PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Noise>Humpty Dumpty

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●民間警備会社モスクワにて
 ブゥンという音をたてて、蒼いモノアイの光が消灯する。卵形のボディに細い両腕と太い脚がついたパワードスーツである。
 都市迷彩服に同模様のキャップを被った男がいぶかしげに振り返り、そして近くの男たちに問いかけた。
「これから仕事だぞ。なぜ電源を落とした」
 都市迷彩の男はアサルトライフルを背にさげ、肘や膝には戦闘用のプロテクター。胸には防弾のベストがまかれている。
 まさに戦う男といった様相である彼の一方で、慌ててパワードスーツにかけより有線接続を行ってタブレット端末をたたいた男はオレンジのツナギ姿だ。いかにも整備士といった風貌の彼は、顔をしかめて端末を睨む。
「いや、電源は落ちていません。自動操縦モードになっているようです」
「その割には……」
 同じような顔をしてパワードスーツのモノアイを見つめ、近づいていく迷彩服の男。
 このパワードスーツはグースメカニカ製第三世代自動操縦機能搭載型パワードスーツで、モデル名を『ハンプティγ』という。
 童話のハンプティ・ダンプティが名前の由来であることは明らかで、第一世代の同系モデルが転倒や転落にひたすら弱かったことに対するブラックジョークがそのまま正式名称として定着したというものである。
 だが常にして、失敗を学習する者は失敗しない者よりも堅牢である。第三世代のハンプティγはバランス制御に優れるのみならず、転倒や転落、建物の倒壊に巻き込まれ押しつぶされた際にすら優れた復帰能力を誇る。
 それはシステム面にも言えることで、やわなスーツではシステム障害が起きて停止してしまうようなダメージを受けても緊急稼働モードで起動できるという特徴をもち、最悪搭乗者ナシの単独で放置されても設定した拠点に自力で帰還しようとする機能まで持ち合わせていた。
 それゆえ、R社製パワードスーツの大規模暴走事故以来、それにかわる機体として選択されることも多かった。
 ボディはずんぐりとした卵形だがマニピュレーターは優秀で、人間の使う武器をほぼそのまま使える他、軽トラでやっと運べる程度の重火器ですら携行使用が可能なパワフルさをもつ。
 ここ、民間警備会社モスクワでも優秀な働きをみせる備品……だったのだが。
「うわっ!」
 突然驚きの声をあげ、端末を放り出す整備士。
 見れば端末は火花をあげ、有線接続していたアダプタ端子が炎をあげていた。
 慌てて小型消火器で火を消すが、はじけ飛んだ端子は焼け焦げどう見ても再使用は不可能な状態だ。これは部品ごと交換するしかないと考えた、次の瞬間。
 ぶん――と無人のハンプティが腕を振った。
 思わずあげた整備士の顔面にそれはめり込み、そしてコンクリート舗装されたヤードへと吹き飛ばす。
 息を呑む迷彩服の兵士。
 咄嗟にライフルを手に取るが、そんな彼に横から雨のような弾幕が横殴りにぶつかった。
 重機関銃を構えた別のハンプティが、自動操縦モードで立っていた。
 更に数台のハンプティが歩き出し、倉庫に収められていたであろう重火器を取り出しては死亡した兵をヤードに放り出していく。
 彼らはひとつの方向をふりむき。そして一斉に――モノアイを赤く発光させた。

●フォールダウン
 練達(探求都市国家アデプト)の中枢にして最重要となる存在、マザー。
 超AIである彼女はこの国の代表を務める三塔主たちがひざまずく程の存在である。国全体の調律を保つだけの演算能力を持ち、その能力と影響力はデジタルな神と言っても差し支えはない。
 そんな彼女が同系機にして同等の処理能力をもつ兄機からの悪意的干渉を受け疲弊したのはつい最近のこと。様々なシステムから緊急回避的に切り離し致命的な事態は免れたが、練達全土を調律していた存在の切断は、当然練達全土に影響を及ぼした。
「練達の警備会社でポピュラーに用いられるパワードスーツ『ハンプティγ』数十大が一斉に暴走を始めたのです。
 人間を対象に無差別な殺傷を行うという目的で動き始め、外部からの干渉の一切を物理的にもシステム的にも拒絶している状態です。もはや実機を破壊する以外に解決の手立てはなく……既に周辺避難は行われていますが、放置すれば民間人に被害が出るのは確実なのです」
 そう説明するのは『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)である。
「他にも現地の警備会社や民間軍事会社が出動して対応に当たっていますが、如何せん『その手のプロ』が扱う備品の暴走なだけあって戦力低下と人手不足は否めないのです。
 なので、ローレットにも急遽救援依頼が入ったのです」
 依頼内容はきわめてシンプル。避難の完了した都市住宅街にて暴走するハンプティ数台を攻撃し、撃滅するというもの。
「背の高いビルが沢山あるエリアで、ハンプティは避難所へ向けて固まって移動しているとの報告があります。まあ、固まると言っても軍事AIなので、範囲攻撃を警戒しつつ一定の距離をあけつつの連携行動なのですが……」
 そういう細かいところはおいといて、とジェスチャーしてからユリーカは続けた。
「ハンプティは高い防御力と重火器を使った高火力射撃、加えて高い腕力を用いた近接戦闘を得意としています。
 その代わり、壁や高所などを使った立体機動的な攻撃には弱い性質があるので、うまく周辺の地形を利用して戦ってほしいとのことです」
 それらをまとめた資料を差し出し、ユリーカは頷いた。
「後はお任せするのです。ROOで負った傷が、この街をこれ以上蝕む前に、止めて上げてほしいのです」

GMコメント

●オーダー
 都市内でチームを組んで移動するパワードスーツ数台を撃滅して下さい。
 これらは無人のAI操縦で動いており、皆さんが担当するのは都市の住宅街です。
 背の高いマンションビルが建ち並ぶエリアで、二車線の道路をパワードスーツたちが移動しています。

 OP内で前述した通り、パワードスーツ『ハンプティγ』は防御に優れ、怪力で、装備した重火器での攻撃力も脅威です。
 AIでの自動操縦は基地への帰還や歩兵への随伴といった簡単なものしか出来なかったはずですが、危険なバグを起こしまるで兵隊のように連携した軍事行動をとるようになったようです。
 現に、車道を歩く際も範囲攻撃で一網打尽にされないようにある程度味方同士の距離をあけています。

 フィールドはマンションが建ち並ぶビル街と述べた通り、高所から狙いを付けたり壁面を利用してアクロバティックに動いたりといった戦い方が可能です。
 先回りはしていますがあちこち罠を仕掛けるほどの時間はないので、基本的にはその場その場での瞬発的な動きが主になるでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Noise>Humpty Dumpty完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年10月17日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
白き寓話
ルクト・ナード(p3p007354)
蒼空の眼
ウルリカ(p3p007777)
高速機動の戦乙女
オニキス・ハート(p3p008639)
八十八式重火砲型機動魔法少女
耀 澄恋(p3p009412)
六道の底からあなたを想う
耀 英司(p3p009524)
諢帙@縺ヲ繧九h縲∵セ?°
囲 飛呂(p3p010030)
きみのために

リプレイ

●エマージェンシー
 練達都市上空。厳密にはドームに覆われ人工的に天候が操作された擬似的な天空スクリーンの下。『蒼空』ルクト・ナード(p3p007354)はフライトユニットを用い飛行していた。
 見回してみれば、あちこちで似たような破壊や爆発がおきている。
 警備会社や軍事会社の間でそこそこ普及したパワードスーツ『ハンプティγ』が一斉に暴走したとなれば、かなりひどい自体に陥るのは明白だ。
「……なるほど。自動で動くパワードスーツか。連携を取り、かつ対策を講じて共有する……なんともAIらしい兵器だな……感心する」
 便利な道具はその利便性に依存するほど、喪失による傾きは大きい。難しい言葉をわざと使ったが、AIに依存した軍事会社などスマホをとられた現代人くらい万事に手がつかなくなるだろう。
 武力的問題が起きたとき出動すべき団体がそうなってしまえば、問題の規模は数段階飛び越えて深刻化してしまう。
「壊すのは少々勿体ないが……これも仕事だ」
 行くぞ、と声をかけると同じような高度を自由に飛行していた『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)が広げた翼を上下に傾けることで同意をしめした。
「練達、あっち(R.O.O)でもこっち(現実側)でも大変になってるね……。
 ともあれ、できることからしないとね。パワードスーツを倒して止めるよ!
 このエリアに住むヒトたちが日常を取り戻せるようにしないとね」

 作戦通り、指定ポイントにて待機していた『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)は近づく音に顔をあげた。
 大通りを突き進むハンプティの集団。よく連携のとれた彼らは、ヴァイスが姿を見せるとその速度を落とした。
 うかうかと攻撃射程範囲に飛び込むような愚はおかさないということだろう。範囲攻撃対策もとられ、複雑な幾何学模様のようなフォーメーションを組んでいる。人間だと怠慢や練度の不足によって乱れ、かえって被害を大きくしてしまいがちな隊列だが、感心するほどしっかりと、組まれていた。
「機械って便利なのね……。お話は……できそうにないのが、残念だけれど」
 万物と一定の対話ができる彼女でも、一定の目的にそって選択と計算を繰り返すだけのプログラムにはお手上げのようだ。
 強いて言うなら、ハンプティに使われている装甲素材があんまり嬉しそうじゃないということがわかるくらいだろうか。
「それもそうよね。目的から大きく離れて、所有者を傷つけなきゃいけないんだもの」
「暴走する軍事兵器か。まさに『致命的危機(ハンプティダンプティ)』だな。勝手に塀から落ちちゃあくれないだろうが……」
 同じく通りに現れる『怪人暗黒騎士』耀 英司(p3p009524)。
 『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)がライフルのセーフティを解除しながら、ヴァイスを挟んで反対側へと現れると、それを天空に向けた。
「統制の取れた動きといい、外部からのハッキングか何かかな。
 何にせよ、被害がこれ以上広がる前に破壊する。――起動(ブート)」
「――変身」
 英司が剣を突き出して構えると、金色の稲妻と黒いエネルギーが身体から吹き出し彼を覆った。
 と同時にオニキスをマジカルセーフティヴェールが覆い、戦闘用マジカルドレスを装着。
 どこからともなく現れたミニ戦車型ドローンが分離しオニキスの両足にキャタピラブーツを、両腕にパワードアームを、砲身をライフルと合体させ8.8cm大口径魔力砲マジカルアハトアハトを完成させると背部のサブアームに接続された。更にプロペラ飛行した二機のドローンが装着され、ジェネレーターやサブマシンガン、ミサイルポットをコンパクトに展開していく。
 その一方で『DARK KNIGHT』という電子音と共に暗黒の鎧を纏った状態で英司が黒いエネルギーの煙を払い出現。
「『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート、起動――完了」
「怪人H――推参。さぁて、働くか!」

「制御をマザーに依存しまくってるのによく自動操縦と言えたものです、まざこんダメ男は旦那様候補にはなりませんねえっ」
 両手でハートをつくり、片目を通して見る『太陽の翼』澄恋(p3p009412)。
 別にこれで目が良くなったりはしないが、登場時のファーストビューは良くなる。らしい。実際顔アップだった。
「ここは一発か弱さの素晴らしさを身を以て知ってもらいましょう。その殻ぶち破って溶き卵にしてやります!」
「そうですねえ。マザー頼りはいけませんねぇ」
 ブレードの柄に指をかけ、くるりくるりと回しながら呟くウルリカ(p3p007777)。
 彼女たちはそこそこ背の高いビルの屋上からハンプティの一団を、そしてそれを迎え撃とうとしているヴァイスたち。更にははるか上空から降下し遊撃にあたろうとしているアクセルたちを観察していた。
 ウルリカは妖精の羽根めいたスマートフライトユニットを展開するとふわりと浮かび上がった。
「せめて自立兵器の類にはちゃんとマスター死亡時の自動自爆装置を積んでおきませんと」
「電子レンジに入れた生卵のように?」
「そこまで悲惨なのはなくても結構ですが」
 軽くジョークを交わし合う二人の後ろ、スケートボードの端を踏んで立てるようにして持った『特異運命座標』囲 飛呂(p3p010030)は、破壊される街並をちらりと見た。
(俺は再現性東京、練達の外にずっと出たかった。でも別に練達が嫌いってわけじゃないし、マザーに感謝だってある……)
 ボードを倒し、勢いにのって蹴り出すことでビルの屋上から走り出す。
「ここは俺の、俺達の故郷だ。壊(殺)させるものんかよっ」
 大空へと飛び出す飛呂。
 まるで自殺行為のような彼を、飛行したウルリカと同じように自由落下した澄恋が併走する。
 ビル外壁をボードで滑りながら風をかきわけ、飛呂は眼下の……今まさに路上で様子見をしているハンプティの一団をにらみ付けた。
 凄まじい速度で接近(というより落下)してきている一団に気付いたハンプティたちは構え、そしてさらなる散開を始めるが――。
「パワードスーツ対決と行きましょう。AAS戦闘起動!」
 ビル外壁を走る澄恋と飛呂の装着していた安全リードをそれぞれ掴んで減速させてから手放すと、ウルリカは剣から衝撃波を放った。


「ガンブレイズ・エアハンマー」
 上を向き対物ライフルを発射するハンプティ。
 さすがにそんな角度で撃つものではないせいか、狙いはわずかにそれた。
 対するウルリカも高所からの射撃だけあって狙いがブレたが――今はそれでいい。
 交差する衝撃がウルリカ後方のビル外壁と、ハンプティ側面の足場を破壊する。
 直後にズドンとスーパー花嫁着地(ブーケトスを最上部でキャッチするための訓練で会得したもの)で地面を軽く破壊した澄恋が、ザッと片足だけを伸ばし反対側の腕を水平に伸ばしふぁさっと髪をなびかせて顔を上げるクールなモーションをした。
「最近流行りと聞いた者で」
「そうか?」
 飛呂はボードのバネを上手に利用して着地すると、その勢いで加速。ハンプティ集団の間を蛇行するよううに駆け抜け、斜めになった鉄板を使い派手に跳躍すると斜め上から狙撃銃での射撃を敢行した。
 反対側からは澄恋が薙刀を握り水平に足下を薙ぐように繰り出していく。
 ガトリングガンを装備していたハンプティはどちらを優先して狙うべきか迷ったあげく、澄恋のなぎ払いと飛呂の射撃を両方うける形となった。
 トドメとばかりに低空飛行モードになったウルリカがすれ違いざまに腕を切り裂いていく。
「所詮タマゴはタマゴ……形状的長所で妥協しても孵化には至らず……といったところですか」
 直後、残るハンプティたちが一斉射撃を繰り出してきた。
 それも澄恋だけを狙うというなかなか嫌な反撃の仕方である。
「ッ――!」
 薙刀を回転させて弾幕を防ぐも、飛んできたマイクロミサイルの直撃をくらって吹き飛んでいく。
「澄恋さん!」
 ボードで急カーブをかけ、吹き飛んだ澄恋をキャッチしながら距離をとる飛呂。
 が、それでいい。
 追撃をはかろうとしたハンプティに上空から多目的炸裂弾頭『MRBL』及び粘着射出弾頭『AGBB』が連続して打ち込まれ、ターンの動きに失敗したハンプティが転倒。特殊な電磁波がハンプティの動きを鈍らせ、内部に侵食した物質が内部構造を徐々に破壊しているのがわかった。
 追跡しようとした他のハンプティが隊列を意識してその速度を落とした。
 反撃に出ようにも、ルクトは狡猾に離脱。かなりの高度を飛行している筈にも関わらず、その機動力はあまり落ちている様子はなかった。
 走っておいかけられるような相手ではないと察したハンプティは次の行動を計算するが、その間に凄まじい速度で急降下をかけてきたアクセルが澄恋を抱きかかえる形で急速離脱。飛呂もその脚を掴んで離脱した。ウルリカに至っては低空飛行状態ならアクセルより速いのでつかまる必要はない。そうやって移動しながらアクセルは治癒魔法を発動。
「相手に狙いを絞らせないように動くよ!」
「絞ろうとしても難しいだろ。そろそろ『あっち』が追いつく」
 タイミングをややずらす形で、待ち構えていた英司たちがハンプティへ距離をつめてきた。
「これでとどめだよ。マジカルアハトアハト・ツインバースト……!」
 オニキスはマジカル☆アハトアハトに加え拡張武装を目くらまし代わりに展開。更に8.8 cm大口径魔力砲マジカルゲレーテを構え、二丁同時に発射した。
 隊列を器用に維持するハンプティといえど、上から殴りつけ特定固定の足を鈍らせついでに高機動力で引きずられれば隊列は乱れてしまう。
 そうしてできたかすかな『ライン』を見つけ、ルクトはぶっ放した。
 それだけではない。直後にヴァイスがルクトの前に被さるように滑り込み――。
「手加減なしで行くわよ。壊れちゃったら、ごめんなさいね!」
 『薔薇に茨の棘遂げる』と呼ばれる術式を発動。自然界から引き出したエネルギーを暴風へと換え、破壊的な波動をハンプティたちに叩きつけた。
 三体のハンプティが一斉に打ち抜かれ、装甲をひしゃげさせ、そして一斉に吹き飛んでいく。
 隊列の乱れはもちろんのこと。玉突き事故のように建物の壁にぶつかり密集した相手に何をすべきかは明白である。
「ハッ、串刺しだぜ。俺も余計な発言でケツの穴を増やされねーよう気ぃ付けねぇとな!」
 笑い飛ばしながら突っ込んだ英司は己の剣でハンプティを斬り付けわずかにノックバックさせると、その場から離れようとする動きを封じた。
 そして、クイッと指で手招きをする。
 オニキスの120mmマジカル迫撃砲凍結弾やアクセルの範囲攻撃魔法が炸裂し、密集したハンプティがまとめて機能を停止したのだ。
 まほうを放つ構えをとったままのヴァイスが、突き出した自分の指を見る。
「この力、こういう相手と状況には便利ね?」
「集中砲火を浴びせたツケは払って貰いますよ」
 そこへ、復帰した澄恋が猛スピードで突っ込んでいった。
 ルクトとウルリカに引っ張られ加速する形になった澄恋は、まるでスリングショットのように打ち出されハンプティへと急接近。ヒートアックスを手に反撃しようと構えたハンプティの脇をすり抜けると、澄恋は手に何かの機械を握っていた。
 それがハンプティにとって重要なパーツであることは、ぴたりと動きをとめたことから明らかである。
「ハート――キャッチ」
 そして、手の中でぐしゃりと握りつぶす。
 まるでそれがトリガーになったかのように(割と偶然にも)ハンプティは爆発四散した。
「ヒューッ! 澄恋、最高の益荒男ぶりだ!!」
「益荒男(かよわいおとめ)!?」
「ルビが強い」

 次々と破壊されるハンプティ。
 これ以上抵抗したところで残る機体も破壊されるのがオチだ。
 集団戦において戦力の20%を喪失した部隊は敗北するといわれ、即座に撤退へ移行すべきという話がある。ハンプティもそれにならってか、踵に折りたたんでいたダッシュローラーを展開して一目散に逃走――しようとしたのは失敗だった。
 機械に『焦り』などないとは思うが、あまりに滅茶苦茶に動き回るイレギュラーズに対して対応処理が遅れたのだろう。自分たちが機動力で引きずられたという経験を計算に入れていなかったようだ。
「遅い」
 回り込み、反転するルクト。展開するミサイルポッド。
 飛行ユニットを使い高所に位置取ったオニキスもまたミサイルポッドを展開し。二人は同時にそれらを発射。
「――ガンブレイズ・エアハンマー」
 更に真上をとったウルリカが、指向性衝撃波を撃ち込んだ。
 多方向からの衝撃にひしゃげるハンプティ。
 その横をなんとか駆け抜けようとしたが、ボードを水平に立てて三脚代わりにした飛呂の射撃射程外に出ることはかなわなかったようだ。
 狙撃銃によって脚部のローラーを破壊され転倒するハンプティ。
 咄嗟にライフルをかざし反撃に出ようとするも、真上から流星の如く急降下してきたアクセルの魔法を込めたキックによってライフルが粉砕される。
「今だよ!」
 叫ぶアクセル。
 ヴァイスが放つ不思議なエネルギーの奔流がハンプティを包み込み、反撃のための機能を『なだめる』かのように停止させた。
 澄恋の薙刀と英司の剣が同時に撃ち込まれ、ハンプティの両腕が切断。
 バチバチと火花を散らしながら、ハンプティは力尽きたかのように目の光を消灯させた。


 破壊したハンプティの中で、損傷が少ない個体を選んで調査が行われた。
 中でもヴァイスよって破壊された個体が調査するのに丁度良く、両腕や脚を落とし武装を解除した、それこそでかい卵のようになったハンプティをバラして内部のAIユニットを取り出した。
 AIユニットといっても手のひらサイズのパソコンのようなものである。記録装置と演算装置の塊だ。重要なのは、その中に記録されているプログラムコードだろう。
「単なるライバル企業の妨害にしては規模が大きすぎる。もっと大きな組織か。
 それとも練達全体に関わるものか。何にせよ、この件だけで終わりそうにないな……」
 オニキスのつぶやきはいかにももっともだ。
 まずはこの騒動を物理的に鎮圧するのが先決だが……。
「ある程度区切りがついたら、調査に回しとこう。事故ってのは、調査して再発を防止するもんだ」
 英司の言葉に、仲間達もまた頷いた。
 街の被害はまだ収まっていない。仲間達は各々のうけた次の依頼を果たすため、移動を開始した。
 スケートボードをおろし、滑り出す飛呂。
「これ以上、故郷を壊させねえ」

成否

成功

MVP

ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
白き寓話

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

PAGETOPPAGEBOTTOM