PandoraPartyProject

シナリオ詳細

弔い騒動奇譚

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●顛末の……
 かつて、人々は一人の娘を贄とした。
 己らを脅かすは、地を統べる悪しき水の魔。其の枷とする為に。
 一人の孤独な娘を、惜しくもなき犠牲とした。
 泡沫の安寧の果て。水魔は目覚め、再び村に歯牙を向けた。
 いつかの娘の御霊を、己が僕と添えて。
 かつての時の果て、人々は術を得ていた。力ある者達の刃を持って、荒ぶる水魔を滅した。
 けれど、ソレは奸計。
 人外に堕ちて尚、忘れる事能わなかった娘の復讐の計。
 水の魔に傅くもまた、水の魔。すでに化していた少女。滅した主に入れ替わり、かの地の全ての与奪を手に入れた。
 全てを知った今の人々は、慄き恐れる。
 かの娘は言った。
 『災を成すつもりはない』と。
 けれど、こうも言った。
 『魂は、変ずるモノ』だと。
 正しければ、いつかいつの日か。彼女は彼女でないモノになる。成り果てる。
 この地に住まう、全ての者達の行方を掌握したまま。
 人々は恐れる。いつか来る、その日の悪夢を。
 『また滅ぼしてしまえ!』
 そう主張する者達もいたが、成功すれば良いが仕損じる可能性とて多々在る訳で。
 元から内に怨嗟を孕む存在。改めて害意を向けられたとあれば、躊躇う事はないのは明白。
 現時点で無害であるものを、自分達で刺激して厄災化させてしまっては藪蛇も良い所。
 人々は苦悩する。
 長く続く危うい安寧か。
 綱渡りの如き、刹那の決意か。
 決められる強さは誰にも無く。
 ただただ、胡乱な恐怖の中で日々は流れる。

●不穏なる……
「悲しい事です!」
 万感の思いにす、純粋な嘆きを放つ。
「人なのに! 同じ人なのに! 些細な出生の違いだけで! かくも消費物の如き末を強いられるなど! 非道! 非情! 非業! あまりにも!」
 吐き出す言葉は憤りに満ちて、憐憫の色を彩って。
「赦される事ではありません! いえ、赦しなどもはや無為! 救いです! 彼女に必要なのは、絶対の救いなのです!」
 講説を放つ相手はただの虚空。空っぽの空間、頷く気配。
「堕ちた魂を救うは無念の昇華! それを成せるは自身のみ!」
 説法じみた口調が熱を孕む。熱苦しいレベルで。
「我が力は、その為のモノ! 術無き魂に泡沫の力を! 思う存分、恨み晴らせる今際を!」
 言ってる事が、明白に不穏。
「生きてる輩のケアは、放っておいても誰かがやるから! 故死人の側に立つ! ソレがアタシの意味! 与えられし天啓!!」
 踏み下ろす足。無駄に力強い。
「全ては人権<死人権の真理の下に!!!」
 突き上げて轟く雄叫び。称える様に震える大気。誰もいない。いない筈の空っぽ草原。でも、確かに。
「さあ、行きましょう! 新たなる同胞を救う為!」
 力強く歩み出す先は、いつかの罪過に怯えるかの村。小さな背中に従うは、姿無き者達の声無き声。
 彼女の名は『エメレア・アルヴェート』。
 由緒正しき院に席置く修道女。そして、死躁の術持つ死霊術師(ネクロマンサー)。
 重ねし乱行奇行の果て。与えられし二つ名は、誰が呼んだか『天慈災禍の狂い姫』。
 泣く子も黙る、特級トンデモ危険物。

●残り香の……
 湿った風が吹く。
 温く蒼い、水の香り。
 揺れる水面に身を委ね、かの少女は。少女だった存在は、その囁きの中に『彼』を見る。
『……まだ、『居る』んだね……』
 水の色に澱む瞳。映るのは、懐かしくも忌しき記憶、その破片。
『君は、もう用済みなの……。そう言う、約定だったでしょう? なのに、何故まだ居るの? 何を、残しているの? ねえ……』
 疼くのは、心。もう、人のソレではない筈のソレ。何故。何故。こんなにも。
 人知れず。己も知らず。呟き漏らすは、かの名前。
『……エルリオ……』
 彼女は『ルサールカ』。かつて、エリサと呼ばれた少女。そして、今は此の地を統べる水魔の王。
 哀しい悲しい、無念の残滓。


●ギルドにて……
「泣き付かれました」
 やれやれと言った体で溜息をつくのは、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)。呆れ半分……と言うか、九割方呆れてる彼女。何事かと問う。
「ほら、アレですよ。例の、ルサールカの村……」
 『ルサールカ』。出て来た単語に、幾人かが嫌な顔をする。
 件の事件は、まだ記憶に新しい。発端も愉快じゃないし。良い様に繰られたのもつまらないし。挙句に顛末も面白くない。
 とにかく、嫌な事尽くしの事件。ぶっちゃけ、二度と関わりたくない。
 なのに、元凶の村が今度は何用だと言うのか。
「何て言うか、村人の皆さんが情緒不安定みたいですね。まあ、明らかに悪意を抱いてる相手に首根っこ掴まれてる訳で、無理もありませんが」
 自業自得だろう。いやまあ、今の村人達には災難だが。
「で、領主さんが泣き付いてきた訳です。『殺気立ってる連中もいて、このままじゃ何が起こるか分からない。何とかならないか』と」
 何とかなるのか?
「差し当たり、『社』を建てようかと。『彼女』への弔いにもなるし、村人さんへの精神安定も望めるでしょうから。つきましては、例の『殺気立ってる方々』に邪魔されても困るので、希望者がいればお手伝いに行ってくださいな」
 まあ、それくらいなら良いかもしれない。どの道、このままだと日々のご飯も美味しくない。
「……後ですね~」
 まだ、何か?
「不確定情報ではありますが、些か面倒そうな事が……」
 あからさまに嫌そうな顔のユリーカ。何か、嫌な予感がする。
「ルサールカの話が、どうやら『狂い姫』に嗅ぎつかれたらしいです……」
 げ。
 何人かが、先にも増して嫌な顔をする。
「『アレ』の性格からして、間違いなくちょっかい出して来るかと。まあ、そう言うつもりでいてくださいな……」
 どことなく引き攣った笑いを浮かべるユリーカ。直接関わらずに済む事を、心から感謝しているのが丸分かり。
 上げた手を今更下げる訳にもいかず。皆はゲンナリと溜息をついた。

GMコメント

こんにちは。土斑猫です。
今回は前回シナリオ『水面に立つ少女』のアフターアクションとなります。
ご希望の程、ありがとうございます。
頑張りますので、存分に楽しんでいただければ幸いです。

●目標
 社を建てて、水魔『ルサールカ』を弔う。
 元シナリオ『水面に立つ少女』の舞台となった湿地帯に『社』を建て、水魔『ルサールカ』を弔います。
 社を完成させる。或いはルサールカの無念を浄化する事で成功となります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 想定外の事態は多少起こる可能性があります。

●ロケーション
 前回と同じ湿地帯。早朝からの作業です。

 社は、湿地帯中心の沼に建てます。社はゲーム開始から30R維持する(PCが一体でも残る)事で完成します。
 湿地帯は全体的にぬかるんでおり、足場は非常に悪いです。
 ゲームが開始されると同時に、『過激派の村人』が複数現れ、こちらを攻撃しながら社に向かって進軍して行きます。社に到達されると社が破壊され、ルサールカが祟り神化。ゲームオーバーとなります。
 ゲーム開始から5R経過すると『エメレア・アルヴェート』が『死霊』の群れを引き連れて出現。こちらも社に向かって進軍を始めます。社に到達されると余計な事されてルサールカがブチ切れ。やっぱり祟り神化してゲームオーバーとなります。

●敵
『過激派の村人』×1Rにつき10人
 所謂『殺られる前に殺っちまえ』な単細胞達です。ルサールカを立ち退かせるために、得物で武装してシュプレヒコールを上げながら社の破壊を目論みます(結果は逆効果です)
 フィールドの外側から社に向かって進んでいきます。途中で隣接したPCに対して攻撃してきます。
 一応会話も出来ます。まず聞いてくれませんが。
 攻撃方法は以下。ぶっちゃけ、弱い。
・鍬:物至単にダメージ。
・鋤:物至単に大ダメージ。
・ボウガン:物遠単に大ダメージ。

『エメレア・アルヴェート』×一人
 『天慈災禍の狂い姫』の二つ名を持つ危険人物。
 14歳。人間種(カオスシード)。女性。
 修道女で死霊術師(ネクロマンサー)と言う訳の分からない人。
 『生きてる連中は誰かが救うから自分は死人を救う』と言う信念の元、迷惑を振り撒く。
 大人しい死霊やアンデッドにも余計な事して厄災化。事をひたすら面倒にする。本人は善行を行ってるつもりなので反省しない。
 話す事は可能(人間なので)。説得出来れば力を貸してくれるかもしれない(村人以上に話を聞かないが)
 在籍していた修道院(既に破門済み)からはくれぐれも殺さない様にとお願いされている。教え子だからとかではなく、死ぬと高位アンデットに自動転生する禁呪を自分でかけてるから。死霊王(リッチー)なんかになられたら手に負えないとの談。
 したがって殺しちゃうとゲームオーバー。体力一桁になれば気絶します。
 戦闘方法はステゴロ。喧嘩上等。
・拳打:物至単にダメージ。
・蹴り:物至単に大ダメージ。
・かかと落とし:物至単に大ダメージ。クリティカルで一撃脱落。
・死霊:使役する死霊達。一度に3体まで召喚。物遠単にダメージ。呪縛・混乱・呪いをランダムで付与。

●NPC
『村人』×20人
 社建造役。社の周辺を埋めていますが、敵が隣接すると逃げちゃいます。

『ルサールカ(エリセ)』
 物語の中心。人柱兼現沼の主。
 今回は基本諦観者。周囲の騒ぎを呆れ半分で眺めてます。
 道具として使い捨てた筈の恋人・エルリオの事が吹っ切れてない模様。

『エルリオ』
 エリセの恋人。故人。亡霊としてエリセが主となる手助けをし、役目を終えて散華した筈だった。実際にはまだ未練として残留しており、霊に干渉出来る術があればコンタクトが可能。

※色々なアクション・アイディア、歓迎します。可能な限り拾い上げますので、皆様の可能性、見せてくださいませ。

  • 弔い騒動奇譚完了
  • GM名土斑猫
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年10月03日 21時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

志屍 志(p3p000416)
遺言代行業
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
マリカ・ハウ(p3p009233)
冥府への導き手
白妙姫(p3p009627)
慈鬼
釈提院 沙弥(p3p009634)
破戒求道者
ハビーブ・アッスルターン(p3p009802)
何でも屋
ウルファ=ハウラ(p3p009914)
砂礫の風狼

リプレイ

 『ルサールカ』は、ふと意識を開けた。沼の底。見上げた先に、多数の人の気。
 『妙だ』と思う。
 村の者達は知っている筈。かつての主に代わり、自分が統治の座に着いた事を。その自分が、明確な悪意を抱いている事を。
 以来、踏み入る者などいなかったのに。
 まあいい。何のつもりかは知らないけれど、敵意があるのなら遠慮する道理はないのだから。
 意識を上に。水上へ。
(……思ったよりも、早いのかな……)
 全ては泡沫。例えいつ果てるとも。

● 開演
「キャー!」
「出たー!」
 村人達が、蜘蛛の子散らす様に逃げていく。何を今更と、手を伸ばす。けれど。
「逃げるでない! 手を出さねば、奴も何もせんわ!」
 覚えのある声が、彼女を止めた。
『……貴女……』
「久方ぶりじゃのう? 『エリセ』」
 小躯のゼノポルタ、『慈鬼』白妙姫(p3p009627)が笑みを浮かべながら答えた。
「息災そうじゃな。何よりじゃ」
 妙に親しげ。怪訝やら居心地が悪いやら。
『私はもう、水の魔の一柱。不調も好調も、在りはしない。それと……』
「何じゃ?」
『『名前』は、やめて。忌まわしいだけ』
 吐き捨てる様な調子に『そうか』と答えて、また笑う。
 困惑を悟られぬ様に、視線は他所へ。何かを作っている村人達。
『……何をしてるの?』
「社を作っとる」
『社……?』
「主を奉る、社じゃ」
 思いもしない答え。呆気に取られる。
『……馬鹿?』
「連中の、せめてもの償いぞ。気持ちくらい、汲んでやれ」
 背後から聞こえて来た別の声。振り返ると、艶美な様相をした獣耳の少女。
「君は水魔か、我は風霊じゃ。ある意味似た者同士じゃろう。人の性を疎ましく思う気持ちも、分からんでもない」
 『砂礫の風狼』ウルファ=ハウラ(p3p009914)は沼に浮く流木を飛び石の様に渡ると、ルサールカの前に。
「まあ、思う所は多々あろうがな。奉られると言うのも、そう悪いモノではないぞ?」
 そんな言葉に、ただ目を逸らす。

● 本幕
「む?」
 『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)が、手伝う手を止めた。
「大勢、近づいて来るな」
 騒々しく近づいて来る団体を見止め、『何でも屋』ハビーブ・アッスルターン(p3p009802)も腰を上げる。
「手伝いの追加、ではないですね……」
 目を細める、『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)。
「何だか、楽しそうだね☆ 来たかな? 来たかな♪」
 嬉しそうに跳ねる『トリック・アンド・トリート!』マリカ・ハウ(p3p009233)。目に映るのは、鋤だの鍬だの持った村人の姿。
「社の建設断固はんたーい!」
「村民の安全と安心を優先せよー!!」
「危険な悪霊は排除あるのみー!!!」
「権力者と畜生の癒着を許すなー!!!!」
 サイケな文字で書いたプラカードを掲げながら、声を合わせて喚き立てる。
「シュプレヒコール……。あの方々かしら? 領主さん」
 『特異運命座標』釈提院 沙弥(p3p009634)の問いに、指揮を取っていた領主がゲンナリと答える。
「はい、『過激派』の連中です……。村で大人しくしてる様に、令を出してはいたのですが……」
「我々は権力には屈さなーい!」
「我々には自由に生きる権利があるー!!」
「腐敗した政治家は即刻退去せよー!!!」
 飛んで来た怒声に身を竦める領主様。
「癒着とか言ってますけど?」
 『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)がどう言う事かと。
「何と言うか……説得しようとしたら、私が裏取引して自分達を代価にするつもりだろと言い出されまして……」
「あらまあ……」
「以来、全然話聞いてくれないんです……」
 項垂れながら、取り出した丸薬を飲む。胃薬らしい。
「思想思考は自由であれとは言え、少々被害妄想が過ぎるな」
「人なぞ、そう変わるモノではなかろう。罪に怯え、不安に荒ぶ。まったく、かの頃のままぞ」
 溜息をつくハビーブの横で、ウルファが苦笑する。
「……にしてもこの村、人口多いのぅ?」
 呆れる後ろで、見ていた村人達が叫ぶ。
「あ、アレ! 隣村の『平和の麗人会』の奥様方じゃないか!?」
「は?」
「アッチにはその隣村の『明日を創る青年部』の皆さんが!」
「はぁあ!?」
 目をまん丸くするメンバー。
「……どう言う事でしょう?」
「……連中、近隣の村のお仲間方にも援助を頼んだ様で……」
 無駄に連携が良い。
「聞いていたとはいえ、つくづく厄介な話だ」
 事前に作っておいたバリケードを確認しながら呟くジェイク。
「どうします?」
 確認するウィズィに、『予定通りだ』と銃の撃鉄を起こしながら答える。
「これは彼女の弔いであり、彼女にとっては新たなる門出でもある。それに、祟り神も祀れば守り神になるって話だ。俺としては、弔いの邪魔をする無粋な輩を排除する。それだけさ」
「そうですね。全くもって、同意です」
 頷き、自身も武具を構える。静かな猛りと共に、高らかと名乗りの口上。
「私はウィズィ ニャ ラァム! かの御魂の航海図を示す者! その道行きを邪魔するならば、容赦はしない!」
 警告の光を示す、残影ハーロヴィット・トゥユー。
「さあ、Step on it! 来るなら来い!」
 見開く瞳に華が咲く。

「来たよ来たよ☆ やっちゃお~♪」
「なるべく殺さない様にね。そう、決めたでしょう?」
 飛び出すマリカに声掛ける沙弥。『ザーコ♡ザーコ♡』などとはしゃぎながら踊る彼女の後を追いながら、浮かべる妖艶。
「救えるモノは救わなくては、ね」

「早まるな」
 静かな声が、堕ちかけた意識を引き戻す。
 守る様に背を向けた白妙姫。
「呪いに任せ、人を殺めれば主は真に魔に堕ちよう。さすれば、もう戻る事は叶わぬ」
 言い聞かせる様に、優しく。
「随分と我慢していた筈じゃ。ソレに比ぶれば、如何程も待たせん」
『……』
 従う義理などないけれど。察した様に、『良い子じゃ』と言って彼女は跳ねる。
「やるせないのう……。社も静かに建てられぬとは」
 舞った高み。眼下には、罪の境に迷った愚かな群れ。
「もはや、わしは怒ったぞ」
 不機嫌に愚痴零し、小さな慈鬼は空しい戦場に舞い降りる。

● 狂演
「私は人の弱さを厭う事はないですが、弱さに甘え堕したものは嫌いです」
 沼に浮かべた組立式小型船に立ち、瑠璃は暴徒達を睥睨する。
「娘一人を虐げ贄に仕立てたのみならず、難癖付けて騒ぎ立てる輩は、正直に申し上げて気分が悪い。社を建てる側が依頼人で良かった。同じ仕事でも、気分良くできたほうがいいですからね」
 言われた過激派達が、憤慨の声を上げる。
「何を言ってる!? 『復讐』とか言ったのはその化け物だぞ!!」
「そうです! 復讐だなんて、何て野蛮な……。子供達の安全の為にも、排除すべきです!」
「黙りなさい!」
 一括。
「発言の一部を抜き出して過剰反応とか、今も昔も度し難い」
 切り捨てる。
「『魂は変ずるモノ』と告げた後、虐げられた娘がローレットに何を望んだか、きちんと報告書に残っています」
 そう。彼女は言った。自分が堕ちたその時は、と。
 歪んでいても。爛れ切っていても。その願いには確かな心。
「魂が変ずるというなら、管理者として祭り、許しを請い、祈りを捧げればよろしいでしょう。声が届けば、よい方向に変わっていくかもしれない。それとも、それは虫が良すぎる願いだというくらいの事は理解しておいででしたか?」
 答えに詰まる。沈黙の後、誰かが叫ぶ。
「黙れ! 金で雇われたクセに!」
「利権にたかる糞虫の言う事なんか、聞くに値しないぞ!」
「強行突破だ!」
 思考を放棄する様を見て、溜息一つ。
「少し、頭を冷やしてもらいます」
 展開する眩術紫雲。ぶっかける水なら、いくらでも。

 空を覆う様に広がった投網が、あつらえた道に殺到する暴徒達に被さる。もがく間もなく走った電流にまとめて昏倒。首尾を確認したジェイクが次の弾を装填しながら周囲を見回す。空に座す場から見下ろせば、仕掛けておいた罠にはまり悲鳴を上げる者達の姿。手にした得物で仲間達に挑みかかる者もいるが、所詮は素人。一発で沈黙。不殺は徹底しているので、犠牲者もなし。失神した者を障害物の足しにしてたりするが、まあ些事。
「とは言え……」
 敵の数は多い。素人とは言え、数の暴力は馬鹿に出来ない。
「さて、どうしたものか……」
 思案しながら、もう一発。

「食らえ、これが私の必殺技……通常攻撃!」
 ウィズィの一撃に吹っ飛ぶ暴徒。峰打ちだから、無問題。
 ウルファは身軽に舞いながら、複数人を相手取る。
「随分過激じゃな。反省の気持ちくらい示しても良かろうに」
「うるさい!」
「罪悪感はなかったのか? 悪いと思う気持ちは?」
「俺達は弱者だ! 被害者だぞ!」
「やれやれ」
 閃く神気閃光。複数人、纏めて沈める。
「言うておくが、真に力あるものを怒らせたならこの程度ではすまぬぞ」
「……権力の犬め……」
 毒づく頭をポカリとこづく。
「まぁ、我も我が民ではない汝らに不殺以上の手加減する理由はないがの」
 白目を剥いた相手を壁にして見やる。先にはまだまだ。
「鎮魂のための社作りじゃろう? 過激に反応しおって、そういうのは我ら抜きで対処出来るようになってからにせよ……」
 悪意に悪意を返した所で、戻ってくるのはまた悪意。行き着く所は、草も残らぬ焼け野原。
「不安を煽った者がいたか、先行した者のせいでヤケになったか……。焚き付けた者がおるなら、特別痛い目に合わせねば」
 どれがどれかも、分かりはしないが。

 紫電一閃がまた一人薙ぎ倒す。四方から殴りかかって来る連中を捌きながら、がなる白妙姫。
「素人とはいえ、武器を用いて大挙してくるとあらば未熟なわしは加減が効かぬ! 死んでも知らぬぞ!」
 怖気てくれればと思うものの、相手方も脳内麻薬ガン決め。あな恐ろしや、集団心理。
「全く、厄介な……む?」
 何かの気配。覚えのあるソレに、空を仰ぐ。
「……主か?」
 想起するは、ある存在。
「目的は果たしたであろうに……。成仏しておらぬのか?」
 答えはない。
「……話を聞かねば、分からぬな」
「隙ありぃ!」
「ええい、考え事くらいさせんか!」
 背後から襲いかかる暴徒を殴り倒そうとした、その時。

「悪意マッシマシですねー。御霊の安息には、甚だ迷惑千万」

 上から降る声。凄まじいプレッシャー。考えるより先に、身を翻す。
「排斥」
 瞬間、落ちる衝撃。複数の暴徒がまとめて吹っ飛ぶ。
 唖然とする皆様。
「わお☆」
 嬉しそうにマリカ。
「これは、随分と……」
 感嘆するハビーブ。
「満を侍して、ね……」
 クスリと笑む沙弥。

「逝っちゃってくださーい」
 巻き上がった水壁の向こう、抜けて来たのは漆黒の影三つ。咄嗟にかわすも、慣れてない暴徒達はなす術もなく。泡を吹いて卒倒する。
「死霊(レイス)です! それも、とびきり質の悪い!」
 瑠璃の言葉に、緊張が走る。
「さあさあ悲しき御霊よお待ちかね! 神の教えに従いて、貴女の救済、これより確かに請けたまり!」 
 称える様に踊る死霊達。黄金(こがね)のツインテールをクルリと舞わせ、修道腹の裾をつまんで優雅にお辞儀。
「さてさて、集い溜りし見知らぬ罪人皆様。此方は楽しく愉しい懺悔のお勤めその時間。準備用意は万事OK?」
 満面の笑みが飾る顔は幼くも麗しく。額に刻むは忌ましき禁忌。その刻印。
 『エメレア・アルヴェート』。狂気爛漫御霊の救い手。誰が呼んだか、『天慈災禍の狂い姫』。
「ぬぅ、よりにもよっていっちゃん忙しい時に乱入して来おって! こら、今は主のあいt」
 大概イラついていた白妙姫。一言言おうとした瞬間、目の前に笑顔。
「ぬぉ!?」
「天誅」
 抉り込む様な拳打。咄嗟に防御するも、小さな体が軽々と飛ぶ。
「ぬわぁあ!?」
「白妙姫さん!?」
「マジ!?」
 慌てて駆け付ける仲間達。
 瑠璃が受け止め、ウィズィが名乗り口上で牽制に入る。
「天罰。排除。誅殺罰金」
 委細構わずぶち込む近接格闘。一発一撃、漏れなく重い。しかもそれに死霊達の援護が加わるので、正味手に負えない。
「待って! 話くらい……」
「お話ですか? 聞きますよ? 手足は動かします続行です」
「いや、無理でしょ!?」
「時間は有限。まとめられる手間はまとめるのです」
「そう言う問題じゃ……!」
「貴女方、生きてらっしゃる?」
「そ、そりゃあ……」
「じゃあ、罪人です。決定。天の理、地の自明」
「えぇえ!?」
「折檻」
 突撃槍(ランス)の様な蹴り。当然の様にガードごと。飛んでく悲鳴。
「……会話にならん……」
「過激派連中の方が、まだマシぞ……」
 愕然とするジェイクとウルファ。その横で、うんうんと頷く暴徒皆様。
「い、いかん! 止めねばやらかすぞ! あのイカレトンチキ!」
 泥塗れで歯噛みする白妙姫。かの娘の救霊方針は、霊自身による呪いの昇華。そしてその手段は無力な霊魂の厄災化。普通にとんでもない。
 白妙姫を泥から引っぱり出す瑠璃も、頭を抱える。
「不死王転生の禁呪を施行済みとの事なので、殺める訳にはいきませんし。かと言って手加減出来る相手でも……」
「ああもう、過激派共も面倒見にゃならんし! 手が足りんわ!」
「あ……でも、ソレでしたら……」
「あん?」
 瑠璃が指差す先を見れば、エメレアの大暴れに巻き込まれていく暴徒達の姿。下手に数が多いのが完全に裏目。まるで暴風に取っ散らされるか弱き小鳥の群れ。
「一応、減ってます……」
「……そう言やアヤツ、別にどっちの味方でもなかったの……」
「いいから、誰かこの娘止めてー!!!」
 勝手に繰り広げられる阿鼻叫喚の地獄絵図。哀れな航海士の嘆きが響く。

「我らの出番だな」
 そんな言葉と共に進み出るハビーブ。
「大丈夫ですか?」
「餅は餅屋。そう言う取り決めでしょ?」
 心配する瑠璃に微笑みかける沙弥。その横を、マリカが駆け抜けていく。
「よーし☆ エメレアちゃん、選手交代だよー♪」
「た……助かっt……」
 ドゴォッ!
 色んな意味でボロボロだったウィズィが安堵した瞬間、全体重が乗ったかかと落としがマリカの脳天をブチ抜いた。
 プカ~っと水面に浮かぶマリカ。水死体の如く。
「マ、マリカさぁあああん!!?」
 響く絶叫。
「選手交代との事なので」
「だからせめて話を聞けぇえええ!!!」
 皆の叫びは魂の叫び。

「このような危険な戦いの場に、どうなされたお嬢さん? いや、貴女の信条は聞き及んではいるな。その限りでは、同意しよう。いや、感服もしている」
「やり方はともかく、人柱にされたルサールカに救いが必要なのは同意だわ。聖職者同士熱く話し合おうじゃない」
 エメレア相手に説得を試みるハビーブと沙弥。しかし相手は委細構わず常時フルスロットル。対話を試みる都合上、当然間合いに入らにゃならん訳で。
「しかし……平穏を望む者まで戦いに駆り立てては、聖職者ではなく戦争屋になってしまわぬかね?」
「死人にこそ救いを。素晴らしい思想だわ! もっと聞かせてくれる? その信念を」
 暴力の暴風の中で、傷だらけになりながら懸命に説得する二人。その姿は、ただただ尊い。
「……凄いな。あの二人」
「本音はどうあれ、全ての知ある者があの様な姿勢を取れたなら世の有様はもっとマシだったかもしれんのう……」
 感心し切りのジェイクとウルファ。後ろで避難してきた暴徒達もウンウンと頷く。
「ふにゃ?」
「あ、戻ってきた!?」
「よ、良かった……」
「あはは☆ やられちゃったー♪」
 安堵するウィズィと瑠璃の前で、復活したマリカが跳ね起きる。
「よーし☆ エメレアちゃん、今度はマリカちゃんの番だよー♪」
 黄泉路を渡りかけたとは思えない元気っぷり。呆れる二人。
「強い……」
「死霊術師(ネクロマンサー)って、これがデフォなんでしょうか……?」
 風評被害が酷い。
「ああ、ちょっと待て」
「ん?」
 すぐに突入しようとしたマリカを、白妙姫が呼び止める。
「主、死霊術師(ネクロマンサー)ならば霊魂の声が辿れるな?」
「うん☆ 出来るよー♪」
「ならば、余裕があったらで良い。一つ、頼まれてくれんか?」
「?」
 願いの導き。もう一つ。

「おやおや、御戻り? 折角救ってあげられると思ったのに」
「あはは☆ ただいま☆ まだ遊び足りないの♪」
 呼び出すお友達。偽りの死神が、首狩り鎌を振り上げる。
「これはこれは、何とも素敵。恵まれてますね、ご同輩」
「でしょ♪ でしょ♪」
「では、此方もご紹介」
 ぶつかり合う死の具現。奏者は二人、舞う少女。
 攻撃の手が緩んだので、交渉役二人もここぞとばかり畳み掛ける。
「戦えぬ、戦わぬ者まで戦わせるのではなく、彼らが戦わずに済む道を選ぶのが聖職者とわしは思うていたが」
「生きた彼女を犠牲にし、死んだ彼女を今また虐げようという、酷い所業だわ! だからこそ、彼女には連鎖ではない別の救いを与えるべきでは!?」
 ぶっちゃけ、もう聞いてるかどうかはどうでも良くて。とにかくぶつける、熱い想い。
 で。
「一理あり」
 唐突に止まる暴風。勢いあまってつんのめるマリカを抱き止めながら。
 ポカンとする皆様。
「確かに、暴力昇華はかの方のお好みではない様子。そちらの方針、尊重しましょう」
 急に理性的な事言い出して、かえってビビる。
「聞いとったんかい!?」
「最初に聞くって言ったじゃないですか。駄目ですよ、人の話は聞かないと。めっ」
 崩れ落ちる白妙姫。脱力感、途方も無し。
「ではでは、アタシは不穏分子を受け持ちましょう。皆様どうぞ、ゆるゆると」
 すれ違いざま、マリカの肩をポンポンと。
「頑張って。ご同胞」
 マリカ、ニカッと笑ってサムズアップ。
 ボキボキと拳を鳴らしながら迫る狂い姫。真っ青になって震えあがる過激派皆さん。
「殺さない様にね」
 せめてもの慈悲は沙弥の声。
「貴女が殺してあげるなんて勿体ない。死ぬまで生かしておけばいいのよ」
 悪意は悪意。巡って戻るは永久の因果。

● 終幕
 ――恋人のことが気がかりだったのかな? 心配なことでもあるのかな? 死が二人を分かった後も互いに惹かれあうってコト? キャーっ! なんだかとっても素敵☆ 思わずマリカちゃんの『お友達』に欲しいくらい♪ え、ダメ? そっかぁ~(てへぺろ)――。

 マリカの導き? に答える様に。空気が揺れる。
 弱い弱い、型を成す事も出来ない、残滓の『彼』。けれど、せめても想いを。願いを。
『……そうだね』
 受け止めて、彼女は見渡す。くたびれ果てた村の皆。恐怖の隙間、確かにあるその想い。
 あの冷たさの中に、微かでもソレが芽生えたのなら。きっと、無意味ではなかったのだろう。
『何か、毒気も抜かれちゃったし』
 苦笑いして、ヘトヘトになったかの連中と平然としてる死霊術師の少女二人を。まあ、上等な部類。
 フワリと舞って降りるは、出来上がった社の前。扉に手をかけながら、『みんな』を見る。
『……お人好し』
 開いた扉。渡る前。もう一度。
『ありがとう』
 泥だらけの笑顔達が手を振って。忘れかけてたソレを道連れ。
 扉が閉じる。新たな輪廻への、橋渡し。
 見届けた、『彼』が散じる。今度こそ、本当に。安らかに。
 感謝の想い、もう一つ。
 
 「……魂は移ろいゆく、というのはいつかは報復にいく、という意味ではなかろうよ。まぁ後ろめたさにその言葉で誤解を産んだのは事実じゃろうが。一人の娘を贄とした、その罪を忘れて生きるでない。反省し二度と罪を重ねるな、そういうことじゃろ」
 そう説いた古の精霊が、祈雨術の舞いを捧げる。
 奉納の小雨を浴びながら、村人達はかつての罪が渡った扉に祈る。
 その先で、彼女が何に至るのか。分かりはしない。
 だけど、きっと。
 願う想いは、真実と。
 傾いた日の光。祈りの雨が、綺羅綺羅と。

「ふ~む。今回はなかなかに良い仕事になりましたね」
 振り来る夜の帳の中を一人歩きながら、狂い姫は満足げにウンウン頷く。
「勉強にもなりましたし、徳も積めましたし。それに……」
 思い出すのは、再会を誓って別れた新たな盟友。その笑顔。
 当てなどありはしないけど、己が道を歩んでいればまたいつか。
「さ~て、次は何処の御霊が呼んでいましょうか?」
 歩み行く先は、深い深い闇の中。呪いの遺せし哀れな御霊は数知れず。救いの旅路は延々と。

成否

成功

MVP

釈提院 沙弥(p3p009634)
破戒求道者

状態異常

マリカ・ハウ(p3p009233)[重傷]
冥府への導き手

あとがき

ミッション、無事終了です。参加者の皆様、ご苦労様でした。
書いていてとても楽しい事案でございました。
皆様とはまた次の機会がありますよう、楽しみにしています。

(追伸)
『あの娘』の救いの場を作っていただき、本当にありがとうございました。

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