PandoraPartyProject

シナリオ詳細

崩空カジノロワイヤル

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●天空遊戯艇『パラディーゾ』
 ジリリリリ!!
 けたたましい警報音が響き渡る。

 地上より遥か彼方、雲の上を飛ぶ飛空艇『パラディーゾ』。
 天空遊戯艇の別名を持つこの船は、それ自体が巨大なカジノ施設になっている。

 豪華絢爛。外から内に至るまで成金趣味が贅を尽くしたような眩さを持ち、賭け事に興じる者達を非日常へと誘う悪魔の箱舟。
 しかし、その躯体は今ーー煙を上げて、緩やかに高度を落としつつある。

「緊急事態です! 動力の故障により、この船は間もなく不時着します!
 皆様……すみやかに避難の準備を始めてくださいッ!」

 ざわつくカジノ会場。誰も彼もが我先にと非常口へ押しかける中、テーブルから離れようとしたディーラーの腕を男の手が力強く掴む。
「待てよ、まだ決着がついてねぇ! 本当の勝負はここからだ……そうだろう?」

 息巻く男の名はパッシモ・オルトリー二。
 パラディーゾの帝王と名高いギャンブラーにして、ローレット・イレギュラーズが倒さねばならない相手である。


『帝王の裏の顔は残忍だ。賭博で勝っても暴力で揉み消され、兄さんは敗者の烙印を押された』
 依頼人の青年が押してきた車椅子には項垂れた男が座っていた。呼吸はある。生きてはいる……だが、それだけだ。
 烙印を押された者の末路という事だろう。瞳は虚ろなままで身を案ずる弟の姿を映す事はなく。ただ床を見下ろすだけの廃人と化していた。
『頼む。奴の不正を暴いてくれ! これ以上、兄さんの様な犠牲が出ないようにーー』


 天井が崩れ、パラパラと砂が落ちる。崩落までそれほど時間はないだろう。
 それでもパッシモは自分の命より目の前に積み上げられたチップの差が気に食わなかった。
 たった一枚でも勝ち逃げは許さない。

ーーかかった。

 特異運命座標とディーラーに扮した境界案内人の視線が交差する。

「……では、一つ大きな勝負をいかがですか?」
「何だっていいぜぇ、ソイツの鼻っ柱を折れんならよ。運命に選ばれたんだか何だか知らねぇが、俺の縄張りを荒らした新参者に勝ち逃げさせてたまるかよ」

 勝負に息巻くパッシモへ優雅な笑みを浮かべながら、ディーラーは話を更に続けた。
「それでは、特別ルールのご案内をいたします。次の勝負で賭けるのは貴方の命。
 勝てば目の前のチップを総取り、脱出口へとご案内いたしましょう。負けた方は全てを失いーーこの飛空艇と運命を共にするのです」

 勝つか負けるか、生か死か。
 コインに表と裏があるように、命もまた相容れぬ二面がある。

「Place your bets please.(チップを賭けてください)」

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 崩落する空中カジノってちょっと浪漫ですよね。芳董は大好物です。

●目標
 エネミーの討伐
 カジノゲームで勝つ

 目標は頭脳戦のように見えますが、内容としてはほぼ純戦です。

●説明
 特異運命座標たちとパッシモ、命を賭けて始めるのはよくあるルーレット。
 ディーラーがボールを投入して、赤いマスに入れば特異運命座標の勝ち、黒に入ればパッシモの勝ちとなります。

 普通にやれば確率は2分の1ですがーーパッシモは不正をして勝とうとしてきます。具体的には悪魔を召喚し、ボールを操作しようと企んでくるので倒してしまいましょう。
 倒し終わったらそのまま確率にかけてルーレットに挑むもよし、非戦スキルやギフトでイカサマし返すもよしです。

●エネミー
 マーダーコイン×20
  悪魔の翼が生えた大きなコイン型の悪魔。
  近距離にはプレス攻撃、中・遠距離にはトランプを投げて攻撃してきます。
  攻撃が当たるとBSの【不吉】が付与される事も……!?

『カジノ王』パッシモ・オルトリー二
 見た目はいかにも『カジノ王』の名に相応しい屈強そうな男ですが、直接手をくだす事はなくマーダーコインへ攻撃力のバフをかけてきます。
 コインが全滅した場合は戦闘不能とならなくても無力化できるでしょう。
 また、賭博に対して凄まじい執着をもっている男なので、不殺のない状態で倒されてもルーレットの賭博が終わるまで死ぬ事はありません。
 お守りの様に首にかけたダイヤのペンダントを大切にしているようですが……。

●その他登場人物
『ディーラー』神郷 赤斗(しんごう あかと)
 皆さんへこの依頼の案内をした境界案内人。現在はディーラーに変装しています。
 特異運命座標に何か頼まれれば協力は惜しみません。

 トマ
  皆さんにパッシモを倒して欲しいと依頼した青年です。兄のフレンが廃人になった後も、甲斐甲斐しくお世話をしています。

 説明は以上となります。それでは、よい旅を!

  • 崩空カジノロワイヤル完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年09月30日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
眞田(p3p008414)
輝く赤き星
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
チュチュ・あなたのねこ(p3p009231)
優しくて不確かなすべて

リプレイ


 コインのぶつかる景気のいい音がスロットの口から響き続け、天井には豪奢なシャンデリアが煌めき続ける。浮世と地上から離れた天空遊戯艇『パラディーゾ』――その中に降り立った『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は、デザート山盛りの皿を持って仲間達の方へ戻ってきた。
「どこもかしこも悪趣味なくらい派手だな。落ち着かねえ」
「とか言いつつ、ちゃっかり施設のビュッフェを楽しんでるのはどこの誰だよ」
 ある意味肝が据わった世界の行動に『Re'drum'er』眞田(p3p008414)が笑う。手札のトランプをテーブルに広げ、対戦者達に見せつけた。
「フルハウス。また俺の勝ちだな」
「随分と派手に勝ってるが、目立って大丈夫なのか?」
「逆だよ。縄張り荒らして、向こうから声をかけてくるのを待ってるんだ。それに……こうやって普通に遊んでみたかったし!」
 きっと後者の理由が大半を占めているのだろうと世界は肩を竦め、ミニモンブランを頬張る。咀嚼しながら視線を他へ泳がせた。
(まぁ、今のところはあっちの方が悪目立ちしてそうだがな)
 あっち、というのは『優しくて不確かなすべて』チュチュ・あなたのねこ(p3p009231)の方だ。賭場を訪れていたギャンブラーに愛らしさを振りまき、あっという間にハーレムを築いて楽しんでいる。
「まだ1ゲームもしていないのに、凄い量のチップだな」
 貢がれたチップを整理しながら『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)が呟くと、チュチュは首をカクンと傾げた。
「初めからあたしは、勝てない勝負はしないの。あなたはどう? アーマデル」
「賭け事はしない方だな。いや……ある意味、常に博打を打ってるとも言えるか」
 生きるか死ぬか。チップの代わりに命を賭けて闇の世界に生きている。掛け金を失い会場の外へ引きずられていくギャンブラーが「イカサマを使いやがって」だの「こんな飛空艇、爆発してやる」などと負け犬らしく吠えているのを見送ってから、世界と眞田の方へ手招いた。
「先程からパッシモの部下達がこちらを見てヒソヒソしている。仕掛けて来るかもしれない」
 彼の読み通り、こちらを囲む様に迫る黒スーツの男達。鼻息の荒いパッシモから勝負を挑まれて――冒頭の爆発事件である。

「まさか本当に爆発させるとは」
 窮鼠猫を嚙む。追い詰められた人間は本当に何でもするのだなと、揺れる船内でアーマデルは抜剣して身構えた。
 先程こちらを警戒していた黒スーツの男達はパッシモを見限り非常口へと逃げ出したが、現れた悪魔達は飛空艇が落下しはじめようと気にする様子はない。召喚者との心中も厭わないという事か。
「ここでのサポートはそれなりにしてやる。好きなだけ暴れてこい」
 使い魔には使い魔を。世界が虚空に白蛇の陣を描き、マーダーコインを噛み砕いた。
身軀を黒き呪に染めて――アクセルカレイドで開戦の火蓋を切る彼は、いつもより少しだけやる気があるように見えた。と、いうのも彼はこの後のルーレットに参加する気がさらさら無いのである。厳密に言えばこちら側は4人で一蓮托生だが、イカサマできるほど器用じゃないし運の方も……。
「世界は壊滅的に運がないのね」
「そこまでじゃねぇよ! ただ、賭け事をしなければ今回の依頼主だって兄さんが廃人にならずに済んだんだろ?」
 別に賭け事自体は悪い事でも何でもないし、単に『カジノ王』とやらに逆恨みされただけだと分かってはいるものの、主君危うきには近づかず。リスクのあるものは元から避ける主義なのだ。
 ふぅん、とチュチュは返事をかえし、聖骸闘衣で己が身をドレスの様に彩った。
 2分の1の確率に賭けるギャンブル自体は悪くない。年甲斐もなく燃えるものだ。
「でもねぇ、悪戯ってバレないようにやるものよ。こんな悪魔(ペット)を喚ぶなんて、つまんない男」
 あたし、つまんない男は嫌いなの。
 投げられたトランプをルーンシールドで弾きながら、更なる挑発で敵の攻撃を巧みに引き受け続ける。
「あたし、こんな沢山の敵を相手にするのは苦手なのよ。一人じゃなぁんにも出来ないもの……。
 世界、眞田、アーマデル。頼んだわよ」
「そうだな。俺は"こういう時"のために来たのだから」
 行けるか、とアーマデルが問うと、眞田がニッと歯を見せて笑う。
「命懸けのゲームって、かっこいいね〜。俺は嫌いじゃないよ。こっちが勝つからね」
 豪運は更なる極みへ――爆裂クラップスにより運を味方につけた眞田はフィールドを賭ける。彼の動きを阻もうと立ち塞がる悪魔へ、黒い影が降る。
 英霊残響:怨嗟。アーマデルが英霊達の無念を練り上げると、それに同調したのだろう。遊戯艇全体から不穏な空気を纏う霊魂が集まり、不協和音を重ねていった。やがて音の波は辺りに広がり、マーダーコイン達を押し流した。ほぼ同時、眞田が慣れた手つきでナイフを取り出す。
「赤と黒、どっちが好き?」
 ギィギィと耳障りな鳴き声を返すコイン達へ鋭く穿たれる刃。
「あー、コインは喋れないか。面白くないな。なら、どっちもあげるよ!」
 一撃の赤、二撃の黒、強いる選択は何れも破滅。ルージュ・エ・ノワールで命を刈り取り、次の獲物へ狙いを定める。

「チィッ! 愚図ども、何をやってる! さっさと叩き潰さねぇか!」
 乱闘の中にパッシモの罵声が飛ぶ。彼が首元のペンダントを強く握った途端、弱り始めていたコイン達が再び輝きを取り戻した。
「あのペンダントは……?」
 その動作を見逃さず、アーマデルがリーディングでパッシモの思考を読んだ。ここまで賭けに執着するのは単なる勝敗じゃない、何か理由があるんじゃないか――そう思わずにはいられなかったのだ。
「何か読み取れたんだろう?」
「……嗚呼」
 世界に促され、アーマデルは目を伏せた。パッシモという男は既にこの世を去っている。目の前に残ったのは、呪いのペンダントの力を借りて賭場での勝利に執着するばかりの怨霊。それが具現化した者だったのだ。
 正体を知ると、チュチュは少し不満げに眉を寄せる。
「つまり相手には賭ける命(チップ)なんて最初からなかったのね。嫌よ、そんな公平じゃない勝負」
 だって、負けたら死ぬのでしょう?

 死ぬのは……

「――死ぬのは、嫌だものねぇ」

 あたしの好きな2分の1はね
 勝つか(CT50)、イーブンか(FB0)――なのよ。

 最後のコインの攻撃を彼女が避け、翼を掴んで床に叩きつけた瞬間。トドメの一撃眞田が振り下ろす。
「せっかくのカジノなんだったらもうちょっと面白く遊ぼうよ。こんな風に……さ!」
 バキン! と砕ける音がした。マーダーコインが全滅し、ついにパッシモは独きり。わなわなと怒りに震える彼へディーラーが卓を指す。
「イカサマがお済みでしたら、どうぞお席へ」
「~ッ!」
「えぇ、俺も結局座らされるのかよ……」
 離れて観戦する気だった世界も肩を落として特異運命座標のついた席へ座り、戦闘の後、まるで何事も無かったかの様に命懸けのルーレットは動きはじめた。

――が。
 あれだけの大乱闘(イカサマ)をされて直に博打をするほど特異運命座標も馬鹿ではない。解き放たれたボールがルーレットの黒いマスーーパッシモの勝利マスで留まろうとした瞬間。
「やーった! 今日ついてるわ」
 眞田が堂々と勝利宣言をして立ち上がる。ルーレットを覗き込めば、ボールの留まったマスは黒から赤へ――ドリームシアターの幻影で、特異運命座標の勝利マスへと変わっていた。
「馬鹿な! おまっ……お前!今あきらかに不正しただろ!」
「……俺って、フェアーにやるほど善良で綺麗な人間じゃないんだよね。負けるのも死ぬのも嫌だし、負けて死ぬとか最悪じゃん。ごめんね!」
 問い詰めようとするパッシモに悪びれず舌を出す眞田。その隙に――

 ガシャン!!

「思ってたより力が入りすぎてしまった」
「なっ……!?」
 ルーレット台をちゃぶ台の如くひっくり返し、パッシモの正当性をもみ消すアーマデル。
「どうした、そんな驚いた顔をして。ちゃぶ台だってひっくり返るんだ、ルーレット台が宙を舞ったりひっくり返ってもおかしくはあるまい?」
「そんな常識みたいなトーンで言われても無茶があるだろうがぁっ!?」
 叫ぶと同時、泣き崩れるパッシモ。
 終わった――と、彼が負けを認めた瞬間だった。彼の中で敗北の無念が渦巻く。それを見かねた世界は、白衣のポケットに手を突っ込んだままパッシモの目の前まで近づいてやる。
「まあ結果は言うに及ばずだろう、と思ってたが。在るべき場所(地獄)へ帰るだけと思えばいい。
 残った短い時間で、アンタがいいなら最後のギャンブルの相手でもしてやるよ」
「……いいのか?」
 一つでも多くのゲームを、一つでも多くの勝利を。賭博に魅了された怨霊には、その言葉が救いになった。パッシモに渦巻く闇深い気配が引いていく。浄化されたか、とアーマデルは目を見開いた。
「幸いディーラーもいる。少しだけなら付き合おう」
「よーし、俺も! 時間ギリギリまでもう少し遊びたかったんだよ」
 眞田もテーブルに加わって、僅かな時間、イカサマ無しの本物の運否天賦で盛り上がる。
「チュチュは混じらなくて良かったのか?」
「えぇ。大事な役目が残っていたんだもの」
 赤斗に問われ、彼女は黒猫の様に愛らしく笑った。建物の崩落状況を確認し、潮時だと気づいて席を立つ。

「……身を滅ぼすと解ってて、ギャンブルに溺れたのはだぁれ?」
 問いかけの意味は分かっていた。パッシモは彼女に向き直る。

「俺だ」『そうよ、貴方よ』

 チュチュはただ、パッシモを見つめて微笑む。傾国の美しさは必殺となり、解放を求める霊を貫いて浄化した。

「あたしは何もしてないわ」

 お決まりの言葉を花束に、崩落するこの場所を墓標としておくり出そう。
 刹那のうち、ゲームを共に楽しんだ、哀しきカジノ王のため。

成否

成功

状態異常

なし

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