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シナリオ詳細

<大樹の嘆き>森に捕らわれた流浪の民

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ネクスト、翡翠。
 現実である深緑と同様に迷宮森林の広がるこの地で、何かが起こっていたのは間違いない。
 各国を巡る流浪の民……パサジール・ルメスの民も、その情報をつかみながらも、行商を行うべく迷宮森林へと立ち入っていたのだが……。
 彼らもまた森の住人である幻想種達から余所者と認識されたということだろう。入るなり、森林迷宮警備隊から囲まれることとなる。
「これはどういうことですか?」
 流浪の民の1人が問いかけるが、幻想種達は首を振る。
「現状、余所者を立ち入らせるわけにはいかぬ。お前達であってもな」
 警備隊はパサジール・ルメスの馬車を調べ、荷物だけを全て預かってしまう。
 加えて、対価を渡すことはなく、パサジール・ルメスの民全員を森から追い立てようとする始末。これには流浪の民も納得がいくはずもなく。
「やめてください。我々は行商に来ただけです」
「しつこいぞ。……もしかして、お前達がそうなのか?」
「拘束させてもらう。大人しくしろ」
 追い出そうとしていた警備隊達は一転してパサジール・ルメスの民を拘束し始める。その行いは有無を言わせず、聞く耳すら持たない。
(仕方ないですね……)
 やむを得ず、流浪の民の1人がファミリアーを使い、森の鳥を使役する。
 鳥は警備隊に気付かれることなく森の外へと羽ばたいていき、助けを求めに向かっていくのだった。


 バージョンアップしたR.O.Oでは新たなイベントが始まったことに伴い、翡翠の地で大きな異変が確認されていた。
「翡翠のサクラメントは依然として停止したままです」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は翡翠に関する事柄についてほとんど情報が得られないという。
 翡翠の民とほとんど交流もできず、ただ余所者は去れとの一点張り。
 あまりに食いつけば、疑わしいからという理由で拘束されることもあるらしい。
 実際、パサジール・ルメスの民が拘束され、助けてほしいという依頼が入っている。
 現実でも、パサジール・ルメスとローレットの橋渡しとなってくれているリヴィエール・ルメス。ROOでの彼女が森に向かった友人らからヘルプ要請を受け取ったのだそうだ。
「どうやら、迷宮森林警備隊に拘束されたらしいっす」
 行商の品を奪われたあげく、蔓草でできた頑丈な牢に閉じ込められてしまったと、ファミリアーを通じて話があった。
 牢の周囲には常に警備隊が詰めており、かつ彼らが使役する精霊が宿った巨木が見張りとなって警護しているのだそうだ。
 怪しい存在はしっかりと疑うというスタンスらしい幻想種達。一応、食事だけは与えられているが、この先どうなってしまうかわからない。
 命が保証されている間に、助け出してほしいというのが捕まっている彼らの依頼だ。
「もしかしたら、友人が捕まっている間に何か情報をつかんでいる可能性もあるっすよ」
 幻想種達の話を四六時中聞いている状況であれば、何かわかることもあるかもしれない。パサジール・ルメスの民を救出することは新たな情報を得ることにも繋がる可能性は十分にあるのだ。
 ファミリアーを通じて得られた情報と、アクアベルの予知などを合わせて得られた敵データを受け取ったイレギュラーズ達は、流浪の民らの救出作戦へと乗り出す。
「大切な友人達っす。よろしく頼むっす」
 友人救出の為に同行を願い出るリヴィエールは、小さくイレギュラーズへと頭を下げるのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 R.O.O、<大樹の嘆き>のシナリオをお届けします。

●目的
 翡翠迷宮森林で捕らわれるパサジール・ルメスの民の救出

●敵
〇木の精霊ドライアード×2体
 樹高10mほどある大樹を依り代とした精霊達です。
 巨体ゆえにほとんど移動はしませんが、地面から草を生やして足止めする他、木の葉乱舞や枝での薙ぎ払い、土属性のミサイルと多様な攻撃を行います。

〇迷宮森林警備隊×10体
 隊長、弓の名手であるラウルをメインに、弓、風魔法、風精霊を操る幻想種で構成された警備隊です。後方、樹上からの攻撃を得意としています。
 翡翠上層部の思惑もあり、攻撃を仕掛けてくるようですが、彼らも少なからず外部の者に対する排他性を持っているようです。

●NPC
〇パサジール・ルメスの民
 現実である幻想にも存在する少数勢力で、流浪の民です。
 馬車1台に乗っていた7名が迷宮森林警備隊に捕まっております。
 多少の戦闘能力はありますが、警備隊には及びません。また、基本的には取引相手とあって心証を悪くしたくない為、武器をとることはありません。
 一応、ナイフや長剣、簡易魔法などを使用でき、精霊とも親和性が強い性質を持っています。

〇リヴィエール・ルメス
 ROOでのリヴィエールで、今事件の依頼人でもあります。
 翡翠は取引先である為、参戦はしませんが、捕らえられた同胞救出には参加してくれますので、指示を出すとよいでしょう。

●状況
 翡翠の迷宮森林を巡回する警備隊にパサジール・ルメスの民が捕まっています。場所は捕らえられた民の一人が使ったファミリアーで判明済みです。
 森林内で他の幻想種や魔物に見つからぬよう現地へと向かいます。
 現場では、蔓草の牢に捕らわれたパサジール・ルメスの民を解放し、彼らを連れて森から脱出する必要があります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

 それでは、よろしくお願いします。

  • <大樹の嘆き>森に捕らわれた流浪の民完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年10月21日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

グレイ(p3x000395)
自称モブ
梨尾(p3x000561)
不転の境界
スティア(p3x001034)
天真爛漫
九重ツルギ(p3x007105)
殉教者
リュカ・ファブニル(p3x007268)
運命砕
壱狐(p3x008364)
神刀付喪
アルヤン(p3x009220)
パンジャンドラム
ルージュ(p3x009532)
絶対妹黙示録

リプレイ


 ネクスト、翡翠を目指す馬車。
 それは、流浪の民パサジール・ルメスが手配したものだった。
「パサジール・ルメスはこっちにもいるんだな」
 大柄な赤髪の男性、『赤龍』リュカ・ファブニル(p3x007268)が馬車の中にいるリヴィエール・ルメスへと視線を向ける。
「改めて、よろしくっす」
 挨拶するリヴィエールは現実と変わらぬ姿。
 彼女もそうだが、パサジール・ルメスもまた現実と変わらぬフットワークの軽さだ。閉鎖的な翡翠とも交易していたことを、リュカは大したものだと評価する。
「さて、翡翠の異変……行き過ぎた排他主義の被害者の救出だな」
 目的は『パサジール・ルメスの民の救出』。
 しかし、妖刀を本体とする『妖刀付喪』壱狐(p3x008364)がいうように、そんな取引相手ですら翡翠は排他的に扱う程暴走しているという。
「うーん。今回の翡翠の暴走って、いまいちわからねー所があるんだよな」
 そこで、ボーイッシュな『絶対妹黙示録』ルージュ(p3x009532)が皆の気持ちを代弁するように疑問を口にする。
「故郷の森には入れさせないのに。対価を払わず商品を奪うなんて……」
「拘束するだけでなく、品物まで奪うなんて! やってることは盗賊と一緒なんだけど!」
 見た目は黒い犬獣人の少年、『お家探し中の』梨尾(p3x000561)がこの状況を訝しむと、銀髪の幻想種である『天真爛漫』スティア(p3x001034)が声を荒らげる。
 実際、只の余所者に限らず、流浪の行商をも疑い、捕縛する翡翠の状況は穏やかではない。
「疑心暗鬼にならなければいけない程の何かがあった……?」
 全身黒い肌のアバター『ハンドルネームは』グレイ(p3x000395)はそこで思考を止めた。
「……考えは傍に置いて、救出に専念しよう」
 鋼鉄国内を通過する馬車の前方に見えてくる大樹ファルカウ。その周囲には迷宮森林が広がっている。
「問答無用で殺されていないだけマシなのかもしれないが、それも何時までか分からない」
 このどこかに、パサジール・ルメスの一隊が捕らえられているはずだと、壱狐は再確認して。
「迅速かつ確実に救出してやらんとな!」
「流浪の民を仲間につければ、今後の活動の幅も広がりますからね」
 仲間達の話を聞いていた大柄な銀髪の青年、『殉教者』九重ツルギ(p3x007105)も、同意する。
 R.O.Oからログアウトできなくなったツルギは、自らがこの世をさまようHaunt(幽鬼)だと自認しており、命ある者、在るべき世界へ帰れるものを守る為、死に縛られたこの体を生かしたいと考える。
「流石にこのままにしておけないし、助けなきゃ!」
 同じ状況のスティアも、現実の深緑以上の状況を見過ごせず、拳に力を込めて状況の打開に仲間達と動くのである。


 イレギュラーズ一行は馬車を外に待機させ、迷宮森林へと踏み込む。
 敢えて多く馬車を用意していたのは、捕まったパサジール・ルメスの民の搬送に備えてのことだ。
 ともあれ、彼らのファミリアーが知らせた場所を目指すのだが、スティアが精霊使役によって召喚したサメちゃんに、前方を偵察してもらう。
「緑に紛れ、身を潜める者には気をつけておく……」
 グレイもまたエネミーサーチを張り巡らし、敵意を持つ者の接近、存在する方向などを掴む。
 現状、感知する存在はないが、警備隊が木登りを得意としていることも聞いていたグレイは樹上にも注意を払い、おおよその位置を割り当てようとする。発見次第、グレイは仲間に位置を伝える構えだ。
 森林がホームである警備隊から追撃を受ける可能性も高い。できるなら撃破しておきたいところ。
「此度の異変は何らかの思惑があるとは聞いているので、峰打ちで済ませましょうか」
 仲間達にその同意を得られた壱狐は、リヴィエールに願う。
「警備隊の撃破とドライアードの陽動が済んだら、流浪の民を先導して戦域の離脱を」
「分かったっす」
 依頼者でもあるリヴィエールも神妙な顔で壱狐に頷いた。

 警備隊による襲撃もないまま、ファミリアーの示す場所へと一行は到着する。
 蔓草でできた牢に捕らえられたパサジール・ルメスの民十数名。
 その前方に、迷宮森林警備隊数名。そして、大樹を依り代としたドライアード2体が確認できる。
 リュカは竜の睥睨で頭上から見下ろす。森の中とあって、樹上の相手までは全て把握が難しいようだ。
「まぁ、流浪の民のねーちゃん達も殺されては無いみたいだし、とりあえず無力化する方向で行こうぜ」
 今後も考えて幻想種達の命を奪うべきでないとルージュは改めて主張し、不殺で倒す旨を確認する。
「このまま仲違いになるのもつまらねえ。今すぐどうにかは出来ねえが……」
 勘違いでこうなってしまっている実状は互いに不幸なこととリュカも頷き、諍いを少なくするよう努めたいと意気込む。
「森林警備隊を全員でノックアウト、後はタンク役がドライアードを引きつける間に救出の流れっすかね」
「牢から流浪の民を出すのは、敵全員を無力化した後か敵が牢から遠く離れた時だぜ」
 全身機械の『パンジャンドラム』アルヤン(p3x009220)の再確認に、ルージュが補足する。
「牢からすぐにでも助け出したいけど、少し待て、我慢しろ……」
「お願いするっす……」
 グレイの呼びかけにリヴィエールは歯痒さを滲ませ、後ろへと下がる。
「リヴィエールのねーちゃんはファミリアが使えるなら、牢の中の人に静かにジッとしてて欲しいって伝えて貰えるか?」
 そこで、ルージュがそう伝えたことで、リヴィエールは大きく頷いて鳥を呼び寄せていた。


 救出に動くべく、イレギュラーズはその身を翡翠の幻想種達の前へと晒す。
「……来ましたか」
 迷宮森林警備隊の長、弓の名手であるラウルが呟く。
 どうやら、相手はイレギュラーズ達が森林迷宮へと侵入していたことを把握しており、この場で待ち受けていたようだ。
「森の中に引きこもって放火の煙を吸い続けるうちに、脳細胞が死滅したんですか?」
 森林警備隊を梨尾が煽る。彼と共にタンク役となるツルギは一旦様子見しながら、戦闘準備を整えていた。
 その間に、他メンバー達も状況を整える。
 スティアはサメちゃんを捕らえられたパサジール・ルメスの人々の元へと向かわせる。
・安全に救出できるならリヴィエールさんに救助に動いて貰う
・危険なら後で助けるから待っててね
 以上のように書かれた紙をサメちゃんから見せられた人々は助けが来たことを察する。
 リヴィエールのうまくファミリアーも接触したようで、安堵した表情をスティアへと向けていた。
「貴方達がやってる事は泥棒ですよ? 犯罪ですよ?」
 梨尾が指摘するのは、パサジール・ルメスの民が運んできた商品を没収した点だ。
「お母様やお父様に『悪い事はいけません!』って言われませんでした? それとも余所者なら奪っていいという蛮族みたいな考えをお持ちで?」
「一度だけ言う。異国の者達よ、この地から去れ」
 だが、相手は梨尾の言葉に聞く耳も持たない。排他主義を強めているというのは間違いない様子だ。
「精霊様に愛される種族のやる事とは思えませんね!」
 悪態づく梨尾だが、森が流れ弾に巻き込まれぬようにと、保護方陣を展開する。
(翡翠の民は自然を汚す者を排除する、と言っていましたが精霊はどうなのでしょう)
 壱狐は聳え立つ大樹に宿る精霊ドライアードを、匠の智慧と神秘知識で解析を試みる。
 使役されていることもあるが、精霊達も自然を害する者に対する怒りがあり、自発的に幻想種達に協力しているように壱狐には感じられた。
(……木属性ってゲームだと器用貧乏。本でも地味だからとあまり見かけない気がしますし)
 そんなことを考える梨尾だが、幻想種達は退去せぬイレギュラーズの態度に、自分達の忠告を拒絶したと取ったようだ。
「ならば、排除させてもらう」
 一斉に弓や杖を手にする警備隊の者達。
 併せて、ドライアードもその巨体を大きく蠢かせるのだった。


 相手が強硬手段に出るならば、イレギュラーズとしても対応せざるを得ない。
 敵が攻撃に出たと察したアルヤンが高い機動力を活かして攻撃に出る。
「必要以上の不和が起きないようにしないとっすね」
 目指すは、地上にいる数人の警備隊。アルヤンはまっすぐそちらへと向かい、渾身の力で突撃して爆発を巻き起こす。
「どうなんですか。反論してみてください!」
 そこを目掛けて、梨尾も自らの気持ちを交えて挑発の言葉を繰り返す。
(さすがの精霊さんも、愛する種族をボロクソに言われれば怒りますよね?)
 言葉と共に、彼は錨の形の火を相手の心へと引っ掛け、炎上させる。
 実際、弓を射かけ、風魔法や風の精霊を行使する警備隊と合わせ、ドライアードも梨尾を優先攻撃対象と判断して、枝を薙ぎ払ってきていた。
 同じタイミング、ツルギはもう一方のドライアードを見上げていて。
「精霊も堕ちたものですね。事件の黒幕に気づけず罪なき人を傷つける……地に根付きすぎて状況が見えていないのでは?」
 精霊疎通も使い、ツルギは盾を構えて精霊を挑発する。
 効果はあったようで、相手は地面から草を生やし、ツルギの動きを束縛しようとしていた。
 ドライアードを2人が抑える間、他メンバー達はこの場の森林警備隊の無力化を急ぐ。
 陽の構えをとっていた壱狐は樹上から矢を射かけてくる警備隊に対し、陰陽五行の太刀で斬撃を飛ばす。
 壱狐の斬撃に当たった警備隊は体勢を崩し、大きく吹っ飛んで地面へと落下していた。
(撤退口を確保しなけりゃ、パサジール・ルメスの連中を助けるのもあぶねえからな)
 リュカは場所の把握できる樹上の敵へと竜の呪いをかける。
 その呪いは物理的な圧力を生じ、様々な不調をきたす。
 こちらも、怯んだ警備隊メンバーが枝から落下してしまうこともあったようだ。
「不安はわかるけどな。疑心暗鬼で八つ当たりは褒められねえぞ!」
 相手に叫びかけるリュカだが、警備隊が止まるはずもない。
 地上へと集まる形となる警備隊は、数も多かったこともあってスティアが敵の出方を窺いながら注意を引きつける。
 敵の目を釘付けにするように、スティアは流れる様な動きで警備隊の目を引く。
 警備隊は後方射撃を行う者もいたことから、スティアは彼らを少しずつ前につり出すように立ち回る。
 前に出た相手へ、スティアは二刀一組の刀、散華、月天で斬撃を見舞う。
「うおおおおっ!!」
 ただ、森林迷宮に現れる魔物、不埒な侵入者を撃退する森林警備隊のこと。まさに矢継ぎ早に放たれる矢や、渦巻く風が前線メンバーの体力を削いでくる。
「回復が要るなら遠慮なく言え、途中で倒れないように……」
 グレイは牢の付近でガーディアンとなる邪魔なドライアードを気にかけて構えていたが、傷を負う仲間を見れば回復にも動く。
 癒しの力溢れる聖剣を両手で握り、力を籠めるグレイは矢に貫かれ、風に裂かれる仲間に癒しをもたらし、傷を塞いでいく。
「今回はこっちが攻めて側だからなー。先手が取れそうなら、一気に無力化しに行くぜ!!」
 ルージュは仲間達が警備隊を引きつけている間に、牢の近くまで静かに移動していた。
 機動力や反応対応力を高めつつ移動していたルージュは、複数の警備隊を射程ギリギリに収めてから奇襲する。
「これは、愛の力だぜ。……ルージュアタック!」
 手にする魅剣デフォーミティから広範囲へと放たれる謎の光。
 その光が地上で交戦する警備隊へと浴びせかかり、強くその気を引く。
 集まる攻撃をルージュはさらりと避け、タンク役メンバーの引きつける相手と合わせ、牢からの引き離しに当たっていた。


 徐々に進む戦局を、戦場外からリヴィエールがじっと見つめていた。
 戦闘慣れしている森林警備隊。
 ほとんど迷宮森林から出ない彼らだが、外敵から翡翠を守るという強い想いを抱いており、それを力に変えてなりふり構わず攻めてくる。
 挑発してくるイレギュラーズの言葉から強い気概で我を取り戻す幻想種達。
 彼らを樹上からおろし、地上戦に臨むイレギュラーズは少しずつ牢から距離をとっていたのだが、その多くはスティアに引き寄せられていて。
「待ってるのは性に合わない!」
 率先して接近戦を挑むスティアは氷の花弁を舞い踊らせ、幻想種らへと居合で切りかかっていた。
 警備隊を一気に追い込むスティアだが、集まる敵の数と技による反動の大きさもあって逆に追い込まれてしまう。
 素早く1体を気絶させたスティアだったが、相手は本気でこちらを排除しようとしてくる。
「翡翠から、出ていけ……!」
 気迫の籠った矢と風魔法、風の精霊が一度にスティアへと浴びせかかり、彼女は気丈に耐えていた。
 主として、ドライアードを抑えるツルギや梨尾の負担も大きい。
 戦線の維持をと力を尽くすツルギは防御に集中し、激しくなるドライアードの攻撃を受け止め続ける。
 梨尾はというと、降り注ぐ木の葉や飛んでくるミサイルを焔傘や盾として使う懐中時計で防ぐ。
 完全にそれらの攻撃を防ぐのは難しいが、皆の縁を紡ぐという決意の炎を燃え上がらせ、梨尾は攻撃しつつ自らに活力を漲らせる。
 仲間の攻撃と合わせ、アルヤンもミサイルのごとく敵陣へと特攻し、広範囲を爆撃していく。
 それもあって、傷を負う幻想種の中には早くも息が上がってきていた。
 樹上からは全ての警備隊を落とすことができたはず。
 相手が落下したことで命までも落とす状況は避けられそうだと考えながらも、壱狐は飛ぶ斬撃で幻想種らの気を失わせる。
(混沌での奴隷事件でもあぁだったんだ。より閉鎖的なこっちの翡翠なら尚更って事だろうな)
 リュカは死力を尽くす翡翠の民の姿に思うことがありながらも、奮起する。
「そういうしがらみをぶっ飛ばすのも俺らに出来る事だ!」
 竜の直感を働かせたリュカは弱った警備隊メンバーを見抜く。
 そして、その幻想種へとリュカはオーラを纏わせた竜の爪を振るい、さらに竜の呪いによる圧力で警備隊を倒す。
(今なら行けるはずだよ)
 竜の念話で、リュカは仲間やリヴィエールへとパサジール・ルメスの人々を救出するよう促す。
 最後まで応戦していた警備隊のリーダー、ラウルもそれに気づいて矢を放つ頻度を高めようとするが、かなり苦しそうだ。
 そんな相手の気を引こうとするルージュは再度光を発する。
「くっ……!」
 光を浴びたラウルは体を痺れさせ、そのまま意識を手放してしまったようだった。

 警備隊全てが倒れても、ドライアードらの抵抗は続く。
 この状況下で大樹は狂ったように荒ぶり、さらに攻撃を激化させる。
 回復の手を止めたグレイが蔓草を切り裂いたことで、リヴィエールはようやく仲間と対面する。
「早く、逃げるっすよ!」
 リヴィエールが蔓草の檻から仲間を救出させる間、ツルギは精霊の挑発を続ける。
 しかしながら、我を忘れるほどに怒り狂う大樹は大きく枝を伸ばす。
 牢から大樹も引き離そうと動いていたルージュだが、警備隊との交戦によって疲労も大きくなっていたのだろう。
「救出できたか、……なら、良かったぜ」
 狙いを定めた大樹の枝に薙ぎ倒され、その姿を消してしまう。
「加減はできない、けど斃さない所までなら手伝おう……」
 牢から全ての流浪の民を救出するまでは。グレイも聖剣を叩きつけ、体力を削る。
「ドライアードまで倒そうと時間をかけるわけにはな」
 戦いが長引けば、新手の警備隊や魔物が乱入しかねない。梨尾も精霊殺しは避けるべく、錨型の火で注意を引き続け、時間稼ぎする。
 牢から出た民へと放たれた土のミサイルはアルヤンが盾となって受け止める。壱狐がそちらへと飛ぶ斬撃で牽制する間に、リヴィエールは仲間と共に距離をとっていたようだ。
 後はイレギュラーズも撤収するのみ。
「仲間の中にはまだ、現実へ戻れる方もいる……守り抜きたいのです。死に魅入られる者は俺達だけで十分だ」
 殿となるツルギが大樹2体を相手取るが、さすがに厳しい。
 生存執着で踏ん張り、挑発を繰り返すツルギ。
「本当に倒すべき相手を見定めてください。俺達ではない誰かであるのは間違いありません」
 しかし、今の精霊達にその言葉は届かない。
 地面から生えた草に絡まれたツルギは、降り注ぐ木の葉に体を裂かれ、さらに土のミサイルに体を貫かれてその場から消えてしまったのだった。


 距離をとったことで相手が追撃を諦めたことをリュカは察し、仲間と森林迷宮の外を目指す。
「さすがに、奪われた品物を探す暇はなかったね」
 そう語るスティアだったが、いつの間にかリヴィエールはその荷物も回収していて。
「荷物は食料や日用品だったから、警備隊の人達も放置していたみたいっすね」
 馬車にも危害を加えてはおらず、捕まっていた人々はそれに乗っていた。スティアは少し安心しながらも、前方の索敵をサメちゃんに任せて移動する。
 森からの離脱中、グレイは捕まっていた人々へと声をかけて。
「落ち着いたら知っている限りでいい警備から聞いた翡翠の内情を教えてくれ」
 頷く人々が語ったのは、『大樹の嘆き』という言葉。
 自然を荒らす外部の存在について、イレギュラーズは理解を深めるべく、パサジール・ルメスの人々からさらなる情報を求めるのである……。

成否

成功

MVP

グレイ(p3x000395)
自称モブ

状態異常

九重ツルギ(p3x007105)[死亡]
殉教者
ルージュ(p3x009532)[死亡]
絶対妹黙示録

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは結果的に蔓草を切り裂いて救出を行った貴方へ。
 今回はご参加、ありがとうございました。

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