シナリオ詳細
<盈揺籠>ちいさなあなたへ
完了
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オープニング
⚫︎ゆれるゆれる、こもりうた
おかあさんがいいました。
「きょうは、だれがいっしょにねむるばんだったかしら?」
あつまったこどもたちは、みんなてをあげていいます。
「おれだよ? おれ!」
「ちがう、ちがう、ぼく!」
「わたしだもん」
あらあら、たいへん。みんなみんな、じぶんがよくてゆずろうとしません。
おかあさんはそんなわがこをみわたして、いとおしそうにわらいます。
「ええ、ええ。かわいい、かわいい、よいこたち」
ひとりひとりあたまをなでて、なまえをよびます。
さいごにやさしくよんだのは、ねむそうにめをこすっているこ、それから、となりでにこにこわらっているこのなまえ。
「なぁに、おかあさん……?」
「……ハルとハナ、だよね?」
「そうね。きょうはあなたたちのひだったわね」
ふたりはかおをみあわせて、こっくりとうなずきます。
「ハナたちのひなの。ねえ、ハル?」
「うん、そうだね……ハルたちのひ」
いまにもとじてしまいそうなめで、なにかをさがしてハルがみわたします。
「ムク……ナオ……?」
「よんだ?」
「いるよ?」
ナオがムクのてをひいて、こえがきれいにかさなります。
「いっしょにねよう?」
むにゃむにゃと、ねごとのようなおさそいにえがおでこたえるふたり。
おかあさんは、そんなよにんをじゅんばんこにみてうなずきます。
「それじゃあ、まくらとごほんをもって。おおきなもうふはあたためておくわ」
ハル、ハナ、ナオ、ムクはぱたぱたとじゅんびをはじめました。
「それから、あなたたちも。おかあさんのしんしつにいらっしゃい?」
⚫︎ひるさがり、ゆめをみたなら
並んで天辺を指す時計の針に注がれる木漏れ日のような淡いひかり。そこは境界図書館内でもあまり人の立ち入らない区画で、静けさも相まって絶好のお昼寝スポットのようだった。
「……、……んみゃ?」
床に転がる紫色の塊が子猫のように震え、大きな欠伸と共にぐぐっと伸びをする。緑の瞳がゆっくりと瞬きをして世界を認めると、涎の跡もそのままににんまりと笑った。うたた寝するのにいい季節だね、と悪びれもせずに。
「それじゃあ気を取り直して!」
ぐるりと集まった面々へ新人案内人が掲げて見せたやわらかな色合いで描かれた表紙に、おや、と思う者もいるだろう。それに気づいた緑色が秘密を共有しようと目配せを送った。
「この本の世界はね、たったひとりのお母さんを除いて、みぃんな子供なんだって! それでね、子供たちは大きな家で暮らしてて、街に出るとぬいぐるみがお店を開いたり、大人の代わりに働いてるなんてまるで夢の国じゃない?」
大きな観覧車と優しいティーカップが回り、玩具の鼓笛隊がパレードする遊園地。
小動物から大型哺乳類、幻獣まで網羅する動物園と水族館。
子供でなくとも心踊るラインナップの他には『外』との繋がりを示す山羊の郵便局、それから洋菓子店のショーウィンドウにはお腹も心も満たされる子供たちの『主食』が並ぶ。
そんなメルヘンな箱庭がその本の中には収められている、と案内人・Lächeln(レッヘン)は言った。
「まぁ残念ながら今回はお出かけはしないんだけどね!」
子供の成長には休息、特にお昼寝も大事な要素である。そして、この世界においては夢は重要な役割を持つらしい。
「普段は大きなお部屋に布団を並べてみんなでお昼寝。でも順番が回ってきたら、お母さんのお部屋で一緒に寝るんだ。その時にさ、『家族』の夢を見るんだって」
お母さんと子供たちだけの世界ではない、知らない『家族』と違う『自分』——おそらくは『外』の何かを夢に見るのだそうだ。甘くて柔らかい箱庭に不満なんてありもしないのに、夢の中の『自分』があまりにも幸せそうに笑うから、大好きなお母さんと寝るのが少しだけ怖い子もいるのだとか。
「だから蜂蜜たっぷりのホットミルクを飲んであったまりながら、怖くないように声をかけてあげたり、手を繋いだり、ちょっとだけ手助けしてあげてほしいんだ」
ちなみにお母さんの子守唄があるから眠れないってことはないよ、と案内人は捕捉した。
「起きたらどんな夢を見たか、話すのもいいんじゃない? 帰ってきたらぼくにも教えてね!」
- <盈揺籠>ちいさなあなたへ完了
- NM名氷雀
- 種別ラリー(LN)
- 難易度-
- 冒険終了日時2022年01月05日 21時30分
- 章数3章
- 総採用数7人
- 参加費50RC
第3章
第3章 第1節
「おはよう、よいこたち。さあ、ゆめをきかせて?」
傾き始めた陽に染まったベッドの上、いくつもの寝ぼけ眼が瞬き、交錯する。そして、胸の中に沈みかけた『夢』がたくさんの感情をつれて湧き出した。
聞きたい。聞かせたい。知りたい。知りたくない。
思うままに口にしてみよう。静かに耳を傾けてみよう。目を背けるならば、白湯と共に飲み込むのも良い。きっと忘れられはしないだろうけれど——
第3章 第2節
ふ、と掴み損ねた何かが未だ見ぬ先へと逃げていく。
「……、あぁ……」
ぽろり、ぽろり。瞬きの度に、確かにあれは夢だったと理解する度に、ヨタカのまんまるの瞳から願いが溢れた。その雫を白い指が掬いあげる。
「んー……ことり? ないてるの? ゆめ、いやだった……?」
微睡むままに寝顔を慈しんでいた武器商人が問えば、静かに首を振って応える。
「あたたかくて、ほんわかしてて、やさしくて……でも、いまのおれにはまだちょっと、とおいゆめ……」
お日様の匂い。囁き合う声。踊る風の色。鮮やかな木陰のひとつひとつまで全部思い出せるのに。
「いやなゆめじゃないのに、いやなゆめじゃなかったはずなのに……」
腕の中のやわらかさが、ぬくもりが、積み重ねた穏やかな時間の重みが、此処には無い。足りない。はっきりと自覚した望みが思いの外にヨタカの胸を掻き立て、所在なく揺れた小さな手はすぐ傍に在る番にしがみつく。
「……しづき、ギューってして」
そんなかわいい我が儘に、きっと同じ夢を見ていただろうことは今は飲み込んで「おおせのままに」と武器商人は微笑んだ。
いつものように抱き留めるにはほんの少しだけ余ってしまうけれど、めいっぱい受け入れた背中をゆっくり撫でれば溶け合う体温。耳元で甘やかすような、甘えるような、蜜の音が愛しい名を囀る。声を上げるでもなく、静かに、静かに。番の肩を濡らしながらヨタカはいつか出逢うもうひとつを想った。
「……ハルとハナは、どんなゆめをみたのかな?」
ゆるゆると銀糸の奥で瞳を揺らめかせた武器商人が尋ねると、共に布団に潜った双子は何処かまだ夢見るような顔を鏡合わせに黙りこくる。何方から、何から、話したらいいのか。或いは、話してもいいのか。口から転がったものが大切な片割れにヒビを入れてしまわないか、と揃って怯えているようだった。
「おれはねぇ、あたらしいかぞくができるゆめだったんだ」
そんな彼らへ助け舟を出すヨタカ。寝覚めの脆さはもう見当たらず、幸福に満ちた光景をひとつひとつ言葉で紡ぐ彼は雨上がりのように落ち着いていた。
「おれと、しづきと、こどもたちの……みらいのゆめだよ」
ゆっくり、ゆっくり、降り注ぐ星明かりのような愛しさの滲む手に撫でられた武器商人は夢見心地に相槌を打つ。本当なら他に『ニンゲン』がいるからちゃんと起きていたい。それでも、小鳥(おうち)の傍だから仕方ないよねぇと抗うことはしなかった。だってここはこんなにも温かい。
「はなしたくないのなら、それもいいけれど……きになっているんだろう、ふたりとも」
双子は目をぱちりと合わせた。話すことは躊躇っても、聞くことを拒む気持ちは全くないと気づいたらしい。
「こわいのも、うれしいのも、はんぶんこ。きかせておやりよ」
番の手を取って握る武器商人達の仲睦まじい姿。重なって見えたいつもの自分達に、調子を取り戻した第一声は完璧に揃っていた。
成否
成功
第3章 第3節
えっとね、ハルにはおかあさんがいたよ!
ううん、『おかあさん』じゃなくて。
ちがうおかあさん、でもね、すぐにわかったよ。
このひとがハルのおかあさんなんだーって。
だって、すっごくうれしそうにわらってくれるんだもん!
ありがとう、って。
なんども、なんども、なでてくれて。
だから、ハルもうれしかったよ?
でもね、でもね……ハナがいなかった。
だから、さびしくて、かなしくて。
いっぱい、いっぱいないてたら、おきちゃった。
それでおしまい!
ハナにはたくさんのかぞくがいたの。
おとうさん、おかあさん、おねえちゃん。
みんなえがおで……とても、とても、やさしい。
たからものみたいに、だっこしてくれるの。
かわりばんこに「×××」って……なんてよばれてたのかな?
ハナはハナなのに。
ハルとずっといっしょのハナなのに。
すごく、こわくなっちゃった……
どこにもハルがいないなんておかしい。
もう、こんなゆめ、いやだよって。
いっぱい、いっぱいないてたら、めがさめたの。
ゆめはおわった?
第3章 第4節
「ゆめはおしまい。さあ、おゆうはんのしたくをしましょう?」
夢物語の最後の頁。柱時計の鐘のように、おかあさんの声がそう綴る。
はあい、と返した子らの手からひとつひとつ、すっかり冷めた白湯のカップを受け取って。
まだ向こう側を引き摺る背中をひとりひとり、ゆっくりと確かめさせるように撫でていく。
最後の最後。誰かが置き忘れていった絵本をパタンと閉じて締め括る。
「おそれないで。きょぜつしないで。しんじてあげて……もうすぐ、ほんとうのめざめがやってくるのだから」
NMコメント
こんにちは、氷雀です。
<盈揺籠>シリーズ4本目となります。
同じ世界での物語であるためシリーズと括っておりますが、お昼寝するだけの簡単なお仕事です。
どなた様も気軽にご参加くださいませ。
見る夢が軽いものかどうかは皆様次第ですが……
⚫︎主旨
簡単に言うと幼児化シナリオになります。
「生まれた時から大人でした!」という種族であれ、この世界に立ち入った時点で強制的に人間の幼児サイズ(4、5歳程度)に縮んでいただきます。
今とは違う姿(髪や瞳の色が違う、など)を指定したい方はプレイングに記載してください。
なお、中身はそのままです。そのままです。
基本的には普段どおりの能力が発揮できると思って大丈夫です。
話す言葉が舌足らずだったり、歩幅が小さかったり、身体的なペナルティを被りたい方は自由に設定していただいても構いません。
前回、前々回を何かしらの形で『知っている』or『知らない』で最初の反応が変わるかと思います。
その辺りも含めて、存分にお子様ライフをお楽しみください。
⚫︎世界
おかあさんとたくさんの子供達のためのふわふわメルヘンランド。
彼らの暮らす大きな家を出ると、お店や遊び場がいくつも並ぶまっすぐな大通り。
そこに本来いるべき大人達の代わりに玩具達が働いています。
⚫︎目標
おかあさんとお子様たちとお昼寝をする。
みんなで一緒にベッドに入るだけでOKですので、直接何かをしてあげなくても最終的には問題はありません。
おかあさんの部屋にはとても大きなベッド、ふかふかの毛布、寝付きをよくするホットミルクが用意されています。
お気に入りの枕や絵本を抱えて集まるお子様のひとりとして、PC様には加わっていただきます。
安眠のために持ち込みたいものがあればどうぞご自由に。
⚫︎夢について
おかあさんのベッドで眠ると意識的に、或いは無意識に望んだ『理想の家族』の夢を見ます。
それは思い出の再現だったり、あり得なかった過去の改変だったり、まさに将来の夢だったりするでしょう。
※隣で眠っても余程強い結び付きが無ければ同じ夢は見られません。ご注意ください。
⚫︎各章で出来ること
第一章:ねむるまえ
縮んだ自分の姿に驚いたり喜んだり笑ったり
お子様達やおかあさんとの交流もこちら
お気に入りの寝具や絵本、入眠グッズ
ホットミルクに入れる隠し味も持ち込みOK
第二章:ゆめのなか
描写するのは貴方が見る夢の内容のみ
より夢の記憶を鮮明にしたい方はこちら
第三章:めざめたら
怖かった?楽しかった?嬉しかった?
お子様達の夢の内容を聞いてあげたり
逆に話して聞かせたり
おかあさんに聞いてみるのもこちら
※複数人での参加は同行者のID指定か【タグ】の記載をお願いいたします
ただし、夢についての注意事項はお忘れなく
※全章共通タグ:【ソロ】
PC・NPC問わず絡みが発生しません
※第二・第三章共通タグ:【悪夢委託】
プレイングとステータスシートから捏造した氷雀産の夢を提供します
⚫︎登場NPC
おかあさん
みんなのお母さん。たったひとりの大人。
母性・包容力カンスト。みーんな可愛い我が子です。
必殺技は泣く子も眠る子守唄。この世界においてそれに抗える者はいません。
眠る準備が整ったなら、やさしい歌声で夢へと誘ってくれます。
ハル
ハナとは双子。明るく元気な動の子。
興味の先も表情もころころ変わります……が、今日はもう既におねむな様子。
ただ『夢』を見たくなくてベッドに入るのを躊躇っています。
好き:全部
ハナ
ハルとは双子。無口で大人しい静の子。
視線の先にはだいたい片割れがいます。眠たそうな笑顔は標準装備。
ハルを心配しており、寝入るのを見届けるまでは眠らないでしょう。
好き:ハル
ムク
ナオとは双子。天然ちゃん。目を離すとふらふらどこかに行ってしまう。
ナオが喜びそうなことを見つけるのがうまい。
そわそわして落ち着かず、ベッドから抜け出そうとするかもしれません。
好き:うさぎ
ナオ
ムクとは双子。真面目ちゃん。きちんと話せば素直に聞いて従ってくれる。
ムクが心配でいつも後ろを追いかけている。
もしムクが抜け出したなら後をついていってしまいます。
好き:ペンギン
ミオ
フクとは双子。感嘆符のほう。呼ばれれば来ます。
言葉は単語ばかりでやや意図は掴みづらいが、とにかく元気で自由な子。
お気に入りの絵本を1冊読み終わらないと寝たくないとグズります。
好き:絵本
フク
ミオとは双子。疑問符のほう。呼ばれれば来ます。
言葉は流暢で、ミオの言いたいこともカバーしてくれるが、流されやすいのんびり屋さん。
不安そうな子がいると自分も眠れなくなってしまうようです。
好き:蜂蜜キャンディ
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