シナリオ詳細
<Closed Emerald>イーピルエイメルと愛らしき魔法
オープニング
●ドールマイスター
氷の槍が飛び、大地へ斜めに突き刺さる。
それは木造の荷馬車を容易に貫き、砕くだけの威力があった。
「コウ、走って!」
長耳の女(おそらく幻想種だろう)が叫ぶと、荷馬車から逃れ草の上を転がった男性コウが起き上がる。
落ちそうになったモノクルを指でなおす彼のすこし垂れた目は優しく、塗料や薬品で汚れたエプロンは不思議と可愛らしい花模様に見えた。
コウは転げ落ちたひょうしにおとしたであろう、道具の入った鞄を引き寄せ、そして馬車を振り返る。
幻想種の女が『早く』と叫ぶが、しかしコウは馬車へ向けて走った。
そして砕けた馬車の中で傾く、大きなアタッシュケースを手に取ったのだ。
普通なら、己の命より重いものなどない。けれど彼が『そうしてしまう』理由を、幻想種の女は理解していたようだった。だからそれに対して何か言うでもなく、自らもかけよってコウからアタッシュケースをとると、それを抱えて走り出した。
鞄の金具には『愛しい子供達』という意味の言葉が刻まれている。
なかに収められているのは、メンテナンスのためにコウが預かっていたビスクドールだ。
「あなたは本当に……」
苦笑する女性。コウは『ごめんね』と言って同じように苦笑した。
だがその瞬間、氷の槍がコウの膝のあたりをかすった。
かすっただけだというのに血が吹き出し、コウはその場に転倒する。
馬車から落ちた時とは違って、すぐに起き上がってはくれない。
女性は逃げるか駆け寄るか一瞬だけ迷って、そしてコウへと駆け寄――ろうとした途端、間に氷の槍が数本突き刺さった。
はたと見上げると、人型の精霊めいた存在が手をかざしこちらを見下ろしている。
透けたワンピースドレスを着た、女生とも男性ともつかない、美しいシルエットをした半透明の実態である。
幻想種は精霊に向けて――否『大樹の嘆き』に向けて叫んだ。
彼女たちが暮らす巨大な霊樹イーピルエイメルから現れた力の化身。まるで穢された大自然への嘆きや怒りを示すかのように暴れ出したそれを、彼女たちは霊樹の意志とうけとり、そして霊樹の名で呼んだ。
「何故ですイーピルエイメル! 彼は確かに幻想種では、この霊樹の民ではありません。けれどいままでこんなにも……」
アタッシュケースをかざし、まるで証明するかのように小さくゆすってみせる。
「こんなにも私達に寄り添ってくれていたではありませんか。あなたもそれはご存じの筈です!」
『大樹の嘆き』イーピルエイメルはかざした手の周りに無数の氷の槍を作り出し、指をクイッとあげる動作で槍の全てを幻想種女性へと向けた。
下ろす動作で、その全てを放――。
ヒュン、と影が走った。
可愛らしいうさぎのぬいぐるみが飛んだようにも、それは見えた。
「そうだよね、コウ」
可愛いドレスにお花の飾り。どんぐりの鞄を肩から提げたかわいいかわいいぬいぐるみが、氷の槍を蹴飛ばして、くるりと宙返りをしてから着地した。
「きみはそういう人だったよ、コウ」
ぬいぐるみの名前を、彼は、コウは知っている。
「……アダム」
そして、『ドールマイスター』コウは優しく笑った。
「やあ、いらっしゃい。こんな時に悪いね」
●大樹の嘆き
舞台は練達ROO内の仮想世界ネクスト。
混沌世界と似て非なるその場所では、各地で様々な異変が起きていた。
そのひとつとして、今回のクエストイベント『大樹の嘆き』がある。
翡翠方面のサクラメントが一斉に停止したことから始まったこの事件は、翡翠全体の霊樹や幻想種たちが『大自然を荒らす外敵』を感知しての排除行動であった。
しかし彼らの狙うべき外敵とは砂漠の盗賊たちでも、介入し始めたイレギュラーズたちでもなく、この世界に生まれたバグでありROO世界の敵、ピエロとパラディーゾという冠位魔種に相当する存在たちであった。
彼らが一斉に翡翠各所の霊樹を公的し始めたことにより精霊の免疫活動が活発化。それが古くから暮らしていた幻想種であっても例外なく、全てを破壊しリセットしようとするかのように無差別攻撃を始めたのだった。
そんな中で翡翠国内の穏健派たちはリュミエの説得と引き替えに『大樹の嘆き』の沈静化と『ピエロ&パラティーゾ』たちの排除を要請したのである。
こうして――。
「いいんだよ。今度は俺が助けるばんなんだ。コウ」
ここでもまた、戦いが始まったのだった。
- <Closed Emerald>イーピルエイメルと愛らしき魔法完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2021年11月09日 22時25分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●君ともう一度出会うために
「きみはそういう人だったよ、コウ」
ぬいぐるみの名前を、彼は、コウは知っている。
「……アダム」
そして、『ドールマイスター』コウは優しく笑った。
「やあ、いらっしゃい。こんな時に悪いね」
「コウ、その子は……」
アタッシュケースを抱くようにして問いかけてくる幻想種の女性ペンネディオ。
『うさぎのおひめさま!』アダム(p3x006934)は彼女とコウをそれぞれ見てから、そして守るようにイーピルエイメルの精霊体へと立ちはだかった。
無論、立ちはだかったのはアダムだけではない。
「コウさんはアダムくんの大切な人なんだね。
なら友人の友人もまたマイフレンド、全力でお助けします!!
幻想種のお嬢さん、お怪我はありません? 大丈夫?」
宙を泳ぐようにして現れた『叩いて直せ!』蕭条(p3x001262)が、美しい黒い尾びれをふわりとやって立ちはだかる。
ホーミングして飛来した氷の刃をひでれたたき落とし、女性のほうへと向き直る。
「落ち着いてもらうために今から我々でイーピルエイメルさんを攻撃しますがオッケー?」
「え、ええと……」
長らくイーピルエイメルという存在と長く共存してきた幻想種にとってとりがたい選択だが、そうしなければならない状況だというのは理解できているようだ。
イエスでもノーでもない反応を示し、一旦蕭条の後ろへと隠れる。
「大樹の嘆き……まるで、全てを拒絶しているよう。
それでも、わたくしたちは彼らを傷つけさせるわけにも、周囲を破壊し尽くさせるわけにもいかないの」
『雪の花』シュネー(p3x007199)は肩にかけていた弓をとり、イーピルエイメル(の精霊体)へと構える。
新たな敵性存在をみとめたためか、イーピルエイメルはその擬似的な表情に怒りの感情を浮かべ、両腕を大きく掲げた。
無数の氷で出来た五寸ほどの針がコココッという独特な音をたてて削り出され、雪のような氷の粉を散らして白く光った。
「うわー、原因はわからないけど精霊さんすっごく怒ってるね! ていうかあれ、飛ばしてくるんだよね? ボクたち初対面なんだけど……」
指さした『ダンサー』花楓院萌火(p3x006098)。
『双ツ星』コル(p3x007025)もそれを見て、ややびみょうな顔をして頷いた。
「うん、私もこの状況だったら全員あれでばーってするとおもう」
「だよねー」
言葉を話さぬイーピルエイメルだが、いまにも『よそ者には死を!』とでも叫びだしそうな雰囲気を放っていた。いや、実際放つのはあの氷の針なのだが。
同時に構える二人。獣めいた格闘フォームをとるコルと、足下に置いたラジカセ(ラジオとカセットテープレコーダーが合体したナウいヤングのガジェット。おしりのポケットに入れておけるポータブルサイズ)の再生ボタンを押してリズムを取り始める花楓院萌火。
「説得するまえにハッサン、だよね!」
身体を動かせば大抵のこと(主に感情面)は解決するという発想でいく花楓院萌火。その点はコルも同じである。
飛来した無数の針をキックやパンチの動作でたたき落としていく。
一方で、展開させた光の翼で氷の針を防御する『アルコ空団“輝翼”』九重ツルギ(p3x007105)。
コウやアダムの両サイドを固めるように、彼と『ホワイトカインド』ホワイティ(p3x008115)が展開した。
レース模様に編み込まれた糸の壁が現れて、針が次々に絡め取られていく。
ホワイティはちらりとアダムへと振り返った。
「この戦い、わたしにも手伝わせて。
アダムちゃん……キミが守りたい人も、皆のことも。この命に懸けても、守ってみせる!」
「コウさんのピンチに駆け付けられて、本当によかった。アダムさんの身を案じる様子がずっと気になっていましたからね。盾役として、彼らをこれ以上傷つけさせる訳にはいきません!」
そんな彼らを真っ先に排除すべきと考えたのだろうか。イーピルエイメルは氷の力を集中させ、巨大な槍に変えてアダムたちへと放った。
光の翼とレースネットを重ねるように前方に展開するツルギとホワイティ。
『なよ竹の』かぐや(p3x008344)は竹槍をくるくると回し、それを抜けてきた僅かな氷の破片を跳ね返す。
(霊樹の怒りは正当なものであると認識しております。
時に精霊たちは狂うこともございますが、此度の事象は彼等の気が触れたワケではなく。
自分達のシマを悪党が我が物顔でのさばる以上、何を犠牲にしても殲滅する必要がありますもの。
敵のアジトを突き止めてロケットランチャーをぶち込んでからが本当の勝負ですわ)
攻撃を払いのけてから、かぐやはぱしりと両手でしっかりと竹槍を構え、イーピルエイメルへと突きつけた。
「しかしここで間違ってはならないのは、そんな怒りを真っ向から受け止めつつも、許しはしないこと。
冠位魔種だろうが、悪のサーカス団だろうが、大陸マフィアだろうが────。
それらをブチのめすのは、この、わたくしの仕事なのですから」
●イーピルエイメル
氷の槍を直接掴み、精霊の力を鳥の翼で羽ばたくが如く放って飛ぶイーピルエイメル。
対するは大地を走り竹槍を構えるかぐや。
槍を放つのはほぼ同時。すれ違う槍と槍のその瞬間、かぐやは斜めに転がりイーピルエイメルはバレルロール機動をかけそれぞれの槍を回避。
それぞれの体勢をたてなおすのと新たな槍を手元に作り出すのはほぼ同時だった。
繰り出した槍がかぐやの頬をかすめ、一方でイーピルエイメルの胸を竹槍が貫通する。
「話なんて聞いて頂かなくても結構。
ですが絶対の絶対に『大自然を荒らす外敵』との決着は、わたくしが、わたくしたちが受け持ちますわ。
それだけはどれだけお怒りになろうと、譲れる話ではございません」
パキンと頬にあがったヒビがひろがり、イーピルエイメルの精霊体が砕けるように消滅した。
「わたくしにできることは、霊樹が抱いている怒りの全てを我が身に受け止め、その感情丸ごと抱えたまま、くだらない戦争を仕掛けてきたゴミ屑共をブチ転がすことだけですわ」
が、それは数多く発生した精霊体のひとつにすぎない。
側面からまわりこみコウを狙おうとしたイーピルエイメル。こちらはやや小柄ながら二体でコンビネーションを組んだ個体だった。
それぞれ作り出した氷の剣をぶつけ合って砕くと、破片を操り放射。
対抗するように飛び出したホワイティは魔力を纏う盾グレイミラージュを翳して破片を 防御すると、盾の裏から剣を引き抜いた。
天に向けて掲げた剣は太陽の光を受けて輝き、その輝きうは魔力光のホーミング弾になって解き放たれる。
直撃を受け砕けた一体のイーピルエイメル。だがもう一体は光の束をたくみに回避しホワイティへ接近。新たに作り出した氷の剣で斬りかかる。
「わたしには、その怒りを受け止めることしか出来ない……だからこそ。いつものあなたに戻るまで、わたしはあなたと向き合い続けるよぉ!」
対抗するように剣をぶつけたホワイティ。
力は拮抗したかに見えたが、もう一歩強く踏み込んだホワイティの力によって氷の剣は砕け、そして勢いのままイーピルエイメルを打ち砕いた。
そんなホワイティやかぐやめがけて大量に降り注ぐ氷の槍。
咄嗟の防御や回避で対抗するも、相手は空中に浮かび高所をとった複数体のイーピルエイメル。手数で負ける状況だ。
ならば――と木の幹に身を隠しターゲットされることを逃れていたシュネーが姿を見せ、弓を『水平に』構えた。
飛距離を犠牲にしつつ狙いを強く定めるためのフォームだ。
「この森で永きを生きるモノ……あなたがそのことで悲しんでしまわぬように。これ以上森を、あなたの手では傷つけさせません!」
狙いがシュネーへうつるが、ソレよりも早く矢を発射。
更に矢筒から複数本の矢を取り出すと一気に握り、それらを弓につがえて一斉発射した。
シュネーを無数の槍が襲うが、対抗して放たれた矢がイーピルエイメルたちへと突き刺さっていく。
シュネー自身のダメージは大きいが、こちらとて一人で戦っているわけではない。こういうときこそ、仲間を頼るのだ。
「シュネー、いま回復よ!」
アダムはぬいぐるみの両手でぽふぽふと拍手のような動きをすると、ぽわぽわとした温かい光の球を作り出した。
それをボール投げの要領でシュネーめがけて投擲。
ぽふんとぶつかった光の球が弾け、シュネーの傷口に浸透し痛みを取り払い傷口を塞いでいく。
その調子で光の球をぽこぽこ投げながら、アダムはイーピルエイメルへと呼びかけた。
「きっと、すごく怖くて、悲しくて、辛かったんだよね。
でも、あなたが見守ってきた人達を自分の手で傷つけてしまったら、あなた自身のことも、もっと深く傷つけることになっちゃう。
あなたを止めて、あなたのことも守るから、もう少しだけ我慢してね」
そんなアダムの回復を差し止めるつもりなのか、低空飛行状態に入った別のイーピルエイメルが両手に氷の斧を作って急接近。
「させませんっ」
滑り込むように立ちはだかったツルギが光の翼を分離、集中、何枚にも重ね合わせて盾にした。
まるで迫る重圧を押し返そうとするかのように両手を翳し、力を込めるツルギ。
なぜなら、実際にイーピルエイメルは斧を叩きつけ光の盾を打ち破ろうと猛烈な連打を仕掛けてきたからだ。
斧という道具は壁を壊すのにとても向いている。ツルギの展開した盾が一枚また一枚と破壊され、ツルギはぐっと奥歯をかみしめた。
(守ってばかりでは破られる。なら……!)
細身の剣を抜き、相手が次なる一撃を繰り出そうとした瞬間に盾を解放。至近距離から剣を突き出した。
これまで砕かれた光の盾が破片となって螺旋状に剣へ集中し、鋭い針のようにイーピルエイメルの身体を貫いていく。
砕け散るイーピルエイメル。だが、その先ではアタッシュケースを抱きかかえるようにしてうずくまったペンネディオへイーピルエイメルが迫っていた。
おそらくは人形や道具の入ったケースだ。それを、彼女は――。
想いの早さで身体が動く。だが人間が駆け出して届く距離と時間じゃない。
だからこそだ。横を駆け抜けた黒馬タキオンの手綱に掴まり急加速すると、ペンネディオごとケースを回収して走り抜けた。
それを追いかけようとしたイーピルエイメルの側面に、蕭条のボディが思い切り衝突した。
「言葉は通じずともフィーリングでわかることもあります。それではイーピルエイメルさん。魂(拳?)で語り合いましょう!」
あまりの勢いに突き飛ばされたイーピルエイメルが地面を転がり、しかし地面をドンと叩いて浮きあがり戦闘の構えにシフト。
衝突の衝撃でころがるも同じく体勢を立て直した蕭条が、両手(ひれ)をぱたぱたとやってイーピルエイメルを挑発した。
「我に返ったとき、友達を傷つけたと知ったら悲しいですものね。
鎮静化したらみんなでイーピルエイメルさんの下でピクニックしたいですね。だって綺麗な樹ですもん」
ダンスのリズムで加わった花楓院萌火が勇気の踊りで蕭条のボディを保護していく。
まるでぽかぽかとした夏の日のような光が蕭条を包み込み、イーピルエイメルとの衝突でできた凍傷のような傷口を拭い去っていく。
「落ち着いたら、なんで怒ってるのか教えてね! しばらく付き合うから!」
集まってきたイーピルエイメルの一斉氷槍射撃をリズミカルなステップとムーンサルトジャンプで回避すると、花楓院萌火はジグの舞曲にあわせて軽快なステップをふんだ。踏んだ足場に波紋のような光がはしり、はねた光たちが矢のようにイーピルエイメルへと飛んでいく。
(それに拳に込める心の声。言葉が通じなくても届くものがきっとあると信じて――)
殺到する矢を無数の氷の板で防御しはじめるイーピルエイメルたちだが、あまりの勢いに板が砕けイーピルエイメルたちも次々に砕けていく。
防御を捨ててパグナウタイプの武装を氷で作り出したイーピルエイメルめがけ……コルが凄まじいスピードで突っ込んでいった。
「どうか鎮まって欲しいのです、貴方を傷つけた悪者たちは私たちが代わりにやっつけますから!」
くわっと開いた右手に獣のオーラが集まり、ヒグマの爪のごとく鋭く大きなスパイクが形成された。
イーピルエイメルのアイスパグナウとぶつかり、バギギという独特な音で競り合う。
が、コルは相手の手首を掴んでぴょんと両足で跳び、まるで突っ張るような両足揃えキックをたたき込む。
腹にキックを食らったイーピルエイメルが吹き飛び、その過程でエネルギーがきれたのか砕けて消えた。
イーピルエイメルの猛攻もさることながら、こちらの奮戦によってまだ一人も欠けることなく戦えている。
だが、ずっとこのままだとは思わない。
新たに発生したイーピルエイメルは、これまでにない解像度でボディが作られていた。
表情は生きた人間そのもので、半透明にきらきらと光るドレスを纏った女性の姿で現れた。肌の色は半透明で、腰から下に至っては大気にとけるように透明に消えている。
「どうか矛を収めてください。憤怒のままに力を奮えば、後に残るのは後悔です。
俺はこの騒ぎの元凶を皮肉なほどよく知っている。ですから魂を賭けて誓いましょう。必ず奴らを退け、大樹の嘆きを止めてみせると!」
それまで怒りの表情だけを浮かべて襲いかかっていたイーピルエイメルだが、ここへきてツルギの言葉に表情をぴくりと動かした。
がしりと自分の腕を掴むが、それを自ら拒むように振り払う。
掲げた手に氷の剣を作り出すと、イーピルエイメルはツルギへと凄まじい速度で接近。斬りかかった。
タキオンから転げ落ち、るツルギ。身体が斜めに切断されたためだ。
「くっ――!」
せめてペンネディオとケースは守ろうと上半身だけで衝撃をうけとめ転がると、ツルギは光の粒子になって散り始めた。
『もはや止まることはできないのです。全ての異物を取り除くまで……』
イーピルエイメルがそうささやきかけた気がした。
が、会話に応じている暇はない。かぐやは得意の竹槍投擲体勢へはいると、力いっぱいイーピルエイメルめがけて投げつける。
飛来した竹槍に剣をはしらせ、左右真っ二つに切り裂きながらイーピルエイメルがかぐやへ接近。
彼女の胸を剣で貫く。
……が、先述したように一人で戦っている彼女たちではない。
「今ですわっ」
かぐやは両手でイーピルエイメルを抱くように固定すると、左右からコルと蕭条が迫った。
回避行動はとれない。
「さあっ、楽しくなってまいりましたァーー!!」
コルの飛び膝蹴りと蕭条による捨て身のタックルがイーピルエイメルをサンド。
砕け散ったボディ――の破片が離れた場所で再集合し、氷をマシンガンのように放って蕭条たちを吹き飛ばす。
だがダメージを受けているのは明白だ。花楓院萌火は『クリスタル・ネオ・ジグ』の舞踏術を用いて光の矢を連射。
同時にシュネーも無数の矢を速射術によって連射した。
「イーピルエイメル、非常に勝手な願いだと思っております。ですが……どうか、一旦その怒りの矛を収めては頂けませんか。
わたくしたちはあなたとの戦いを望みません。あなたたちを傷つけたいわけでもない!」
この世に『届かぬ想い』などない。
相手がそれを受け入れないだけ。払いのけてしまうだけ。
伸ばしただけでなんでも掴めるほど世界は狭くも軽くもないが、伸ばさなければ掴めないのもまた世界だ。払いのけられたからといって、伸ばすことをやめたりなどしない。
手を繋ぐために、それは絶対に必要なことなのだから。
「伝わらないからと諦めたくないの!」
その時、イーピルエイメルからの射撃が弱まっているように、彼女たちには思えた。
「大丈夫? どこも痛くない?」
コウを庇って立つアダム。後ろでコウはアタッシュケースを拾いあげ、苦笑した。
「あちこち怪我をしたから、あとで手当しなくっちゃ。けど、いまは……あの子のほうが痛そうだ」
コウが見つめるのはイーピルエイメルの精霊体だった。
怒りに顔を歪めているだけのように見えるが、コウには、そしてアダムにもイーピルエイメルという『霊樹』が感じる痛みがわかった。
病に苦しみ人が熱を出すように。自らの異常と向き合おうとしているのだ。
アダムはコウの膝にぽふっと一度だけ抱きつくと、すぐに離れてイーピルエイメルへ走り出した。
「俺がイーピルエイメルにしてあげられること……今は、これだよねっ」
光を片手に集め、イーピルエイメルを側面から殴りつける。
咄嗟に接近に気付いたイーピルエイメルがアダムに氷の槍を放ちその身体を貫くも、その後方から放ったホワイティのオーラが傷口を一度だけ保護した。
灰色のオーラによって守られたアダムの小さく短い腕は、その一度だけのチャンスによってイーピルエイメルの頬へとぶつかり、そして吹き飛ばす。
「……間に合ったねぇ」
既に結構なダメージをうけていたホワイティは膝を突きつつも、突き出した手をにぎにぎとやった。
イーピルエイメルが砕け、そして消えていくのを見ながら。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
――クエスト完了
――イーピルエイメルの攻撃性は収まり、無差別攻撃を行っていた精霊体も出現しなくなりました
――原因究明のために調査を始めました
GMコメント
●クエスト内容
・成功条件:『大樹の嘆き』イーピルエイメルを倒し、沈静化させる
イーピルエイメルは攻撃的意志を集合させた精霊体を作り、これをもって無差別攻撃を行っています。
これらを倒し消滅させることで、実質的にイーピルエイメルの攻撃的意志を解消することができます。
コウと幻想種の女性ペンネディオは現場にそのままいますが、避難させるよりその場所に留まらせたほうが比較的安全でしょう。(避難させるとかえってイーピルエイメルの攻撃精霊を増やし危険を増す結果になりそうだからです)
●エネミーデータ
・イーピルエイメル(攻撃精霊)
霊樹イーピルエイメルから発現した攻撃的意志の象徴であり実体です。
無差別に攻撃をし、古くから霊樹に暮らし精霊や植物に疎通する者(実際ペンネディオがそうでした)であっても話を聞いてくれないくらいに怒り狂っています。
攻撃方法は氷の槍や鎖による格闘や射撃、氷塊の爆発といった形で行われます。
BSには凍結系、出血系が主に用いられます。
戦闘後半になればなるほど強力な個体が出現し始め、【必殺】や【ブレイク】を備えるようになったり、【摩耗】【多重影】【復讐】【鬼道】といった特殊な殲滅手段を個別にもつ個体も現れたりするでしょう。
(流石に全部いっぺんに放ってくる個体は、よほど怒らせないと出なさそうな気がします)
また、個体数ははじめから4~5体ありますがイーピルエイメルの攻撃的意志が高まれば高まるほど個体数が増加し、戦局がどんどん不利になっていくでしょう。
こちらも火力や防衛力を加速度的に高めて一気に殲滅まで持っていきましょう。
戦闘後半で火力や防衛力が不足すると逆に追い詰められて敗北することになるのでくれぐれもご注意下さい。
・攻撃精霊の増加について
気持ちを抑えて貰うことはほぼ不可能ですが、一応『森を焼き払う』『霊樹を積極的に侮辱する』といったいかにも霊樹を怒らせそうな行動をまあまあとらないようにすれば増加をちょっと抑えることはできそうです。
●サクラメントと失敗条件
この依頼にてサクラメントはやや離れた場所ではありますが再起動しています。
馬を走らせたり高い機動力で走ったりしても数ターンは戦闘に復帰できない程度に離れており、当然ですがコウと幻想種ペンネディオは復活できないので一定以上の味方が同時に戦闘不能(まだ復帰していない状態)になればこのシナリオは失敗扱いとなり、コウたちを守りながら撤退することになります。
※重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
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●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●ROOとは
練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline
●重要な備考
<Closed Emerald>には敵側から『トロフィー』の救出チャンスが与えられています。
<Closed Emerald>ではその達成度に応じて一定数のキャラクターが『デスカウントの少ない順』から解放されます。
但し、<Closed Emerald>ではデスカウント値(及びその他事由)等により、更なるログアウト不能が生じる可能性がありますのでご注意下さい。
●『パラディーゾ』イベント
<Closed Emerald>でパラディーゾが介入してきている事により、全体で特殊イベントが発生しています。
<Closed Emerald>で『トロフィー』の救出チャンスとしてMVPを獲得したキャラクターに特殊な判定が生じます。
MVPを獲得したキャラクターはR.O.O3.0においてログアウト不可能になったキャラクター一名を指定して開放する事が可能です。
指定は個別にメールを送付しますが、決定は相談の上でも独断でも構いません。(尚、自分でも構いません)
但し、当シナリオではデスカウント値(及びその他事由)等により、更なるログアウト不能が生じる可能性がありますのでご注意下さい。
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