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シナリオ詳細

灯台島の鐘が鳴る

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●灯台島の鐘
 リンゴーン、リンゴーン……。
 灯台島の鐘が鳴る。かつて、この先の海域が絶望の象徴であった頃。
 鳴り響く鐘が帰還の導になればと、そんな願いと共に建てられた塔があった。
 小さな島に不釣り合いな大きさの、白い灯台。
 夜光鋼と呼ばれる、蓄光し夜に光を放つ金属の鐘を最上部に据え、昼には音を、夜には光と音を放つ。
 おおよそ1時間に1度鳴るその鐘は、1回ごとに5回の鐘を鳴らす。
 帰ってきてほしいと、1度鳴っただけでは戻ってこれないかもしれないと。
 どうか導かれてほしいと鳴り響く5回の鐘。
 それは、役目を終えた今は鎮魂の鐘として鳴り響く。
 管理人など居なくとも鳴り響く。機械仕掛けの鐘。
「おお、今日も鳴ってるな」
「結構響きますよねえ」
「まあな。あれはあれで今も結構便利に……」
 灯台島を遠目に通り過ぎようとした船は、突然の轟音と衝撃にざわつく。
「な、なんだあ!?」
「船長、狂王種です! 狂王種の襲撃が……うわあああああ!」
 大きなハサミに、船がバツンと断たれる音が聞こえた。

●狂王種の狙うもの
「灯台島の鐘が、狂王種に狙われているです」
 チーサ・ナコックはそう言うと海図を広げた。
 数日前に襲われたのはアクエリア島へと繋がる海域を通る一隻の船。
 連絡船の役割を果たしていたその船は真っ二つにされ轟沈。
 船員達の僅かな生き残りから、今回の状況が知らされたのだという。
「海域にいるのは、ヤドカリの狂王種。どうやら目撃情報から灯台島に向かっていると推測されるです」
 鐘の音を頼りに進んでいるようで、その歩みは非常にゆっくりとしたものだ。
 しかし、数日内には灯台島に辿り着くものだと思われる。
 その狙いは分からないが……おそらく、灯台島が修復不能になるような「何か」をしようとしている事だけは間違いないだろうと言われている。
 灯台島の鐘に使われている夜光鋼は貴重なものだし、今となっては灯台島の灯台が壊れても、あまり直す意味はない。
 すでに役割をほぼ終えた灯台島を、改めて再建する必要など……何処にもないからだ。
 しかし、壊されるのを座して見ている理由もない。それが今回の依頼に繋がったのだ。
「灯台島に向かい、ヤドカリの狂王種を倒してくるです」
 幸いにも灯台島に管理人の類などはいない為、戦場で誰かを巻き込む心配はない。
 狂王種も灯台島を目指して進んでくるため、しっかりと準備をしたうえで迎撃することも可能だろう。
「ガツンとやってきてほしいのです。頼むですよ」
 

GMコメント

ヤドカリの狂王種を撃破し、灯台島を守りましょう。
灯台島はいわゆる離島であり、島の外周を走っても1時間かからない程度の大きさです。
灯台はその島に建っていますが、石造りなので狂王種の攻撃には然程耐えられないでしょう。
何処でどのように待ち構えるか指定し、迎撃しましょう。
なお、待ち時間はゆったりとバカンスしても大丈夫です。
バカンス後の鐘を合図に戦闘が始まります。

・ヤドカリの狂王種
全長30M。巨大なサザエのような殻を被っており、殻のあちこちにあるトゲから光線を放つ、歩く砲台です。
ハサミも肥大化しており、小型船程度なら真っ二つです。

・エビモンスター
全長2M。狂王種に勝手に随行する共生生物。陸上でも活動可能ですが、水陸両用の光弾を放って攻撃してきます。
全部で10匹です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • 灯台島の鐘が鳴る完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年09月30日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
華懿戸 竜祢(p3p006197)
応竜
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
綾志 以蔵(p3p008975)
煙草のくゆるは
天城・幽我(p3p009407)
孔雀劫火
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

リプレイ

●灯台島にて
「役目がなくなっちまっても、灯台の明かりってのはいいモンだ。月も見えねぇほど夜が深くなって、空と海の境目もわからなくなるくらい真っ暗になった時、遠くにあの光が見えると落ち着くんでな。確かになくても困らねぇが、ねぇよりはあった方がずっといい。みすみす壊させてやる気はねぇさ」
『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)はそう呟きながら、灯台を見上げる。
 白い灯台はただ美しく、年月を感じさせない佇まいでそこにある。
 この灯台を構成する石も風化している様子はなく、かなり良い石を使い丁寧に建築しているようだ。
 縁の言う通り、なんとなくといった安心感がある姿だった。
 あるいは、灯台に籠められた想いがそれを感じさせるのだろうか?
「……それにしても、何だってヤドカリが灯台を狙うのかねぇ」
 それは分からない。分からない……が、あるいは灯台そのものに惹かれているのかもしれなかった。
 真実は、まさか狂王種に聞いてみるわけにもいかないが……。
「もうあまり使ってないけど壊したくなくて、依頼を出した? すごく曖昧な理由だな。でも人間らしい。その鐘はどんな音色なんだろう。気になるな、俺も聴いてみたい」
 時間ごとに鳴る鐘ではあるが、まだ鳴っていない。
『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は灯台の内部を見れないか……などと考えるが、近寄ってみると扉には鍵がかかっていない。このまま開ければ、恐らく中に入る事も出来るだろう。
「……あ」
 そして、丁度灯台に近づいてきていた『孔雀劫火』天城・幽我(p3p009407)と遭遇したのだ。
 時間がくるまでゆっくり、と言われても逆にそわそわしてしまうというか、今のうちに備えておいた方がいい気がしてしまうな……と、そんな事を考えていた幽我だが、後からそわそわしないように波の音でも聴きながら資料を見ながら色々考えていたのだ。
 灯台以外でもある程度高くて島に接近されても距離を取ることのできる場所を把握する為に島を簡単に回ろうと思っていたのだが……高台はこの灯台のある位置だけのようで、自然と引き寄せられていたのだ。
「やあ、天城さん。この灯台を確かめに?」
「うん、まあ」
「そうか。俺もこの灯台の仕組みを見てみたくてね。よかったら一緒に行かないか?」
 正直、幽我は「こういう時どういう楽しみ方があるのかわからないし。それに僕が輪に入ってもいいのかな……とも思うけど、自分から動かないとだよね」などと先程呟いたばかりだった。
 だからこそ、このイズマの誘いは渡りに船で。
 頷き、イズマと幽我は灯台の中へと入っていく。
 そうしてあちこち動き回っている者もいれば、『煙草のくゆるは』綾志 以蔵(p3p008975)のようにゆったりとしている者もいた。
「なんだよ光線って。30mのデカさとハサミはいいとして明らかに光線撃つのはおかしいだろうが」
「ヤドカリの狂王種か。色々といるものだが、そこまでのサイズが収まる貝も、海にいたものだな」
 釣りをしている以蔵の近くでは暇を持て余したのか『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)も煙草の煙をくゆらせていた。
 2人がやっているのは如何にも大人らしいゆったりとしたバカンスだが……渋い雰囲気が漂っているのは気のせいではないだろう。
「気を引き締めることも大事だが、張り詰めすぎないこともまた、重要だ。この煙草は、その調整に一役買ってくれる」
「まあ、どいつもこいつも普段何かと忙しい生活をしているからな、こうしてのんびり時間の経過を感じられる過ごし方ってのはなかなか贅沢なもんさ」
 ちなみに以蔵達は真っ先に灯台の鐘を調べにも行っていた。
 夜光鋼。どうやら希少金属であるらしく、今となってはこの灯台島の鐘に使われているサイズのものを用意するのは中々に手間がかかるようだった。
 光を吸収し夜に放つタイプの金属だが……そうしたものを用意する程の「祈り」が籠められていたという証拠でもあるだろう。
 そしてその祈りは今、ヤドカリの狂王種を引き寄せてしまっているのだ。
「ヤドカリを引きつける理由は、鐘が理由だと言うなら、二つだろう。その鐘の音が奴にとって不快なものか、光に引き寄せられるのか。もし引き寄せられるのが光なら……」
 言いながらジョージは、持ってきた照明のことを考える。浜辺に仕掛けてある照明に反応してくれれば、多少灯台から気を逸らす役にもたつだろうか?
 その浜辺では、『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)が静かに灯台を見上げていた。
 灯台を見上げて思いを馳せるのは、この場所を見守って来た鐘のことだ。
「ずーっと見て来たんやねぇ、この場所を、この海を」
 なくてはならない大事な灯台、どれだけの年月を情景を、人の航海を眺めてきたのだろう?
 今となってはその役目の大半を終えてはいるが……籠められた祈りが、果たしてきた役割が消えたわけではない。
 沖の方を見ると、『若木』秋宮・史之(p3p002233)が素潜りをしているのが見える。
「お、いたいた。おいしそうなのがたくさん」
 随分と手慣れているようで、バーベキューをする為の準備も万端なようだ。
「エビとヤドカリかあ。ボイルしてソースかけて食うとうまいんだよね……いやいやお仕事ですよね、わかってますとも」
 最近はでかい=強力って図式もわかってきたし灯台を守るためにも気は抜かないよ……などと言いながら再度潜っていく史之を見送ると蜻蛉は浜辺に履物を投げ出して、足を波に浸して海風を頬に感じる。
「流石に水着……言うわけにもいかんし、ちょっと水も冷たいし今日はこれだけで我慢。ついこないだまで、日差しも暑かったけど夏も終わりやねぇ。このまま静かに遊んどりたいけど、そういうわけにもいかんのよね……」
 これがただのバカンスであれば、それでもよかったのだろう。
 静かな灯台島はバカンスの舞台としては非常に最適な場所だ。
 しかし……今此処は狂王種に狙われる戦いの舞台になるのだ。
 だが、それでも今くらいは良いだろう。
「事前のバカンス。生憎私はそういうものに疎くてな。なに、私の事は気にしなくていい。敵襲に備え海を静かに見張っておくさ」
「そんなこと言わず。ほら、幽我さんも竜弥さんもおいで」
 そんな事を言う『応竜』華懿戸 竜祢(p3p006197)や幽我を引っ張り込みながらバーベキューを楽しみ、片づけをして。
 ……そして、戦いの時を告げる鐘が鳴る。
 本来は船の無事を祈る為の鐘。それは今、始まりを告げる鐘として響いていた。

●狂王種との戦い
 鐘が鳴る。祈りの鐘が鳴る。
「それじゃあ、作戦通りに。俺は随伴するエビの相手をするね」
 史之が海中に潜り、エビモンスターの相手をするべく動き出す。
 浜辺に近づくヤドカリの狂王種はすでにその巨体のほとんどが見えており、尖ったトゲトゲの巻貝が見えている。
「やれやれ……このまま奴さんが現れねぇでいてくれりゃぁ、心置きなくバカンス気分を味わえたんだがねぇ」
 青刀『ワダツミ』IIIを引き抜いた縁がそう言えば、蜻蛉も「そうやねえ」と苦笑しながらも巨大鉄扇「傾国」を取り出す。
 そして竜祢も、かなりテンションが上がってきているようだった。
「ふむ……話に聞いた通り中々の大きさだ。正に砲台か、あるいは要塞と呼ぶべきか。しかし我々の前では何ら大きな障害ではない」
 言っている間にも竜祢のテンションは上がっていく。
「くくっ、あぁ眩しいな、あの圧倒的存在を前に誰一人として輝きが失われていないとは。勇気か、勝算か、希望か、或いは……私のような微々たる存在でその輝きが増すというのなら、喜んでこの身を捧げようではないか!」
 今にも高笑いをしそうな竜祢だが、そこまではいかなかったようだ。それはさておいて。
「例えその役割を終えようと、永く海を見守ってきたそれは、同胞に等しい! むざむざ、貴様に破壊などさせん!」
 ジョージの黒顎魔王がヤドカリの狂王種に叩き込まれれば、ヤドカリの狂王種も敵を定めたらしくレーザーを乱射してくる。
 文字通りの艦砲射撃のようなソレは、一発たりとて灯台に当てさせるわけにいかない威力である事は明らかだった、
「あぁも巨大な生物が動かれては厄介だ、まずは足を斬り落とすべきか」
 言いながら竜弥はヤドカリの側面に回り、足に蒼翠剣・八十禍津を叩き込む。
 しかし丸太を軽々と超える太さの足は当然ながら一撃で破壊するのは不可能だ。
「やはり固い……! だが何の問題もない!」
 そう、竜弥は1人で戦っているわけではないのだ。
 エビモンスターも浜辺に上がってきて、それを追って史之も浜辺へと上がってくる。
「大きゅう育ち過ぎたんやない……?お料理に使うにはちょっと使い辛いわ。これでも食らっとき!」
 蜻蛉のヴェノムジュエルがエビモンスターへと命中し、史之がトドメを刺す。
「帰って来て欲しい想いが願いが、今も灯台の鐘を鳴らしとるんなら……今ここで、壊されるわけにはいかんのよ」
 蜻蛉のそんな言葉は全員の共通の想いだろう。
 以蔵の紫煙魔術が更に1体のエビモンスターを仕留め、イズマのH・ブランディッシュが更に1体を倒す。
「ったく、ヤドカリだけでも手間がかかるってのにな」
「……ヤドカリのおこぼれにあずかりたいのかな? そうはさせないが!」
 そう、エビモンスター自体はたいした脅威ではない。
 ヤドカリの狂王種もこちらを脅威と認定したのか、それ以上浜辺には上がってこないが……歩く砲台である以上、然程危険性は変わってはいない。
「どういう原理で光線を出すのかは少々気になるが……見ても分からんな!」
「でもまあ、これだけでかいなら下ごしらえも楽そうだね!」
 竜弥にそんな軽口を飛ばしながら史之がエビモンスターを撃破する。
 そう、狂王種とはよく言ったものだ。
 こうして見ても弱点など全く分からない。
 しかし竜弥はこうも思うのだ。
 ヤドカリというのは、殻の中に弱点である腹部を隠すのだそうだ。
 つまり、殻を破壊した箇所から腹部を攻撃するのは有効打になりうる。
 難しいなら仕方ないが正面から削りきろうじゃないか。
「切断できるものは積極的に切断しに行き、可能性という可能性を潰す……!」
「役に立てるといいんだけど……いや、違う。ここで、役に立つんだ……!」
 幽我のソウルストライクがヤドカリに命中し、その装甲を削っていく。
「どうにも頑丈だが……あの灯台を壊させるわけにはいかねえんでな」
 縁の黒顎魔王が叩き込まれ、ヤドカリの狂王種の動きは少しずつ鈍くなっていく。
 如何に巨大な狂王種といえど、無敵などではない。
 執拗に足を狙う竜弥とイズマの攻撃についに轟音をたてて動きが止まり、それでも光線を放ち敵を排除しようとする。
「これで……終わりだ!」
 やがて竜弥の一撃がヤドカリの狂王種にトドメを刺し、その目から命の輝きが消える。
 そして……鐘の音が、響き始める。
 それは勝利の祝福の鐘か、鎮魂の鐘か。
「やれやれ……これで終いか」
 あるいは一息つく縁たちへと向けた、労いの鐘にも聞こえるだろうか?
 だが……蜻蛉には、それは「いつも通り」であるようにも聞こえていた。
「これからも、帰り道に迷う人のために……鐘を鳴らし続けて下さいね」
 灯台からは、当然答えはない。そして、同じように灯台を見ながらジョージは思う。
 役割を終えようとしているとはいえ、できるなら再開発か再建か。
「新たな役割を模索しても良さそうな灯台だな」
「無数の魂が沈むこの海には、鎮魂の音色がまだ必要だってことだな」
 イズマが同意するように頷いて。史之が、パンッと手を鳴らす。
「うん、やっぱり狂王種といえど命は大切にしなきゃね。というわけでいただきます」
 そんな事を言って調理を始め……縁はそっとその場を離れていく。
「やっぱり基本は刺し身だよね。それから味噌汁ね。エビとヤドカリは近縁種だから味の相性もいいと思うんだ」
 まあ、この場に放置をするわけにもいかないからそれは鎮魂の意味でも今後の為にも正しいのだろう。
「そういえばヤドカリの肝って食べた痕に水を飲むと砂糖水みたいに感じられるらしいんだけど本当なのかなあ。これは試してみるしかないよね」
 しかしまあ、料理をする史之は実に楽しそうで、幽我も頑張って手伝いをしていた。
「ま……めでたしめでたし、ってな」
 以蔵もそう言って、灯台を見上げる。
 夜になれば夜光鋼の鐘が光り出す。それを見て帰るのも……きっと、オツなものだろう。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

コングラチュレーション!
灯台島の防衛に成功しました!

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