PandoraPartyProject

シナリオ詳細

船上の宴に花火はいらない

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●海洋の令嬢
「すべてのタイミングは整ったわ」
 『強欲情報屋』マギト・カーマイン (p3n000209)の下に訪れた海種の令嬢――ミラは、封筒を差し出した。それを受け取ったマギトに対し、ミラは続ける。
「あいつが仕組んだ茶番を利用して、計画を実行するまたとない機会だわ」
 マギトは封筒の中身を眺めながら、どこか渋い表情で言った。
「……それで、協力してくれそうな方は見つけたんですか?」
 ミラがある人物の名前を口にすると、マギトはわずかに目を見張った。
「なるほど……あの護衛さんをどうやって誑(たぶら)かしたんですか?」
 マギトの一言に対し、ミラは顔をしかめて反論した。
「人聞きの悪いこと言わないで! 彼女の前で余計なこと言ったら張り倒すわよ」
 ミラに本気で睨まれたマギトは、更に目を見張った。声を荒げたミラは気まずそうに咳払いをすると、
「――とにかく、私はカミーユと逃げるわ。これ以上親の都合のいい道具になるのは御免だもの」
 ミラは改めて、ローレットのマギトに依頼を申し出る。マギトはミラから差し出された封筒――船上パーティーの招待状を見つめ返した。

●海洋の船上パーティー
「海洋で船上パーティーがあるんですが、参加してみませんか?」
 あなたは胡散臭そうな営業スマイルを向けるマギトに声をかけられた。詳細を尋ねれば、マギトは間を置かずに本題について語る。
「もちろん、仕事も兼ねたお誘いですよ」
 依頼人は、パーティーの主賓であるミラだった。ミラから招待されたのは、ミラの婚約者が主催する婚約披露パーティーである。そのパーティーにイレギュラーズを招待したい理由をマギトは語る。
「ミラ殿の話によれば、彼女の婚約者であるマルコム殿が、ある催しを計画しているようなんですよ」
 その催しとは――マルコムは自ら雇った海賊に小芝居をさせるつもりらしい。マルコム自身の力で海賊を追い払ったように演出するのが目的だ。だが、マルコムの計画は失敗に終わるとミラは確信していた。
 マルコムを独自に探らせたミラからの情報によれば、マルコムが雇ったのは海洋の非公認の海賊らしい。
「マルコムは予算を渋って、そこら辺のチンピラ海賊に仕事を頼んだようです。俺がその海賊だったら、マルコムの指示通りに乗り込んだ客船で、金目のものを巻き上げない理由が見つかりませんねぇ……」
 海賊にとって、マルコムはいいカモであることをマギトは強調した。
 海賊たちは、マルコムの指示通りにパーティー会場の客船を襲撃するだろう。マルコムが思い描いたシナリオとは異なるやり方で――。
 客船は日中に港を出て、海洋周辺の沖合を周遊する流れとなっている。海賊たちは、貨物船を装ってその客船のそばまで近づき、船を襲撃するつもりだ。海賊たちは全員海種であるため、海を泳いで侵入することなど造作もない。
 主な仕事は海賊たちを掃討することだが、イレギュラーズを頼ったミラには、別の思惑があった。
「ミラ殿は、親の命令で豪商一家のマルコム殿と懇意にしていたに過ぎません。そこで、ミラ殿の前でカッコつけたいがために海賊を雇ったマルコム殿を利用し、出奔するおつもりです」
 ミラの出奔計画については、他言無用であるとマギトは念を押した。
 海賊が引き起こす混乱に乗じて、ミラは護衛と共に船から抜け出す流れである。
「ミラ殿については、カミーユという護衛がいるのでそこまで心配はいりません。皆さんは海賊の方に集中してください」
 ミラは船上の注目がイレギュラーズに集まることを期待していた。
 マギトはミラには恩があるらしい事情をそれとなくほのめかす。そして、訳知り顔でミラとカミーユの関係について語る。
「――箱入り娘の周囲に男を寄せ付けないようにしていたのに、まさか同性に惚れてしまうとは思われなかったようですね」

GMコメント

●情報屋からの挨拶
 引き受けてくださったこと、感謝しますよ。
 面倒とは思いますが、一応それなりのドレスコードは守ってくださいね?
(※マギトは出席しようかどうか迷っているようですが、プレイングに絡みなどあれば顔を出します)


●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。


●成功条件
 客船を襲撃した海賊らの掃討。(生死問わず)
 ミラとカミーユは、放っておけばどさくさに紛れて船から脱出します。


●主要人物について
 海種の令嬢『ミラ』。マルコムがカッコつけたがるほどの美人。
 ミラの護衛役、海種の『カミーユ』。ミラと甲乙つけがたいほどの美女。
 ミラの婚約者、海種の『マルコム』。豪商一家のボンボン。小太り体型。


●戦闘場所
 イレギュラーズを含め、30名ほどの参加者(すべて海種)が集う客船(蒸気船)。日中に出港し、海洋周辺の沖合を周遊する予定。


●敵について
 サメ頭の頭目を筆頭とした海賊は12人で、全員海種。サーベル(物至単)や投げナイフ(物中単)などの武器を扱う。
 イレギュラーズに追い詰められた場合、逃走を図る可能性がある。


 個性豊かなイレギュラーズの皆さんの参加をお待ちしています。

  • 船上の宴に花火はいらない完了
  • GM名夏雨
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年10月08日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

リプレイ

 パーティー会場となる客船は、予定通り出港した。
 客船は、海洋の全貌を捉えられるほどの距離まで海原へと進んだ。
 『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)は依頼主のミラと口裏を合わせ、警備員として船に乗り込んだ。
(このスーツってやつさえ着ていなきゃ、それなりに快適な依頼だったんだがなぁ……)
 そう心中でつぶやく縁は、ネクタイの締め付けを何度も気にしていた。
 縁は警備員らしく船内を見て回り、いつでも海からの奇襲を察知できるよう警戒していた。
 ミラとカミーユは、縁以外のイレギュラーズを客として歓待した。海上で見つかりにくくするためのカモフラージュも兼ねているのだろうか――2人は青い海に溶け込むような色合いの装いで、ミラはドレス、カミーユはスーツを着こなしていた。
 縁は、ミラが何食わぬ様子でマルコムを皆に紹介しているのを横目に捉えながら、
(美人が二人並んでたら、嫌でも目立ちそうな気はしたが――)
 『激情の踊り子』ヒィロ=エヒト(p3p002503)、『あの虹を見よ』美咲・マクスウェル(p3p005192)、『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)、『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)という華やかな顔触れを見て、杞憂だったことを悟る。
 花の中に花を隠すように、それぞれ艶やかにドレスアップした女性陣たち。ヒィロと美咲は、対になる色、デザインのチャイナドレスに身を包んでいた。蜻蛉も動きやすさを重視してか、スリットの入ったドレスを着て参加していた。 
 ――愛の逃避行……物語みたいにドラマチックだよね!
「応援してるよ! 頑張ってね!」
 ヒィロはミラとカミーユだけにわかるように、目配せして言った。
(私も応援したくはあるけど――)
 ヒィロが2人を前向きに応援する一方で、美咲は2人の今後を案じていた。
(享受してきた裕福な生活を手放すのだから、先行き不安かな……)
 展望デッキに向かおうとするヒィロは、笑顔で美咲を呼んだ。そのヒィロと目が合った美咲は、すぐに曇っていた表情をごまかした。
 美咲は人知れずつぶやく。
「仕事は船上のことのみ。それ以上には触れないよ」
 にこやかにミラやマルコムの言葉に応じていた蜻蛉だったが、マギトの姿を見つけると、マルコムについてささやく。
「ええとこ見せたいんやったら、もっと他にやりようあるやろうに……」
 「ねえ?」と蜻蛉はマギトに同意を求めてきた。
「マギトさんは、好きな子出来てもズルはあかんよ?」
 蜻蛉の言葉に対し、マギトは苦笑しながら返す。
「俺にはとても真似できませんねぇ。ウソをつくのも見破るのも、女性の方がうまいと聞きますしね」
 蜻蛉は上品な仕草で口元に手を添えながら、にこやかに言った。
「ほんまやね、女の子はよお見てるんやから」

 ――親の奴隷になりたくない……か。昔の俺を思い出すよ。
 『若木』秋宮・史之(p3p002233)は、心中でつぶやいた。
 海軍の軍服姿で招待客の中に紛れる史之は、恐らく本意ではないミラの笑顔を眺める。史之はミラとカミーユが思いを遂げることを心から願っていた。
 甲板に出て海を眺めながら、オードブルをつまんだり酒を嗜むなど、客たちの間には実に和やかな空気が流れていた。すると、どこからともなくピアノの音色が流れてくる。その音色は、テーブルの上をピアノのように弾く『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)が奏でるものだった。
 イズマの能力は、自らが出す音を楽器の音色に変えるというものだった。テーブルを鍵盤のように指先で叩くことで、イズマは見事なピアノの演奏を披露する。
 巧妙な手品を眺めるように、客たちは賞賛の拍手をイズマへ送った。そして、イズマと軽く打ち合わせをしたヒィロは、船首近くに立ってその歌声を響かせる。最もポピュラーな祝いの歌を捧げるヒィロの澄んだ歌声は、船上のすべての人々を魅了した。海上の様子を頻りに気にかけていたはずのマルコムも、ヒィロの歌にすっかり聞き惚れている様子だった。
 『“侠”の一念』亘理 義弘(p3p000398)は酔いを覚ますフリをして、メインの会場となっている甲板から遠退いた。
 海上側に面した遊歩デッキを歩く義弘の視界には、いくつかの船影が見えていた。いずれも貨物船のようだが、充分な距離を保って航行している。義弘は各船の様子を注視しつつ、鋭敏な聴覚を働かせた。
 波の音に混じって、ピアノの音色とそれに呼応する歌声が離れた甲板から聞こえるのがわかった。そんな中、義弘は金属同士が触れ合うある音を聞き逃さなかった。

「か、海賊だ!」
 さも慌てた様子の義弘の声が響き渡る。それと同時に、海中に魚のファミリアー――使い魔を放っていたウィズィも海賊の姿を確認していた。
「海賊が迫ってきてます……! 皆、船室に逃げて!」
 ウィズィが避難を呼びかける前に、美咲はその予感を察知し、流れるような動きで避難誘導を開始した。
「ああ、マルコムさん! よかった、マルコムさんがいて下さって!」
 ウィズィは透かさず、動揺が顔に出ているマルコムに声をかけた。すでに落ち着きを失い始める客たちを指しながら、ウィズィは続ける。
「このままだと皆がパニックになってしまいます、マルコムさん程のカリスマのある方が統率して誘導して下さらないと……!」
 マルコムが海賊との戦闘にしゃしゃり出てくることがないように、示し合わせたウィズィたちはマルコムを丸め込もうとまくし立てた。
「そうだね、豪商一家として人の上に立つマルコムさんなら……! 頼りにさせてもらえないかな!?」
 ヒィロもここぞとばがりにウィズィに同調する。
「マルコムさん、このままお客さんたちを守って貰えんやろか?」
 そう言って、蜻蛉はマルコムの両手を握って頼み込む。
「――これは、あなたにしか頼めんことやの……お願いします」
 マルコムは、胸元が強調されたドレスをまとう蜻蛉に特に釘付けになっていた。
 ――カッコつけたいのは解るけど、敵はそんなに甘くない。
「蛮勇で命を賭したりなさらぬように。もし、あなたに何かあったら、ミラさんが悲しむ」
 客の避難を優先させようと、イズマもマルコムの説得を試みる。
「……あなたは皆に指示を出してください。俺と仲間が動き、貴方の立派さを証明してみせますから」
 ウィズィは最後のひと押しでマルコムをその気にさせる。
「海賊に直接手を下すのなんて、我々に任せて下さい! マルコムさんは、皆様をリードして下さっている姿の方が、……す、素敵だと思いますので……!」
 「きゃっ! 言っちゃった!」的な仕草を見せるウィズィによって、マルコムは実に得意気な表情で他の客たちの対応を請け負った。
 ウィズィらがマルコムの単純さにほっとしていた一方で、一部の海賊はすでに操舵室へと向かっていた。
 2人組が操舵室を制圧しようとしたが――。
「意地汚ねえ真似してんじゃねえよ」
 その背中に義弘が声をかけると、2人の海賊は瞬時に振り返った。義弘はそれ以上動く隙を与えず、海賊の1人――海賊Aに向けて、手の平全体を突き出すようにして強烈な一撃を当てる。その衝撃によって、海賊Aは操舵室のドアに全身を打ち付けた。
 カタギのようには見えない威圧感と敵意を放つ義弘に対し、海賊Bは無我夢中でサーベルを振り下ろした。義弘はすばやく飛び退き、冷静さを欠いた海賊Bの一太刀を難なくかわす。
 通路の影から現れた縁は、義弘との間に滑り込みながら抜き放った刀を構えた。縁は機敏な動きを見せつけ、刀の背で海賊Bのミゾオチ付近を強打する。
 共に応戦しようとする縁と義弘の勢いに圧倒され、海賊Aは痛めつけられた体を引きずりながら、必死の形相で逃げ出した。青白い顔でその後に続こうとした海賊Bだったが、義弘は容赦なく海賊Bにつかみかかる。
 海賊Bの胸倉をつかんだ義弘は言った。
「歓迎するぜ。仲間を呼ぶなら案内してもらおうか?」

 海を泳いできた海賊たちは、鉤縄を使って次々と船上に上がってきた。海賊たちは、自ずと船室の入口前にあたる甲板に集まる。
「動くんじゃねえ! おとなしくしろ!」
 イレギュラーズの姿を見つけた海賊の内7人は目的を果たすため、強盗らしく凄んできた。
 特に体格がいいサメ頭の男を中心に、海賊たちは甲板に固まっていたイレギュラーズを取り囲もうとする。
 すでに迎え撃つ態勢を整えていたウィズィは、
「さあ、Step on it!! 一人たりとも逃さないぞ!」
 等身大のテーブルナイフそのものの武器を携え、海賊らの攻撃を誘うように身構えた。イズマは直後に海賊Cに向けて狙いを定める。
 鋭く突き出されたイズマの細剣は、対象を穿つ波動を流星のごとく放ち、瞬時に海賊Cを吹き飛ばした。
 海賊たちが、イズマの攻撃に目を奪われた刹那――。
「――ヒィロ、踊りましょ」
 美咲がそうつぶやいた直後、ヒィロは海賊たちとの距離を詰め、相手を挑発するように間合いへと滑り込む。
 一見無防備な状態で進み出たヒィロだったが、つかみかかろうとする海賊の間を次々とすり抜け、踊るように軽快な動きで相手を翻弄する。
 ヒィロの動きに見惚れるように固まる海賊たち。聖なる光の力を操る蜻蛉は、更に海賊らをかく乱する。蜻蛉は光の奔流を砲撃のごとく海賊らに向けて照射し、その視界を眩ませた。
 ヒィロや蜻蛉が海賊たちの注意を引きつける間に、自らの魔力を引き出す美咲はつぶやいた。
「『星墜の』マルスを落とした紫の瞳……宴らしく大盤振る舞いよ」
 美咲の足元から広がる魔法陣の文様は、周囲を照らすほどに輝き始めた。
 美咲を中心にして広がる魔力の輝きは、無数の光弾となって海賊らへと襲い来る。瞬く間に攻撃を展開するイレギュラーズによって、海賊らは統率を失っていた。

 マルコムをそそのかし、他の客たちを船室に避難させたのを確認したところで、史之は脱出を図ろうとするミラとカミーユの後を追った。
「あら、御親切にありがとう」
 史之が小型船の用意があることを伝えると、ミラはにこやかに感謝を示した。それでもなお、海種の2人は海を泳ぐ態勢を見せ、その場でドレスを脱いで大胆な水着姿、下半身の尾びれを晒した。
 どこか赤面しているように見える史之に向かって、ミラは悪戯めいた微笑を浮かべながら、
「この船があれば、進路をごまかせるかもしれないわ」
 脱ぎ捨てたドレスだけを船に乗せ、その場から離れる準備を整えた。
「お幸せに。2人が心のままに生きられることを願ってるよ」
 史之が最後の言葉をかけると、今まで寡黙に構えていたカミーユも、表情を綻ばせて言った。
「君の仲間にもよろしく伝えてくれ。協力してくれてありがとう」

 すでに縁と義弘に打ちのめされた2人に加勢しようとやって来たもう2人――海賊E、Fは縁の顔を見てハッとした表情を浮かべた。その2人に対し、縁は不敵な笑みを向けて言った。
「……まさか、海洋で名の知れた連中が乗ってるとは思わなかっただろ? 運がねぇな、お前さん方」
 目の前の相手が並外れた強敵であることを確信し、海賊EとFは一層気を引き締めて身構える。
 狭い通路で互いの出方を窺い睨み合う中、もう1人が縁と義弘の背後を狙っていた。挟み撃ちを狙う海賊Gだったが、更にその背後に現れた史之が海賊Gへと迫った。史之の気配に気づいた海賊Gだったが、史之のスピードが上回る。
 背後から勢いよく刀を振り下ろした史之に驚き、海賊Gはデッキの欄干に激突した。海賊Gは史之から連続で放たれる太刀筋を自らのサーベルで受け止めようとしたが、到底史之の動きに対処できていなかった。
 史之と対峙した海賊Gは腕に裂傷を負い、あえなくサーベルを取り落とす。完全に史之に注意を奪われていた海賊Gは、義弘からの一撃をまともに食らう。義弘の強烈な掌底打ちにより、体をくの字に曲げた海賊Gはその場にくずおれた。
 義弘らと息をそろえ、刀を振り向ける縁も海賊E、Fを追い詰めていく。縁の刀さばきに圧倒される海賊らは見るからに逃げ腰だったが――。
「オーダーどおり派手にやられてくれ。君らには他の選択肢なんてないだろう?」
 相手を煽る史之の一言により、その場の空気が一層張り詰めたものに変わった。サーベルを握り直した2人の海賊は、イレギュラーズに対抗しようとがむしゃらに向かってきた。

「ここまで来て、手ぶらで帰れるか!!」
 美咲の攻撃に一瞬怯んだものの、リーダーらしきサメ頭の男はイレギュラーズを威圧するように声を張り上げた。
「女ばかりの連中にビビってんじゃねえ!」
 サメ頭は言葉通りの行動を示し、イレギュラーズに向けてサーベルを振りかざす。配下の男たちに見せつけるように、サメ頭は臆することなくイレギュラーズの陣容を乱し、反撃の動きにつなげる。
 普通の人間種では及ばないような力強さを見せつけ、サメ頭は果敢にイレギュラーズへと挑む。腕力で相手を捻じ伏せようとするサメ頭に対し、同様に剣を構えるウィズィとイズマは食い下がる。
 剣戟を交える2人を援護しようと、美咲は激しく明滅する聖光の魔力をもって海賊らの動きを鈍らせた。他の海賊らが怯む一方で、サメ頭は怒涛のごとく攻めかかり、苛烈な斬撃によってイレギュラーズを一掃しようと奮起した。
 サメ頭の行動は向こう見ずでもあったが、その行動に伴うほどの実力を発揮する。サメ頭に対抗し続ける者らを支えるため、蜻蛉は自らの支援術を駆使して臨んだ。蜻蛉の足元から発現する月光は、癒しの光となって周囲の者を包み込む。
 特にサメ頭へと鋭く迫るウィズィは生傷が絶えず、自らの刃を交えて激しく切り合う。激しい闘争を繰り返す内に、サメ頭は極度の興奮状態によって目の前のウィズィを倒すことだけに集中していた。
 サメ頭の大振りの一太刀をかわすため、ウィズィも大きく飛び退いてサメ頭から距離を取る。そのウィズィの動きに誘われ、刃を突き立てようとするサメ頭は脇目も振らずに飛び出した。
 イズマはその瞬間を逃さず、魔王そのものの漆黒のオーラを発現させる。イズマが操るオーラは、漆黒の牙となってサメ頭に襲いかかった。サメ頭は受け身を取りながらも吹き飛ばされ、ウィズィは透かさず追撃に向かう。
「さあ、これで終わりだ!」
 一気にサメ頭の眼前へと踏み込んだウィズィは、決着をつけるための一撃を振り抜いた。

他の客に後押しされ、マルコムが騒がしい船室の外に恐る恐る踏み出した頃――その頃には、すべての海賊たちがイレギュラーズによって縛り上げられていた。
 デッキに出た一部の客が、直後に海原に浮かぶ小型船を見つける。更にミラとカミーユの姿が見当たらないことにざわつき出した。
 マルコムは、ミラたちが2人だけで真っ先に逃げ出したと決めつけ、「なんて薄情な女なんだ!」と罵り始めた。2人を貶める物言いを繰り返すマルコムを目の前にして、ウィズィは静かに青筋を立てる。
 ――なるほど。ミラさんがマルコムさんを利用したのは、同情する価値などないからという訳ですね。
 ウィズィは、婚約者であるミラに対する敬意が感じられないことに怒りを覚えた。ウィズィがマルコムに物申そうとした瞬間、義弘は拘束した状態のサメ頭をマルコムの前に突き出す。それと同時に、マルコムはサメ頭の懐にあった多くの金貨をぶちまけた。
「誠実に向き合わなけりゃ、悪い事が起きるもんだぜ」
 含みのある言い方をした義弘は、「なあ?」とマルコムを睨みつける。
「んー、黙ってても君らにいいことなんにもないよ? 全部しゃべったほうが罪状も軽くなると思うんだけどね」
 そう言って他の海賊たちにも尋問を始める史之の姿を見て、マルコムは更に表情を青くした。
 蜻蛉は嘆息して、マルコムに向けて説教を始めた。
「誰かの目を自分に向けたいから言うて、他の人を危険に晒すやり方があかんのよ――」
 美咲と共に広大な海原を見つめていたヒィロは、小型船の遥か先にあるものを目にした。海原をイルカのようにはねる2人の姿が見えたように思えて、ヒィロは心中で2人の門出を祝った。
 ――ミラさん、カミーユさん、お幸せに!

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました。
PCさんたちがスカッと解決してくれる勧善懲悪ものも好きですが、隙あらば百合とかBLとかの要素をねじ込んでいきたいです。

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