PandoraPartyProject

シナリオ詳細

時期尚早のファントムナイト

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「よし、じゃあこれとこれは明日中にお願いします」
「はい。あとは発送順で宜しいですか?」
「大丈夫です。随時お願いします」
 其れはいつものローレットの風景。
 一日の終わりに書類をまとめた事務員が、時刻通りに郵便を受け取りに来た郵便屋に書類を託す。
 しかし今日は――
「ああああッ! ちょっと待った待った待っ……」
 少し違っていた。
 丁度郵便屋が出て行って、自転車の音が遠ざかっていった頃。
 とある小太りの男が慌てたように郵便屋を追いかけ……はあ、と肩を落とす。
「何の騒ぎなのです?」
 一先ずの終業(正確には深夜勤務の事務員たちとの交代時間だ)にざわつくローレットの中、男の声はよく響いた。いつも元気に皆を案内している『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)がひょいと顔を出し、興味深そうに背中の翼をはためかせた。
「ああ、ユリーカちゃん。なんてことはない、ちょっとした間違いがね……」
「間違いはなんてことなくなくないのです。何を間違えたです? お名前ですか?」
「住所と名前だね。多分不在で戻って来ると思うけど……被害額のやりとりの書類を間違えた処に送ってしまったみたいなんだ」
「あれま。其れは大変なのです! 何なら取りに行くですよ?」
 足には自信があるのです。そう言ったユリーカを、いや、と別の男性事務員が存外真面目な顔で止めた。
「やめておいたほうがいい。何せ間違えた名前は今調べると死んだ人だし……何より、今ではゴーストハウスだと誰も近付かないと評判だ。戻って来るのを待った方が早いだろうね」
「ああ、やっぱりそうかあ……参照するリストを間違えたんだな。面目ない」
「間違いは誰にでもあるです。おけまる、では書類を待ちましょう! でもちゃんとレオンに報告するですよ?」
「判ってるよ、判ってる……其れが一番気が重いんだ……」
 という訳で、其の書類が返って来るのを待っていたのだが――



「返ってこなかったです」
 そう言うユリーカの顔は若干青褪めていた。
「何日待っても……返ってこなかったですよ……! ちなみに場所は貴族さんの住宅街の傍です。すっごく大きなお家らしいのですが、見事にゴーストハウスなので放置されているです」
 イレギュラーズの皆さんなら簡単ですよね?
 ポストに入っている筈ですもんね? 其のお手紙を回収するだけで良いですよ。
 そういうユリーカの瞳はいつになく不安に揺れていた。
「もうすぐファントムナイトが近いといっても、こういうホラーなのは勘弁して欲しいのです! 兎に角、ローレットにとっては重要な書類なので、其の所在を突き止めて持ってきて欲しいのです!」


●逸話
 情報屋の少女曰く。
 其の家には兎に角噂が多い。
 取り壊そうとした者が祟られて死んだだとか。
 鏡を覗いたら、血まみれの己が映っていただとか。
 肝試しに入った子どもたちが、なぜか「もう一人」を見ただとか。
 ポルターガイストで家具がぶんぶん飛ぶのを見ただとか。
 そもそも夜に明かりがついているだとか。
 騎士鎧が動いただとか。
 あと、そうだ。
 ゴーストがいるというのは定番だが、中には話が通じる奴がいるらしい、とか。

GMコメント

 こんにちは、奇古譚です。
 ファントムナイト! 素敵な響きです。其の前にちょっと肝試ししましょ。
 どんどん驚いて下さって結構ですよ。

●目標
 書類を入手せよ

●立地
 幻想貴族街の外れにあるゴーストハウス(2階建て)です。
 所有者の名前は「コワーイ男爵」となっていますが彼は既に故人です。
 ポストが入り口にあります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●エネミー
 ゴーストxいっぱい
 騎士鎧xそれなり
 ポルターガイストx1部屋
 などなど

●ちょっとメタ情報
 オープニングにある通り、様々な心霊現象が貴方達を待ち受けています。
 きっとオープニングにない心霊現象もあるでしょうが、オープニングにある心霊現象は全て起こると考えて下さい。
 他にも様々な恐怖が待ち受けているでしょう。
 手紙は「一番大事なものを仕舞っておく部屋」にあります。
 なのでポストは空っぽです。中には何故か鍵束が入っています。


 此処まで読んで下さりありがとうございました。
 アドリブが多くなる傾向にあります。
 NGの方は明記して頂ければ、プレイング通りに描写致します。
 では、いってらっしゃい。

  • 時期尚早のファントムナイト完了
  • GM名奇古譚
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2021年10月24日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
閠(p3p006838)
真白き咎鴉
ネーヴェ(p3p007199)
とべないうさぎ
レニー・エメディア・オルタニア(p3p008202)
半百獣のやんちゃ姫
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
冬隣
エドワード・S・アリゼ(p3p009403)
ドキドキの躍動
囲 飛呂(p3p010030)
点睛穿貫
ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)
陽気な骸骨兵

リプレイ

●という訳でゴーストハウスのポスト前です
「何が幽霊だ! 俺達はユリーカさんにも頼られてるイレギュラーズだぞ!」
 お、君、再現性東京出身にしては珍しいね。そんな『特異運命座標』囲 飛呂(p3p010030)である。まあ全部一目惚れしちゃったユリーカ・ユリカ嬢の為なんですけどね。あとちょっと顔が青いですね。
「書類取りに行くだけって聞いたのにー! なんで、なんでポストに書類がなくて」
「鍵束が……入ってるんでしょう」
 『緑の治癒士』フラン・ヴィラネル(p3p006816)と『うさぎのながみみ』ネーヴェ(p3p007199)は泣いたり凍り付いたりしている。そりゃね、ポストにあるに決まってるじゃん書類とか超簡単じゃんと思ったら書類の代わりに鍵束がコンニチワしてるとかね。怖いよね。
「完全にホラゲの導入じゃねーか……」
 流石の飛呂くんも吃驚です。そう、此処はホラゲの常識が通じる世界。つまり逆に言うと人間界の常識はとっとと投げ捨てておいた方が良い。まあ、礼儀を欠くのはお勧めしないけどね。
「どうやら、簡単なお仕事、とはいかないようです、ね……」
 布で覆った視界を人魂と黒狼に助けて貰いながら、『真白き咎鴉』閠(p3p006838)が困ったように呟く。
「この鍵束は恐らく、この家の、もの、でしょうか……」
「まあそうだろうね。というか、この鍵束取っても良いのかな? 鍵があって書類がないってことは、書類はこの家の中……だよね」
 『半百獣のやんちゃ姫』レニー・エメディア・オルタニア(p3p008202)がちょいちょいと鍵束に触れる。多分本命(のホラー現象)は家の中で起こると思うから、此処ではちょっと勇気を出して鍵束を取る。と。

 ――ぎいい……ばたん。

「いいぃぃぃやああああああ!!!」
「ひえ……!!!」
 フランとネーヴェの絶叫が響き渡った。
 この家はですね、まず鉄柵の門がありまして。その門の中にポストが入っているというちょっと不思議な構造をしていたんですね。恐らく鉄柵の門は後から付けたんじゃないかとも言われていますが其れはさておき。
 イレギュラーズがポストを確認するために開けた門が、レニーが鍵束を取った瞬間に閉まった。これはもうウェルカムですわ。
「オイオイ、大丈夫か? ほら、深呼吸しようぜ。吸ってー」
「すうー」
「すうー」
「吐いてー」
「はー」
「はー……」
「よし」
 『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は発光する薄布をかぶって、自らが光源になってくれている。そして怖がるフランとネーヴェを落ち着かせてくれた。良い兄貴だ。
「うむ、これは見事に誘い込んでおりますな……折角のお誘いですし、張り切ってお邪魔いたしましょうぞ!」
 ぺかー。
 『陽気な骸骨兵』ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)の角が輝く。しかし彼の容貌は骨。照らされた骨の容貌は性格に反して禍々しく。
「あああああ!! 骸骨!! 塩!! 塩!!」
「まいてくださいまし!! まいてくださいまし!!」
「あああおやめなされ、意外ッ其れはスケさんですぞ!」
「はっ!? 仲間だった!?」
「……霊にも、よいものと、悪いものがいます。礼儀を尽くせば応えてくれる方も、いますよ」
 閠が穏やかに言う。うんうんと其れを聞いて頷くのは『ドキドキの躍動』エドワード・S・アリゼ(p3p009403)。
「じゃあオバケの友達も、作ろうと思えば作れるって事だよな?」
「そう、なりますね。本来なら、安らかに眠って頂くのが、一番、なのでしょうが……」
「よーし、じゃあ鍵もゲットした事だし、家に入ろうぜ! どっちみち、書類を持って帰るなら入らなきゃいけないんだし!」
「ですな!」
 エドワードの言葉に、塩塗れのスケさんはじめ全員が頷いた。本当は嫌だけど、というのも数名いる。


●ここがあのゴーストのハウスね
 鍵束の管理はレニーが行う事になった。
 最も物々しい鍵を入り口の鍵穴に差し込むと、見事にがちり、と噛み合う。皆が見守る中で鍵は開き、ノブを下ろすとぎぎい、と古びて軋んだ音を立てながら大扉が開いた。
 ――見事にゴーストハウス、という風貌だった。
 蜘蛛の巣があちこちに張り巡らされているが、蜘蛛の姿は見えず。何故か荒れ果てた室内に、積もりに積もった埃。其れ等が皆がそれぞれ持つ灯りを反射して、白く輝いている。
「……何の気配も、今は、ない、ですね」
 閏が呟く。其れにほっと胸を撫でおろすフランとネーヴェ。或いは侵入者を警戒して隠れているのかもしれないが、少なくとも玄関ホールにはゴーストはいないようだ。
 ……はっ! とフランは我に返る。あたしが一番先輩なんだもん、今回は頑張らなきゃって決めたのに!
「れ、レニーさん! 鍵の数は?」
「数? えーっと……玄関のものを除けば4つだね。あ、一つ札が付いてる」
「札?」
「“食堂”だって」
「……ぜってー何かアイテム補給とイベントがあるやつじゃん……」
 飛呂が頭を抱える。
「イベントがあるならいいんじゃねーか? 書類に一歩近付くって事だろ?」
「そうだけどなエドワード、ホラーなイベントって嫌な予感しかしないだろ」
「まあ……うん」
 そうだね……と友人たるエドワードは目をそらして頷くしかなかったのだった。ほのぼのイベントが起こる訳ないじゃん……此処で……
 しかし此処で折れる訳には行かない。あの涙目のユリーカさん(天使)を思い出す飛呂。
「よっし。じゃあ取り敢えず、何かあったらいけないから固まって動こうぜ。こういうのはバラけたらヤバいって小説にもゲームにもあるからな」
「そうだな、俺も賛成だ。あと、書類を置いていそうな場所だが――主人の寝室、或いは書斎などにはないか?」
 アーマデルが述べる。其処に金庫を置いたり、見られたくないものを隠したりする者は少なくない。大切なものは身近に置いておきたいものだと。
「そう、ですね……わたくしも、大事なものは……傍に置いて、おきたい、ですが……書類を大事にする意味、とは……?」
 ネーヴェが努めて冷静に述べる。確かに、と首を傾げる一同。
「ホホホ。まあまあ、此処で考えていても答えがみつかるワケでなし。まずは札が付いている食堂に行ってみませんかな?」
 何故かこのハウスに懐かしさを覚えながら、ヴェルミリオが提案した。反対する者はいない。


●だから行くのは嫌って言ったんだ(言ってない)
「いやあああああああ!」
「ああああああああ!?」
 フランとネーヴェの悲鳴がこだまする。其の悲鳴を掻き消すように、グラスがヒュンと飛んで壁にぶつかり、ぱりんと良い音を立てて割れた。
 現在地・食堂。ポルターガイストの真っ最中です。
 机が飛ぶ! 椅子が舞う! 塩胡椒が調味料が、あーっいけませんお客様!
 しかし引き返そうにも鍵は閉まっているのだ!
「うわマジで飛んでるんだけど……これどうすりゃいいんだ!?」
「ホホホ、扉は開きませんぞ。さっきから試しております」
 がっちゃがっちゃがっちゃ。ヴェルミリオがドアノブを回す音が虚しくこだまする。
「……」
「どうした? 閠」
「……お手玉」
「え?」
 アーマデルは凄く場に似合わない言葉を聞いた気がした。
「お手玉、しています、ね。家具を……」
「お手玉!? うわっ、エドワード君危ない!」
「え!?」
 エドワード目掛けて飛来した椅子。
 レニーが彼を引っ張って、彼がいたところに椅子がぐわしゃん、とぶつかった。
「……会話を、してみます」
「出来るのか?」
 アーマデルは問う。実は彼も霊魂疎通のスキルを持っているので、見えているのだ。お手玉をするメイドらしき霊が。しかし顔が明らかにヤバいので、疎通は難しいと思っていたのだ。言わばヒステリー女が手に取ったものを手当たり次第ぶつけるような、そんな雰囲気がする。
 だが其処でめげないのが閠。対話が出来るならしてみたい。きっと話す事が出来る筈だと。
 なのでアーマデルは補助に徹しようと決めた。出来るなら、霊には心残りを残して欲しくない。其の思いは彼も同じだからだ。
「……あの」
 閠が話しかけた。
『…………』
「……あの」
『……何よ。行き成り私室に入ってきて話しかけるなんて莫迦なの?』
「えっ、すみません。ボクは、閠、といいます。あの、私室……ですか?」
「アーマデルだ。私室と言うが、此処は食堂では?」
『アタシは厨房係。だったら台所はアタシの私室でしょうが。文句あんの?』
 ぶおんぶおん。
 机と椅子をお手玉しながら女の幽霊が言う。机を投げられたらきっとひとたまりもない。後ろでは仲間たちが恐る恐る二人の動向を見守っている。レニーは肉球をフランとネーヴェにぷにぷにして慰めている。
「文句は、ないんですが、其の……ボクたちは、捜しているものが」
『探し物? 何』
「書類だ。最近此処に書類が届かなかったか? 誤送で此処に届いているそうなんだが」
 閠の言葉をアーマデルが継ぐ。女幽霊はそばかすを散らした顔を不機嫌そうに歪めたまま、少し黙した。思い出している様子だ。
『そういや、執事のゴバスチャンが何か持っていったのを見たわね』
「ごばすちゃん」
『あいつ、何でか知らないけどいつまでも逝かないのよ。別に悪事を積んだ訳でもないから地獄に落ちる心配しなくても良いと思うんだけど、ずーっと此処にいるの』
「……貴女は?」
『アタシ? アタシは……此処の食事を預かってきた訳だからさ、皆が逝っちまうまでは見離せないっていうか。言わせんなよ』
「す、すみません……では、書類は其の、ゴバスチャンさん、が……?」
『そうじゃなくても、大抵の事はアイツに聞けば判るよ。で? 終わり?』
「あ、……はい……ありがとうございました」
『ふん。アンタが礼儀を知ってて助かったね。此処で全員とり殺してやろうかと思ったけどやめた』

 どすん! どすん! どん!

 机と椅子が元の所に文字通り落ちる。埃がぶわっと舞い上がり、アーマデルと閠の視界を閉ざした。閠は元々視覚を閉ざしているのだが――感覚で、厨房係の幽霊が遠ざかるのを感じて、
「あ、あの……!」
『うっさい、さっさと行け。お礼とかそういうの要らないから』
「……」

「おーい! そっち、大丈夫かー!?」
「扉が開きましたぞー!」
 仲間たちの呼ぶ声に、閠とアーマデルは顔を見合わせる。
 礼が要らないというのなら、良いのだろう。けれど。
「……後で、お酒を……食堂前に、置いておきましょうか」
「そうだな」
 二人は皆の所に帰って来る。ほんの数mの距離だったが、歓迎は熱烈である。

「閠さぁぁん! アーマデルさんー!!」
「ご無事で、よかった……! 家具で、殴られたりしたら、どうしようかと……!」
「なんとか、無事、です。霊も……悪い方では、なく」
「ああ。書類の手掛かりも判った。ゴバスチャン……執事の霊が何かを知っているかもしれないそうだ」
「成る程。じゃあ次は執事探しだな!」
 と言いつつも、エドワードはそわそわと食堂の奥を見ている。
 初めて見たオバケと友達になれないか気になっているのだろう。閠は気配で其れを察して、そっとエドワードに耳打ちした。
「後で、お供え物をしますから……其の時に、話してみたら、どうでしょうか」
「……! お、おう! あとあと、執事さんに話す時、オレの通訳してもらってもいーか?」
「はい。勿論、です」
「よし、じゃあ行くぞー」
「行きますぞー」
 がちゃり、と食堂の扉が開いた。
 すると、ぬるり、と其処から半透明の手が入ってきて――


●バックストーリーは突然に
『ゴバスチャンと申します』
 半透明の男は歩きながらそう名乗った。
「ヴィ、ヴィラネル様、ヴィラネル様……しっかり……」
 ネーヴェは塩の入った壺を両手に持ち、気を失ってしまったフランに呼び掛けている。其れをおぶっているのはアーマデルだ。
 此処は2階、階段を上って奥へと到る道。突然姿を現したゴバスチャンにパーティは一時筆舌に尽くしがたい大混乱に陥ったが、寧ろゴバスチャンが余りに冷静だったのでなんとか散り散りに逃げ出す事だけは避けることが出来た。
『驚かせて申し訳ありません。我々としても、貴方がたを長い間此処に滞在させるのは如何なものかと思いまして、此方から出向いた次第です』
 其の声は飛呂やエドワードたちには聞こえないけれども、不思議と其処に“何かが居て、穏やかに喋っている”という気配だけは判った。閠とアーマデルははっきりと彼を視認している。同時に、2階に上がった途端に宙を浮遊するゴーストが次々現れたのも判っていたが――皆の精神衛生を考えるに、言葉にするのは憚られた。
『ずっと待っていたのです。我らの宝を預けるに値する人々を』
「……宝、ですか?」
『宝と言うと言い過ぎかもしれません。しかし、主の心の寄る辺ではありました。主は優しすぎたのです。貴族特有の腹の探り合いに疲れておられました』
 先を行くゴバスチャンの背はやや丸い。老いて、死んで、尚。主に尽くし何を未練とするのか。
『流行り病でした。主治医が気付くには遅く、一人死んで、二人死に、そしてあっという間に屋敷はがらんどうになったのです。私も其の一人でした』
「流行り病……皆さんお熱とかありませんかな? スケさんは骨だから大丈夫ですぞ」
「流行り病? 其れは他の貴族の人は大丈夫だったの?」
 レニーが問う。
(※アーマデルが通訳をしてくれています)
『ええ、幸いこの屋敷で食い止めることが出来ました。しかし其の為には、この屋敷を封鎖する必要がありました。一年経ち、五年経ち、十年経ち……やがて忘れ去られたこの屋敷には、様々な曰くが付くようになったのです』
「成る程。じゃあ取り壊そうとして祟られたとかいうのは……おいエドワード、引っ張るなって」
「え? 俺、引っ張ってねーけど?」
「え。」
 咄嗟に手を振り払う飛呂。道理で妙につめてーと思ったんだよ!!!
『我々が望んだのは安寧です。祟り殺すなどしません。そんな我々の……心残りが、此処にあります。貴方がたのお探しのものも』
 ゴバスチャンは部屋の前で立ち止まった。部屋の前には一つの封筒。
 そうして、どうぞ、と客人を促す。
『死しても我らが主の部屋。許可なく入る事は私には出来ません。お客人様、どうか……主を宜しくお願い致します』

「う、う~ん……?」
「あ、あ、ヴィラネル様……! 良かった、今、封筒が見付かって……」

「フム。開けても良いんですな?」
『どうぞ。鍵はお持ちの筈です』

 ――がちり。
 レニーが取り出した鍵は、ぴたりと鍵穴に嵌まった。


●帰路、月に照らされて
「ゴバスチャンさんは、あの後天国に行ったの?」
 フランが問う。
「……だと、思います。お姿を、見ませんでしたから」
 閠が言う。
 ホホホ、とヴェルミリオが笑った。
「其れにしても、フラン殿の次はネーヴェ殿が気を失ってしまうとは」
「ああ。まあ、あんなものを見たら仕方がないだろう」
 アーマデルがおぶっているのは、今度はネーヴェである。悪夢にうなされているのか、うーん、と唸っていた。
「まあ、あたしはこう見えて治癒士だからさ」
 フランが言う。
「ああいうのは――死体は、別に怖くないんだよね」

 主の部屋に入って彼らが見たのは、椅子に座ったまま死した主の遺体だった。
 最早腐臭すら漂わぬ、骨へと変わりゆく過程の姿。
 其れを見てフランははっと気を取り戻し――入れ替わるように、ネーヴェが気を失ってしまったのだった。
 そして、其の傍にいたのが……

「なぁご」
「あぁこら、じっとしてろって」
「エドワード、大丈夫か? 何なら俺が抱くけど」
「わ、私も抱いてみたい!」
「だ、大丈夫だって! レニーは……そういえば、鍵束はどうしたんだ?」
 エドワードの腕の中には、一匹の黒猫。
 主が愛した、心の寄る辺。
 封鎖された屋敷から抜け出す事かなわず生き延びた、小さな命だった。
「鍵束……ああ、扉を開いた時に誰かが持っていったような感じがして……気が付いたらなくなってたよ。ゴバスチャンさんが持っていったのかな?」
「まあ、屋敷を封鎖する意味ももうありませんからな。ただの開放的なゴーストハウスになったという訳ですな! スケさん、まるで実家のような懐かしさを感じておりましたぞ」
「まあスケさんは骨だしなぁ」

 あの後、イレギュラーズは屋敷の裏手に主を埋葬した。
 きっとゴバスチャンの望みはこれだったのだろうと思ったから。
 閠とエドワードは食堂前にお酒を備えたが、食堂は無音だった。
 彼女もまた、ゴバスチャンを見送るという望みを果たしたのかもしれない。
 ゴーストハウスからゴーストは消えたのかもしれない。そうであればいい。怖いとかではなく、彼らに安らぎがあれば――
 フランはふと帰り道の影を見下ろす。月を背にした影は凸凹していて、少し笑ってしまった。戯れに数える。8つ。……8つ? ネーヴェはアーマデルがおぶっているから、影は7つのはずで……

「……きゅう」
「フラン殿ー!?」
「フラン!? どうした!?」

 なぁう。
 黒い老猫が笑うように鳴いた。

成否

成功

MVP

閠(p3p006838)
真白き咎鴉

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
エピソード入りきらなかった!!!
書いててすごく楽しかったです。バトル成分皆無でした、すみません。
皆さんを生き生きと書けていたら良いな、と思います。
生き生きし過ぎて口調とか間違えていたらすみません。
MVPは死した魂に敬意を払う貴方へ。
死した魂と通じ合う貴方達へ、称号をお送りしております。ご確認下さい。
行きも怖い怖い、帰りも怖い。
ご参加ありがとうございました!

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