シナリオ詳細
Sea urchin vs Chestnut
オープニング
●ウニとクリの対決
天義南部のとある海沿い――そこは海洋との国境付近でもあった。
とはいえ大きな街がある訳でもなく小さな漁村がある程度。他には時折海洋方面から付き合いのある商人の船が訪れるぐらいの、穏やかな場所であった……が。
「な、なんだあれは……海から何かくるぞ!!」
今日という日は違っていた。
いつもの商人がそろそろ来る筈だと海の方を眺めていた村人――の眼に映ったのは、船ではなく『黒い何か』であったのだ。最初はそれが遠目に見える船の影かとも思ったが、違う。近付いてくれば来るほどに船の形ではないと分かるし――それに一つでもない。
二つ、三つ、四つ……いやもっと多い数の『黒い何か』が此方へと押し寄せている。
魔物か何かか――これはまずいとばかりに、他の村人に伝えに行こうとすれ、ば。
「大変だッ! や、山の方から妙なのが来てるぞッ――!」
今度は真逆。近くの山の方からも『何か』が来ていると騒いでいる者がいた。
まさか、水陸両面から魔物が襲い掛かってくるなどそのような偶然が……
信じられぬ。しかし、事実であった。
思わず手に取る双眼鏡。そこから海と山の方面を見据えてみれば、映る。
己が目に――それは――ッ!
「なっ……あれは……巨大なウニと、クリ!!?」
山の方からは全長二メートルは在ろうかというクリが。
海の方からも全長二メートルは在ろうかというウニが。
大挙して押し寄せてきているのだ――いやなにあれ! 一見すると見間違いそうなんだけど!!? ウニとクリってほぼ似てるでしょ!! いや色が茶色と黒で見分けは付きやすいけれど、どっちも似たような棘をもって……んっ?
「あああああ――!! 棘が、棘が伸びてこっちに攻撃をッ――!!」
瞬間。双眼鏡が太陽光を反射して目立ったのか、クリの棘が襲来するッ――!
まだ距離はあったというのに、そんなに伸びるのかあの棘。咄嗟に顔を反らして直撃は避けたものの、双眼鏡は一発でオシャカとなった。こわい。こわいよ。先端恐怖症の人間にとっては悪魔より怖いよ。
「まずいぞ早く逃げろ逃げろ! 女子供を船に乗せて……うぉ!!?」
であればと、ここは漁船であることを利用して船で逃げんとするが――そこへと襲い掛かってきたのはウニの棘であった。奴らの棘が船の底を貫通し、穴を開ける――! 一発二発、三発と立て続けに放たれればあっという間に穴ぼこだらけで。
「だ、だめだとにかく逃げろ――!! 助けを呼ぶんだッ――!」
「ひいいい奴らが衝突するぞッ――!!」
陸と海からの侵攻に恐怖する村人達――
やがて村の中に入り込んだクリと、海から上陸してきた大量のウニ達が接触すれ、ば。
『おのれ山の偽物共がッ! 今日こそ雌雄を決してくれるわッ!!』
『ほざけ! 今日こそお前らを海の藻屑にしてくれるわッ! 総員突撃ッ――!!』
――文字通りに『衝突』が始まった。
何か、積年の想いが籠ったかのような言動を――互いに飛ばしながら。
●
「ええ……なんですかそれ。つまり、巨大ウニと巨大クリが争っていると……?」
話を聞いたローレットの情報屋、ギルオス・ホリス(p3n000044)は思わず額を押さえた。
だって巨大なウニと巨大なクリが争うなんて――どっちも似たようなものだろうに――
「いいえ! ウニは海産物。クリは山の幸! どっちも違うもので……っていうのはまぁどうでもいいとして、とにかく何故か我々の村を主戦場として戦争みたいなことを始めているのです」
言うは漁村の船長だ。村人の避難は何とか完了したのだが、今だウニとクリの戦いは続いているらしい。よく分からないが、まぁ彼らはなんらかの魔物の類であるのは間違いなさそうだ。
どうにも両者は犬猿の仲なのか、一向に争いを止める流れも見られない。
このままではいつ戦いが終わる事か……その間にも村は滅茶苦茶になるだろうし、この騒ぎがあっては付き合いのある海洋の商人も村に近付けない。とにかくあらゆる生活の手段はストップしたままだ――
「騎士団にお願いしようかとも思ったのですが、生憎と街までは結構な距離がありまして……」
「そこから準備も重なると時間が掛かりすぎて――それでローレットに、と。
分かりました。イレギュラーズを集め、至急向かいましょう」
とにかく、依頼であるならばこのウニとクリの戦いを止めねばなるまいとギルオスは思考する。村人から聞いた話だとウニとクリは似たような棘を飛ばしてきたりするようだ――が。
ウニは神秘の力を身に纏い、クリは物理の力によって押してくるという特徴の違いがあるらしい。その他にもウニは海辺であれば体力を回復し、クリは常に攻撃の一部を反射してくるなどなど……
結局のところ両方を倒さねばならぬ事は間違いないだろうが。
さてさてウニとクリの熾烈な争いへ――赴くとしようか。
- Sea urchin vs Chestnut完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年10月30日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●
『うぉぉぉぉ死ね――!!』
『しゃらくさいわ、貴様らこそ死ね――ッ!!』
ウニとクリが争っている。針を突き刺し突撃し、相手を滅ぼさんとぶつかり合う。
……傍目からはなんとも、こう。どっちも似たような存在が、ちくちくちくちくと延々と相争う光景が続いている様にしか見えない。彼ら自体は必至なのだろうが、なんか、こう……!
「あわわ……おおきなウニとおおきなクリ……
とても美味しそう、なのにちくちくと凶悪な、生き物なのです、ね……
ううっ、あの針に当たると……とても、痛そうなの、です……」
「やれやれ同族嫌悪か何かしらんが――はた迷惑な事だ。他所で存分に争うならまだしも、無関係であろうこのような場所で盛大に暴れてくれるとはな……」
その様子を『ひつじぱわー』メイメイ・ルー(p3p004460)と『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)は遠くよりまずは見据えるものだ。メイメイはファミリアーの海鳥越しに彼らの戦闘の様子を観察している――
激しい怒号。怒りと恨みの感情がそこかしこより生じている……
まぁ百歩譲ってそれはいいとしても――巻き込まれる村にとっては迷惑千万。
「もう暫く様子を見てから参りましょうか。
まぁ……以前はパンとコメが争っていた事もありますからね。
別の場所ではこういった種族間抗争があっても普通の事なのでしょう」
が、まぁ。勝手に争ってくれるのであれば暫く存分に争わせようと『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)は言うものだ。体力を消耗させる意味合いもあるが、敵の戦闘手段の観察も出来るのであれば真っ先に飛び込む必要もない。
それにしても……パンとコメが主食の座を争っていた依頼も以前にはあったか。
あの時とは全く違う場所、全く違う種族ではあるが――何か因果は巡るものだと彼女は微かに思考を巡らせれ、ば。
「…………それにしてもクリ、ウニ……どちらも美味しそうですねー
特にクリは旬と言ってもいい時期ですし……ウニも……じゅるり……」
「大きなウニ、クリ……白米にウニ、クリ……沢山のウニごはん……クリごはん……」
しかしそれはそれとしてウニとクリの美味さに想像を巡らせるロウラン・アトゥイ・イコロ(p3p009153)と『おやすみなさい』ラヴ イズ ……(p3p007812)もいたりするものだ。
大きな身体。あの針の下には一体どれ程の『身』が詰まっているのだろうか。
……諸々が終わった後は、じゅるり……
おっとっと。思わず涎が零れてきそうになるものだ。くぅ、となるお腹を押さえて。頭を振って眼前に集中!
それよりも――そろそろ状況が膠着し始めただろうか?
ウニは疲弊した者がいれば水辺に下がり体力を回復し。
クリも疲弊した者が後ろに下がり息を整えている様に見える。
そして態勢を立て直せばまた前線へとウラーッ! し始めて……この繰り返しだ。
「さて……双方の数がだいぶ減ってきたようですね。そろそろ頃合いでしょうか?」
では、行きましょうかと。座っていた姿勢から立ち上がるのは『罪のアントニウム』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)だ。似た存在同士の争いを眺めるのは面白い……というよりもラヴ達同様に、ふふ。食欲の秋を想像してしまっていたものだが。
いやなんとも。この前まで暑かったのに、いきなり寒くなってしまい『秋は何処?』という感じもしていたのだ――そこに季節の風物詩とも言うべきクリらを見れば……おっと。一体どこの世界の話をしてしまっているのか、危ない危ない。
ともあれ――往くか。
埒が明かない戦況を抉じ開ける為に。
目指すは……ウニ側! 海より至る侵略者達の方へ――!
「嗚呼、なんという素晴らしく美しい棘――これが海の王者たる所以なのでしょうか」
だがそれは戦う為ではない。
『砂漠の蛇』サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)が語り掛けるはまるでウニらを崇め称える様に。まるで厚き信仰心を持ったものであるかの様に――
「イガグリの粗野な棘とは大違いです。熟れ具合によって緑になったり茶色になったりする気分屋で軟弱なイガグリなど信じられません……そう、何があってもブレずに漆黒を貫く、このような立派な棘を持つ貴方様こそ、この世を統べるに相応しい」
『むぅ――身の程が分かっているではないか人間!』
「無論です。偉大なるウニのお歴々……ああ、是非ともウニ様、私達も共に戦わせて下さい」
まるで首を垂れる勢い。そう、これは……ウニの懐柔である!
クリにしろウニにしろ、マトモに相手取ればイレギュラーズよりも数が多いのだ……三つ巴の戦いに持ち込んだとしてもある程度の被害が出てしまうかもしれない。ならばと、片方を褒め称え味方とし――最終的に後ろから討つ。
「そう、ウニ様こそ正に至高! 正に正真正銘の王! おぉぉ! 我々ニンゲンはウニ様のシタでこそ幸せを感じられると言っても過言ではない! あんな山の俗物共とは輝きが違いまする! 全ての故郷である母なる海に住まう御身こそ我らが支配者にふさわしい!」
『ふはは、そうであろうそうであろう!!』
「ちょろっ。と、ゲフンゲフン……
おお! 我らウニ様親衛隊! 助太刀致しまする!!! うおおおおおおおお!!!」
次いでダメ押しとばかりに『至高の一杯』御子神・天狐(p3p009798)も言葉を紡ぐものだ。ちょっとおだてればいい気になるとは実にちょろ……
ウニの、人を支配下に治めようという過大な自尊心を擽りながらクリへと撃を放つ。
――このままであれば只膠着状態が続くのはウニにとっても分かっていよう。
ならば事細かな思考の時間を作ってやる前に『我々は味方』だと示してやる。向こうが『上』と思っている以上積極的な援護などは無いだろうが……しかしウニらから攻撃が紡がれないだけでも十分。
「一度に相手取る数が半分になるだけでも、実に大きい事ですからね」
まずは半分片付けるのだと、リュティスは言の葉を零しながら――光の刃を展開した。
●
『おのれ無知蒙昧なる人間があああ我らクリの一族に歯向かうというのかあああ!!』
そしてイレギュラーズ達の参戦によって膠着状態にあったウニクリ戦線は大きく動き出す。純粋に、イレギュラーズ達の火力が加わった事によって――クリたちは劣勢に立たされつつあったのだ。
それでも彼らの伸ばす針は厄介。油断すれば鋭い針が肉を貫こう。
「あのークリの棘は実の成長に伴って服みたいになるんですよね?」
しかしそこへ至るのがロウランだ。彼女の魔砲による一撃が――全てを貫く。
直後に至る針があれど、傷が深くなれば施すのは治癒の術だ。奴らの反射的なる攻撃は中々に痛い……しかし、如何にしても奴らの針が飛んでくるのであれば恐れていても仕方のない所である。
ある程度の痛みは覚悟の上で、奴らを打ちのめす。
ロウランは軽快なる言葉を紡ぎながら――
「毟り剥がせば中身はちょっと硬い皮つきです。で、それはきっと貴方達もですよね」
『な、なんのつもりだ小娘……まさか!』
「ご安心を、全部美味しくいただきますので」
未来の美味に思いを馳せつつ、撃を紡ぐ。
ああ。彼らの身……いや『実』は一体どのようなまろやかさを秘めているのだろうか。
ウニもクリも不毛な争いであると思いはする、が。やはり思い起こさずにはいられない――
「こういう争いに割って入るのは無粋かもしれませんが……放置しておくと周囲に被害が出続けますからね。仕方ありませんね、ええ。せめて美味しく頂かせてもらうとしましょうか」
「ぷ、ぷすっとされちゃいますけど、村のひとも、困っていますし、ね」
そしてクラリーチェとメイメイも続くものだ。
遠方より土壁を形成、四方より『土葬』する術をもってクラリーチェは、鋭き針ごとクリを圧し潰さんとして――同時にメイメイは己が神秘の魔力を収束させる。そこより紡がれるは絶対不可視の刃。
針を削ぎ落し、実へ到達せんばかりの刃が無数に降り注ぐ――
しかしこのクリとウニ、どうして抗争をしているのだろうか。ま、まさか。
「ウニのお姫さまと、クリの王子さまが恋をして駆け落ちをした、とか……
はわわ、もしかしたら、そんな物語が、あったりなんてして――」
『貴様、我らが里に伝わる国家機密をどうして!!?』
「え、っ!?」
ホント!? ホントなのだろうか!? ちょっとほわほわ興味が出てきたメイメイだが、でも刃は止めない。それはそれとして彼らを倒す依頼がコレなのだからッ――!
「ふふ。可愛らしいクッションですね。あら、貴方のこれは棘なのですか?
大きくてご立派なウニのよりもこんなに短くて小さいのに?」
『ン貴様ァ――! 我らを愚弄するか!!』
直後。サルヴェナーズがクリらの意識を引き付けんと、せせら笑うような挑発を。
暗く輝く泥が彼女の身に纏いて、彼女に害を成す者を喰らわんとする。
そして――続くは魔眼による催眠魔術だ。
クリらの思考に靄を掛けよう。言葉によって彼らの脳髄に染みわたりやすくさせて。
幾重に渡る針が彼女を襲わんとする。しかし、この程度なにするものか。
『おのれ邪悪なウニめえええ! 人間を援軍とするとは、誇りも地に落ちたか!』
『ははははは! 負け惜しみが見苦しいぞクリめ!』
「そうです! 我らは自らの意志でウニ様の傘下に入っているのですから……!
ウニ様、どうか我々に命じて下さい……! 行けと……!!」
であれば、人間を味方にしているウニにクリは罵倒を浴びせるものだ。
しかしそんなウニを更に調子づかせるようにラヴは涙ながらに訴える――
されば彼らはそんな涙に弱いものだ……だって涙は、海の味だから……
(なんて、強引すぎるわね――でも上手く取り入れてるから、良しかしら……?)
直後。ラヴが放つは蝕みの術。呪いで侵食し、クリの身をはぎ取らん。
押されるクリ達。後退する戦線が、彼らの劣勢をより強く示している。
――逃すまい。一息つかせずこのまま攻め挙げるのが最良だ。
「なにせこの後ももう少しばかりあるのだから――な」
「まぁ、上手い形で説得……と申しますか。彼らの眼を逸らす事が出来て幸いですね」
ジョージはそのままクリ達を纏めて薙ぎ払い、同時にリュティスは踏み込んで横薙ぎの一撃。突撃する槍兵の如く前方を制圧しよう――
場合によってはウニに『このままクリに負けても良いのですか?』と説得の言を掛けるつもりもあったのだが……調子に乗るウニ達はこちらを『よく働く下僕』としか思っていないのか、完全に油断している様だ。
まぁ待っていろ。彼らを収穫するのはクリ達をただのクリに変えてからだ。
元々疲弊していた身の上もあってかクリはまた一体、また一体と倒れ伏して――
「うおおおおおウニ様万歳!! これで仕舞じゃッ――!!」
『ぬあああああ――!! ジーク・モンブラン!!』
そして最後まで抵抗を続けていたクリを――天狐がひき逃げした。
超速度より至る一撃が針諸共全てを突き破ったのだ。
絶叫轟く最中。陸の勢力は全て潰れ、これで――
『ふははは! これで、これでこの一帯は海たる我らの手に――むっ!!?』
瞬間。勝ち誇るウニの背後を――サルヴェナーズが突いた!
『き、貴様何を……まさか、謀ったな! 謀ったな人間ンンンン――!!』
「いいえ、嘘など吐いていませんよ。貴方は私達の心を支配するのです。それは真実です。ええ――」
ただし。
「支配者としてではなく、私の味覚を虜にする美味しい美味しいウニ料理として」
口端を僅かに上げる彼女がウニに放つは、幻影たる魔術。
大蛇が彼らの身を喰らわんとする幻が――しかし彼らの足を呪いの様に止めんとするものだ。後ろから奇襲されたウニ達の間に混乱が広がる――そしてクリを先に殲滅していた事がここに来て功を奏していた。
ウニらは海に近ければ再生の力を宿しているのだが、クリ達を殲滅せんと陸上にウニ達が進軍している故に再生の力が途切れているのだ。力の一端を失い、そして疲弊も少なくないウニらの抵抗などどの程度のものか。
「まぁ、下剋上……なんて言葉も、あるしね?」
「騙して悪いが仕事なんでのぅ? はっ? 本気でウニ様と崇めてるとでも思ってたのかの? ウニもクリもさして違いなんぞあるまいよ!! 強いて言えば、ウニの方が高級感あるくらいかぇ?」
更に反逆は続く。もう涙も流れてないラヴがウニを引き付け光撃一閃。
直後には天狐の矛先が彼らを轢くッ――! ウニらも反撃するが、間に合わぬものだ。
「それではご機嫌よう。いずれの機会があれば、今度はただの食材としてお会いしたいですね」
リュティスの死の舞踊も、彼らに襲い来る刃となりて紡がれる。
巨大なウニ・クリ。いずれもここで終わるのだと。
クリと同様にまた一体、また一体とすり減らされて……
「知ってますよ。ウニの棘って攻防一体の殻なんですよね。少しは硬そうですがつまり」
一息。
「殻ということは割れるんですよ?」
既に捕食者モードのロウラン。この後に待つご飯タイムに思いを馳せれば。
「己が希少食材であることを恨むのだな――狩り尽くしてくれよう!」
『おのれ人間……この恨み忘れんぞ、ぬあああああ――!!』
ジョージの、敵を鮮血に染める一撃が――全てを押し切る。
紡がれる針と交差する。拳がウニの体にめり込み、砕き、その実へと到達して。
やがて沈黙。
クリとウニの不毛なる争いは――ここに集結したのであった。
●
「さて。これにてウニもクリも終焉と相成りましたね――」
サルヴェナーズはもう残党が残っていないのを確認。
されば後は村人たちに報告をしに戻る……だけなのだが。
「さてと。全て掃討できましたし、この場で焼いて食べましょうか。新鮮なうちに。
ああ、或いは調理できれば生で……という選択肢もあるでしょうか?」
「……あの。私、ごはん持ってきたのよね……ウニ、乗せても、いい?」
「勿論であろう。さぁさ『ウニ丼』と『栗うどん』――好きなのを持っていくがよい!
って、お主それは何杯分じゃ!? どれだけ楽しみであったのじゃ!!?」
その前に収穫物を堪能していくとしよう、と。
クラリーチェが調理の準備をしていれば、ラヴがおずおずと携行していた具無しの白米に――ウニを乗せる。
であれば料理上手たる天狐が美味しく頂くべくウニとクリを調理するのだが……しかし、ラヴが持ってきていた量……明らかに一人前ではないというか、なんなら十杯分ぐらいある様に見える様な……!
「私も、人よりちょっとだけ、ちょっとだけよ? その、食べる方だから……」
「わ、わたしも、もちろん、お腹が……ウニとクリを堪能したい、ですよね……!」
でもこれでも抑えてきた方なのだとラヴは思考する。これぐらい普通の人より『ちょっと』多いだけだと――メイメイ同様に目を輝かせてウニクリご飯を口に運ぶものだ。う~~ん実が厚くて大きくて美味……!
「秋の味覚ですね。これも役得です……あっ。もう一杯いいでしょうか? 今度はウニを……」
「やれやれ――ま、ウニとクリは村人に迷惑をかけた訳だからな。これぐらいの意趣返しはあって然るべきだろう。しかし……村の損壊も大きいな。保存の効くクリを商人に売る事が出来ないだろうか」
更にロウランもグルメの血が騒ぎて箸を進めるものだ。舌の上で躍らせるクリのなんたる極上か……! ウニを食べれば貴重なる味わいが口内に広がるもの……!
一方でジョージはサングラスを整えながら周囲を窺っていた。
ウニとクリの抗争で村の被害は著しい……棘を全て処理すればウニとクリにももっと使い道はないだろうか? せめて迷惑をかけた彼らから直に――村を立て直す資金が得られれば良いのだと思考しながら。
「うふふ。後は、お土産にも幾つか包んでみたいですよね」
「そうですね――お土産として持って帰れるか、一度確認はしてみたい所ですが。後程村の方々も戻ってこられると思いますし……さてさて。ご主人様への良き品となれば良いのですが」
さすればクラリーチェも微笑み携えながら、ある情報屋の下へと持っていけぬかと考えて。リュティスも同様にクリとウニをまじまじと見据えるものだ。
後は村の惨状をそのままにして帰るというのも気が引ける。
きっとご主人様がいらっしゃれば同じことをやったとも思いますし……
「出来る限りアフターケアをさせていただきましょう。
――この地ではこれより、また営みが戻ってくるのですから」
穴ぼこだらけになっている漁村。
眺めて、どこから一体手を付けようかと――リュティスは思考を巡らせるものだ。
だが、ゆっくりとでもいいだろう。
クリもウニも脅威は退け、むしろ良い食材となってくれたのだから。
一息ついてから……また考える事にしようか。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!
ウニクリ戦争これにて終結です。まったく、本当に不毛な戦いでしたね……
ちなみに貴方は、ウニとクリのどちらが好きですか?
それではありがとうございました!
GMコメント
ウニとクリって見分けがつかな……以下詳細です!
●依頼達成条件
巨大ウニと巨大クリ、双方の討伐!
●フィールド
天義南部の海沿いにある漁村が舞台です。時刻は昼。
後述するウニとクリは漁船で派手に乱戦を繰り広げているのだとか……このままでは漁村に壊滅的な被害が訪れてしまいます。その前にウニとクリの両方をなんとか排除してあげてください。
なお、もう酷い状況なので村の被害は気にしなくていいそうです。つまり家などを盾や障害物として活用しても問題はありません。とにかく早く魔物を排除してほしいのだとか。
●巨大ウニ×15
海から侵攻してきている巨大なウニです。全体的に色は黒い。
神秘攻撃のみを行ってきます。その棘は壁一枚程度であれば貫通するとか……
棘を伸ばし、中距離攻撃まで可能とするようです。
また、彼らは水辺近くだとパッシヴで『再生』能力を持ちます。
なお食べると美味です。
彼らの目的はクリの殲滅と人間らを捕らえ、傘下に治める事にあるのだとか。
クリと人間を敵視し、執拗な攻撃を重ねてくるようです――
●巨大クリ×15
山間部から侵攻してきている巨大なクリです。全体的に色は茶色い。
物理攻撃のみを行ってきます。その棘は時折『防無』効果があるとか……
棘を伸ばし、中距離攻撃まで可能とするようです。
また、彼らはパッシヴで『反』能力を持ちます。
なお食すとほんのり甘く美味です。
彼らの目的はウニの民族浄化と人間の奴隷化にあるのだとか。
ウニと人間を敵視し、執拗な攻撃を重ねてくるようです――
●備考
ウニは基本的に海側に、クリは陸地側に位置し乱戦を繰り広げています。
しかし互いに決め手が欠けているのか長期戦になっている様です……暫く乱戦の様子を見ていても構いません。ただ、イレギュラーズがどこかで介入しないと多分いつまでも殴り合ってるので、どこかでは戦場に介入してあげてください。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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