PandoraPartyProject

シナリオ詳細

太公望日和

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 本日は、オフである。
 ――否、訂正しよう。一応依頼である。
 幻想のとある街の近くにある釣り堀で、最近妙な噂が立っている。そこは元々あった大きな池を利用した釣り堀なのだが、そこで『巨大な魚の影を見た』という者が複数人いるのだそうだ。嘘か真かは解らないが、『誰かが引きずり込まれた』だの『肉食の怪物だ』などと言う噂まで出回ってしまっていた。
 不安がった釣り人たちの足が遠のくと、困るのは経営者だ。
 調査をし、もし居るのなら討伐をお願いしたい、とローレットへ依頼が持ち込まれたのだった。

『調査は……とりあえず暫く釣りをしてみるのがいいんじゃないかな。
 静かな水面を見つめながら針を落として、凪いだ心で己を見直す時間に当ててもいい。
 たくさん魚を釣って思う存分楽しむのもいいと思うよ』

 怪魚が出なければ出ないで、のんびりと釣りを楽しめばいい。
 釣りが好きな人や、魚を食べるのが好きな人向けの依頼であった。
 そうしてオフ感覚で釣り堀へと出掛けたイレギュラーズたちは各々思い思いに竿を握り、水面へと針を落としていた。
「引く、してる」
「あらぁ、本当。きっと何か引っかかったのだわ」
 ちょん、ちょちょん、と引いている糸を『旅色コットンキャンディ』カルウェット コーラス(p3p008549)に指さされた『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル (p3p009315)は、いい天気だと眩しげに仰いでいた空から釣り堀へと心を移した。
 ロッドスタンドに預けていた釣り竿から垂れた糸が振動によって水面に波紋を描くのを見て、どれどれ……と釣り竿を掴んで引き上げようとした――時だった。
「!? えっ、ちょっとぉ!?」
 ぐん!
 小さな魚とは思えない力で、竿が引かれる。慌てて両手で持ち、座っていたアウトドアチェアから立ち上がる。チェアが後ろに倒れるが、気にする余裕はない。
(このままでは、持っていかれる――!)
 竿を握る両手に力を込め、腰を落として足に力を入れて踏ん張る。
 知らず、コルネリアはペロリと唇を舐めた。これは、『大物』に間違いない。
「ボクも、手伝い、する」
 コルネリアの腰にカルウェットがぎゅうとしがみつき、彼女を支える。
 ぐいぐいと引いていた何かは、次第に水面からでもその大きさが解るようになってくる。大きさは、3メートル程だろうか? バシャバシャと水面は慌ただしく水滴を散らし、右に左にと動き回る。
 ――ここが勝負時。
 そう見極めたコルネリアは、渾身の力で竿を振り上げた!!!

 ザバーーーーーーーーーン!!!!

GMコメント

 ごきげんよう、壱花と申します。
 こちらはコルネリア (p3p009315)さんからのリクエストシナリオになります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。想定外の事態は絶対に起こりません。

●成功条件(できること)
 怪魚を倒して釣り堀に平和を取り戻す
 楽しく魚を釣り、皆で楽しく調理して食べる

●シナリオについて
 コルネリアさんが行方不明になる前のとある日、の出来事です。
 怪魚が出たところからのリプレイになるかと思います。戦闘が長引かなければ戦闘1:日常4を想定しておりますので、ノリと勢いで倒せます!

●『怪魚』ジャイアントレインボー
 ニジマスみたいな見た目で、目がキュルンとしていて可愛いです。ゲーミングニジマスかな?ってくらい虹色に輝いていますが、お味はとても美味しいです。
 大きさは3mくらいあり、暴れると他の魚や釣り堀に被害が出るかも知れません。
 出会い頭に扇状で水をぶっかけてくるので、人によっては【怒り】になります。
 そんなに強くはありませんが、水の中に入られないようにした方が良いかも知れませんね。皆さんの攻撃次第では他の魚に被害が出ます。

・コルネリア:竿を握っています。
・カルウェット:コルネリアの腰辺りを両手で掴んで引っ張っています。
・怪魚:ざばーん!と水から勢いよく上がり、宙に浮いたところです。コルネリアの竿から伸びた糸が口と繋がっており、竿から手を離せば竿を水に引きずり込み、離さなければコルネリアを引きずり込むつもりです。

●釣り堀
 幻想のとある街の近くにある釣り堀。怪魚のせいで閑古鳥が鳴いています。
 バーベキュー場や簡易宿泊施設が併設されています。売店もありますので、足りない食材購入、機材を借りることが出来ます。海上釣堀ではないので、釣れる魚は淡水魚になります。

●おまけ
 釣った魚の数を競い合いたい場合で、その結果をGMに任せる場合。どこかに『★勝負』と記しておいてください。ダイスを振って勝敗を決めます。

 それでは、イレギュラーズの皆様、素敵な物語をお待ちしております。
 風邪を引かないように気をつけましょうね。

  • 太公望日和完了
  • GM名壱花
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年10月17日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
志屍 志(p3p000416)
天下無双のくノ一
カルウェット コーラス(p3p008549)
旅の果てに、銀の盾
※参加確定済み※
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤
※参加確定済み※
耀 英司(p3p009524)
諢帙@縺ヲ繧九h縲∵セ?°
ブライアン・ブレイズ(p3p009563)
鬼火憑き

リプレイ

●おっきなお魚だー!
 うぉぉぉぉぉお!?!?!? やっべぇ!! 大物だこりゃあ!!
 突如響いた大声に、近くの森から鳥が飛び立った。
 その響き渡った声に、静かに糸を垂らそうとしていたイレギュラーズの視線も集まる。
「ボクも、手伝い、する」
「カルウェット! しっかり引っ張れぇ! アタシの腰と足と肩と体力を持ってかれる前にぃ!!」
「んぐぐ……! 頑張る、してるっ」
 先程まで揺らぐことさえ無かった水面は右に左にバシャバシャと激しく水を散らし、必死に竿を抑える『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)と、コルネリアを懸命に引っ張る『旅色コットンキャンディ』カルウェット コーラス(p3p008549)の小さな体を大きく揺らした。
 正直、持っていかれそうだ。
「カルウェット!」
 一緒に来ていた『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)は水上に――大きいとは言え池は池。湖や海のように大きくはないため、水上に行くのならコレをと釣り堀の管理人から貸し出された――小さな二人乗りのボートで乗り出さんとしていたところで二人の状況に気付き、ボートの側に居た『怪人暗黒騎士』耀 英司(p3p009524)へとボートを任せて二人の元へと素早く駆けた。
「フ、フリックー!! 助ける、してー!」
「任セテ!」
「私も手伝います!」
 フリークライよりも近くにいた『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)がコルネリアの手の上から竿を握り、より強固に竿との繋がりを保つ。そのすぐ後に三人の背後に駆けつけたフリークライが、三人ごと纏めて抱きしめるようにしっかりとコルネリアの腰へ腕を回して支えた。遠くから見れば、まるで『大きなカブ』である。
「ひえ……」
 暴れる水面と仲間の状況を見て、巨大魚が今まさに引きずり込まんとしていることを察した『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)は小さく息を飲み込む。ノリアの育った海には、ノリアを一口でぱくっとしてごっくんとひと飲みする巨大魚もいる。気持ち良く泳ぐ頭上に唐突に掛かる影に怯えた時を思い出して震えてしまう――けれど、
「えいっ、いざというときのためのそなえですの……!」
 もし引きずり込まれても泳いで逃げられるように、仲間たちへと『わだつみの寵愛』を振りまいた。
「はわわ、コルネリア様たち大丈夫ですか!?」
 初めての釣り堀にわくわくと糸を垂らしていた『はらぺこフレンズ』ニル(p3p009185)にも非常事態だという事が解り、立ち上がるとすぐに保護結界を張り巡らせる。水中に潜む何者かが大暴れしてしまったら、釣り堀へどんな被害があるか解らない。用心するに越したことはないだろう。
「上がってくるわよ……! フィィィィィッシュ!!」
 ザバァァァン!
 巨大な魚が、水中から空中へと飛び上がる。
 青空の下に浮かび上がったそれは水滴を伴いキラキラと光りを反射させ――七色に輝いた。
 それと同時に、竿やコルネリアを押さえていた面々は水浸しだ。
「釣れる、した!」
「うわっ、ちょ、ぺぺっ!」
 瞳を輝かせたカルウェットに腰を掴まれたまま、綺麗とは言えない池の水にコルネリアは好戦的に顔を歪める。魚のくせに、いい度胸しているじゃない……!
「ち、なんだよ騒がしいな……? って、うおぉおお!?」
 今日は完全にオフのつもりで来ていた『鬼火憑き』ブライアン・ブレイズ(p3p009563)は、「怪魚の話なんてどうせ噂にすぎねェだろ? 水面に映った何かの影に誰かが騒ぎたてたんだろうさ」なーんて釣り糸を垂らすポーズだけ取って木陰と洒落込んでいたら……この騒ぎ。
 怪魚は本当に居たし、しかも想像以上に大きいし、自然界に存在しない発光色――七色にキラキラと輝いている。瞬時に色々なツッコミどころを脳内に閃かせながらも、ブライアンは竿を押さえている一団へと駆け寄った。
「上がりましたね、今です!」
「任せろ……!」
 ブライアンがコルネリアたちを引くと同時に、浮き上がっている怪魚をニルが青の衝撃で弾き、駆けつけ飛び上がった英司が陸地へと叩き落とす。
 水中に住まう生き物を陸へと上げてしまえば、後はもう一方的だ。
 仲間たちの息のあった連携のもとに巨大魚はあっという間にしめられて。
「巨大魚捕ったりー!!」
 コルネリアの高らかな声に、仲間たちの笑顔と拍手が重なった。

●Fish & Cook!
 仲間たちと協力して釣り堀の管理人に借りたシートの上に巨大魚を寝かせれば、それは見事な大きさだった。
「焼いても煮ても食いでがありそうじゃん!」
「美味しく召し上がれるようにしますので、楽しみにしていてくださいね」
「料理 フリック 魚 臭ミトッタリ 味付ケ用 ハーブ・スパイス 持ッテキタ」
「ありがたいです、使わせていただきますね」
 他にもと生やした野菜をフリークライが差し入れれば、瑠璃はその新鮮さに美味しい料理になりそうだと口にして受け取った。
「料理は得意なメンツに任せてぇ……じゃんじゃか魚を釣っていくわよ!」
 どうせなら釣った数で『勝負』といくぅ?
 コルネリアが好戦的な笑みを向ければ、それに乗らない仲間たちではない。
「全イレギュラーズ最強釣師決定戦だぜ!」
「釣って釣って、美味しくいただいてやるぜ……!」
「魚釣り勝負、ニルもやります」
「ボクも、参加!」
「勝負、ですの……!」
「フリックモ 勝負 参加」
「皆様が釣りをしている間に料理を作ります……あ、鮭が欲しいので、もし釣れたら知らせてくださいね」
 海でも川でもないからいるかは解らないけれど、池の釣り堀は季節によっては放流されている場所もある。
「鮭、どんなの、わからない。でもわかった!」
「フリック 教エル。大丈夫」
 釣り勝負は、取りすぎて食べれなくなっても困るから、一時間だけ。後は食べられる範囲で各々釣ることを決めて。それじゃあ釣果を期待していてねと瑠璃に告げ、仲間たちは思い思いの場所で釣りをすべく散らばっていく。
「さて、やりますか」
 仲間たちを見送った瑠璃は、デンと横たわる巨大魚に向き直る。
 瑠璃が素早く締め、ニルがアイスダストで冷やしている巨大魚は新鮮な状態を保たれている。けれど仲間たちが釣った魚を持ってくるまでにはまだ少し掛かることを予想して、瑠璃は巨大魚の解体から始めるのだった。

 よーし、魚、沢山、釣るぞー! と元気に竿を握りしめたものの、カルウェットは釣り初心者だ。
「……あれ? 餌、どう付ける、するの?」
「貸してみな」
 竿の構え方は見様見真似で出来るけれど、素早く餌を付けられると何がどうなっているのか解らない。カルウェットの目線に合わせてゆっくりと英司が何度か付けてやれば、わかった! と元気に頷いたカルウェットも竿をヒュンッとしならせて参戦だ。
 釣りは焦らず、じっくり。
 のんびりと糸を垂らしてのほほんと佇むフリークライには、いつも以上に鳥たちが羽をやすめているようだ。鳥たちの囀りを聞き、時折跳ねる水面を見つめ、糸がツンツンと反応したって焦らない。鳥たちが驚いてしまわないように、魚が驚いてしまわないように、ゆっくりと釣りを楽しんだ。
「……だめ、ですの?」
「泳いだら釣りになんねぇからなぁ」
「はぁい」
 今日の勝負はあくまで釣りだから潜って捕っては駄目だ、とノリアには念押しを。
 そっと覗き込んだ水中で泳ぐ魚は、どれも小さい。とは言っても自然に捕れるものよりは身の付きは良い。突然変異したのであろう元ニジマスの巨大魚が食べてしまっていなければ、もっと大きな魚もいたかもしれない。
 それぞれのスタイルで糸を垂らす仲間たちは、みんなとても楽しそうだ。
 楽しそうなみんなを眺めながら糸を垂らしていたニルの手元にも反応があり、えいっと引き上げればニジマスがピチッと元気に跳ねた。
 コルネリアは早々に遠くに行っているため姿は見えないが、勝負に発破を掛けて英司の闘争心を見事に焚き付けたブライアンの姿はというと――大きな木陰の下だ。竿の設置だけは済ませ、仲間たちが釣りを楽しみだしたらそそくさと昼寝をしに転がったのだ。なんといっても今日はオフのつもりで来ているのだから。怪魚騒ぎで邪魔をされた昼寝の続きに勤しんだ。

 釣り勝負の一時間が経過すると、それぞれまたしたいことをする。釣りを続行する者、散策する者。そして、調理を手伝いに来る者。
「調理 手伝ウ」
「ニルもお手伝いします」
「ボクも、一緒、手伝い! 簡単なのなら、できる、します!」
「では……そうですね、ホイルに包むのをお願いできますか?」
「ホイル、包む、任せろ、した!!」
「カルウェット様、一緒に頑張りましょうね」
 瑠璃に渡された材料一式を手にしたフリークライに、瞳を輝かせたカルウェットとニルが続いて作業用の机へと移動した。
 アルミホイルを適当の長さに切り出す担当はカルウェット。カルウェットがアルミホイルを並べていく後ろからフリークライが怪魚の切り身を乗せていき、ニルがシメジと玉ねぎを乗せていく。アルミホイルの任を終了したカルウェットが続いて味噌とマヨネーズと味醂を混ぜた調味料をスプーンで落とし、その後にフリークライがバターを一欠片置き、ニルがアルミホイルをふたつに畳む。三人で並んで端っこ三辺を折り曲げて閉じ込めれば、後はもう焼くだけだ。
 三人の流れ作業で手早く作ったホイル焼きを瑠璃へと届けたら、ニルは瑠璃の手伝いに残り、カルウェットとフリークライのふたりは遊んでくるとまた釣り堀へ。
「冒険、する! フリック、ごー!」
「ン。冒険 出発」
 貸し出された二人乗りのボートはフリークライが乗るといっぱいいっぱいだ。不安定に少しグラグラ揺れるが、それがまた二人の冒険気分を引き上げる。中央に座ったフリークライの膝にちょんと座ったカルウェットは、楽しげにゴーと腕を振り上げた。
 カルウェットとフリークライの冒険を見送って、どんな魚がいるのかと水中にもぐったノリアは、暫く泳ぐと誰かの針に引っかかった。
「あっ、わたしは、釣らないでくださいですの!!」
「お。そこに居たのかノリア。釣らねえし食べねえよ」
 慌ててわたわたチャプチャプ暴れれば、のんびりと釣り糸を垂らした英司がもっと安全な場所で泳ぎなと告げてくれる。彼は仮面をしていてその素顔が知れない『怪人』だが、結構お人好しだし面倒見がいいのだ。
 ブライアンは相変わらず気持ちよさげに木陰で寝ているし、遠くからコルネリアの「フィッシュ!」な声が響いてくる。
 巨大魚の大きなカマを焼き、アヒージョの準備も整えた瑠璃はBBQ台から顔を上げ、ふうと汗を拭った。響く仲間たちの楽しげな声と、柔らかに吹き抜けていく風が心地よい。

 蒸らし具合はどうだろうか。土鍋の蓋を開ければ、ほかりとあがる湯気の下から覗く魚の身と舞茸。ほのかに茶色く色づいた米はツヤツヤとして美味しそうだ。ニルに炊き込みご飯を混ぜて貰っている間に瑠璃はちゃんちゃん焼き用の野菜と味噌ダレを皆が好きに焼いて食べれるようにと準備。
 本日のメニューは、巨大魚を利用したカマ塩焼き、舞茸の炊き込みご飯、刺身、ホイル焼き、石狩鍋。それから皆が釣った魚で作ったちゃんちゃん焼き、アヒージョ、魚の串焼きだ。過不足無く飲み物の準備もすれば、食事の準備は完成だ。
「わぁ、お魚がこんなにいろんな食べ方があるなんて」
 すごいですと瞳を輝かせるニルに、お手伝いありがとうございますと瑠璃は労う。
「スターゲイジーパイ? というのも気になるのですけど、どんなのなのでしょう」
「あれは……何と言うか、見た目のインパクトがすごいですよ」
 パイに使用する魚は海魚だし、オーブンのある環境での調理が必要だ。魚の頭が『星を仰ぐように』突き出ているパイとは知らないニルは、いつか食べてみたいですと柔らかく笑った。
「さて、皆さんお昼ですよ!」
 瑠璃が軽く手を叩いて声を上げれば、散らばっていた仲間たちがゾロゾロと戻ってくる。近づくほどに美味しそうな香りが増し、それだけでみんなの表情は柔らかなものとなった。
「あれ、良い匂い……こんな所でも本格的なモン作れるなんて凄いわねぇ」
「……瑠璃、アンタ料理が出来るのか……!」
 釣った釣ったとコルネリアが魚の入ったバケツを持ち帰れば、何やら感極まった声を上げる英司の姿があった。どうやら家庭的な女子の姿に感動しているらしく、ぐっと拳を握っている。そんな彼の仮面がコルネリアの方へと向き……すっと逸らされる。
「英司、何」
「い、いや別に? 男よりワイルドだとか思っちゃいねーよ?」
「…………」
「…………」
 二人の間に微妙な空気が流れた。
「お、いい匂いだな。あの魚スゲェ色してたが、マジで食えるのか?」
 そんな空気を切り裂くように戻ってきたブライアンは欠伸を零す。彼の腕に下がったバケツに居る魚はコルネリアの半分程度。盛り上げるだけ盛り上げて、早々に昼寝と洒落込んだせいだ。
「こちらの魚は塩焼きにしましょう」
 追加の魚は塩焼き。ニルとふたりで内臓の処理を済ませると、BBQ台にセットした。
「んじゃ、いただきまぁす!」
「イタダキマス」
「いただく、します!」
 手を合わせる習慣がない者も見様見真似で他者に倣い、全員揃っていただきます。
 頂く命に感謝して、美味しく調理してくれた人に感謝して、料理を堪能すべく口へと運んだ。
「塩焼きも炊き込みご飯も美味いわぁ、デカいし大味かと思ってたけど調理の仕方もあるからかめちゃ美味い……おら、ブライアンテメェその魚アタシが狙ってたのに!」
「ハッハー! 早いもの勝ちだろ?」
「おかわりは沢山ありますので、大丈夫ですよ」
「カルウェット、焼き立ては熱いからふーふーしろよ!」
「ふーふー!」
 英司に言われたとおりにカルウェットがふーふーして、ぱくり。
 それでも熱くてはふはふとするけれど、そのはふはふとするひとときも堪らない。
「ひっひー、美味しい!」
「ン。美味シイ。楽シイ」
「焼いただけでもとっても美味しいですの!」
 料理を口に運ぶ度、仲間たちの顔に笑顔が浮かぶ。その笑顔をゆっくりと見つめていたニルも、みんなで釣り、みんなで料理した魚を口に運んだ。
(これはきっときっと『おいしい』です)
 味覚的な『美味しい』は解らないけれど、暖かく穏やかな食事というものはこういうものだと解る。みんなの笑顔が溢れて、しあわせが満ちる。それはきっと、『おいしい』だ。仲間たちだってみんな、そう口にしている。
「それじゃあ、お待ちかね。勝負結果の発表よ!」
「おー」
「誰が一番だろーな」
 程よく食べて腹が落ち着いてきた頃に、コルネリアが切り出した。
 勝負は時間あたりの釣果。最初の一時間と決めている。
 料理の合間に持ち込まれた魚を集計していた瑠璃へと仲間たちの視線が集まった。
「では三位から。三位はノリアさんです」
「しっぽで誘ってがんばりましたの!」
 尾を揺らして見せるノリアの尾に視線が集まる。海の魚よりも小さな魚ばかりだったが、少しは効果があったようだ。
「スゴイ オメデトウ」
「続いて二位はコルネリアさん」
「ひとっ走り離れまで行ってきた甲斐があったわね!」
「一位は英司さんです」
「お。俺が釣りキングか!」
「英司! おめでと!」
「おめでとうございます!」
 因みに最下位は早々に昼寝をしたブライアンで、最終的な量ならコルネリアが一位だった。
 沢山食べて沢山語りあえば、あっという間に過ぎる時間と減っていく料理たち。
 皿の中身が減っていくのは少しだけ寂しい気持ちも湧くけれど、胸もお腹も幸せで満ちている。
「ああ、お腹いっぱい!」
「ごちそうさまですの、瑠璃様」
「美味い飯サンキュー!」
 あんなに大きな魚も、たくさん釣られた魚も、気付けばみんなのお腹の中。
 満足気にポンポンと腹を叩いてから、片付けぐらいは手伝うかぁと伸びをしたコルネリアが振り返る。
「ニル、一緒にやる?」
「はい、ご一緒します」
「ボクも片付け、頑張る、します!」
 ニルが頷けば、挙手をしたカルウェットも元気にぴょんぴょんと跳ねる。その姿に「では私も」と袖をまくろうとする瑠璃を、ノリアが「わたしたちにお任せくださいですの」と引き止める。
 機材や大きな物の片付けは、フリークライと英司がブライアンを引っ張って手伝って、片付けの最後まで賑やかで楽しい時間が過ぎていく。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

シナリオへのご参加、ありがとうございました。

楽しい釣日和となっていましたら幸いです。
おつかれさまでした、イレギュラーズ。

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