シナリオ詳細
majority magic
オープニング
●多数決の儀式魔術
「汝罪人である」
「有罪」
「有罪」
「有罪」
「有罪」
柱に縛り付けられた男を、無数の人間たちが取り囲んでいる。
「己の罪を認めなさい。彼の罪を知っている者は手を上げよ」
「有罪」
「有罪」
「有罪」
「有罪」
取り囲む人間たちは真っ白な仮面とローブを纏い、黒い石を籠いっぱいに持っていた。
石を掴み、柱にくくられた男へ投げつけ始める。
「汝罪を認めよ」
「汝罪を認めよ」
「汝罪を認めよ」
「汝罪を認めよ」
「汝罪を認めよ」
「「汝罪を認めよ」」
●密教の破壊
「ターコイズブルーな話だわ。……いいえ、むしろネイビーな……」
シャンパングラスを吊るように持ち、手すりによりかかってため息をつく女。
貴族のパーティに呼ばれたプルーと何人かのイレギュラーズたちは、剣を使わぬ戦争から遠ざかるようにベランダへ出ていた。手をとって踊れそうな程のスペースがあるが、誰も来ていない。戦争で戦場にいない者はなし、ということか。
プルーはため息をついて、イレギュラーズたちへ向き直った。
「ここへ連れてきたのは肩のこる政治話に付き合わせるためじゃないわ。次のお仕事にすぐ発てるようによ」
ある依頼人から渡されたらしい小さなスクロールを開く。
どうやら秘密裏に渡されたものらしく、プルーはそれを胸の谷間からだした。
「依頼内容は簡潔――『マジョリティマジックを破壊せよ』」
マジョリティマジックとは幻想北部に潜む地下宗教団体である。
教義のなんたるかは知らないし興味ももっていないが、この連中が領民をたぶらかして自治に悪影響をもたらすので破壊してほしいということらしい。
「スパイを使って集会場の場所と日にちは特定してあるわ。
飛び込んで、邪魔になる連中を倒して、教祖らしき人物をとらえる。依頼人は『生死を問わない』と言っているから、全員残らず殺してしまっても構わないわ。
捕らえるのは依頼完遂の正確性のためであって、生首ひとつ持ち帰るだけでも事足りるのよね。
どちらのやり方をとってもらっても構わないわ。それこそ、多数決で決めたっていい」
プルーは最後にスクロールに口づけをして、あなたに手渡した。
「依頼の成功を祈ってるわ。事が済んだらまたここへいらっしゃい」
- majority magic完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年07月20日 21時45分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●最初から失敗した者たち
多数決を選んだ時点で失敗となる。
世の中にはそんな事例がいくつも存在している。
「例えば今から沈没する船があって、乗組員が全員自決するかどうかを多数決で決めた場合」
それは自決ではなく、多数派に殺されたにすぎない。
「サークルの解散。土地権利の売却。『どちらでもよい派』を除く片一方を封殺する手段が、多数決」
ぱちり。
と、『年中ティータイム』Suvia=Westbury(p3p000114)が笑顔を作った。
恐ろしくクールで、恐ろしくドライな目だった。
「しかし本当に殺されはしない。人員を残したまま強制的に従事させる判決方法であるだけに、封殺されたという気持ちだけが蓄積する」
指折りで何かを数えている『観光客』アト・サイン(p3p001394)。
「ネガティブすぎじゃありません? ミンシュシュギじゃないですか」
球状のものを手の上でころころとやる『体育会系魔法少女』秋嶋 渓(p3p002692)。
「どちらにしても……今回の件は、あちらの失敗……です」
『ルゥネマリィ』レウルィア・メディクス(p3p002910)が自らの爪の先を見ている。
「人は多数決ではなく、愛によって生きる。これが真理です」
とんとんと自らの胸を叩く『魔法少女インフィニティハート』無限乃 愛(p3p004443)。
「今回のケースはロクでもないのです。多数決を利用して集団心理を作るんだから」
棒状のものを指の上でくるくると回す『狐狸霧中』最上・C・狐耶(p3p004837)。
「つまり……?」
『人斬り』不動・乱丸(p3p006112)が刀の柄頭を指で撫でた。
「全員まとめてやっつければ、この件は解決ですわね!」
『農家系女騎士令嬢様』ガーベラ・キルロード(p3p006172)が空に手を翳し、陽光に指を開いた。
きわめて単純。全員一致。
ここから始まるのは道徳の話でも倫理の話でもまして宗教の話でもなく、人が人を襲う話である。
●暴力
夜間。ある酒場の裏側に立つ者あり。
乱丸はビニール袋にまとめられたゴミの隣で、裏口の扉に耳を当てていた。
ゆっくりと手を翳し、指をドアノブの、それも鍵穴へと向ける。
それを『やれ』の合図と受け取ったアトは適当な針金をドアノブに差し込み、鍵をこじ開け始めた。
がっちゃんという少し大きめの音がする。
ドアノブをひねってあけ、GOサインを出すアト。
鍵を開けたことは恐らく気づいているだろう。
ただの酒場の店主であれば気のせいだと思うか聞き逃すかしてくれたろうが、地下に死ぬほどいかがわしいものを隠している店主が身に覚えの無い解錠音を聞き逃すほど油断しているとは考えづらい。
だから、ここからは速攻を要するのだ。
「誰かそこに――」
「オーホッホッホ! 気づかれてしまいましたわね! そう、私こそがガーベラ・キルロード! 聖剣騎士団『ドラグヴァンディル』の担い手にしてキルロード男爵家令嬢ですわ! お控えなさい!」
ショットガンを持って現われた酒場の店主の前に堂々と現われるガーベラ。
その後ろから飛び出した渓のイーヴィルクローが、店主の顔面に叩き込まれた。
反射的に発射された散弾を浴びる渓。
流れるように割り込んだ愛が、大きな鎌でハート型の魔砲を打ち込んだ。
直撃をうけた店主が吹き飛び、木箱と無数の酒瓶をなぎ倒した。
ガラスの派手に割れる音。
レウルィアは大きく踏み込むと、宝珠のついた剣のグリップで店主の顔面を殴り始めた。
「えと……。情報を教えていただければ……命だけは……」
「なんだと」
「例えば、教団内の構造や、構成員の詳しい情報など……」
ぴょん、と近づいてきた狐耶が魔力を込めたグーパンチで殴り飛ばした。
店主はその衝撃で壁に頭をぶつけ、ずるずると身体をひきずるようにして倒れた。
血を流して動かなくなる店主を見下ろす狐耶たち。
狐耶はちらりとレウルィアの方を見て肩をすくめた。
「殺してないですよ?」
(どのような教団かは存じ上げませんが、茶葉代金よりも価値がある団体とは思えませんので、きれいさっぱりお掃除させていただきますね。血なまぐさい依頼になりそうですから、お仕事終わったらハーブ風呂でゆっくりくつろぎたいところですの……っと)
「罠らしい罠はありませんね」
Suviaは地下への入り口付近を丁寧に調べて振り返った。
「儂は人斬りじゃ、だがなァ、儂にも斬る相手を選び権利があると思うちょる。無抵抗な女子供斬っても何の自慢にもなりゃせんがな。やはり悪党共を天誅称して斬っちょる時こそが儂の強さを示せるときぜよ。つまり何がいいとうかと言うとな……今回の敵は遠慮せずに斬れる相手と言う訳じゃきん」
乱丸が酒場の店主をロープで縛って拘束していた。
「勿論情報を吐かせる為に拷問する為じゃきん。なぁに、手足の指を一本ずつ斬り落とせば喋るじゃろうて」
「命乞いをするまで愛(攻撃)を叩きこめば自ずと口を開いてくれるはずです」
「喋らん時はちゃんと止めを刺すきに心配するなか」
「…………」
愛と渓が杖や鎌を手に、気絶して縛られた店主を挟んでいる。
起きるのを待つのもいいが、その間に地下にいる連中に気づかれては仕方ない。今回の方法だと情報の信頼性と獲得への確実性が薄いので、コストを払うのも惜しいところだった。
一旦店の裏にでも吊るして置いて、まずは地下へ攻め入ることにした。
「まじょりてぃー! 魔法的な名前なのに悪いことするとは魔法使いの風上にもおけないですね! カルト教団はたいていやばい目を抱えていますしお仕事でもあるので頑張って制圧しますとも! さぁ頑張って無事に帰りましょう! 目指すは制圧!」
「『悪を挫き正義を齎す愛の使者!魔法少女インフィニティハート、ここに見参!』」
愛も愛でそれを言う決まりがあるのか、やるだけやってから地下への扉を開いた。
床下収納を装った入り口は、長い階段になっていた。
アトはカンテラであたりを照らしながら慎重に進んでいった。
レウルィアは剣を構え、前を進んでゆく。
(さて、集団の心理とは厄介なもので、誰かが後押しすれば簡単に皆で流されてしまいます、特に宗教などはそれが得意ですね。宗教はこれだからロクなものではないのです、私が言う事ではないですけど。なので真っ向から叩き潰していきましょうね、はい)
狐耶は内心で何かを語りながら、魔装具をあらためて装着し直す。
不意打ちに対応するために、全員の先頭を歩いていた。
(私が来たからにはこの様な悪行!もうさせませんわ! 多数決が悪いと言ってるわけではありませんわ。ですが、寄ってたかって少数派を嬲るなど言語道断! ノブレス・オブリージュ…貴族たる者、弱き無辜の民達を守ってこその貴族ですもの。ですから、貴方方、神妙にお縄に尽きなさいですわ!)
ガーベラも心の中で決意を固め、自慢の武器ドラグヴァンディル(クワ)をしっかりと握りしめる。
かくして彼女たちがたどり着いたのは、地下の広い教会であった。
●革命の失敗
地下の教会は話に聞いていた通りに広かった。
吹き抜け構造の二階通路から覗き込むと、教祖と思しき男が人々を前に演説をしているのが見える。
なにを言っているのか聞き取ることはできたが、興味のあったものは恐らくいないだろう。
「さて、と」
Suviaは魔力環を指にはめると、毒薬の入った瓶を大きく振りかぶった。
狙いはテキトーだ。誰が戦える者か、今のところは分からない。教祖に特別な戦力があるようにはあまり見えないので、ここは一発ぶん投げて確かめるのがよかろうというものだ。
というわけで、Suviaは思い切り階下に向かって毒瓶を放り投げた。
回転して飛ぶ瓶に何者かが気づき、ある者は咄嗟に身を伏せ、ある者は教祖を庇うべく押し倒し、それらの中央で瓶は砕けて毒液をまき散らした。
悲鳴。と同時にコンバットスーツを纏った男女がこちらへ向けてアサルトライフルを乱射してきた。
「わっ! 魔法っぽい名前だから魔法使いかと思ったら……! ともかく、悪い教団はぶっ飛ぶのです! 正義の魔法の力を見せてやりますとも!」
渓は杖を構え、階下に向けてドゥームウィスパーを乱射。悲鳴があちこちで巻き起こった。
すぐに上階へ駆け上がってきた教団関係者が剣を抜いて迫ってきたが、渓は冷静に攻撃スキルを漆黒へシフト。漆黒の閃光を放って迎撃を始めた。
「現代的、って言ったほうがいいのかなあ」
アトは手すりの裏に身を伏せ、時折顔を覗かせては上階へ上がってこようとする敵への攻撃を試みた。
回転式拳銃をとりあえず装弾数めいっぱいまで打ちまくった後、空薬莢を足下にばらばらと排出。弾を一個一個入れ直すと、再び手すりから顔を出す。
と同時に、階下から魔術式の手榴弾が投げ込まれた。
「おっとまずい!」
即座に霧の魔術が放たれる。
伏せるアトたち。
その一方で狐耶とレウルィアは手すりを飛び越え、そのまま階下へと直行した。
教祖を守るべく展開する教団関係者たち。彼らは上階からの攻撃を阻む側と一階に下りたレウルィアたちを阻む側に分かれる必要に駆られ、結果近接戦闘組がレウルィアたちにぶつかる形になった。
繰り出される剣を、紫水晶でできた刀身でガードするレウルィア。
防御姿勢のまま押し込むように突進する。
一方で、狐耶は迫る教団関係者たちめがけて神薙を放った。
どうやらこの教団は戦闘に加わる人数の多さが強みのようで、狐耶の神薙は効果覿面だった。
教祖へのルートがそうそうクリアされないのは問題だが、相手の行動目的がそこにある以上やむなしである。
追ってガーベラが大胆に飛び降り、剣を構えて突撃していた教団関係者を踏みつける形で着地した。
「行きますわよドラグヴァンディル!」
振りかざすクワ。ファンブル値にこそ難があるものの、ガーベラは勇敢に相手へと突撃、剣とクワをぶつけ合わせた。
大きな斧を持った教団関係者が木でも切り倒すかのようなスイングを仕掛けてくる。
偶然にも転がったガーベラはその斬撃を回避。
相手の後ろに回り込むと、背にむけてクワを思い切り叩き込む。
倒れる教団関係者。その上を飛び越えて蹴りを繰り出す狐耶を、格闘家めいた教団関係者が受け流した。
掌底を放つ。狐耶はその攻撃をひらりと回避し、ベンチの上へ。
一方でどさくさに紛れた乱丸がその教団関係者のそばまで近づき、渾身の斬撃を繰り出した。
血を吹いて倒れる教団関係者。
「儂はこれしか出来ないがや」
ふと顔を上げると、くるくると回転してグレネードが飛んできていた。
咄嗟に防御を固めるレウルィアたち。
爆発――の中をかいくぐり、愛がフロア中央へと降り立った。
鎌を振り、ハート型の魔力砲撃を解き放つ。
教団関係者が盾にしてた倒れたベンチをもろとも破壊し、吹き飛ばしていく。
「この地下ホールにも愛が満ちることでしょう」
素早く下りてきたアトが、仰向けに倒れた教祖らしき男の額に銃口をつきつけた。
「おいおい、命乞いなんてつまんないことしないでくれよ。聖職者ってのは死の間際まで相手を罵るもんだ。このケチな罰当たりの背教者め、貴様は死後その魂は地獄に囚われ、業火に焼き尽くされるのだって……それぐらい言ってくれよ、気兼ねなく殺せるから」
煽るだけ煽ってから、黙った相手の顔面を殴りつけた。
後片付けに時間はかからなかった。
Suviaは『連行して何か情報が得られれば褒賞も増えるかもしれませんし』と言って生きている教団関係者を捕まえては拘束させていた。
あくまで仮定の話ではあるが、依頼主が『生死を問わない』と述べたとき、どうしても生きてて貰わなきゃいけない理由がないことと、死んでいるのと生きているのとでは同じくらい面倒なことがある。そういう意味で、生かすのが面倒だから全員殺してしまうのもそれはそれで間違った選択ではないだろう。
Suviaたちのとった『一部を殺して一部は生きる』というある意味無作為な結果もまた、間違ったものではないはずだ。
「あ、ところで死刑にした信者から巻き上げた金ってどこにあるかな? 報酬に加えてもいいかな? だめかな」
アトがどこか無邪気に語っている。冗談で言っているらしく、本当にそうするつもりではなさそうだ。
邪魔な教団壊滅のために『生死不問』といって傭兵部隊を送り込むような依頼人をよそに自治領内で略奪を始めるのは、なかなかスリリングなジョークである。
渓はもう色々終わった気分なのか、気持ちよさそうに背伸びをしていた。
「ところで、あれは何をしてるんです?」
「あれ、ですか……」
問われて、レウルィアと一緒に振り返る。
なんか愛が活劇映像をマラソン上映しているらしく。生き残った教団関係者たちが強制的に鑑賞させられている。
なにがどうってわけじゃないが、身体を椅子に固定してまぶたも開放状態で固定して一連の映像を見せ続けるっていう拷問がどっかの世界にはあるらしい。トラウマを強制的に植え付けられるとか。
「この地下ホールにも愛が満ち、邪悪は駆逐されました」
と、愛はご満悦なのできっとこれは拷問とかじゃないはず。更正的な何かなはず。狐耶も横で体育座りして見てるし。
「教祖を倒したあとは楽でよかったですね」
物事にはカタというものがあるようで、教祖がこちらの手に落ちたと分かるや、教団関係者たちは殆どが投降してきた。
投降しなかった者は容赦なくぶっ飛ばしたし、なんなら乱丸が斬り殺したが、非戦闘員らしき連中は殆どが残った形である。今彼らは鑑賞会の真っ最中だ。
「…………」
気絶した教祖の顔を、乱丸が何か言いたげに見ている。
一方でガーベラは胸をなで下ろしていた。
「仮に悪党であっても人間。彼らとて道を踏み外したとて守るべき民ですもの。極力無駄な殺生はしたくありませんわ」
ここで生き延びた彼らは、この後どうなるのだろう。
もし野に放ったとしても、多数決で次なる教祖を決め、多数決で教義を決めるのかもしれない。
「私、思うのです。多数決で決まる集団心理は恐ろしいものですわ。だからこそ、私達は話し合いお互いを理解せねばいけませんわ」
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete!
――good end!
GMコメント
多数決が悪というわけではないのですが、簡単に悪用できてしまうものでもあるようで。
今回の依頼内容は地下教団の破壊です。
ここでいう破壊とは物理的なものをさします。
関係者の肉体を殴って壊すということです。
教団の集会場はある酒場の地下にあります。
酒場はとても奥まった立地で看板も出していないため客はいません。店主ひとりきりの寂しい場所ですが、店主もまた教団関係者。彼を消すなり黙らせるなりして、隠された地下への階段を進みましょう。
教団は(こんな治安の土地なだけあって)戦闘力のあるメンバーを多数抱えているようです。
細かい所は分かりませんが、実際の話として――『5人組の傭兵を突入させたら全員死体になって帰ってきた』ということだそうです。
今回集まったメンバーで出来るベストな作戦を組みましょう。
地下のフィールドは広く銃撃戦が可能。地下というわりには2階建吹き抜け構造になっています。手すりを飛び越えて一階中央へ飛び降りることができるってわけですね。
【アドリブ度】
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。
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