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シナリオ詳細

<Noise>再現性歌舞伎町1980:泡の終焉

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●永遠に覚めぬ夢など
 札束が雨のように降る町があった。
 練達の片隅。再現性歌舞伎町1980。俗に『現代日本』と呼ばれる世界から召喚され、バブルに生まれバブルに生きた人間達が永遠に弾けない泡の町で覚めない夢を見続けるための町。
 純金の時計も高級スーツも人の頬をたたけるほどの札束も、すべて狸の葉っぱが如き幻術で作られたその町は、今日も朝から晩まで狂乱と夢が続く……かに、思われたが。
「ぜんぶ……なくなってもうた……」
 眼帯をつけたテクノカットの男、鮫島五浪はあんぐりと口を開け、魔法の解けた町を見つめていた。

 練達という国は、良くも悪くも技術に頼っている。
 その最たるものが、超AI『マザー』による演算能力だ。
 あまりに強力な性能ゆえに、定期メンテを行うだけで町一つを覆うレベルの幻術を維持することだって可能である。……だがそれが、ある日突然停止したなら?
 ROOの攻略にいそしむ練達中枢。だがそんな折、マザーは外部からの干渉を受けて深刻なエラーに見舞われた。練達においてすべてに優先される存在の疲弊に、その回復と休息を必要としたセフィロト。だが練達国において何よりも優先される存在の疲弊は、そのまま練達国全体を巻き込む問題へと発展するのだった。
 そのひとつが、『再現性歌舞伎町1980』の幻術(システム)が停止するという事件である。

 粗末な服と纏い、土塊の腕輪をし、何の価値もない紙束を握りしめた男が発狂したようにビルの壁へ頭を叩きつけ続けている。
 ボディコン姿の女が羽根のついた扇子をおとし、よろめきながら外をどこまでも歩いて行き、そしてナイトクラブのネオン看板が泥のように溶けていくさまを見て膝から崩れ落ちた。
「こりゃあ……マジでどうなった!? あちこち滅茶苦茶じゃねえか!」
 店から飛び出してきたオラン・ジェット(p3p009057)がポン刀片手にきょろきょろと周りを見回す。
 この町のホストクラブ『シャーマナイト』に務める彼にとって、町崩壊レベルのこの事件に敏感にならないわけがない。
 幸いにして、『シャーマナイト』は本物志向を貫いていたために幻術性のシャンパンや調度品を置いておらず一切の変化はないが、それでもダメージは甚大だ。
 常連客のマダムが道ばたで泣き崩れているのを見て慌てて駆け寄った。
「ぜんぶ、ぜんぶ嘘だったのよォ……! バブルはとっくに……とっくに……!」
 アスファルトの地面を素手で叩き続けるマダム。手に血がにじみ、化粧は涙で崩れていた。
 そこへ、ラフな格好をした道頓堀・繰子(p3p006175)が歩いてくる。
「なんや、天変地異でもおきたん?」
「いや、まあ……そうとも言えんのかな……」
 ROOにあまり関わってなかった繰子にとっての感想はもっともなものだ。
 オランはつい最近まで(とても人には言えない格好で)プレイしていたので知っているが……。
「練達のマザーがやられちまったんだ。おかげでこの街は……」
「この街だけじゃあ、ないわね」
 パンツスーツを着てポケットに手を入れたゼファー(p3p007625)が、ハアとため息をついて首を振った。
「練達全土が滅茶苦茶よ。システムへの依存が強いほど影響は大きいから……まあ、ココはかなり酷い方よね」
 マダムはオランを払いのけて、発狂したように叫びながらどこかへと走っていく。
 オランは屈んだまま、だらんと両手をおとした。
「どうしたら……。俺、今日は店長に店任されてたのに……」
「あら。だったら座ってる暇はないんじゃない?」
 スタンダップ、と小さく言って指で手招きするゼファー。
 彼女のふりかえった先へ繰子も同じように振り返り、そして『うげ』と顔をしかめた。

●滅びと抗争
「おはよー、みーなさーん」
 両手に黒い手袋をはめ、赤いスーツを着込んだロングヘアの男。彼を先頭に、何十人という規模のヤクザ風の男達が続いている。丁寧なことに、全員が赤いジャージ素材の上着を着ていた。
 先頭の男はマイクを手に取り、ぱたぱたと手を振る。
 ヒッピー風の髭をした口でにやりと笑った。
「俺は紅丑組組長、紅丑ってモンだ。かったい結界に守られてたが……それも今日まで。ごくろーさん」
 ――弦竜会 二次団体 紅丑組 組長
 ――紅丑 弓穂(べにうし ぎゅうほ)
「なんやおどれら」
 対抗してぞろぞろと現れたのは眼帯にテクノカットの男、鮫島五浪。
 ――九美上興和会 二次団体 鮫島組 組長
 ――鮫島 五浪(さめじま ごろう)
 にらみ合う二つの集団。
 紅丑はビッと中指を立てて舌を出した。
「おめーらの時代は終わりだつってんだよ。さっさと俺らにシマぁ明け渡せや。魔法の解けたこの街じゃあ、どいつもこいつもザコだろーが、よお!?」
 対して、鮫島はバットを肩にひっかけて首をこきりと鳴らす。
「バブルの生き残り、ナメとったらあかんで。よう、シャーマナイトの……」
 振り返り、オランの顔を見た。
「なんちゅったか、店長が目ぇかけとる新人の」
「オ、オランです」
「そやそや。こっちこい。繰子チャンとゼファーチャンも」
 手招きする鮫島に応じる形で近寄ると、こっそりと話しかけてくる。
「こいつら追い出したら報酬ドンや。どや、ローレットとして依頼されてくれんか」
 顔を見合わせる繰子たち。
「まあ?」
「依頼されたなら?」
 腕まくりし、オランは両手で顔をぴしゃんと叩いて刀を抜き直した。
「いっちょやってやりますかあ!」

GMコメント

●オーダー:ヤクザをぶっころせ! やれ!!!
 再現性歌舞伎町。魔法の解けたこの町を狙い、近隣のヤクザがシマを広げるべく襲撃をしかけてきました。
 こちらは鮫島組の愉快な仲間達と共に(組長に雇われる用心棒的な立場として)この紅丑組の連中を追い出します。どうやって追い出すかって、拳でにきまっとるがな!

●フィールド
 元バブル街。幻術(システム)が解けてしまったためにまるで廃墟の町です。
 住民達は逃げたり近くで見ていたりしますが、この街を守ろうとしているあなたを応援してくれる人もいるかもしれません。

●エネミー
 紅丑組の構成員たち。
 全員がヤクザでナイフや木刀といったもので武装していますが、見た目だけ現代日本っぽくしたマジモンの武器なので全員がそれなりの強さをもっています。
 ただしこちらは鮫島のニーサンに雇われた凄腕用心棒。ヒートなアクションをバリバリにキメて蹴散らしましょう。
 時にはニーサンとのコンビアクションもお楽しみ頂けます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

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●再現性東京(アデプト・トーキョー)とは
 練達には、再現性東京(アデプト・トーキョー)と呼ばれる地区がある。
 主に地球、日本地域出身の旅人や、彼らに興味を抱く者たちが作り上げた、練達内に存在する、日本の都市、『東京』を模した特殊地区。
 その内部は複数のエリアに分けられ、例えば古き良き昭和をモチーフとする『1970街』、高度成長とバブルの象徴たる『1980街』、次なる時代への道を模索し続ける『2000街』などが存在している。イレギュラーズは練達首脳からの要請で再現性東京内で起きるトラブル解決を請け負う事になった。

  • <Noise>再現性歌舞伎町1980:泡の終焉完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年10月16日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
道頓堀・繰子(p3p006175)
化猫
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
ジョーイ・ガ・ジョイ(p3p008783)
無銘クズ
オラン・ジェット(p3p009057)
復興青空教室
トキノエ(p3p009181)
恨み辛みも肴にかえて
耀 英司(p3p009524)
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リプレイ

●泡が弾けりゃ皆死ぬのか?
「「オランさん!」」
 店の前で刀を抜き放った『期待の新人』オラン・ジェット(p3p009057)に、ホストクラブのスタッフたちが駆け寄ってくる。
 彼らの中には、再現性歌舞伎町が幻術の街だったことを知らない者も居る。
 真実は隠すべきだろうか。それとも真実を伝え下がらせるべきだろうか。
 オランが顔に迷いを浮かべかけたところで、白いスーツを着た真面目そうなホストが歩み出た。オランがこの店に勤めるようになる前から(店長を除いての)トップをはり、当初はいがみ合っていたことすらあったセイジという男だ。
「オラン。あんたがこの店のために影ながら戦ってくれてたのは知ってる。こいつらは……その絡みなんだろ?」
 オランは否定も肯定もしなかった。セイジはそれを最大の答えと受け取って、後輩のホストたちをつれて走り出した。
「俺らは被害が広がらないように言って回る。こいつらと……店は任せたぞ」
「おう」
 オランはニッと笑って前を……紅丑組の構成員たちへと向き直った。
「バブルや町が弾けても俺がすることは変わらねえ!
 店長に任されてんだ。店を、町を守らねえとな!」
 一足遅れてと言うべきだろうか?
 からんというウェルカムベルの音を鳴らし、『酒豪』トキノエ(p3p009181)と『怪人暗黒騎士』耀 英司(p3p009524)がホストクラブ『シャーマナイト』から出てきた。
「ったく、ヒトが折角美味い酒飲んでたっつーのに……」
「おかげで勘定が要らなかった」
 だろ? と英司は首をかしげて見せる。
 彼の空気はシットコム映画から出てきた陽気なガイでも、少年を忘れられないスーツアクターでもなく、裏社会で靴音を鳴らして歩く喧嘩屋のそれに変わっていた。
 二つのヤクザがにらみ合っている今は、彼にとってある意味、見慣れた光景なのだ。
「俺たちもやっとくか?」
 トキノエは肩をすくめ、苦笑した。
「だな……泡沫だろうが、ここで暮らしている奴らは現実だ。なら俺のやる事は変わらねえ。鮫島のニーサンに助太刀仕るぜ!」
 竜の刺繍がはいったスカジャンを羽織り、びしっと襟を直すトキノエ。
「ぬほー! これがヤクザカチコミ!
 再現性東京名物ヤクザウォーに吾輩も参戦することになるとは胸がどきどきでありますな!
 街の皆を守るためにも、吾輩の拳がうなりをあげますぞー!」
 シュッシュとシャドーボクシングする『どんまいレガシー』ジョーイ・ガ・ジョイ(p3p008783)をバイクの後部に乗せていた『無限陣』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)は、やれやれといった様子でバイクをとめ、車体から降りた。
「弾けた泡は戻らない。さて……夢から醒めたヒトは、また幸せな夢に浸かれるのかね」
 振り向けば廃墟。ジャケットのポケットに両手を突っ込み、どこか無気力な様子で背を丸める。
 喪失は人を変えてしまう。それを痛いほどに知っている。
 だが同時に、『人は騙されたがる』ということも知っていた。
 希望ヶ浜が良い例だ。それまで生きていた社会を失った人間が、覚めない平和な夢の中で眠り続けることを望んで集まっていく。
 この街もそうだとすれば、『泡の書』を集め幻術のコードを再構築すれば、人々はまた泡の中に戻るのだろうか……。
「ま、それも、紅丑組にぶち壊されちゃたまんないな」
 呪符束をポケットから取り出し、もう一方の手には美しい絵の描かれた扇子を取り出す。
 横に並んだジョーイがまだシャドーをしていた。ついでに首を左右にシュッシュと振って陽気にリズムを刻んでいる。今にもラップを歌い出しそうだ。
「おー、なんやなんや。気付いたらやたらお仲間が集まっとるやん。鮫島のニーサン、こいつうちんとこのギルド員やで」
 けらけらと笑いながら仲間を指さしてしめす『化猫』道頓堀・繰子(p3p006175)。
「どんな状況やろうが売られた喧嘩は買うし、シマ荒らそうとする奴らがおったらそいつらシバき倒すんはうちら極道の役目ってなー?
 言うてもうちはバイトやけどな。にゃははー」
 そして、手に収まるほど小さなナイフをシャツの下から抜いて逆手に握った。黒く刀身を塗られ艶を消した、暗闇に溶けるようなナイフだ。
 その刀身と握りかた、そして何よりリラックスした彼女の姿勢が、彼女が油断ならない存在であることを示していた。
「ええやん。おもろいわ」
 鮫島 五浪は笑い、バットを黒いグローブをした自らの手にぽんぽんと当てた。
 すると『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)がずずいと前に出て、そしてすらりと立って見せる。
「あっしは姓は夜乃、名は幻、人呼んで夢幻の奇術師の幻と発します。不思議な縁もちまして、奇術をしながら旅する人生でごぜえやす。西は天義にいきましても、東は幻想にいきましても、その土地のおニイさまがたにはお世話になる若造で御座います。以後、見苦しき風体、お見知りおかれまして恐惶万端引き立てて、よろしく、お願み申します」
 立て板に水とばかりに語りきった幻。
「鮫島の兄貴のご活躍のほどは耳に聞いております。鮫島の兄貴のためなら、この夜乃幻、一肌脱ごうじゃあ、ありませんか。劣勢から、喰らいついて、噛みちぎるのが、得物だとか。あっしの得物は奇術、もとい、ありとあらゆる速さで御座います。どうか、あっしと一緒に『無限なる奇術の牢獄』へやつらをぶちこもうじゃありませんか。どうぞご一緒に」
 相手が聞き惚れてしまうような美しい声で言い切ると、キッと紅丑組へと睨みを向ける。
 そのボスである紅丑 弓穂はヒッピー風の顎髭を指で撫で、にやりと笑った。
「ほー。鮫島ァ……美味そうなヤツ連れてるじゃーん」
「……」
 彼のような目つきを、『律の風』ゼファー(p3p007625)は知っている。
 戦闘狂。それも、戦闘の興奮を求めて誰彼構わず挑んでしまうようなジャンキー。相手が強ければ強いほど、そして自分と拮抗すればするほど興奮し、その過程に性的興奮すら抱くという変態たちの目だ。
「寝覚めに見る顔としてはサイアクね……」
 ポケットから手を出し、槍……に手をかけようとして、ロッカーに置いてきてしまったのだと思い出した。
 まあいいか。そんなことを思っていると、『ゼファーさん、これを!』と近くのコンビニから店員が飛び出し、ビニール傘を投げてきた。
 それをぱしりとつかみ、クルクルと回して柄をにぎる。振ってみると、なるほど案外丈夫だ。
「いいわね。それじゃあ早速――」
「鮫島建設ゥ! 突貫やァ!」
 ゼファーのクールな出だしを覆うほどの圧で、鮫島が先陣を切って走り出した。
 安全ヘルメットや工具を装備した構成員たちが一斉に突っ込んでいく。工具といっても常人の頭を粉砕するような大型ハンマーや丸鋸といったアイテムだ。
 対する相手は魔術で偽装したドスやチャカを持ち出し、こちらに突撃をしかけてくる。
 激突する両者の中、ゼファーは『やれやれね』といった様子で歩き出した。
 横から掴みかかろうとする男の脚を傘でひっかけてひっくり返しながら。

●夢は覚めるが、消えたりはしねえさ
「これで無限で永劫の夢という名の牢獄に閉じ込められなさい。奇術『昼想夜夢』!」
 衝突する構成員たちの中へ飛び込んだ幻は、突き出した手のひらから己の持つ夢幻の魔術を解放した。
 発狂し頭の割れた相手を突き倒し、ちらりと周りを見やる。
「雑魚の小童どもを片すにはこれが一番で御座います。北の凍える大地で覚えてきたのが昨日のようですね。今では僕の奇術の一つで御座います。あの時は北のアニイたちと乾布摩擦をしたものでした。僕の裸ですか? 勿論マッスルスーツを着た上からで御座います。あ、思い出話が長くなってしまいましたね。冷然たる永久凍土から生まれし術式よ、今、目覚めよ! ――破式魔砲!」
 突き出したステッキから魔術砲撃を解き放ち紅丑組構成員たちをなぎ払うと、ジョーイが謎の構え(多分蟷螂拳のマネ)で飛び込んだ。
「こう見えても吾輩カラーテで白帯ですぞ!」
「何イッ!?」
「おい馬鹿白帯ってシロートだぞ!」
「ホワアアラッシュ!」
 背後に生み出した謎のなにか(本当に謎のなにか)からラッシュをたたき込み一人を吹き飛ばすと、全方位に向けてラッシュを連鎖させた。グホアと声をあげて吹き飛んでいく構成員たち。
「派手にやるなあ、あいつら……」
 マニエラはリラックスした姿勢のまま構成員たちへと突き進んでいく。
 初めはその様子にマニエラを侮っていた連中も、彼女が強力な術式をくみ上げていることに気付いて咄嗟に拳銃(チャカ)を向けた。
「あいつを止めろ! なんかヤベえ!」
「お、分かるのか」
 マニエラはぼそりと呟いてから、即座に距離を詰めた。
「じゃあお前からだ」
 呪符をぺたりと膝にはりつけ、ブーツまで呪力を伝達させると妖しい光を脚から放つ。
 畳んだ扇子が相手の銃口を斜め上にあげさせ、蹴り上げた脚が相手の腰をへし折る。そのまま缶蹴りのごとく回転させながら吹き飛ばし、紹介所の看板を粉砕しながら屋内へと吹き飛ばしていく。
「い、一撃――どうやって」
「ママにでも教えて貰え。ああ、そうだ……」
 もう一人を蹴り飛ばすと、片足を高くあげたままマニエラは片眉をあげた。
「最初から殺す気で行く。命乞いをしたいなら先に教えてくれよ?」
 こうして蹴り飛ばしてみた感触からわかるのは、この連中があくまで武力的な制圧を目的にして投入されたということだ。
(『泡の書』の回収にきたわりには雑魚っぽすぎる……)
「やっぱ二次団体(セカンド)じゃ話にならねえか。弦竜会とやらがにおうな」

「よっしゃほな一丁派手に――!」
 繰子はにっこりと笑うと、構成員の一人に蹴りのラッシュを浴びせた。道路脇にある小さな公園に蹴り込むと、ブランコに相手をのっけて蹴り飛ばす。
 慌てて鎖を掴んで戻ってきた相手に強烈な跳び蹴りを浴びせて吹き飛ばすと、公園脇に置いてあった空き瓶を拾いあげた。
「どんどんいくでー。別に全員生かして返さんでもええんやろ?」
 コンクリートの壁に叩きつけて瓶を割ると、回転を付けて投擲しまくる。
 何本かは敵構成員に命中し粉砕。
 うち一つをギリギリで誰かがキャッチしたが――銃声と共に砕け散り、相手はそのまま崩れ落ちた。
「ヒット」
 トキノエは火のついた煙草をくわえ口の端から煙を吐くと、片手で構えた拳銃を乱射しはじめた。
 相手構成員が次々に倒れていく中、弾切れになった拳銃からパッと手を離すと煙になって消えた。
 空の手に煙草の煙を吹き付けると、煙が固まり刀(長ドス)の形へとをとり、やがて長ドスそのものとなった。
「さ、突っ込むぜ」
 ギラギラとした笑みを浮かべ敵陣に突っ込むトキノエ。
 飛び出してきたのは相手の中でも格闘技に長けた男だった。スキンヘッドに牛の刺青を入れた男が刀を抜いて斬りかかってくる。
 至近距離で刀をぶつけ合わせ、火花を散らした。
「オイ英司」
「了解」
 英司は店の脇に置いてあったビールケースを拾いあげてしげしげと眺めると、木刀で殴りかかってくる構成員へカウンター気味に叩きつけた。二度三度同じように殴りつけてから相手の頭にかぶせると、自分の頭を左右に揺らしてから空をちらりと見上げた。
 一秒にも満たない空白。直後、英司は鋭い後ろ回し蹴りを繰り出しビールケースごと相手を蹴り飛ばした。
 そんな彼に突っ込んでくるのが、敵のボスこと紅丑 弓穂であった。
「オラァ!」
 繰り出した拳が英司の仮面に直撃。吹き飛んだ英司は地面を転がる。
 側面からオランが斬りかかるも、弓穂の抜いた短刀がそれを弾いた。
 アクロバティックにオランの刀を下げさせると、彼の顔面に顔を近づけてニヤァと笑った。
 そして冗談めかして口を開け、がぶりと鼻に噛みつくような動作をとった。
 素早く飛び退き、刀を構え直すオラン。
「ただもんじゃねえ」
「らしいな」
 『もう一度だ』と英司が起き上がって顎をしゃくると、オランは弓穂とのつばぜり合いへと持ち込むべく斬りかかった。
 ガチンと組み合わさった瞬間、側面から英司が敵の顔面を殴りつけた。
 よろめいた所でオランは刀を投げ捨て、弓穂の襟首を掴んですぐそばに路上駐車されていた軽トラの二台側面へと投げつける。
 背をぶつけた弓穂。反動で前へ出たところへ、英司とオランのラリアットサンドが炸裂した。
 ぐるぐると回転し、その場に倒れる弓穂。
「やるじゃねえか! そういうエンターテイナーってのは歌舞伎町で大事だぜ!」
「やるな、オラン! さぁ、派手にかぶくぜ!!」
 追撃――にかかろうとした所で、弓穂は笑いながら立ち上がった。
「いいぜぇ、イッちまいそうだ!」
 そして、短刀を手に走り出した。
 目でとらえられないほどのスピードで駆け回る弓穂。
 鮫島組の構成員たちが次々と血を吹き上げ、中には吹き飛び上下反転しながら地面や建物の壁にぶつかる者まであった。
「あれが本気ってわけ……」
 ゼファーはその辺の自転車を持ち上げ構成員の集団をしこたまなぎ払ったあと、車輪一本になったそれを適当にぶんなげて構成員を気絶させてから振り返った。
「どうするの、ニーサン?」
「そら……」
 鮫島はバットを投げ捨てると、懐からどこかの家門のついた短刀(ドス)を抜いた。
「目には目をドスにはドスじゃあ!」
 走り出す。
 その瞬間、鮫島の気配が五つに増えたように感じられた。
 目はおろか、ゼファーたちの感覚をもってしてもとらえられないほど増幅した鮫島の影はコマのごとく急回転を始め、紅丑組構成員たちを次々に切り裂き吹き飛ばし始める。
「――ロウニンギョウ!」
 影が一つに収束し、弓穂と衝突。
 バギンという音をたててドスをぶつけ合い、一瞬だけつばぜり合いになった。
「寝起き最悪なトコに喧嘩売りに来てんですもの。落とし前はきっちりつけて貰いませんとね?」
 ゼファーは走り、そして蒼い風を纏って跳躍。彼女の蹴りが、弓穂の頬へと直撃した。
「楽して勝てると思って来たんだったなら、お生憎様。
 本当にタフな奴ってのは、こんな時だからこそ強いのよ」
 ゼファーは吹き飛んだ弓穂を睨むと、シャーマナイトの置き型看板を持ち上げ、思い切り叩きつけた。
 オランが『あっ』と小さく呟いたのが、聞こえた。

●夢のあとさき
 一仕事を終えた幻たちはホストクラブ『シャーマナイト』の店内へと集まり、それぞれテーブルを囲んでいた。
 繰子やトキノエ、ゼファーや幻たちは円形のテーブルと円形のソファで作られた席で酒なりソフトドリンクなりを楽しみくつろいでいる。
「下っ端連中はなんもしらんかったわ。命令されてここへ来ただけやね」
 そう繰子に言われて、幻は説明を求めるようにトキノエを見た。
「俺は知らねえ。尋問には向き不向きってのがあるだろ。それより、この街はどうすんのかね……」
「終わった夢を嘆くより、また新しい夢を始めれば良いわ」
 グラスをおいて睫のながい目をふせる。グラスの中身はシャーリーテンプルだった。
 たまにハッとするが、そういえば彼女は未成年である。
「今まで散々浸ってたんですもの。偶には追いかける側になるのも悪くないわよ? 多分ね」
 一方、別のテーブルでは椅子に縛り付けた弓穂への尋問が始まっていた。
 部下の構成員たちは置いておいても邪魔になるだけということで帰らせ、彼だけを店のなかでしめあげている。
「アンタ等がタダで動くわけがねぇ。青写真見せな。こいつらにアカベコみてぇにされる前によ」
「ヒョヒョヒョ、早く吐いたほうが身のためですぞぉー」
 ケケー! と人間性を忘れた獣みたいな声をあげてジョーイが踊りながら周りをまわっていた。ふつうに怖い。
 弓穂は抵抗を試みているが、オランはその顔面を再び殴ってから襟首を掴み、至近距離でにらみ付けた。
「言え。テメェの目的だ。この街はある意味『終わった場所』だぜ。旨味があるとすりゃあ……」
「『泡の書』」
 マニエラがソファに腰掛けたまま言った。
「その存在を知ってる……もしくは、断片をあんたらの『上』は持ってるんだろう?」
 弓穂はニヤリと笑い、そして黙った。
 それが答えだったと言ってもいい。やがて催眠術への抵抗力を失ったのか、ぼそぼそと語り始めた。
「『泡の書』にあるのは……コードだ……。
 マザーの演算能力さえあれば実現できる、幻術のコードだよ。
 強力すぎる幻術は世界を騙せる。風景も、感覚も、感情も、思い出も、幻に置き換えちまう。
 その力がありゃあ、ギリギリ街一つくらいは支配できるってもんだ。
 手に入れたヤツが覇者になれる。いい酒、いい車、いい女。なんでも思いのままだ」
 マニエラがちらりと鮫島を見ると、鮫島はじっと店の天井を見つめていた。
 そして。
「あほくさ」
 心底がっかりした様子でそう言った。
「そんなんどうでもええわ。見てみいこの店。キレーにできとる。
 眼鏡のにーちゃん一人でこれや。夢も希望もこの店で売っとる。『泡の書』なんて最初からいらんのや」
 立ち上がり、そして酒を飲み干した。
「街ならワイらが元通りにしたる。建設業者舐めんなや。ほんで邪魔するゆーんなら……」
 弓穂の顔を、オランたちが覗き込んだ。
「俺らが打っ潰す」

成否

成功

MVP

オラン・ジェット(p3p009057)
復興青空教室

状態異常

なし

あとがき

 ――依頼完了
 ――再現性歌舞伎町1980はその町を維持していた幻術が解け、一時崩壊状態に陥っています……。
 ――鮫島建設株式会社が街の物理的再建に着手しました。

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