PandoraPartyProject

シナリオ詳細

月纏いのティターニア

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 月のしずくがぽとりと落ちる。秋桜がふわりと揺れて、絢爛なる森を彩るは橙色のアーチランプ。
 南瓜を刳りぬき作ったランタンで、悪戯顔が嗤う頃。魔女の呼び声高らかに。
 さあ、お手をどうぞ――女王様(ティターニア)。
 きみの祈りが欠けることのない月を更に輝かせるのだから!

 深緑の奥地にひっそりと存在する霊樹の村で、収穫祭があると耳にして鬼桜 雪之丞 (p3p002312)は行きませんかと問いかけた。
 射干玉の髪に飾られた椿は蜻蛉 (p3p002599)の悪戯。花咲く髪に頬を赤らめた雪之丞へと蜻蛉はこてりと首を傾げる。
「どんなところやろか?」
 実りの秋に感謝を捧げる日。そう口にする雪之丞の言葉を続けたのはクラリーチェ・カヴァッツァ (p3p000236)。
 大樹ファルカウと、実りをもたらす精霊達の恵みへと感謝を捧げる月夜。
 年に一度、煌々と照る満月が霊樹に一番近くなるその夜に、湖の水面には特別な祭壇が浮かび上がる。
「とくべつ?」
 エンヴィ=グレノール (p3p000051)はそっとその言葉をなぞるように問いかけた。
「ええ、とくべつなのです。月が一番近くなるその夜に精霊達が祭壇を用意してくれるそうなのです」
「ふふ。精霊達のとくべつなんね」
 蜻蛉がころころと笑えば、雪之丞は「ご一緒に行きませんか?」と問いかけた。
 巫女達は精霊と戯れ踊る。代わる代わるに祭壇へと上がり踊って夜を過ごして。
 月が去った朝露が祭壇にぽとりと落ちた時、魔法が解けたように全てが去って行くそうだ。

「――実は、本来のお祭りの様子は違うそうなのです」
 声を潜めた雪之丞にクラリーチェはふふ、と笑う。エンヴィと蜻蛉が首傾げれば耳打ちはこそりと非揖斐手。
 秋の実りに感謝をし、精霊の無礼講(いたずら)を楽しむお祭り。
 日頃はうずうずと『我慢』をしている精霊達の悪戯はこの日限りは赦される。
 祭壇の巫女は一夜限りの精霊の悪戯を踊りながら楽しみましょう、と。
 外からの参加者も募集されているらしい。
「祭壇とは、大きな大きな亀の背中だそうです。年に一度、月の光が近づいた日に目が覚めて、精霊達と楽しむと言い伝えられています」
「その亀は精霊さんなのかしら?」
 うるさくしても怒らないのと問いかけるエンヴィに「屹度、そうされるんが楽しいんやろうね」と蜻蛉は可笑しそうに笑う。
 共に踊る月夜の晩に。

 光を纏って、さあ、いらっしゃい――

 今日は特別な夜だから。精霊達はあなたに囁くのです。

 ねえ、とっておきの悪戯はいかが?

GMコメント

 日下部あやめと申します。リクエストをありがとうございます。

●目的
 『収穫祭』を夜通し楽しみましょう

●『収穫祭』
 ある深緑の村。精霊信仰を行っておりファルカウと精霊に深き感謝を伝える日とされています。
 満月が尤もこの村に近づくその日、精霊が目を覚まし、湖の上に背を見せます。この背を祭壇として、精霊達に誘われた巫女が月光の下踊り続けるのです。
 美しい物語のように語られますが、実際は精霊達の悪戯だらけ。
 水を掛けられたり、どこからか花の蜜を落としてきたり、ペンキでもなんでもござれ。
 悪戯のようにおかしを持ってきては一緒に食べようと誘ってきますし。手を握りしめれば可笑しなワルツにご招待。
 そんな何処か可笑しい収穫祭がこの地では行われます。

<楽しみ方>
 皆さんは巫女としてこの収穫祭に参加して下さい。巫女服を着用しますがデザインは個々の自由だそうです。
 月光の降り注ぐ祭壇で思い思いにダンスをしましょう。ひとりでさみしければふたりでも。四人でだって。
 精霊達の悪戯は『皆さんが想像したまま』にやってくるかもしれません。
 ダンスだって、精霊達は案外気配り屋さん。皆さんのプレイングに書かれていた悪戯やダンスに協力してくれます。

 お料理も用意されています。秋の実りのミートパイ、野菜のグリル、とっておきのお料理やワイン、ジュース。
 そうしたものを食べながらこの収穫祭を目一杯に楽しんで下さいね。
 付かれてしまったら、橙の明かりが灯ったテントでおやすみなさい。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 月纏いのティターニア完了
  • GM名日下部あやめ
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年11月19日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

エンヴィ=グレノール(p3p000051)
サメちゃんの好物
クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
安寧を願う者
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜

リプレイ


 月の光が泉に落ちる。煌めきの気配を指先に添えればそれは道となる。
「どうぞいらっしゃいませ」
 幻想種の誘いに頷き歩を進めれば『罪のアントニウム』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)はぱちりと瞬いた。
 アメジストに煌めいたその瞳が捕らえたは美しき秋の実り、最も近づく月の魔性。これがこの村の大切にしてきた文化だと、そう感じるだけで胸が熱くなる。
「……深緑は自然と共に生き、自然の恵みを殊更大切にする者が多いのです。収穫祭もそれぞれの集落独自のものがあるのです」
 そう微笑む彼女の前を巫女の衣装を身に纏った幻想種達が走り行く。その袖に揺らいだ美しき文様は独自のものだろうか。
 一人ずつ、泉の上を歩むかのように跳ね上がり精霊達と踊る。その優美さ。月の光を浴びた、選ばれた存在のような――
 ステージは大きな亀。長き眠りから覚めたばかりの大亀の背中で精霊達と踊る姿は宛ら『妖精の女王(ティターニア)』
 それは幻想的で素敵だけれど、視線を送れば髪飾りをひとつ精霊が悪戯めいて抜き去った。「きゃあ」と声が上がってバランスを崩した巫女の手を引っ張って泉へと落とそうとする悪戯は『何でもあり』と教えられた彼女らにとっての喜びのようで。
『ふわふわな嫉妬心』エンヴィ=グレノール(p3p000051)は「これは注意が必要、かしら?」と首を傾いだ。
 青を基調にした巫女装束は彼女の豊かな青髪へとよく映える。なだらかな海を思わせたその長髪を梳かすクラリーチェは「お似合いですよ」と微笑んで。
「私の小さいころ住んでいた村でも、収穫祭は盛り上がっていたのですよ。
 こちらの村は、精霊との交友が盛んとのこと……。折角ですし、自然に感謝しながら目いっぱい楽しみましょう」
 小さな小さな隣人達の悪戯だってご愛敬。白いローブを身に纏う彼女は今日という日は仕えるべき神の袂から少し離れた場所に立っているかのようで。
「とっても綺麗なお月さんやねぇ……こんな日ぃは、猫も杓子も踊らんと損やわ。せっかくの催しやし、その土地のものに染まりましょ」
 ころころと綻び咲いた笑みは美しく。『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)は幻想種達から借り受けた淑やかな巫女服へと身を包んだ。まるで『ファルカウの巫女』を思わせる衣装が幾つか咲いたそれに「お綺麗ですね」と『白秘夜叉』鬼桜 雪之丞(p3p002312)は目を細める。
「郷に入っては郷に従え。ですね。秋の実りへ感謝するお祭りですから。
 ……拙らも、その恩恵に預かっている身。えぇ。精霊たちの遊び場でもあるなら、精一杯、楽しみましょう」
 雪之丞はアオザイと呼ばれた『長い上着』を意味するその衣装に近しい者を選んだ。精霊達が「可愛い子、衣装を選んであげましょう」と彼女を引き連れていく様子を蜻蛉は「堪忍したってよ」と揶揄い笑っていたのだから。
「サイズが妙に合っているのですけれど……これもいたずらの一環、なのでしょうか」
「そうかもしれんねぇ。せやけど皆それぞれに、似合っとって可愛いわ」
 微笑んだ蜻蛉の髪へと花を一刺し、くすくすと笑った小さな精霊は「かわいい!」と楽しげに宙を踊って。
 月を受けて花開いた白は絢爛に。その美しさに見惚れて仕舞うほどだと瞬くエンヴィは「凄いわね……」と小さく呟いた。
 ああ、この空気がよりいっそうに。何時もと違うと感じさせてくれるから――今は、この収穫祭のティターニアとして踊りに行きましょう。


 悪戯を求めてうずうずとしている精霊にクラリーチェは「こんにちは」と挨拶をした。
 食事テーブルに並んだのはどれも収穫祭のための特別製。秋の肌寒さを和らげる暖かなシチューの香りに頬が綻ぶ。
「今宵はお世話になります、あなたたちと逢えるんがとっても楽しみやったの」
 精霊にお辞儀をした蜻蛉は「美味しそうやねえ」と料理を眺める。秋の実りに感謝を告げて食事をするのも立派な収穫祭の過ごし方。
「ほらほら、言うてるそばから、ちょっと待って! お洋服の裾を引っ張るんは誰やの?」
 もう、と唇を尖らせて。それでも怒っては居ない蜻蛉が振り向けば精霊が違う違うと首を振る。ミートパイを眺めていた雪之丞を指さして「あの子がやったの」と嘘つきさんはからから笑う。
「拙では――」
 慌てた雪之丞に蜻蛉は可笑しくなって小さく笑う。精霊さんは楽しい玩具を見付けてしまったか。くすくす笑った彼女に頬を赤らめた雪之丞は「料理を選びましょう」と囁いた。
「せやね踊る前には、お食事やね。美味しそう目移りしてしまう……ほな、うちはワインとミートパイを」
 ミートパイが盛り付けされていた皿を手にした蜻蛉は笑い声を聞いて顔をふ、と上げた。被さった影は甘い香りを放ちふわりと広がって行く。
 それは蜂蜜。森でつくられた甘い甘いかおりがミートパイを軽やかにデコレーションしている。蜻蛉は「合うやろか」と小さく呟いて。
 果実水は果物を容れ物にして作られているためか香りが心地よい。雪之丞は「お団子を」と呟いて――目の前で精霊達が嬉しそうに微笑んだことに何かを察知する。ああ、可愛らしい悪戯を仕込んで誰かが引っかかるのを待っているのだろう。
 華やいだローズの瞳の精霊は「まだかなあ」と言いたげに身をゆらゆらとさせて雪之丞が近づいてくるのを待っている。
「どれに――」
 指先につん、と団子がぶつかった。其れを食べて欲しいとでもいうような仕草に乗ってあげるのも一興か。
 ゆっくりとお団子を掴み上げて――「ッ―――!」
 雪之丞がぱっと口を押さえて。柑橘系の酸っぱさがつん、と鼻まで爽やかに抜けて行く。気を取り直して次を、と口に運べば次は香辛料が口内を蹂躙した。
 精霊が嬉しそうに腹を抱えて笑うのだから、その様子を眺めてから雪之丞はもう一つ。今度は甘ったるすぎる程の花の蜜を煮詰めた団子。
 口を付けて「ごちそうさまでした」と食べ終わったことを知らせれば精霊はご満悦顔で頷いて。
(……後で皆さんにも勧めてみましょうか)
 そんな小さな悪戯心も収穫祭なら悪くは無い。
「えっと、まずはお食事なのね……私は、秋野菜のグラタンとジュースをいただこうかしら?」
 グラタンを皿へと盛り付けて、エンヴィはぱちりと瞬いた。どれも可愛らしい悪戯ばかり。
 悪戯好きとは言いながら危害を加えられるような事は少なくて一安心と、胸を撫で下ろせば。
「……あら?お皿にとった料理は何処に……?」
 鮮やかにお皿が消え去ったことに瞬くエンヴィに「ああ!」とクラリーチェの驚嘆の声が掛かる。
「いけません。精霊さん。エンヴィさんの尻尾はおやつじゃないですよ」
 エンヴィのゆらゆらと揺れる尻尾にクリームのデコレーションをしようとしていた妖精は「わあ」と驚いたように逃げ出した。
 尾の先っぽにクリームとベリーがのせられたことに気付いてエンヴィは「驚いたわ……」と呟いた。
「ふふ。甘いものがお好きな精霊さんが多いのでしょうか?」
 蜻蛉の甘ったるいミートパイやエンヴィの尻尾。雪之丞が「一つ如何ですか?」と持ってきたとびきりに甘いお団子に。
 可愛らしい悪戯を隠し味に添えた料理に舌鼓を打ったクラリーチェはシチューの中にこっそりと潜んでいた飴玉に驚いたように瞬くのだった。


 精霊達に連れられて、湖の祭壇へと歩を進めたエンヴィは「綺麗ね……」と囁いた。
「ええ、とっても綺麗です。……神秘的で、月が祝福してくれているよう」
「本当に……なんだか、一歩踏み入れることも躊躇うほどに美しいのね……」
 妬ましいという言葉はこっそりと潜めてエンヴィとクラリーチェは顔を見合わせて。
「精霊さん、此処での奉納は舞踏やのうて、思うように自由に踊ってええのよね?」
 蜻蛉の問いかけに精霊は「おどろう! とってもとってもたのしいよ!」と手をぐいぐいと引っ張った。
「それでは、宜しくお願いします」
 祭壇たる大亀に一礼し、しずしずと登る雪之丞に精霊が「何して踊る?」と手を引いた。
 勢いの良さに転んでしまわぬように。足先にぐっと力を込めて跳ね上がるように祭壇へと登れば月明かりの祝福が、淡く落ちてくる感覚さえ心地よい。
「さあ、エンヴィさん」
 どうぞお手を――そんな仕草で恭しく誘うクラリーチェの手を取ってエンヴィが祭壇へと登れば、精霊達も倣うように蜻蛉の手を取って。
「踊ろう!」
「そうやね、一緒に踊ろか」
 柔らかな声音と共に皆で輪になれば、何処かで聞いたことも見たことも無いはずなのに体は自然に踊り出す。くるりと踊ればクラリーチェのローブが揺蕩う波のように広がった。
 蜻蛉は片手をぱっと精霊から離してターンを一つ。ふわり、ふわりと揺らぐ袂の飾りが音立て揺れる。月が音色を拾い上げ、どこまでも遠く響かせるかのような情動に。心揺らして蜻蛉は「きれいやねぇ」と微笑んだ。
「ええ、綺麗です」
 雪之丞がぴょんと跳ねれば精霊が面白おかしく水を掛けて。天より振るのは水しぶきと花弁たち。まるでシャワーのように注いで、体を包み込む。
 月光だけが彼女らの舞踏を見ているとでも言うような。特別な舞踏を楽しんで髪に絡んだ花弁が月光を浴びて白く変化したことにクラリーチェはくすりと笑う。
「この花は、月の光を浴びると淡く輝くのだそうですね」
「美しい花なのですね」
 雪之丞はそうと花弁を拾い上げ、湖へと投げ入れる。揺蕩い、舞うそれが波紋と共にきらりと輝いた。
「なかなか楽しい踊りね……あら?」
 手を繋いでいたはずなのに――エンヴィはぱちりと瞬いた。握りしめていたのは何だか不思議なかたちの大根で。悩ましげなそれを手にしてクラリーチェは「精霊が、大根に……!?」と蜻蛉を振り向いた。
 くすくす笑った彼女の背後から共に踊った精霊が腹を抱えて笑い出す。
「も、もう……」
「ふふふ……まぁ……皆お上手やこと。時間を忘れて夜通し踊ってしまいそう」
 そんな蜻蛉に、精霊達はもっと踊ろうと歌い出す。その音色は月のささやき。美しき四人の舞姫に、今だけは時を忘れてと囁くような――

 踊り疲れてしまったと橙色の明かりの灯ったテントへと入れば、大きなぬいぐるみがどしりと腰掛けていた。
「このぬいぐるみ、抱き枕にもなるのね……」
 エンヴィはそっと其れを撫でてから抱き寄せる。大きすぎて全部をとは適わないけれど――その大きさが心地よい。
「はあ……踊り疲れてしまいましたね」
 この森を愛して、楽しんで。何処までも嬉しそうな精霊達を見ているだけで『いとおしい』という気持ちを感じられた。
 雪之丞はその心地よさを感じながらごろりとぬいぐるみの傍らに横になった。
「今夜はまた、とびきり幻想的な夢を見られそうね……」
「そう、ですね……」
 瞼が重たいとエンヴィと雪之丞の意識が遠く、遠く。上瞼と下瞼がキスをする。そんな様子を眺めてからクラリーチェはそっと雪之丞へと葉っぱの布団を掛けてあげた。
「おやすみなさいませ」
 クラリーチェが微笑んで、就寝のお祈りを行うその声を聞きながら蜻蛉もうとうとと舟を漕ぐ。
 良き一日に感謝する彼女の声音は心地よい。
 気付いたら髪が三つ編みに結われて花が差されていたのは誰の悪戯だったのだろう。
「……今日はええ夢が見られそうよ、おおきに」

 明日が来れば、何時もの通り――だから、今日だけはもう少しだけ月の魔力に魅入られて、夢の中でも踊っていましょう?

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 この度は素敵なリクエストをありがとうございました。
 皆さんの楽しい収穫祭の思い出になれば光栄でございます。

 またご縁がありましたら、どうぞ宜しくお願い致します。

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