役し、
 空から街の様子を確認したりしつつ、ツルギもその犬の姿でワンワンと鳴きながら、街を闊歩している。
 ……そんな中、イズルはが手にしたのは、アクセス・ファンタズムで生成した、効能不明なポーション。
「ワンワン! イズルさん、それ、それ欲しい!!」
 はっはっは、と舌を出しておねだり。
「うんうん、ツルギさんはほんとにこれが好きだね……?」
「うん、大好きだいすき!」
「わかったわかった……ほら」
 とそのポーションを飲ませると……その身体がキラキラと16万色に輝いていく……明らかに目立つゲーミングワンワン。
 ……そんだけ光ってれば、まぁ……敵からもすぐに発見される事だろう。
「ちょっとめだつニャねー……それじゃオイラはちょっと離れてみるニャ」
 とエクシルは建物の上やら、小さめの足場になりそうな所にキャッとジャンプし、のんびりと歩く。
 そうして、暫しの時が経過……すると。
『……フフ。さぁてと……今日はどの子を喰らおうかなぁ……?』
 本当に僅かに聞こえた笑い声。
 その笑い声に気付いたのは梨尾で、立ち止まり周囲を見渡す。
「……今、何か聞こえた様な……近いかもしれません」
 そう仲間達に告げつつも、誘い出さなければならないので、さらに街を捜索。
 すると……。
『……グルゥゥウ……』
 と、次に聞こえてきたのは、獰猛な獣の鳴き声。
 その鳴き声と共に、地を駆ける音が聞こえ始め、次には近くから。
『……ウゥ……ワン、キャウウウン!!』
 と、犬の悲鳴の様な鳴き声が響きわたる。
「あっちニャ!」
 とエクシルが叫び、皆を誘導。
 するとそこには、20匹の『喰狼』達が一匹の愛犬を取り囲むようにしていた。
「おおかみはグループでうごくもの……それじゃ、たおすのです」
「そうですね……!」
 樹里に頷きながら梨尾はその場に保護結界を張り、攻撃を受けてもいえが傷つかないように対策。
 その対策と共に、先手を取って動くのはスティア。
「これ以上、ワールドイーターの好きにはさせない!」
 と戦線布告すると共に、散花の刀から花弁を振らせて桜花の一閃を放つ。
 突然攻撃されて、喰狼達はキャンキャン鳴きながら一旦回避行動……その間に家の上を歩いていたエクシルが、取り囲まれていた愛犬を抱き上げ、ピョン、と飛び跳ねて仲間達の陣の内へと避難させる。
 勿論、それを妨害しようと未行動の喰狼が飛び跳ねて妨害しようとするが。
「させません……! 敵も燃やせば、炎で悲鳴を上げられませんよね?」
 同じ位にすばやい梨尾が、錨火を放ち怒りを付与為てターゲットをこちらへと惹きつける。
 さらに天狐は己を発光させながらの、幸運にある領域を周囲に展開。
 加えてカノンは足元に頑丈なランタンを取り出して視界を確保。
 視界確保された状態で、ツルギわんこはウウウウ、と唸りながら自己強化を付与。
 続いての行動で、ガルゥ、と喰狼に噛みつき怒りをなすりつけていく。
 そんなイレギュラーズ達の攻撃を経るが……その首謀者であるワールドイーターは、姿を見せず。
「しっぽをあらわしませんか……なら、おおかみをターゲット……ペットたちをねらっているようなら、その前にたって『聖句』でたいこうです!」
 と樹里は自信満々に頷き、喰狼に向けて。
「これは貴方にやられたぴょんきちの分ーー! わんたろう、にゃーすけのぶんもわすれてはいませんよ!!」
 と恐らく飼い犬飼い猫の名前を叫びながら挑発。
 それに続けてイズルは、敵の攻撃に対抗する為に夜告鳥を喚びだして仲間達を護るべく麻痺を無効化。
 さらにカノンも、喰狼を纏めて攻撃しながら、その場に大きな声で。
「それにしても、配下に任せて高みの見物とは、私が言うのも何ですが、中々に怠惰の極みですよね!」
 と言い放ち、ワールドイーターを挑発する。
 そんな後衛陣の動きに対し、前線に立つ梨尾、ツルギは適宜怒りを誘う様に挑発。
 それにエクシルは踊るように身を翻しながら、攻撃対象を次々と切り替えて攻撃し、天狐も。
「さぁ、威力と手数だけは自信があるんでのう! 下手に食い散らかす前に阻止してやろうぞ!」
 と無差別に攻撃を繰り出し、そしてスティアも流れに身を任せた攻撃を行う。
 流石にそんなイレギュラーズ達の攻撃により、喰狼達は数匹沈み逝く。
 ……だが、まだまだワールドイーターは。
『フフフ……中々強い様ですねぇ……でも、私の配下の実力はこんなものじゃありませんよぉ……?』
 とクスクスと笑うがのみ。
 どうやら、まだ自分が優位だ、と考えて居る模様。
 ……そんな敵の状況を理解し、さらに。
「しかし。ピエロで、あくむ。戯言で、ゆめをあたえるわたしとみごとにはんたいなかんじです」
 と笑い挑発。
 その挑発にガルゥウ、と更に叫び唸り、噛みつき攻撃を繰り返して行く喰狼。
 そんな敵を一匹ずつ確実に仕留めて行き……喰狼は残り五匹程度まで減少。
 ……すると。
『ほうほう! これはこれは中々強い敵の様ですねぇ……! もー、仕方ないなぁ……それじゃあ、私が直々に出張ってあげましょうかねぇ!!』
 と大笑いしながら、姿を表すワールドイーター『悪夢の扉』。
 彼の姿は道化師の如くで……その口調も人をおちょくる様な感じ。
 ただ、その実力は本物……その手を掲げると共に、その手からずももも、と蛇のようなものを召喚すると、イレギュラーズ達に向けて嗾ける。
 ぱくり、と頭から加えて丸呑みにする『悪夢の化身』……だが、喰らった樹里は。
「まるのみなにするものぞ、こちらはリク文でぐるぐるまきにしてやります!」
 と抵抗。
 抵抗されるのを想定していなかったのか、ちょっと驚いた表情を浮かべる彼に、流れる様に天狐がみだれうちを放つ。
「貴様等が喰らった命の数を念仏代わりに一つずつ唱えながら消え去るが良い!」
 命中率は高くないものの、当たれば一発が大きい模様で、ワールドイーターとの間に立ち塞がる喰狼を仕留める。
 そして、悪夢の扉への道が切り開かれた所へ、カノンとエクシルの二人が即時接近。
「これ以上の狼藉は見過ごせませんっ!」
「あの猫さんが飼い主さんに認識されなくなるだなんて、そんなの可哀想だと思わないのかニャ! 大事な人が居なくなる辛さ、とくと味わうがいいニャよ!」
 無数の魔力弾の弾幕と、己が高き身体能力で彼の頭を飛び越え、挟み撃ちの一撃。
 両面挟み撃ちにされた悪夢の扉は避ける事も出来ず、大ダメージ。
『いったーぃですねぇ……!! なら、反撃させて貰いますよぉ……! お前達ぃ!!』
 ワールドイーターの指示により、イレギュラーズ一人を集中攻撃する事で戦況の逆転打破を狙う。
 ……だが、既に半数以下になっていた喰狼、更にイレギュラーズ達の怒り効果付与も伴い、彼の守りに回ったのはごく少数。
『なにっ!?』
 そんな状況に驚愕の表情を浮かべた悪夢の扉も、最早時は遅し。
「思ったよりも戦況が悪くて驚いたかの? さぁ、怒濤の如く攻め入らせて貰うぞい!!」
「そうだね! 私の刀のサビになりなさーい!! ってね!!」
 天狐が己の幸運を強化し、当たる数を増やした乱打で怒濤の勢いで攻めていく。
 それに呼応する様、スティアの氷の花弁が無慈悲に悪夢の扉を一刀両断に断じ……切り裂く。
『が……ぁ……っ』
 断末魔の叫びは短く、そして空虚に消える。
 そして、主人の崩壊と共に、周りに居た喰狼達もまた……まるで煙に巻かれるが如く、消え去っていくのであった。

●静謐なる刻
 そして……どうにか無事にワールドイーター達を倒したイレギュラーズ。
「ふぅ……取りあえず、決着はついた様ですね」
 息を吐き、心を落ちつかせる梨尾。
 ……そんな梨尾達イレギュラーズの元へ、救われた子犬が。
『くぅーん……くぅーん……』
 小さな身体で鳴きながら、イレギュラーズ達の下へと近寄ってくる。
「ん……もう、だいじょうぶだよ?」
 そんな子犬に鏡ながら、頭を撫でる樹里。
 その手をぺろっ、と舐める子犬。
「ふふっ……くすぐったい。かんしゃ、してくれてるの?」
『くぅーん』
 鳴き声で答える子犬。
 恐らく、ありがとう、と言ってくれているのだろう……そして、それに頷く樹里。
「それにしても、他の件では『ワールドイーター』を討伐された箇所は復元されたけど……ここはどうだろう?」
 とイズルが周りを見渡すも……風景と言った点では、そんなに変わりは無いように見える。
 まぁ……今回のワールドイーターは、まだ記憶を喰らうだけで済んでいたのかも知れない。
 さらに記憶を喰らい尽くしていれば、喰らうのは記憶だけではなかっただろう……。
「まぁ、未然に防ぐ事が出来た、と思う事にしましょうか」
「ん……?」
 ツルギの言葉に振り返るイズル。
「……? どうしました?」
「いや、やっぱりツルギさんは、ヒトの方がいいな」
 苦笑するイズルにツルギは。
「まぁ……そうですね。でも犬でいるのも、いいものですよ?」
 と笑う。
 何はともあれ、記憶の断片を食い荒らす物を無事に止める事が出来たのは、イレギュラーズの力のお陰。
「そうですね……一応見回りをしながら、帰るとしましょうか」
「うん。みんな寝静まっているだろうから、あんまり音は立てないように……ね?」
 カノンに頷くスティア。
 そしてイレギュラーズ達は、他の被害が生じてない事を確認した上で……正義の国を後にするのであった。

成否

成功

MVP

九重ツルギ(p3x007105)
殉教者

状態異常

九重ツルギ(p3x007105)[死亡]
殉教者

あとがき

ご参加頂き、ありがとうございました!
私は家で飼ってたわけではなく、向かいの言えで飼っていた犬様がいたのですが、それでもその存在がなくなってしまうとなんともの物悲しさを覚えた記憶があります。
皆様も、大事にしてあげて下さいね。

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