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シナリオ詳細

<オンネリネン>海に羽ばたくアルバトロス

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 天義かの旅はのんびりとしたものだった。
 馬車3台を貸し切り、オンネリネンの部隊は仕事を求めてアドラステイアを出る。
 15人ほどの子供達を率いていたのは、バイロンという名の少年だった。
 バイロンは群を抜いた戦闘技術もあり、一部の子供達の纏め役となっていた。
「俺がお前達を導いてやる。安心しな!」
 白い歯を見せて笑う彼は、子供達から羨望の眼差しを向けられる。
 まんざらでもないが、今から向かう先では傭兵としての仕事が待っている。
 仕事をこなすことで、アドラステイアに残された仲間達を助け出すことができる。これはその一歩だ。
 自分達の頭上を飛んで追ってきている黒い鳥。
 あれはマザーからの預かりもの。自分達への期待の表れだ。
「間もなく着くぞ」
 子供達の視界が開け、海が見える。
 海洋……ネオ・フロンティア海洋王国。ここから自分達の仕事が始まる。


 天義、独立国家『アドラステイア』。
 マザー、ファザーと呼ばれる大人に導かれた子供達は新たな神ファルマコンを崇める。
 そして、子供達は互いを監視し、魔女裁判を行っていて……。
「本当、知れば知る程、ひどい場所さ」
 幻想、ローレットにて説明を行う『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)が首を振る。
 互いに不信感を抱きながらも、子供達は閉鎖された都市を生き抜いている。
 そんな子供達の中で、都市の外へと出ることが許された者達がいた。
「オンネリネン……子供達の傭兵部隊ってやつさ」
 すでに交戦したイレギュラーズもいるが、彼らは天義から出て豊穣を除く地域で傭兵としての活動を行っている。
 なお、彼らはアドラステイアが背後にいるということを偽装しているという。
「このオンネリオンが海洋にも現れるそうさ」
 オリヴィアがつかんだ情報によれば、烈風海賊団なるチンケな一味がオンネリオンと契約を結んだという。
 子供でありながら、かなりの戦闘能力を持つ部隊に興味を抱いた海賊団は早速、彼らと共に付近の商船や港で略奪を始めると見られている。
「ただ、海賊団が最も興味を抱いているのは、聖獣って話さ」
 バイロンという部隊の指揮者は時に黒い鳥を呼び寄せるという。
 旋風を巻き起こす鳥の姿に、海賊達は見惚れ、我が物にせんと画策しているのだとか。
「次、奴らは海洋の小さな漁港を狙うらしい。そこで撃退してほしいんだよ」
 依頼としては海洋からのものだが、同時に天義からアドラステイア関連事件の調査、解決をと要請があっている。
 オンネリオンの子供達はアドラステイアに仲間を残していることもあり、説得はかなり骨が折れるはずだ。
 加えて、両者共にかなりの戦力を持っている。特にオンネリオン側は聖獣を呼ぶことができるようで、これが介入すれば非常に厄介なことになる。
 この場は撃退さえできればどうにかなるので、武力で追い返せば手っ取り早い。とはいえ、やはりオンネリオンの子供達の方も上手く対処したい。
「全てを解決しようとすれば、考えることは多い……が、何を解決すべきかを話し合ってから作戦に乗り出しな」
 オリヴィアはそう説明を締めくくったのだった。


 海洋にある小さな漁港。
 この辺りはちょっとした漁場として知られており、大小様々な魚が近海で獲れるのだという。
 そんな漁港へと近づいてくるのは、大きな風が刻まれた旗を掲げた海賊団。
「奪え、片っ端から金目の物を漁ってこい!」
「「ヒャッハー!」」
 船上で活気づく海賊団の団員達。その長であるブリージは上機嫌になりながらも、子供達へと向き直って。
「さあ、働いてもらうぜ。……ああ、あの鳥を呼んだっていい」
「できる限りのことはする」
 どうやって聖獣を我が物にしようと考える海賊の長。対する子供達は成果を上げる事に注力すべく、海賊の悪事に加担せんとする。
 もうじき、港に船が着く。そこは倉庫街となっており、荒らすには十分な場所だ。
 しかしながら、彼らを待ち受けていたのはローレットから派遣されたイレギュラーズ達。
 メンバー達は予め立てた作戦を基に、海賊と子供達の混成隊を一度に相手取るのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 天義アドラステイア関連シナリオ、<オンネリネン>のシナリオをお届けいたします。

●概要
 海洋の近海を根城とする海賊団にオンネリネンの一部隊が雇われています。小さな漁港を襲うこの混成隊を相手取り、撃退することが必要です。
 このシナリオは、天義と海洋の名声が付与されます。
 
●敵
◎オンネリネン・部隊
 傭兵として各地へと派遣された部隊の一つです。
 はるばる海洋にまで来て仕事を探していた際、海賊に目を付けられたようです。

〇リーダー・バイロン
 部隊を率いる14歳の少年。
 槍を操り、槍から放つ竜巻状の衝撃波、旋風を巻き起こす薙ぎ払いなどを使い、卓越した技術で高い戦闘力を持ちます。
 それだけでなく、部隊員からの信頼も厚いようです。

〇聖獣・ブラック・アルバトロス(略称・黒信天翁)
 全長4mほど。全身真っ黒なアルバトロスです。
 旋風を巻き起こし、激しい叫び声を上げて相手の動きを止め、急降下して嘴と爪で襲い掛かってきます。

〇構成員×14体
 いずれも10~14歳の子供の男女。
 半数がハルバードや鉾といった長物を。半数が長杖、錫杖といった杖を用いて魔法を行使します。

◎烈風海賊団
 海洋で活動する海賊団。略奪を繰り返す小物ですが、今回オンネリネンが引き連れる聖獣を狙い、雇うことにしたようです。

〇ブリージ
 烈風海賊団の長、20代飛行種男性。
 翼を持ち、素手で風を操り、疾風刃、十字旋風刃と風の刃を使います。

〇団員×15体ほど
 飛行種と海種が半々。ほとんどが男性です。
 サーベル、カトラス、銃を使って武装しています。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <オンネリネン>海に羽ばたくアルバトロス完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年09月30日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)
航空指揮
三國・誠司(p3p008563)
一般人
ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
最強のダチ
ロウラン・アトゥイ・イコロ(p3p009153)

リプレイ


 海洋へと向かうイレギュラーズ一行。
「烈風海賊団は、噂で聞いた気もするな」
 2m近い大柄な飛行種、『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)はすでに今回の討伐対象について、耳にしていたらしい。
 烈風海賊団という略奪を繰り返す小規模な海賊団で、最近、その活動は目に余るようになってきていたらしい。
「オンネリネンと海賊が手を組みましたか。子どもに頼らなくてはならない海賊団には同情しますよ」
 民族衣装を纏う小柄な女性、ロウラン・アトゥイ・イコロ(p3p009153)が憐れむように、海賊団は小物でしかない。
 だが、彼らがこれまた話題の傭兵団を雇っているとなれば、放置もできないだろう。
「やれ、最近やけに名前を見るオンネリネンの子供か」
 隻腕の獣種少年、『航空猟兵』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)の呟きに、飄々とした態度の海種『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)も小さく首を振って。
「オンネリネン……噂には聞いていたが、とうとう海洋(うち)にまで来ちまったか」
 あまり他所のゴタゴタを持ち込まないでほしいと、縁は本音を漏らす。
「子供の傭兵っスか……正直あんま聞きたくねぇワードっスね。ったく、一体何があってそんなものが出来上がったんだか」
 黒髪に緑のメッシュが入った半吸血鬼の青年、『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)はまだ育ちざかりの子供達が安易に命を投げ捨てるような行いをしているのが気になっていた様子。
「子供を使い捨ての鉄砲玉にするなんて、一体何のつもりかしら」
 2本の角を生やす銀髪の夢魔、『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)はアドラステイアの内情について考える。
 魔種絡みで何かあり、子供達は金銭面では困っていないだろうと推察する彼女は、ファザー、マザーと呼ばれる大人のやり方も訝しむ。
「あんな遠くから見ても見えそうな鳥のために、子供を使い捨て……」
 目的の漁港へと向かってくる船は海賊旗を掲げているが、その上空には大きな翼持つ黒い鳥が羽ばたいているのはわかる。
「他所にもっといるっスけど、コイツらだけでも保護しねぇとな」
 オンネリネンの子供は各地に散っているそうだが、現状手が届く者達だけでもと、葵は助けてあげたいと考える。
 なお、海賊に慈悲はないというのがほとんどのメンバーの考えだ。
(オンネリネン……)
 ロウランがそこで連想していたのは、怨念 輪廻 理念という単語。
(死を以て怨念を、輪廻させる理念……考えすぎでしょうか?)
 そこで、漁港目掛けて海賊船が接岸してくる。海賊団にオンネリネンの子供。かなりの数だ。
「……いやー、それにしても頭数揃えたもんだねぇ。ここまで膨れ上がると厄介だな」
 凡庸ながらも大柄で引き締まった体つきの少年、『一般人』三國・誠司(p3p008563)は海賊達が面倒な相手だと感じながらも、兎に角やれることをやっていくしかないと口にする。
「残念、拮抗するのは戦力だけなんですよねー」
 ただ、ロウランはその力が自分達に劣ることもあり、拮抗は長く続かないと見ていた。
「厄介な勢力になる前に、叩き潰す!」
 アドラステイアのやり方が気に食わないジョージだが、小物である海賊団が調子づくのもまた同様に勘に触るようで、襲撃してくる敵の前へと身を晒す。
「チッ、邪魔が入ったか……」
 海賊の長ブリージが眉を顰めたことで、傭兵である子供達……バイロン部隊も戦闘態勢をとる。
「こう色んな場所に足を延ばされちゃ正直厄介だが……まあいい、海賊もガキ共も纏めてお縄にしてやるよ」
 遠路はるばる足を延ばす子供達にも視線を巡らすアルヴァは纏めて相手取る構えだ。
「ガキ共を守るのが、大人の本当の役目だ」
 ただ、『陽気な歌が世界を回す』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)が力強い一言でメンバーを制す。
 子供達は保護したいというイレギュラーズは多い。
 ヤツェク自身もどこかで地獄の悪鬼に誓いを立てたそうで、守るべき相手は別にいるが、ガキを守る気持ちに変わりはないという。
「何も知らないまま育て、都合よいことだけ教えて使い捨てるのは――おれとしては、外道の所業だ」
 それだけに、ヤツェクはオンネリネンの一団はどんな荒っぽい手段を使っても生き残らせると豪語する。
 年食って甘くなったものだと本人の談だが、皆その気持ちは同じ。
「悪魔の私に『生かせ』っていうんでしょ。言ったわね?」
 二言はないとする利香も、些か緊張気味のオンネリネン部隊を枷から解くべく立ち回乱と意思表示する。
「……じゃあ始めましょうか。狩りの時間ヨ♪」
 子供らと共に、下卑た笑いを浮かべる海賊達を殲滅すべく、イレギュラーズはするのである。


「仕事に邪魔な連中をのしてしまえ!」
「「ヒャッハー!!」」
 烈風海賊団の長ブリージの一声に、団員達がテンション高く吠える。
 それらに追随し、オンネリネン部隊もまた気合を入れて長物を手に近づいてくる。
「来い、アルバトロス!」
 リーダーであるバイロンが呼び寄せる黒い巨鳥ブラックアルバトロスである。
 異世界に存在するこの鳥は白い体表で知られ、その名も白い尾がある海鳥であるとされる。
「アルバトロス……? ああ、アホウドリですね」
 ただ、ロウランが言う様に、一部の国ではアホウドリという名の方が知名度は高い。信天翁という表記もあるが、馴染みは薄いだろう。
 思った以上に敵の侵攻が早かったこともあり、ロウランは倉庫街を背に敵を迎え撃つ。
「そこの鳥や海賊はともかく、世間知らずの子どもたちまで手にかける趣味はありませんよ」
 そう告げたロウランは、バイロンが呼んだ黒いアルバトロスへと向かう。
「ただし、二度とアドライステイアに戻れるとは思わないことですね」
 アドラステイアは旅人が排斥対象だと聞いていたロウラン。
 故郷を追われて生存を許された彼女としては、異世界で……この場で死ぬなどまっぴらごめんだと袖から霊刀を引き抜く。
「子供達は任せるっスよ」
 すでに混戦の様相となる前線から葵は距離をとり、倉庫のすぐ手前に位置取る。
 鳥なら飛べなくするのが手っ取り早いと、葵は黄色い流星マークが刻まれたサッカーボールを蹴り上げる。
 狙い通りに葵は頭上から羽ばたいてくる黒アルバトロスの翼の付け根を強く殴打し、相手を怯ませたのだが。
 ヴォオオオー、ヴオオオォォォォー!
 やや耳障りな叫び声でこちらの攻撃の手を止めてくる。
 さらに、黒アルバトロスは翼を羽ばたかせ、イレギュラーズ達へと旋風を浴びせかけてきた。理性は感じられぬ聖獣だが、バイロンの言うことは聞いているようだ。
 時折、その聖獣へと海賊団の長ブリージが視線を向けてくるのはさておき。
 間抜けとも格好良いともとれる名を持つ怪鳥を見上げたロウランは、霊刀「雪月花」へと手の甲の宝石より魔力を送る。
 そして、大地から無数の晶槍を出現させてその巨体を貫いた。
 ヴォオオオォォォー!
 再び叫ぶ黒アルバトロス。頼もしい仲間達に、縁は楽できそうだとおどけるが、仲間達の耳に入ったことに気付いて。
「……なんてな、冗談だ。今夜の飲み代分くらいは真面目に働くとするさね」
 相手は攻撃の為、急降下して縁へとクチバシを突き出し、爪を振るって襲ってくる。
 ただ、ダメージを受ける縁もそれを狙っており、青刀『ワダツミ』で斬撃を浴びせかけていく。
「遠路はるばる来てくれたようだが、悪いねぇ。海洋の大空を満喫する前に、ちっとばかり俺達に付き合ってくれや」
 怪鳥は縁を強く敵視し、彼へとしばし攻撃を繰り返していた。

「いくぞ!」
 黒アルバトロスを呼び出したバイロンも槍を操り、竜巻状の衝撃波を放つ。
「……ま、いいわ。バイロンちゃんと遊びましょう」
 瘴気と魅了の魔眼によって利香は、バイロンを抑えようとする。
 レジストしたせいもあってか、バイロンはそれだけで落ちはしなかったが、強く利香に気を引かれて槍を振りかざし、彼女の体を切り裂いてきた。
 手傷を負う利香を、ヤツェクが癒し手としてサポートする。
 ヤツェクは強敵であるバイロンを抑える利香へと聖骸闘衣を纏わせ、槍の及ぼす出血や体勢不利などから彼女を守る。
 さらに、ヤツェクは他メンバーを多く自らの回復スキルに巻き込めるように位置取ってから魔法の旋律を奏で、仲間達の不浄も払っていた。
 そんな中、バイロンは果敢に利香を攻めるべく槍を操る。
 アドラステイアで身に着けたと思われるその技は決して侮れぬ技量がある。
 それでも、利香は再び魔眼でバイロンの魂を捕まえて。
「キツい鞭の一発で力量差をわからせてあげるわ」
 洗脳の類もあるだろうからと、利香はさらに雷の魔力を帯びた魔鞭を叩きつける。イカとかなんとかといかがわしいフレーズを使うが、正しくはイコルである。
「うあああっ!」
「そう簡単に逝っちゃわないでしょうケド」
 利香は回数をセーブしつつ、眷属のルカを呼び寄せてなおも自身の魅力でメロメロにしようとするのである。

 ブリージを含む烈風海賊団の団員とオンネリネンの部隊構成員は残りのメンバーで相手をする。
(一気に来られるとこっちの処理能力を超える……ってなると、足並みを乱さないといけないわけで……)
 誠司が敵の攻略法を考えていると、ジョージが子供達へと呼び掛けて。
「子供だろうと、傭兵として戦場に立ったなら、覚悟はできているな?」
 彼はグローブを装着した拳で殴り掛かっていく。最初は問答無用の海賊多めといった形だ。
 海賊らもテンションを高め、刃に銃を操って攻撃を行う。
 とはいえ、海賊らの技量は決して高いとまでは言えず、乱戦で狙いを外す者すらいた。
「小物共が。大人しく航海でもしてれりゃよかったものを」
 アルヴァは頭上へと舞ったブリージら飛行種の海賊達を敵視し、魔導狙撃銃BH壱式を殴打して1体ずつ地上へと落としていく。
「ちんけな小物海賊団とは聞いてたが、子供を雇う程とはな?」
 丁度、仲間がブリージを叩き落としたところで、アルヴァが低空からそいつをマークし、名乗りを上げる。
「うるさい、黙れ!」
 見え見えの挑発に乗る当たり狭量のない団長ブリージに、アルヴァは強烈な雷を叩き落としていた。
 さらに、そこでジョージが敵陣へと乱打を打ち込む。
 叩き潰し、押し流すその流れはさながら荒ぶる大波のごとく。
 子供達が防戦メインになっているのに対し、海賊達はあっさりと地を這って行く。
 そのうちの1体へと誠司が黒顎を発し、そいつの体を派手に食い散らかさせた。
 黒顎を引き、誠司は舌なめずりして。
「次はお前らだかんね……?」
「「ひっ……」」
 凄惨な最期を迎えた仲間。そして、返り血を浴びる誠司に、海賊団団員達がたじろぐ。
「んじゃ、お前は入る所に入ろうか?」
「な、舐めるな!」
 アルヴァの挑発に、ブリージは激高して両腕を広げて回転し、仲間もろとも切り裂いてくる。もはやなりふり構わずといった様相だ。
 そこで、敵の移動先へと先回りしたアルヴァが一直線にブリージの体を切り裂く。
「ぐはああっ!」
「お前が何を狙ってたか知らないけど、今回は運が悪かったってことで」
 アルヴァは銃床で海賊の長を殴り倒すと、敵は意識を失って動かなくなった。
 そして、彼は戦闘不能となった敵……海賊、オンネリネン問わず、安全な倉庫の中へと押し込む。悪い奴には償いを求め、子供が命を落とさぬようにと配慮していたのだ。
「「ひいっ!」」
 残っていた団員達が子供達の背に回ろうとしたのを見て、誠司はネット弾を使って1体ずつ捕獲していく。
 誠司に続き、黒い顎をけしかけるジョージ。彼はさらに威力特化の拳を打ち込み、残りの団員を倒していった。

 ヤツェクの癒しを受けて戦う利香は、バイロンの相手に注力する。
「あんな『年頃の』オトコノコ❤乙女の躰に興味津々で夜も寝れないような年頃よ?」
 年頃の男の子で真面目であるなら、弱らせて意識を朦朧としたところでぎゅっとハグする。
「や、やめ、ろおっ……」
 サキュバスの利香に迫られ、バイロンは気丈に振舞おうとするが、ギフトのフェロモン効果もあって徐々に落ちていたようだ。
「海賊は聖獣を我が物にしようとしていただけ。その海賊もすでに倒れたよ」
 誠司の呼びかけもあり、バイロンは海賊に尽くす必要はないと感じていたようだった。
 ただ、オンネリネンの子供達は応戦を続け、長物をメンバー達へと突きつけ続ける。
 それもあり、誠司はバイロンを無力化する為に彼の槍をへし折っていた。
「オンネリネンは家族のために戦うという。それは守るための戦いだろ、なあ?」
 利香や仲間の傷を塞ぎつつ、ヤツェクは子供達へと呼び掛ける。
「『家族の絆』は、使い方によっては契約よりも激しく人を縛ることが出来る。違うか?」
「「…………!」」
 しかしながら、オンネリネンの子供達は強い信念を抱き、応戦し続けるのだった。
 
 別のイレギュラーズ達は、ブラックアルバトロスへの攻撃を加速させ手いて。
「逃がす気はねぇっスよ」
 葵は旋風を巻き起こす巨鳥へと無回転シュートを打ち込む。
 ヴォオオオォォォー!
 敵の叫び声は葵や縁の身を竦め、弱体化させてしまう。
 これ以上戦いを長引かせれば不利になると察した縁は起死回生の一撃を見舞い、相手に深手を負わせつつ自らの状態を整える。
「生憎と、これでもしぶとい方なんでな」
 度重なる攻撃でアルバトロスも苦しそうに息ついていたが、距離をとっていたロウランが不可視の刃を飛ばしてその傷口を大きく切り広げる。
「大人しくしてください。きれいに捌いてあげますから」
 さらにファントムレイザーを放つ構えのロウラン。
 ただ、他メンバーも巨鳥が落ちてくるのを黙って見てはおらず、葵が超絶加速して敵へと肉薄し、その足へと深紅のガントレットで殴り掛かって足をへし折ってしまう。
 動きを鈍らせたブラックアルバトロスへ、縁が黒の大顎を形作ってその体を食らわせていく。
 翼から胴体を失った聖獣が動こうはずもなく、目から光を失って崩れ落ちていった。
 それを見計らい、ロウランがオンネリネンの子供達へと呼びかっける。
「降伏を。これ以上の戦いは無意味ですよ?」
「名誉の死は許さん。――武器を捨てて投降しろ」
 同じく、ヤツェクもまた応戦を続ける子供達へと投降を促す。
「聖銃士ではなく傭兵の道を選んだということは、何か望みや誓ったことがあるだろう」
 その言葉もあって、子供達は長物を地面に落とし、両腕を上げたのだった。


 静まり返った倉庫街へと漁港の人々が集まってきていたが、イレギュラーズ達が駆け付けていたことで、海賊の襲撃があったと気づいたようである。
 黒アルバトロスは力尽きていたが、海賊はブリージを含む7割程度。オンネリネンの子供達はその全てが生きていた。
「ま、なんだ。後悔しねぇ道を今から探したって、遅くはねぇんじゃねぇかね」
 余計な口を挟む気はないとしながらも発した縁の一言が皮切りとなり、子供達へとメンバーが働きかける。
「「…………」」
 リーダーはバイロン他2名がすでに利香とルカによって骨抜きにされかけていた。
「ええ、私の領地……宿近くの施設なら生活に困らないわ、働きたいなら用意してアゲル、勿論他の子もね?」
 利香はルカにバイロンを介抱して新しい家に連れていくよう促す。
「お姉ちゃん、大丈夫なの?」
「あらやだ妬いちゃって。そういう所が可愛いケド、後でたっぷりご褒美あげるカラ……殺しはだめよ? かわいいルカ♪」
 戸惑うルカは、バイロンをこの場から連れ出そうと手を引いていたようだ。
 それもあって、子供達は苦々しい顔をしたり、今なお反抗心をむき出しにしたりして、一切イレギュラーズに従わないと言わんばかりの表情である。
 葵はあんま説教じみた事は言いたくねぇんだが……と前置きして。
「どんな理由があるか知らねぇっスけど、イレギュラーズでもねぇ子供が簡単に命を投げ捨てるような事するんじゃねぇよ」
 状況によっては、自分の領地で預かると葵が申し出る。間違ってもアドラステイアに返せば、状況が悪化するのは間違いないだろう。
 そこで、ジョージがカリスマを働かせた上でアニキカゼを吹かせ、さらに人心掌握術を行使して腰を据え、子供達が心を開いてくれるようにじっくりと話を聞く。
「おれの望みは、オンネリネン、いや、アドラステイアの子ども達全員を解放することだ」
 加えて、ヤツェクが合いの手を入れる。
 ガキを守るのが大人の務め。子供達を自由にすることこそ、ヤツェクの誓いだという。
「さて。アンタらの心からの望みと誓いはなんだ?」
 しばらくして、1人が漏らしたのは、アドラステイアに残した仲間の存在。彼らを救う為にも、傭兵として成果を出す必要があるのだ……と。
 そこで、アルヴァがバイロンの地面に向けて発砲する。
「単刀直入に言おう、今の発砲でお前は死んだ」
 刹那、我に戻ったバイロンはルカから手を放して仲間達へと詫びを入れつつも、アルヴァに続きを促す。
「お前が死んだという報告が入ればアドラステイアにいるお前の仲間も復讐しに来るだろう。そいつらも責任もって保護してやる」
 ――だから……まぁ、来いよ。悪くしねぇから。
 アルヴァは子供達へと誘いかける。
「まだ、残してきた者を取り戻すために戦う覚悟はあるか?」
 ジョージはキングマンファミリーの傘下に来る気はあるかと子供達へと問いかける。仲間を取り戻すために戦う覚悟があるならば、来るべきその日まで俺が面倒を見る、と。
 また、ヤツェクもまた、望むならばおれの領地でもてなす旨を子供達へと伝える。ただ、必要以上に甘ったるい対応はせず、子供でも傭兵であるならば敬意を持って扱うと。
 さらに、ジョージがオール・オア・ナッシングと子供達に判断を促す。
「全てを奪い返すか、喪うか。選ぶといい」
 親身になって手を差し伸べようとするジョージ。それが自分達ファミリーの生き方でやり方なのだと胸を張る。
 なお、ブリージを含む烈風海賊団の生き残りは従順となっており、ジョージは引き取って性根から鍛え直すのだとか。
 ただ、いくつもの手を差し伸べられ、バイロン達も戸惑ってしまったらしい。利香の魅了の効力も小さくはないだろう。
「あんた達ローレットだろ? 俺達の敵だ」
 どうやら、彼らはまだメンバー達へと語っていないことがあるようだ。
「僕達から全て奪ったんでしょ」
「親も妹も、皆殺しにしたのはローレットだって……」
 オンネリネンの子供達には、イレギュラーズの知らない事情があるらしい。
 ……いや、そうアドラステイアで教育されたと考えるのが自然か。
「少し、考えさせてくれ」
 バイロンもそうだが、子供達は思いもしないイレギュラーズの言葉に戸惑ってしまっていたらしい。
 この場で判断がつかないと判断し、バイロンは同伴する部隊メンバー全員と共に戦場となった漁港から去っていく。
 メンバーも無理強いはできず、彼らの背中をしばらく見つめていた。

 聖獣こそ失ったが、彼らがまた新たな傭兵としての依頼を受けることは十分ありうる。
 それもあり、イレギュラーズ達は今後のバイロン達の動向にも目を光らせることにしたようだった。

成否

成功

MVP

アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)
航空指揮

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは海賊団の団長を倒した貴方へ。
 オンネリネンの子供達は皆さまの優しさに触れ、戸惑っていましたが、いかなる答えを出すのでしょうか。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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