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シナリオ詳細

<大樹の嘆き>相打つもの達への救い

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●翡翠国・国境線にて
 R.O.Oにおける『翡翠国』――今この地には、何らかの異変が生じている。
 突如として封鎖されたサクラメントと国境線。完全な閉鎖状態となった『翡翠国』。その異変の全容は未だつかめず、特異運命座標たちは早速の調査を開始した――。
 そんな中、ここ、翡翠国国境付近、森林迷宮において、ある巨大な影が目撃されたという情報がもたらされていた――。
「巨大・精霊だそうだ」
 と、『理想の』クロエ(p3y000162)は、特異運命座標たちへと向けてそう言う。秘密裏に国境付近へ到着することのできたあなた達特異運命座標たちは、身を隠せる位置にキャンプを作り、こうして国境線での調査を行っていた。そんな中、もたらされた情報と言うのが、巨大精霊の出現、と言う事なのだ。
「その巨大精霊は、何やら暴れている、らしいのだ。それも、我々外様の人間を襲うだけならまだしも、翡翠国の人間までも無差別に襲っているらしい。精霊が荒れ狂い、無差別に人を襲うとなると……やはり、何らかの異常が、翡翠国に起こっているに違いない」
 クロエの言葉に、特異運命座標たちは頷いた。そして――システム上に、新たなクエスト発生の知らせが現れる。クエスト名は、『相打つもの達への救い』。クエストクリア条件は、巨大精霊の討伐である。
「クエストとして発生したなら、クリアすることが謎の解明に近づくはずだ。早速ですまないが、巨大精霊の討伐をお願いしたい」
 クロエの言う所が中空を指ではじくと、特異運命座標たちのシステム画面上に、クエストの詳細が表示された。現れたのは、討伐対象。外見を言うならば、大木や蔦で構成された、巨大なヘビのような姿をしているようなのだ。
「数は二体。巨木にも巻き付くほどの巨大な姿だ。現実では討伐に骨が折れるだろうが、この様な巨大な敵を少数で倒せるのも、R.O.Oならではと言った所だろうな。
 さて、開示されている情報はこのくらいだな……クエストに設定されているとはいえ、何が起きるかはわからない。くれぐれも、気を付けてほしい」
 そう言ってクロエが特異運命座標たちを送り出す。特異運命座標たちは決意を胸に、討伐作戦に乗り出すのであった――。

●迷宮の蛇神
「蛇精霊、き、きます!」
 森林迷宮内部が激しく鳴動する。巨大なヘビが蠕動する音。それだけで地は抉れ、木が倒れ伏す。
「とにかく矢を射なさい! 国境を越えさせてはいけません!」
 翡翠国、森林警備隊の幻想種たちが、その手にした矢を次々と放つ。鋭く宙をかける矢は、蛇精霊の樹木のような皮に突き刺さるが、ダメージを与えられていないのか、蛇精霊の進軍する速度は留まるところを知らない。
 蛇精霊が鎌首をもたげ、強烈な遠吠えをあげた。とたん、蛇精霊の樹木の皮がとげのごとく盛り上がり、あちこちへ向けて一斉に解き放たれる! まるで矢のように飛来するとげが、警備兵たちの腕を貫き、激痛に手にした弓矢を取り落とした。
「ぐ、うっ……!」
「あいつ、あの巨体で正確に狙いをつけてくる……!?」
 警備兵隊たちが悲鳴をあげた刹那、もう一体の蛇精霊が、その身体を持ち上げ、静止。間髪入れず身体を振り下ろし、強烈なボディプレスを放った!
「退避! 潰されるぞ……!」
 警備兵たちが三々五々逃げ出すのへ、蛇精霊のプレスが落着する。直撃は避けられたが、その衝撃に警備兵たちが吹き飛ばされ、木々に、大地に打ち付けられた。
「戦闘続行不能なものは撤退なさい!」
 女性隊長が声を張り上げる。無事なもの達が、仲間を抱き上げて離脱していく。それを嘲るように、二体の蛇精霊は舌をしゅるしゅると打ち鳴らした。
「……くっ……! こいつ等をこれ以上進行させるわけにはいかないのに……!」
 歯噛みする女性隊長。特異運命座標たちが現場へと到着したのは、森林警備隊の戦いが激化していくそのさなかであった。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 巨大な蛇精霊を撃破しましょう。

●成功条件
 すべての蛇精霊の撃破
 オプション――森林警備隊の可能な限りの生存

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

●状況
 翡翠国の異変を調査するため、国境付近に訪れた皆さん特異運命座標たち。その調査中に発生したクエストは、二体の蛇精霊を撃退する、と言うもの。
 これも謎の解明のため、とクエストを受注した皆さん。はたして戦場に到着した皆さんの目の前には、二体の蛇精霊と戦う森林警備隊たちの姿がありました。
 皆さんの目的は、蛇精霊の撃破。しかし森林警備隊たちは、皆さんにも攻撃の手を向けてくることでしょう。
 期せずして三つ巴のような形のなってしまったこの状況を、どうにかして突破してください。
 作戦決行タイミングは昼。周囲は森林地帯になっています。動きやすくなるプレイングやスキルがあれば、判定にプラスが発生するでしょう。

●エネミーデータ
 蛇精霊×2
  非常に巨大な、樹木の皮膚を持つ蛇のような形をした精霊です。巨体故に、一人ではマーク・ブロックできず、2名以上を必要とします。
  防御技術が高めです。代わりに、回避がやや低め。多少の攻撃などは意に介さず攻撃してくるタイプです。
  皮膚の樹木を矢のようにして飛ばす範囲攻撃や、巨体を生かしたプレス攻撃、鞭のように打ち付ける舌の一撃などを行ってきます。
  『毒系列』『麻痺系列』のBSにご注意ください。

 森林警備隊兵 ×15
  翡翠国の森林警備兵です。基本的に、蛇精霊、特異運命座標たち、両方に対して敵対しています。
  何らかの手段で意思疎通を図り、説得などができれば、少なくともこちらへの攻撃はやめてくれるかもしれません。
  警備兵たちの生存は、あくまでオプションです。全員生存は難しいと思います。ある程度の被害はやむを得ないでしょう。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • <大樹の嘆き>相打つもの達への救い完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年10月12日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

桃花(p3x000016)
雷陣を纏い
シャドウウォーカー(p3x000366)
不可視の狩人
グレイ(p3x000395)
自称モブ
アレクシア(p3x004630)
蒼を穿つ
リュティス(p3x007926)
黒狼の従者
エイラ(p3x008595)
水底に揺蕩う月の花
指差・ヨシカ(p3x009033)
プリンセスセレナーデ
天狐(p3x009798)
うどんの神

リプレイ

●荒ぶる精霊
 木々が薙ぎ倒される音がする。現れる二体の巨大な蛇精霊。樹木の蛇、と言った様相がぴったりのそれは、地を這う人々を嘲るように鎌首をもたげ、その舌をちろちろと震わせてみせた。
「くっ……まずい……!」
 森林警備隊長の女が声をあげる。
「今動けるのは何人ですか?」
 その言葉に、隊員の男性が答えた。
「半数以上はすでに撤退しています……おそらく、動けて15名かと……!」
「まさか我々森林警備隊がここまで追いつめられるとは……!
 異変か……なんとも恐ろしい事ですね……」
「それも全て、森を荒らしたよそ者たちのせいです……!」
 隊員の女性がそう言うのへ、隊長は頷いた。
「いずれあがないはさせましょう。ですが、今は彼の精霊を鎮め、国境線を守らなければ……!」
 隊長の言葉に、隊員たちは頷いた。皆が弓を構え、矢を番える。そんな彼らの努力をあざ笑うように、蛇精霊はぐぎぎ、と口の端を歪めた。笑っているかのように。警備兵たちはしかしひるまず、巨大な精霊に一斉に向けて、矢を放とうとする――刹那!
「うおおおお、りゃああああああ!!!」
 雄たけびと共に飛び込んできた一つの影――陽光に煌く金の髪、まるで翼のようにそれを翻し、『殲滅給仕』桃花(p3x000016)が上空から蛇精霊へと襲い掛かる!
「普段より体が軽いな! クエスト用の特殊なバフか? まぁいい、やれってんなら、どんなデカブツだろうとなぁ!」
 普段より高く飛べる――おそらく、巨大精霊と戦うために、このクエストに関しては、一部の移動能力が強化されているのだろう。
 右手を握りしめる! 途端、爆発せんばかりの雷がその手にまとわりつき、その拳を蛇精霊にたたきつけるや、まるで強烈な落雷が落ちたかのように、蛇精霊に打撃を与える!
 きぃぃぃ、と悲鳴をあげる蛇精霊。桃花はにぃ、と笑みを浮かべると、
「エイラ! もう一匹抑えろ!」
「まかせてよぉ」
 『深海に揺蕩う月の花』エイラ(p3x008595)がふよふよと宙を泳ぎながら、もう一体の蛇精霊の眼前へと向かう。
「さぁてぇ、きみの相手はエイラだよぉ。ふわふわ、ゆらゆら。エイラを捕まえられるかなぁ?」
 その眼が金に輝く。海中の月のような、怪しい光が蛇精霊を貫くや、蛇精霊はもはや月から目をそらすことはできない。ごお、と吠えた蛇精霊は、エイラに向けて威嚇の声を放つ。
「こっちはおーけーだよぉ。後はぁ……」
「おう、先に桃花チャン担当の方を仕留める!
 おいテメーラ! そう、そこの森林警備隊のテメーラだ! 桃花チャン達はテメーラと喧嘩する気は」
「くそ、よそ者か!」
 しかし桃花の声を無視し、警備隊たちが声をあげた。その目は憎悪と殺意に染まっている。
「かまいません! まとめて追い払います!」
 隊長が叫び、同時に放たれた無数の矢が、蛇精霊、特異運命座標たち、無差別に降り注ぐ!
「……オイ聞けよ! オイ!」
 降り注ぐ矢をはじき返しながら、桃花が叫んだ。
「うーん、聞いてくれないねぇ。ねーぇ、警備隊さんたちぃ。こっちはエイラが引き受けるよぉ。警備隊さん達もぉこっちは後回しぃ。
 悪い話じゃないんじゃないかなぁ。エイラがぁ無事の間はぁ被害そっちに行かないしぃ、まず犠牲になるのはぁエイラだしねぇ」
「……助けてくれるというのでしょうか?」
「騙されるな、よそ者の言う事だぞ!」
 警備隊たちに動揺が走るが、しかし無差別攻撃はやまない。声は届いてはいるが、まだまだ心を動かすには説得を続ける必要があるだろう。
「しょうがないわね。向こうからしたら、自分の家の敷地に出た害虫をやっつけようとしていたら知らない人が侵入って来た……みたいなものかしらね」
 『プリンセスセレナーデ』指差・ヨシカ(p3x009033)が嘆息しつつ、青く輝くブレードを構えた。ポーズなどを決めつつ、
「どちらにしても、クエストを放棄するわけにはいかないわ。
 今日もご安全に、ヨシ!
 さぁ、行きましょう!」
 ブレードが青の軌跡を描く。同時、左手から発射したアンカーが、蛇精霊の皮膚へと食らいついた。アンカーを、ヨシカは一気に引き上げる。高速で接近したヨシカは、青のブレードを、勢いのままに突き刺した! 分厚い木の皮膚、それを貫いて肉体を切り裂く、ヨシカの攻撃! 傷口から緑色の樹液のような血液が吹き出し、蛇精霊が身をよじる!
「凄い、あの皮膚を切り裂いてダメージを……!?」
 呆然と呟く警備兵。だが、蛇精霊の攻撃も無差別だ。蛇精霊がその身を激しくよじり、のたうち回った。衝撃波があたりに飛びまわり、近くにいた警備兵が吹き飛ばされる!
「……! 下がって! 巻き込まれるよ!」
 ヨシカが声をあげるが、
「だ、黙れ! これは我々翡翠の問題だ! そもそも混乱の原因はよそ者が……きゃあっ!」
 女性隊員が吹き飛ばされ、木に激しく打ち付けられた。そのまま意識を失ったようだ。ヨシカは悔しげにうめきながら、
「このままじゃ被害は甚大……!」
「おお! そうなる前に、わしにまかせよ!」
 と、声をあげたのは、屋台を引く『きつねうどん』天狐(p3x009798)だ。ドリフト走行で屋台を引くや、倒れた警備兵を、その屋台に放り込む。
「うむ、息はある! 今のうちに治療すればたすかろう! 後は、警備隊が攻撃を止めて、こちらを受けれてくれればじゃが……おおうっ!」
 と、悲鳴を上げて屋台に隠れる天狐。その屋台に、数本の矢が突き刺さる。
「あーっ! わしの一張羅……は着物に対して使う言葉じゃな。屋台に対してはなんというのかの?
 いや、そんな言葉遊びをしている場合ではないな! ヨシカ殿! とにかく息のあるものはこちらで引き取る! 攻撃に専念してくれい!」
「了解! そちらもご安全に!」
 だだだだだっ、と屋台を引いて駆けだす天狐。そんな天狐を追って目を光らせる蛇精霊の前に、ヨシカが立ちはだかる。
「悪いね、目指すはゼロ災なの!」
 飛び掛かり、蛇精霊に斬りかかる! 分厚い装甲、その隙間をぬって肉を切り裂く、青の閃光!
「いくら硬くても、隙間を縫えばどうと言う事はない!」
 その言葉通り、じわじわと巨大な蛇精霊に、ダメージは蓄積していく。
 一方、天狐と同様、倒れた警備兵の下に駆け寄る『ハンドルネームは』グレイ(p3x000395)。グレイは深い傷を負った警備兵の男性へと、治療スキルを展開する。デジタルなインターフェースがあたりを飛び交い、淡い蒼のエフェクトが傷口を覆い、癒し始めた。
「くっ……よそ者の助けなど……」
 悔しげにうめく警備兵に、
「死なれると、その、困る」
 夢に出そうだし、とグレイは言う。警備兵の女性は顔をしかめた。
「何を馬鹿な事を……そもそも、この混乱はお前たちよそ者のせいだ……」
「それが、わからない。心当たりがない」
 グレイは言った。
「この混乱とは何なんだ? 何故、よそ者を排斥する。この混乱の原因は、君達の言うよそ者のせいなのか?」
「何をわかり切ったことを……!」
 激昂するように、警備兵は声をあげた。だが、体力が限界に来たのだろう。ふと意識を失う。同時、ずざざ、と屋台をドリフトさせて、天狐がやってきた。
「へいおまち、じゃ!」
「ん。丁度のタイミング」
 グレイは警備兵を抱き上げると、屋台の上へと乗せる。
「天狐。アレクシアとリュティスが説得に入るみたいだ」
 と、グレイが言うのへ、天狐が頷く。
「うむ、うまいこと行ってくれればよいが……警備兵たちめ、結構やる気満々で突っ込んでいくからの!」
 天狐が走り去っていく。入れ替わる様に、『不可視の狩人』シャドウウォーカー(p3x000366)が着地。
「そっちはどう?」
 と、シャドウウォーカーが尋ねるのへ、
「ん、順調……蛇の方は?」
 グレイが答え、尋ね返す。
「抑えは効いてる……けど、とどめを取るにはもう少し時間がかかりそう! できれば一斉攻撃にうつりたいけど……」
「それも説得次第か」
 グレイの言葉に、シャドウウォーカーは頷く。
「とにかく、攻撃は続けるよ! 桃花やエイラの負担も増えちゃうからね!」
 シャドウウォーカーは跳躍。空中でマシンガンを取り出すや、ワンマガジンを躊躇なく全弾発射。銃弾が蛇精霊の皮膚を走り、その足(うごき)を止める――同時、蛇精霊は身体を蠢かせると、皮膚の枝を斬り飛ばし、ナイフのように撃ち放つ!
 シャドウウォーカーは無理矢理身体をひねるとそれを回避、無差別に放たれたその刃は、大地や木々を無残に切り刻んて行く。
「まったく、君は精霊なんでしょ!? 森を害するような真似……!」
 叫ぶ。だが、蛇精霊は荒ぶるように身を震わせるだけで、回答を示さない。
 一方、森林警備隊隊長の下へ、二人の人影が現れた。直掩の警護兵が弓矢を構えるのへ、隊長はゆっくりとそれを制した。
「……同朋のようですね。ですが――」
 隊長がそう言うのへ、二人――アレクシア(p3x004630)と『黒狼の従者』リュティス(p3x007926)は、ゆっくりと頷いた。
「はい。私たちは、特異運命座標……皆さんから見れば、よそ者にあたります」
 と、リュティスはそう言った。

●対話と戦いと
「私達は助けに来たの! だからどうか、攻撃はしないで!」
 アレクシアがそう言うのへ、激高したように声をあげる警護の男性。
「ふざけるな! 如何に同胞と言えど、よそ者の手先になったのなら容赦はせんぞ!」
「……ひとまず落ち着いてください」
「隊長!」
「……彼らが、私たちを攻撃していないことは事実です。それは、今までの戦いでも分かります。
 彼らは礼を尽くしたという事。であるならば、私達もその礼に応えなければ、森の民としての礼儀を失います」
「はい……」
 警備の男性が頷くのへ、隊長は声をあげた。
「……一度だけ話を聞きましょう。あなた達の行いに免じて」
「ありがとう……!
 私はアレクシア。さっきも言った通り、特異運命座標の一人。それに、あなた達の同胞……ハーモニアでもある」
 と、アレクシアは長い髪を少しだけかきあげて、自身の耳を示した。
「私はリュティス。同様に、ハーモニアです」
 と、リュティスが自身の耳を見せる。そんな二人を見て、隊長はこくりと頷く。
「私は森林警備隊の一つのチームを任されています。『緑石の』ハーティアです。
 あなた達がよそ者と結託している理由は問いません。それで、話とは」
「共闘を願い出たいのです」
 と、リュティスが言う。
「私達の目的は、彼の巨大精霊二体の討伐。翡翠国の皆様と事を荒立てるつもりはありません」
 些か血気盛んな警備兵がにらみつけるが、ハーティアは頷く。
「私達が、あなた達を信じる理由がありません」
「これまでの態度ではだめ?」
 アレクシアが言った。
「私は、みんなが倒れるのは見たくない! 森が、動物が、精霊たちが傷つくのも!
 私だけじゃない、ここにいるみんながそう。傷ついてしまった警備隊の皆も、今助け出してる。
 ……皆、この国が危機に陥っているなら、何とかしたいって思ってる。
 だからどうか、今は一緒に戦ってほしいの! 私達のためじゃない、この森のために!」
「もちろん、今ここで私たちを信じ、手を結んでほしい、とは言いません」
 リュティスが続いた。
「この蛇精霊を鎮める、その間だけで構いません。共に戦う、という表現が嫌なら、自分たちの被害を抑えるために、私たちを利用する、と考えてもらえればよいのです。
 どちらも被害を抑えたいのは同じなはず、一考の余地はあるのではないでしょうか?」
 二人の言葉に、ハーティアは静かに頷く。今だ、特異運命座標たち、そして警備兵たちの戦いは続いている。考えている時間は、無い。
「……わかりました。遠き地の同胞よ。あなた達の言葉と、仲間達の行動に免じて、私たちはこの場での協力を約束します」
「ありがとう、ハーティアさん!」
 アレクシアが笑顔を浮かべる。
「慣れ合うつもりはありません。が、お互いの全力を尽くしましょう」
「おおっと、話はまとまったな!」
 ぎゅおうん、と屋台を引いて、天狐がやってくる。
「けが人じゃ! さっさと連れてゆくが良い! まだ治療をすればたすかろう!
 ……わしはまた援護に戻るぞ! 桃花殿はともかく、エイラ殿はぼちぼち限界じゃ! さっさと片割れを倒して援護に向わなければ!」
 再び屋台を引いて去っていく天狐を見やりながら、ハーティアは頷いた。
「……仲間を救ってくれたことには感謝する」
「当然のことをしたまでです」
 リュティスが一礼をした。

「うおっりゃぁ! かかってこいよ蛇ヤロー!」
 桃花の拳が雷を纏いて唸る! 消耗した蛇精霊が暴れ、大地をめくりあがらせた。ひゅう、と口笛一つ、
「スゲー、ブルドーザーみてー。ウケル!
 そーいや警備隊の攻撃がこっち来なくなったな! 上手くいったか……!」
「そうだよ!」
 アレクシアが叫び、矢を番える。蒼天を切り裂くがごとき蒼の矢が、蛇精霊に突き刺さった。分厚い皮膚を貫いて、肉を裂く!
「後は、あっちをやっつけるだけ……やろう!」
「おっけーだ! おらおら、ヨシカ! アンタの得意な奴でやっちまいな!」
「言われなくても、ね!」
 ヨシカが飛び掛かり、蛇精霊の眉間に狙いを定める。青のブレードを鋭く構え、
「今日もゼロ災、ご安全に――プリンセス・スラストっ!」
 纏う青のエフェクト共に、突き出す! 放たれた刃が、分厚い木の皮膚を貫き、蛇精霊の額を突き刺す! ぎゅおお、と悲鳴をあげた蛇精霊が地に倒れ伏す――同時、緑の光となって、蛇精霊が消滅!
「わぁ、あっちはやっつけたみたいだねぇ」
 エイラがのんびりと、しかし体のあちこちに傷をつけながら、ふわりと漂う。鋭く打ち放たれた鞭=舌が、エイラを捉えた。撃ち放たれた衝撃に、エイラがたまらず、着地、膝をつく。
「うーん、ごめん……そろそろー、限界、かもぉ」
 えへへ、と笑うエイラ。もはや立ち上がることも困難な様子に、蛇精霊が、無数のとげを飛ばす――刹那。
「大丈夫。誰も倒れさせはしない」
 と、現れた影が、その楯を掲げて無数のとげを打ち払ってみせる。
「グレイぃ?」
 と、エイラが声をあげるのへ、人影――グレイは頷いた。
「よく耐えてくれた。此処からが反撃だ」
 グレイは頷くと、跳躍――その後方から、援護の銃弾が放たれる。その銃弾の主の方を見てみれば、リュティスのライフルが硝煙をあげていることに気づいただろう。
「おそらくは、森を守る精霊だったはずです。それが何故、この様に荒ぶるのかは存じませんが――」
 リュティスは呟き、ライフルに次弾を装填。
「人にあだなすのであれば。申し訳ございませんが、眠っていただきます」
 引き金を引く。放たれた銃弾が、宙を裂いて飛翔! 蛇精霊の皮膚を貫き、内部を食い破る!
「シャドウウォーカー、俺が隙を作る。一気に止めを刺してほしい」
 グレイの言葉に、シャドウウォーカーは頷く。
「おっけー! ワタシがゲームを決めてあげる!」
 両の手に出現する、雷を纏ったダガー。それを見やりながら、グレイは大地を蹴る。荒れ狂う蛇精霊の身体を避けながら、跳躍。
「狙うなら……やっぱり、眉間か」
 と、盾を構え、流星のごとく眉間へ向かい突撃する! 吹き荒れる嵐の様なエフェクトを纏ったグレイが、今、直撃した! がうん、とすさまじい音が鳴り響き、衝撃が蛇精霊の脳髄をぐわりと揺らす! 強烈な隙をさらけ出した刹那、シャドウウォーカーは跳躍! 手にした雷のダガーを構え、
「これで! ゲームクリアだ!」 
 叫び、両手に構えたダガーを、蛇精霊の脳天に突き刺した! 蛇精霊の全身を、雷が駆け巡る! 強烈な一撃が蛇精霊の内部を焼き、身体のあちこちからぶすぶすと煙をあげる。蛇精霊が白目をむき、ぐらり、と揺れる。途端、大地に倒れ伏した蛇精霊。ずしん、とあたりが揺れる。蛇精霊はすぐに光に包まれると、緑の光となって消滅していった。
「おお、これで仕舞いじゃな」
 と、天狐が傷ついた警備隊を抱きあけながら言う。この状況には、警備隊たちも、流石に称賛の喜びの歓声をあげざるを得なかった――。

「助力には感謝します。我々も、命を救われました。ですが……」
 特異運命座標たちを前にして、ハーティアがそう言う。慣れ合うことはできない、と言う事なのだろう。
「うむ……しょうがあるまいよ。此方としては、皆が無事でよかったというものじゃ。あ、うどん食べるかの?」
 天狐が笑った。ハーティアは不思議そうな顔をして、丁重に断ると、
「我々は、よそ者とは違う。礼には礼で返しましょう。
 アレクシア、リュティス。外の我が同胞たちよ……それから、一たびの助力をくれたひと時の友よ」
 ハーティアはそう言うと、
「『大樹の嘆き』。それが、翡翠を襲う異変。今はこれしか伝えられません」
 そうとだけ告げた。アレクシアは微笑むと、
「……ありがとう。その異変、必ず止めて見せるよ」
 とそう告げた。
「ハーティア様。それから、警備隊の皆様も、どうかお気をつけて」
 リュティスがそう言うのへ、ハーティアはゆっくりと頭を下げた。
 森林警備隊の面々が森の奥へと去っていくのを、特異運命座標たちは見つめていた。
 翡翠国の異変。その始まり。さらなる戦いの予感を覚えつつ、今は救った命の重さをかみしめる特異運命座標たちであった。

成否

成功

MVP

アレクシア(p3x004630)
蒼を穿つ

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様の活躍により、警備兵たちの被害は軽微にとどまっています。
 また、巨大な精霊も鎮められ、その姿を消しました。

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