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シナリオ詳細

【大祓四家】速佐須良・須勢理討伐

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●須勢理というおんな
 憎し憎し憎し憎し憎し、神使、奴らさえいなければ今頃、彼奴らの首を食いちぎっていたものを。豪徳寺め、何故貴様らがぬくぬくと生きている。直毘(なおび)、伊吹戸(いぶきど)最後の生き残り、とうに私の腹へ収まっているのではなかったか。鈴鹿(すずか)、瀬織津(せおりつ)の出戻りめ。オマエさえおらねば瀬織津は断絶していたものを。伊豆能売(いずのめ)、それに水戸(みなと)。速開都(はやあきつ)め。情報を、情報をよこせ。豪奢なだけの屋敷にひとり私を閉じ込め、今日も姿を見せぬ。
 何故だ。何故だ。何故うまくいかぬ。罠を仕掛けるも神使どもに破られ、忍従の日々。あああ腹が煮えくり返る。何故に、何故にこの私が我慢をせねばならぬ。大祓四家を謀略によって陥れたのは私ぞ。私以外の三家が破滅したのは私の采配ぞ。なにもかも憎しや憎しや。憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎……。

●決戦
「今度こそ憎き者どもを根絶やしにするべき場を整えました」
 荒れ果てた座敷で伊豆能売がほんのりと微笑む。あたりは獣が荒れ狂ったように凄惨な有様で、壁やふすまは赤黒い痕がいくつもあった。そのなかに悠然と座り、伊豆能売が唇を三日月の形にする。
「間違いではなかろうな」
「ええ、私が間違ったことが有りますでしょうか」
 白い顔の中、赤い三日月がのうのうと語る。須勢理としては今すぐにでも首をひきちぎってやりたいところだ。
「彼の地へ赴きなさい。須勢理殿、なつかしき彼の地へ。そこならば須勢理殿の力は増幅され今度こそ大願成就となりますとも」

 鮮やかな水色の髪をひらめかせ、一目散に窓から飛んでいく須勢理。
「まるで獲物を追う犬だな」
 伊豆能売の隣で水戸が嘲笑う。
「ようやくこれで我々の目標の一つを遂げられる。今までの全ては『大祓四家』の名を貶めた憎き愚かな小娘…須勢理を苦しめ、惨たらしく醜い最期を迎えさせる為……今まで暗躍してきた成果が今実る」
「その為に瀬織津に伊吹戸……そして豪徳寺……彼らにも最後の協力をお願いしましょう」
「勿論、須勢理殿への最後の一撃は……貴方にお譲りしますよ、悪路夜叉……いえ、温羅殿」
 振り返った先に立っていたのは、豪徳寺家のかつての長兄、しかし今や肉種へ落ちた、魔人天部衆「天獄夜叉党」の党首が一人、悪路夜叉こと温羅(うら)であった。温羅が喉を鳴らす。
「ようやくこの時が来たか。で、準備の方はできているんだろうな」
「もちろんです。罠という罠をしかけましたし、あの様子では片端から踏み抜いてくれるでしょうとも。それに……あの方が操る妖怪も今頃その身にたかっているはずです」
「ふふん、まな板の上の鯉ってわけだ」
「では我らの主が彼らに伝言を届けてくれてる内に…我々も向かいましょう。全ての始まり、因縁の地、旧速佐須良の領地『根国』へ」
 さあ、速佐須良・須勢理…「漂泊」の速佐須良の名の元に諸々の罪・穢れをさすらって漂泊してもらおう。さすれば我々は新たに生まれ変われる。大祓四家という呪縛から……。

●悲田院「灯火」
 豪徳寺の拠点である悲田院(孤児院)に、ふたつの影がさした。
「共通の怨敵を抹殺する為に今だけは一時共闘と行こうじゃないか……なあ、親父殿?」
 そう吐いたのは、悪鬼羅刹「羅刹十鬼衆」が一人、【大叫喚(だいきょうかん)地獄】豪徳寺 英雄。豪徳寺家の次兄であった者……。婚約者の松虫・小百合を連れている。
「須勢理には手を焼かされた。そうだろう? 共闘相手が増えるのはいいことじゃないか?」
 英雄はにんまりと笑った。断ろうと受け入れようとかまわない。そんな態度だった。

GMコメント

みどりです。ご指名ありがとうございました。
須勢理ちゃんとお別れです。残念ですね。ですがこれ以上生きていてもつらいだけでしょう。引導を渡してあげましょう。

やること
1)魔種 速佐須良・須勢理の討伐
A)オプション PCが須勢理のとどめを刺す

●特殊ルール
このシナリオにはライバルキャラが登場します
ライバルに須勢理のとどめを刺された場合、後々よくない結果が起きます

●エネミー
『大祓四家』速佐須良・須勢理(はやすさら・すせり)
「塩素」の八百万であり、嫉妬の魔種。TOP絵の中央に勃ってるかわいこちゃん。
かつては巫女姫派へ与していましたが、イレギュラーズの活躍によって落ちぶれてしまいました。また事前に第三勢力が仕掛けた数々の罠と【大叫喚地獄】が操る数々の妖怪の群れに襲われ、かなり消耗しており、また精神的にも不安定になっておりまともな状況判断も出来ないくらいに弱体化してます。今なら逃がさずに確実に討伐可能です。
ステータスは魔種にしては低めで、特に反応・CTはだだ下がりです。
超貫・近扇・中単大ダメージなどの攻撃を使用してきます。
攻撃には怒り・狂気・魅了などのBSが乗るようです。

●ライバルキャラ
豪徳寺・温羅 タンク型
 豪徳寺家の長男。魔種集団「羅刹十鬼衆」を支援する魔人天部衆「天獄夜叉党」の党首が一人「悪路夜叉」。
豪徳寺 英雄 バランス型
 豪徳寺家の次男。一騎当千の強者達にして妖を率いて悪逆非道を行う悪鬼羅刹「羅刹十鬼衆」が一人、【大叫喚(だいきょうかん)地獄】司るは「妄語(うそ)」。
松虫・小百合 反応型
 兵部省に勤めるエリート女将軍。実態は英雄の奴隷であり、彼への献身だけで動く。
『大祓四家』速開都・伊豆能売&水戸 EXA型
 須勢理の身柄を確保していた黒幕。「羅刹十鬼衆」を支援する魔人天部衆「天獄夜叉党」の党首が一人「両面夜叉」。
どのキャラも高い攻撃力をもっており、須勢理にとどめを刺すまでは友軍扱いとなり共闘してきます。つまり最後のターン以外はPCへは攻撃してこない、ということです。

●友軍キャラ
『大祓四家』伊吹戸・直毘(いぶきど・なおび)
「風」の八百万。「息吹」の伊吹戸家の生き残り。クラスはアンシリ―コート。かつての霞帝全盛期には帝の信任厚く人望高い家柄でしたが、そこを須勢理に妬まれ一族郎党皆殺しの目にあっています。おとなしく自己犠牲精神が強い性格で、回復や支援が得意です。特に指定がない場合は支援に徹します。

『大祓四家』瀬織津・鈴鹿(せおりつ・すずか)
「激流」の八百万。「清流」の瀬織津家の現当主。二刀を用いて戦う戦闘狂の女傑。こちらも須勢理の暗躍により没落。かろうじて鈴鹿が後を継いで体裁を保っている状態。豪快で竹を割ったような性格のお姉ちゃんです。特に指定がない場合、己をかえりみない攻撃を仕掛けます。

このシナリオは「蟲めづる……」の続編ですが、読む必要はありません。
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/5534

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 【大祓四家】速佐須良・須勢理討伐完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年11月21日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

武器商人(p3p001107)
闇之雲
鹿ノ子(p3p007279)
琥珀のとなり
晋 飛(p3p008588)
倫理コード違反
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
豪徳寺・美鬼帝(p3p008725)
鬼子母神
※参加確定済み※
豪徳寺・芹奈(p3p008798)
任侠道
※参加確定済み※
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
白妙姫(p3p009627)
慈鬼

リプレイ


 しとしとと雨が降っていた。だが須勢理に周りを見る余裕などない。最後の妖怪を倒し終えると、がらがらと割れた声で大笑した。その美しい髪は血脂にまみれ、細い体は汚汁で汚れていた。
「すべては私の前にひれ伏す! それが世の理!」
 その大音声は濡れた空気を震わせ、崖の上から彼女をながめていたイレギュラーズのところまで届いた。
「やーだねえ、裸の王様ならぬ女王様かよ。相手するなぁ気が滅入るぜ」
『倫理コード違反』晋 飛(p3p008588)は、らしくなく顔をひきつらせた。
「晋飛の旦那、そうは言っても向こうはやる気だぜ。これ以上は危ないから近づかず待機しておいで。追いつめられた獣ってのはね、何をするのかわかりゃしないし」
『闇之雲』武器商人(p3p001107)の言葉に飛はむっとしたのか、崖を飛び降りた。
「おおこなたの気配には覚えがあるぞ、神使よな、貴様神使よな? くひひひひひ、腹を割りオマエの頭蓋で脳汁をすすって先祝いとしよう」
 言うなり須勢理は腕をふるった。まるで鎌のような旋風が飛を襲う。そのあまりの速さに飛は反応できなかった。自分はあの旋風に巻かれ、切り裂かれるのだ。そんな未来が頭をよぎる。
「無策で飛びこんだっていいことないよぅ」
 しかし続いておりてきた武器商人が彼をかばった。どっと血があふれ、なにごともなかったかのように影へ吸い込まれていく。キャハハと場違いに陽気で、どこか不吉な笑い声が武器商人の足元から聞こえた。
「なんだかんだ。我(アタシ)も縁があったものだね。蜂の巣での借りはここでここで返させてもらうとしようか。ヒヒヒ!」
 ふわりと重さなどないようにチェスターコートの裾が揺れた。
「すまねぇ、あとは頼んだぜ! 俺はリモートできたメールを返さなけりゃならねえ!」
「なんだそれは」
 飛の声に『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)が首を傾げた。悪意はないのだろう。純粋な好奇心が瞳に映っている。
「いま忙しいってことだ!」
「それならわかる」
 スンといつもの調子に戻り、アーマデルは得物を構えた。続々とイレギュラーズが戦場へ降り立つ。その隣へ、侍るように立つ直毘と鈴鹿、そして4つの影。
「伊豆能売! 英雄! 温羅! 小百合! 何をしている、はよう神使どもの首を落とさぬか!」
「ふふ、いまだ己が頂点にいると思いこんでいらっしゃるのですね。哀れな魔種殿。もはや存分に力を振るうことすらできず、あとは狩られるのみの方が」
「なにをごちゃごちゃと! はようはよ、う……」
 小百合の一閃が須勢理へ届いた。肌を切られた須勢理が憤怒の形相で小百合を見つめる。しかし能面のような無表情には感情らしきものが一切見えない。
「ふ、ふふ……そういうことか。裏切ったかそうか、おぬしら神使側へついたのだな、そうだな、そうであろう? ならば共にくろうてくれる!」
 荒れ狂う須勢理の攻撃範囲から飛び退き、『琥珀の約束』鹿ノ子(p3p007279)は肩をそびやかした。
「つくづく腐れ縁ってやつッスねえ……。とはいえ今回はしっかり迎え撃てる訳ッスから、ここで決着をつけるッスよ! もう鬼ごっこはこりごりッス!」
「オマエはあの時のしゃらくさい小娘!」
「おや須勢理さん僕の顔を覚えていてくれたッスか。うれしいかぎりッスね!」
 鹿ノ子が白妙刀を翳した。ぎらりと刀身が光る。
「なるべく苦しませないよう一気にいくッスよ!」
「ああ、うけたまわった」
『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は静かにうなずく。
(塩素と言えば消毒や漂白か……そんな魔種を執拗に陥れて何がしたいのか……嫌な感じだな)
 だがそんな内面はおくびにも出さず、イズマは爽やかな笑みを浮かべて一時の友軍へ向けて話しかけた。
「相手は魔種だ。協力は助かる」
「ああ、共に手を取り合い戦おうじゃないか。敵は強大で、俺たちは戦友なのだから」
 英雄がうすら笑いをはりつけたままイズマへ答えた。イズマは直感的に悟った。この男こそがもっとも注視すべき相手だと。
「……」
 しばらくイズマと英雄の間に冷たい空気が流れる。
「あいや待たれい」
 それを眺めていた『慈鬼』白妙姫(p3p009627)が二人の間へ割って入る。
「共闘するのであろう? ここで事を構えるのは不利じゃろうて。よろしく頼むぞ、えーと」
「英雄だ」
「英雄か、よい名じゃ」
「ああ、名だけは気に入っている。……っと、のんびりしゃべっている場合ではないようだな」
 そう答えると英雄は小百合の肩へ手をやり、しりぞいた。魔弾が着弾し、地面が割れんばかりに爆発する。あとに残ったクレーターから威力の高さを見てとり、白妙姫はぞっとした。
(いやいや、さすがは魔種といったところかの。しかもライバルとやらも居て気が抜けぬ。何やら事情がこみいっているようじゃ、よくわからぬが手柄を横取りされぬようにすればよいのじゃな? じゃがまあライバルは、本命を倒した後、ゆっくりとなぶれば良い)
 彼女は須勢理へ体を向けた。すでにその体は八百万の姿から変異し、下肢はぐじゅぐじゅにつぶれて芋虫のようになっている。魔力の制御がうまく行っていないのだろう。
「ああああああああああああああああああ! うっとおしい、うっとおしい、うっとおしい、何もかもくだらぬ、何故思うようにならぬ! かくなるうえはすべてたいらげてくれようぞ!」
 ビリビリと鼓膜を叩く大声。もはや理性など残っていないのだろう。いまの須勢理はただ血を見るためだけに戦っている。白妙姫は腕まくりをした。
「うむっ! 残党狩りとは言え魔種とやらの討伐は初めてじゃ! 腕が鳴るのう!」
 危険な笑みを唇の端へひらめかせ、白妙姫は戦場へ突っ込んでいった。横目で英雄をチラ見しながら、イズマもその後を追う。
(思い通りには、させないぞ)

 戦場は何が起きるかわからない、そこには意外な再会も含まれる。
『鬼子母神』豪徳寺・美鬼帝(p3p008725)とその娘『任侠道』豪徳寺・芹奈(p3p008798)はなつかしい姿に心の底から驚いていた。
「なっ! 温羅兄上!? 生きていたの……ですか?」
「おう、このとおりよ。腕は須勢理にくれてやったがな」
 豪快に笑う姿は昔のままで、芹奈は涙がこぼれそうになった。その肩を抱き、美鬼帝はやわらかな声でいう。
「温羅、形はどうあれ……貴方が生きていてくれてママは嬉しいわ。でもね、復讐に駆られて堕ちた貴方達の事を今は信用できないの」
「へえそうかい。俺と一戦交えようってのか、親父殿」
「いいえ」
 美鬼帝はかぶりをふった。
「共闘はする……。だけど貴方達に彼女……須勢理の止めは刺させないわ。豪徳寺の名にかけて……あの悲しき化け物は私達……イレギュラーズが討つ」
 芹奈は拳を握った。
(そうだ……。今は…直毘、そして豪徳寺にとっても憎き怨敵でもある速佐須良・須勢理…奴の討伐だけを考えよう。…それこそ、魔に堕ちた小兄と共闘までして得た千載一遇のチャンス…ここで因縁の終止符は断つ!)
「……力を貸してくれ、皆。小兄に大兄…聞きたい事は山程あるが……今は共闘だ」
「聞き分けのいい子になったじゃねぇか芹奈」
 温羅はにいと唇をひん曲げた。そこへたしかに昔はなかった闇を見出し、芹奈は心が引き裂かれんばかりに悲しくなった。それでも……と、息を整え、芹奈は一菱流のかまえをとった。
「行こう、直毘、姉様。須勢理へ引導を渡しに」


 戦いは苛烈を極めた。まるで疲れ知らずのように暴力を振るう嫉妬の魔種。
「あれも敵、これも敵、ひははははは! よかろう、四方万事へ我が力を示してくれようぞ!」
 須勢理が弾けた。かのように見えた。
「なっ、分裂した!?」
 鈴鹿が一瞬手を止める。手近に居た分身が手刀を叩き込もうとする。鈴鹿はかまうものかとその身を危険に晒しながら立ち向かった。
(捨て身は得策ではないよぅ、瀬織津の方)
 いっそ優しいほどに冷たい声が頭の中へ響き渡った。振り返った先には、腹を手刀で貫かれている武器商人の姿があった。
「武器商人!」
「まったくもって問題ないよ、この程度は」
 そこへかけつけたアーマデルが軽くジャンプし、空中から分身の細腕へ回し蹴りを叩き込む。
「武器商人殿、分身は隠れた本体へと通じている。倒せば倒すほど本体へもダメージが行くようだ」
 こんじきの瞳がぼんやりと輝いている。その目で『看た』結果を手短にアーマデルは武器商人へ伝えた。鼻で笑う武器商人。
「分身を狩り尽くせば弱りきった本体が出てくる、と。やれ、無様よな。己の策に鼻高々で溺れて落ちぶれるのを見るのは愉しいものだ。ヒヒヒ!」
 言うなり武器商人は足元の影を展開させた。広く、そして薄く、その上にいるものは心の声が聞こえなくなる。そう、本体から分身への命令も、妨害されたかのように。とたんに統率を失って暴れだす分身たち。
「好機ッスね? いくッスよ『猪鹿蝶』! 叩くなら折れるまで!」
 鹿ノ子が吹き荒れる。心に抱く面影はそのままに、分身たちを滅していく。倒しても倒しても次々立ち上がる分身たち。嗤いながら襲い来る分身へ、鹿ノ子は言い放った。
「僕を止められるものなら止めてみるッス!」
 鹿ノ子の進軍は止まらない。乙女は誰にも止められない。分身たちと鹿ノ子がぶつかる。
「おぉおぉ、威勢のいいことじゃ。よきかなよきかな、乙女とはそうであらねばのう」
 白妙姫がころころと笑う。白刃煌めいて分身を両断する。返り血を浴びながらもその衣は汚れない。まるで汚れなど最初から知らぬ存ぜぬとばかりに汚濁は滑り落ち、地へ溶けていく。
(それにしてもなんじゃ。お家騒動に首を突っ込んでしもうたかの、わし。まぁまぁ、これも依頼じゃ。しっかりこなさねば)
 ぞろりと立ち上がった新たな分身めがけ、朧月夜を打ち込む。肉が裂け、絶叫が上がるが白妙姫の表情は変わらない。

(うーむ、そろそろ本体が出てきてもおかしくないはずだ)
 イズマは心のなかでひとりごちた。戦場を広域俯瞰で見渡し、そこここで起きている惨劇から目をそらさずに。
 イレギュラーズほどではないが、ライバルの四人もよくやっている。イズマは近くに居た温羅と伊豆能売へ声をかけた。
「俺は正面から攻める。側面に回ってくれるか?」
「何を考えていらっしゃるのです、イズマ殿?」
 いぶかしげな顔をする伊豆能売。
「俺の攻撃に巻きこんでしまうかも知れないからな、同じことは武器商人殿がハイテレパスで俺たちの仲間に伝えてくれている」
「そういうことなら」
 二者は納得し、側面へまわった。イズマはさらに英雄と小百合へも近づいていく。
「温羅さんと伊豆能売さんの方へまわってほしい。貴方のほうが攻撃力が高い、合わせて攻撃すれば通るはずだ」
「……」
 しばらくイズマの顔を見るともなく見ていた英雄がやがて小さく口の端をあげた。
「嘘だな。何を企んでいる、神使とやら」
 司るは「妄語(うそ)」、その英雄に生半な戯言は通用しない。けれどもイズマも負けてはいない。
「分身たちの配置から本体の出現しそうな位置を特定したんだ、広域俯瞰で確認した。まちがいない。鹿ノ子さんが言ったとおり、なるべく苦しませずに送ってやりたいから、皆で一斉に攻撃しよう」
 それはイズマの本心からの言葉だった。嘘に対抗できるのは真実のみ。英雄はイズマの顔をうさんくさげに眺めていたが、そこに作為を感じることができず、ため息をつくと小百合を連れて身を引いた。
(今だ!)
 イズマの刻むアジタートが、苛烈なビートがライバルの四人を襲う。奇襲が成功した。
「なに!?」
「共闘は終わりだ、何か企んでるって顔に出てたぞ!」
 うろたえる四人へたきつけるように怒鳴ると、イズマは親指で自分を指差した。
「どうした、くやしいか? まんまと乗せられて。俺はイズマ・トーティス。逃げも隠れもしない、恨みに思うならここで決着をつけよう」
「よくも英雄様を……!」
「小百合、引け。今は須勢理だ。小百合、聞いているのか」
 英雄以外の三人は怒りにかられている。

 その時だった。最後の分身が撃破され、ぼんやりと美しくも儚い女が浮かび上がる。女は顔を覆い隠し、むせび泣いているようだった。
「喝!」
 英雄が叫ぶ。同時に三人の心を覆っていた怒りが吹き飛んだ。
「須勢理を倒せ」
 短く命令すると自らも攻撃のかまえに入る。だがしかし。
「親父殿、そこをどいてもらおう、どかねば斬る」
 美鬼帝が目の前に立ちはだかっていた。目に涙を浮かべ、しかして、しっかりと芯のある声で。
「英雄…貴方達が何を企んでいるかはわからないけど…悪い事をするというのなら全力で私たちが止めるわ」
「うっとおしい……」
 言葉通り英雄は実の父へ斬りかかった。パンドラが砕け散るも美鬼帝は道をゆずらない。
「温羅も英雄も小百合ちゃんも…可愛い子供達ですもの。ママはその為なら心を鬼にして何度でも立ち向かうわ」
「うっとおしいと言っているのだ化け物が……! どけ、いますぐどけ、そのおぞましい顔を俺へ見せるな!」
 美鬼帝の言葉は我が子へ届かない。もはやその間には絶望的な溝があった。
「クソが、クソがクソがクソが! どけと言っているのだ!」
「うっ!」
 美鬼帝の腹を英雄の刀が串刺しにした。……あるいは彼の中に残るわずかな人間性が、その程度に収めたのかも知れなかった。
 だからこそ美鬼帝は言い募る。やわらかな慈母の笑みで。
「覚悟しておきなさい…今は無理でも絶対に貴方達の悪行、ママが止めてあげるから…ね」

 一方、小百合はイズマによって、温羅と伊豆能売は芹奈の剛力によって足止めされていた。
「止めは任せた…皆…」
 ふたりからの攻撃によって芹奈は血まみれになっている。その体を直毘が必死に癒やしていた。
「どうしたどうした芹奈、我と共に須勢理を討とうじゃねぇか、なあ?」
「本来はこの手で須勢理を討ちたいに決まってる……。だが直毘が我慢してるんだ…姉たる拙も我慢して確実に奴を打ち倒す手段を取るべきだ…信頼する仲間達なら拙達の代わりに必ずやり遂げてくれるはずだ」
 うつむいて血を吐くかのようにそう言った芹奈は、きっと顔をあげた。
「何より…大兄。温羅兄様。今の…復讐鬼にも似た貴方をこの先へ行かせるわけにはいかない!」
 芹奈の瞳にもまた涙があった。
(……あの優しい兄上も堕ちたと言うなら…拙は…何としても貴方達を止める…それが豪徳寺の誇りだ)
「くくっ。ほほほほほ! それで勝ったおつもりか!?」
 突然伊豆能売が哄笑した。同時に後ろへ下がってブロックを切り、増えた主行動で前へ突っ切っていく。
「残念だったなぁ! 須勢理の首はこの伊豆能売と水戸がとってくれるわ!」
 その手が須勢理へかかろうとした瞬間……。
「ほんとに残念なのはそっちのほうッスね」
 間一髪、鹿ノ子が伊豆能売の拳を握り込んでいた。
「おのれええええ! 私が俺が生まれ変わるのを邪魔するなあああ!」
「よく叫ぶことじゃ」
 白妙姫が伊豆能売の胸を押した。爆発的な威力が生じ、伊豆能売は後ろへ吹き飛んだ。


 夢をみた。三途の川辺の夢。
 あの日、夫と子は消えたのではなかった。私が、殺したのだ。そうだ、私が、殺したのだ。私が、わたくしが……。ころした、のだ……。

 女は泣いている。
「もう疲れたろ? おねむり」
 武器商人がその首をねじきった。
「薫さん……仇は取ったわよ」
 美鬼帝がかまえをとき、静かにつぶやいた。
「……やってくれたな神使ども。今日のところは引いてくれる」
「うむ、帰れ帰れ。そのほうがこっちも助かるでな」
 英雄の不機嫌な声に、白妙姫が長く深く息を吐いた。英雄は小百合に命じて伊豆能売を回収し、撤退していった。

 武器商人が女の首を置く。女は長い苦しみから解き放たれたかのように安らかな顔をしている。
「速佐須良・須勢理…思えば哀れな女だ…安らかに眠れ」
 芹奈が短く黙祷した。
「速佐須良・須勢理…どうしてこんなに嫉妬に狂ってしまったの。今は亡き薫さんが傍に居た時は…多少の傲慢さはあれど立派な貴族だったというのに…。せめて安らかに眠りなさい……」
 美鬼帝もまたそれに合わせる。
「僕は、これからどうしたら……」
 どこか虚ろな目で直毘がこぼす。アーマデルはその肩をそっと抱いた。
「無念、未練、業……。何も残さぬ者はそういない。それはヒトが生きて紡いだ糸、生きた証。それが生者を戒める鎖となるならば、絶ち、祓いもしよう。我が神は復讐を肯定するが、それは残された者が立ち上がり、歩き続ける為。……死者の為ではなく、生者の為に行うものだ。それを終えたいま、どうするかは、しばらく考える時間がいるかも知れないな」
「そうッスよ。おいしいもの食べて、あったかい布団にはいって、まずは生き延びたことを喜ぶッス」
 にっと笑った鹿ノ子が直毘の頭を撫でる。
「ああ、ゆっくり休むといい。俺が子守唄を奏でようか?」
 イズマが腰に両手を当て、伸びをした。
 風が吹いた。いつしか雨は上がっていた。

成否

成功

MVP

イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

状態異常

鹿ノ子(p3p007279)[重傷]
琥珀のとなり
豪徳寺・美鬼帝(p3p008725)[重傷]
鬼子母神
豪徳寺・芹奈(p3p008798)[重傷]
任侠道

あとがき

おつかれさまでしたー!

皆さんの見事な連携によって、宿敵須勢理を討伐しました。これによって何が起きるのでしょうね。英雄たちはまだ諦めてはいないようです。
MVPはライバルを一箇所へまとめてみせたあなたへ。

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