シナリオ詳細
<Bloom*Bloom>かたわれはいずこ
オープニング
●
たすけて。
ひとりはこわい。
くるしい。いたい。
どうしたって、ふあんになってしまうの。
だめだよ。いかないで。
そばにいてくれなきゃ、だめなの。
●椛
「あれ? 紅葉はどこ?」
きょろきょろと辺りを見渡したのは小さな妖精の少女。秋の島で生まれた彼女は、片割れたる紅葉を探していた。さっき一緒に行たときは手を繋いでいたと思うのだが。
「まよっちゃったのかなあ……」
周りを見てみるが、それらしき姿はない。ぼんやりとしていたら手を離してしまったのかもしれない。これからふたりで遊ぶつもりだったのに、手を離してしまったらどこへもいけないではないか。
椛と紅葉はふたりでひとつ。
繋いだ手と手を離してしまったら、飛ぶことも魔法を使うことも叶わない。
魔法を使いたくとも、片方が欠けていては本来の力も出すことが出来ない。それほどに、双子の妖精にとっては片割れがだいじなのだ。
「紅葉、泣いてないかなあ」
紅葉が泣き虫なことは、ふたりだけのひみつだ。
だからずっと、ふたりだけの秘密のはずだったのに。
「うーん……」
紅葉はどこにいるのか。何処に置き去りにしてしまったのか。
「……!!」
地割れにも地震にも思える感覚が世界を包んだその瞬間。
「危ないぞ」
「!?」
「……ふう、良かった。間に合ったようだ」
眼鏡をくいとあげた青年は、赤い妖精の頭を撫でた。
「俺はグレイシア。君は、何を探しているんだ?」
●あかいろ
「さて、こちらは『椛』を救うための依頼だ」
あたまを掻いたカナタは両手に依頼書を眺めながら、紅葉のプロフィール画像を眺めた。
赤い髪をした少女はにこにこと笑っている。もう片方の手に握られた赤髪の少女も、同様に。
二人はそっくりだ。双子なのだろう。
「現場は秋の島。手を離してしまった妖精たちの物語だ。手を握りなおせるように、ちゃんとあの子に持ち直すように伝えてあげて欲しいんだ」
カナタの表情はあくまでクールだ。妖精たちが起こしてしまう災害にもちかいイベントは、そう珍しいことではない。呪いが伝搬するよりも自然で、単純だ。
「椛を紅葉のところまで、導いてくれ」
- <Bloom*Bloom>かたわれはいずこ完了
- NM名染
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年09月19日 22時05分
- 参加人数4/4人
- 相談4日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●
「大丈夫だ。もうじき俺の友が来る」
「おにいさんの、おともだち?」
「ああ。頼もしくて、少しおせっかいな。いい友達さ」
●
(取り敢えず二人の場所は依頼の多重参加でなんやかんやで把握できているな…。
二人の間を行ったり来たりするのは大変だけど、これも妖精の為、頑張って往復していこう)
森を行き来すれば少し進んでいる間に場所を把握することは出来るだろう。『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は頷き、慎重に進んでいくことにした。
(そんなことより…武器商人さんはどうやって往復しているのやら…?
俺は携行品の多重使用による機動力をオーバードライブして頑張って二人の場所を往復しているが…まあ、あの人は若干俺とは異なる狂気…とはまた違う深淵を纏っているから気にしたら負けかな…)
きっと不思議な力だろう。当の『闇之雲』武器商人(p3p001107)はにこにこと笑みを崩さずに椛に連れそう。
「しっかりしているといえどもまだ幼子には違いないのだし、浮いた島が地に堕ちたら大惨事だからね。
しっかり連れて行ってあげるとしよう。ヒヒヒヒ!」
『煌めくキミが眩しくて』ラピス・ディアグレイス(p3p007373)もそれに頷いて。
「大丈夫。きっとふたりをまた、巡り合わせてあげるからね」
「うん……」
「……っと、タバコはしまっとくか」
ラピスの手を握った椛を見、『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)はそっと煙草を懐の奥へと追いやって。
不安気に涙をためた椛を見て小さくため息を吐きながら、紅葉生い茂る森の中へと進む。
(ガキは苦手なんだが……まぁたまには血と鉛玉とは無縁な依頼も悪かねぇ。いっちょやりますか)
また泣きだして島が落ちてしまっては大変だ。それに迷子になってしまっても行けない。
椛の様子を見ながら、四人は進んだ。一刻も早い再会を目指して。
●
「僕らが一緒なら、少しは寂しくないかな?
カエデの園という場所がきみ達の目的地なら、紅葉ちゃんもきっと其処に居る筈だよ」
「おにいさんは、みち、わかる?」
「うーん……」
苦笑を浮かべたラピス。この世界自体初めてなのに知ってるもくそもない。の、だが。
(知ってるって言っときな!)
先を行くコルネリアがラピスに頷くように示す。紅葉と椛の間を往復する武器商人とサイズも頷いて。
「道、わかるよ。だから大丈夫、紅葉ちゃんのところにもいけるよ」
「ほんとう?」
「うん。紅葉ちゃんはどんな子だろう?」
「紅葉はね、やさしいんだ。たのもしくて、もみじがないてると、いつもたすけてくれるの」
「ふふ、そっか。大切な、決して替えが利かない、かたわれの存在……分かるよ。見た訳では無いけれど、なんとなく」
「わかる?」
「うん。だって、僕にも居るから」
「おにいさんも、ふたご?」
「ううん。血がつながってる訳じゃないし、生まれた世界が同じ訳でもない。
それでも、僕にとってはもう『彼女以外考えられない』。そういう……あはは。お嫁さん、なんだ」
「およめさん……!」
きらきらと、瞳を輝かせた椛。女の子はきっと、そういったお話が大好きなのだ。
頷き、ラピスは椛の頭を撫でてやる。
「椛ちゃんにとっても、きっと、紅葉ちゃんが一緒に居る事が一番なんでしょ? だから大丈夫。絶対ふたりは再会できるよ」
絶対。そう強調したラピスは、ね、と微笑んで。
椛もそれに後押しされるように、頷いた。
「そういや嬢ちゃん、片割れも嬢ちゃんと似てるのか? 双子なんだろ?」
と、口を開いたのはコルネリア。
「んっとね、紅葉のほうが、髪がちょっとだけ、みじかいの。それから、椛とはちがって、道にもまよわないんだよ」
「ほぉ……頼もしい嬢ちゃんだ。離しちまった手は仕方ねぇさ、こうしてアタシ達が来たんだ、ちゃんと会わせてやるよ」
「わっ!」
わしゃわしゃと乱雑に頭を撫でるコルネリア。椛はそれが不快でないらしく、満足げに撫でられていた。
「そういえば、カエデの園は遊園地らしいけど……椛はどんなアトラクションが好きなのかな? それから、我(アタシ)の小鳥にお土産を買いたいんだけど、お土産は売ってるかな?」
「んっとね、たくさんのメープルシロップがたべれる、おいしいゆうえんちなの。椛はメリーゴーランドがすき!」
にこにこと笑う椛。もはやその目に泣き出しそうな気配はない。
「お土産もあるけど、椛はくわしくないの……紅葉なら、しってるとおもう」
「そうか……俺が聞いてみましょうか? 俺なら紅葉さんの居場所がわかる」
「おにいさん、わかるの?!」
「はい、二人が其処で会えるようにしています」
「なら、おねがいしてみてもいい?」
「わかりました、少し待っていてください……グレイシア様は俺を見失わないように時々空を眺めてください」
「わかった」
サイズが空を飛んでいる間、一同はまたカエデの園へと進んでいく。の。だが。
ぐぅ。
「……ふぇ」
椛のお腹が鳴る。ぐすぐすと涙をこぼし始めた椛。それに伴って島も僅かに揺れているような気がする。
「これをお食べ」
「これは……?」
武器商人が差し出したお菓子に椛は小さく瞬きする。
「カボチャはしっかり裏漉しして滑らかな食感にしたし、パイもサクサクに仕上がってなかなかいい出来なんだよ」
「かぼちゃ……!」
ぱぁっと表情を輝かせた椛は、包装からパイをとりだして幸せそうに頬ばった。
「いっぱいあるからみんなもお食べ。「みんな」で食べるのは美味しいからね」
「うん……! これ、紅葉のぶんももらって、いい?」
「ああ、勿論さ。二人でもお食べ」
「えへへ、ありがとう」
「そういえば、氷河のコにはそろそろ過ごしやすい気候かな?」
「ああ、そうだな。涼しくなってきたから、俺には丁度いい」
「少し肌寒くなってきたわよね。秋の島だって聞いたから、アタシも長袖降ろしてきたわ」
「僕もです。少し暑いくらいだったかもしれませんけど、風は涼しいですね」
お腹が空いていたのか、はたまた疲れていたのか。
武器商人が差し出したパイは一同の元気を引き出して、また進む力となった。
「ふう、お待たせしました。伝言を預かって来た」
「わぁ、おにいさんありがとう!」
「『おいしいメープルシロップがあるからそれがいいよ。椛まいごになっちゃだめだよ』って」
「うう……で、でも、もうすぐ着くでしょう、おねえさん?」
「え、あ、アタシ?! まあ、道なりだって書いてあるから、きっともうすぐだろうさ。それより、ちょいと質問いいかい?」
「う、うん、いいよ?」
「気になったんだが、紅葉の妖精ってなんだろうか。この秋の島でどんな役割を持っているのか聞いてみても良いか?」
「えっと、この島の、樹が枯れないように調整してるの。この世界はお花と妖精の世界だから、けっこうだいじなんだよ?」
「ほーん……紅葉の色を変えたりなんかもできるのか?」
「うん、ちょっとだけ。ぜんぶかえるのは、ふたりいっしょじゃないと、できないけど」
「そうかい。じゃあ尚更、二人にならないといけねぇな」
真っ直ぐに進む。
その道の先には。
「椛!」
「紅葉……!
焦がれていた、かたわれ。
ぎゅうっとお互いを抱きしめて、無事を確認する。嗚呼、よかった。
「けがしてない?」
「紅葉は?」
「だいじょうぶ。島がゆれてたから……」
「だいじょうぶ、椛はへーきだよ」
「そっか、よかった」
●再会はみんなで
「さあ、いってらっしゃい」
ラピスが頷き、椛の背中を押す。解けた手のぬくもり。あの子も、僕も、かたわれに嫉妬されたりやしないだろうか。
「おっと、見つかったようねぇ。さ、行きなさいな、もうその手を離すんじゃないわよ?」
「うん。おねーさん、ありがとう」
「ん……あぁ、またな椛、いつか美味いもんでも食いに来させてもらうよ」
「えへへ、そのときは、まかせてね!」
にぱっと、満面の笑みを浮かべた椛にコルネリアは上手く笑い返すことができない。
(笑顔か……やっぱりガキは苦手だよ)
「今度は僕のお嫁さんも連れてきたいし、きみ達にも、僕のかたわれを紹介したいから……その時は、また案内をよろしくね」
「およめさん、連れてきてくれるの?」
「うん。ここなら涼しいから、屹度妻も喜ぶと思うんだ」
「えへへ、そっかぁ。んふふ、まってるね」
「おにいさんが椛を見ててくれたの? ありがとう!」
「ううん、大丈夫だよ。ちゃんと手は握っててあげてね」
「はあい!」
「紅葉、これ、あのひとがくれたの。一緒に食べよう?」
椛がおずおずと差し出したのは、武器商人が渡したパイだ。
「いいの?」
「うん、いいって!」
「ありがとうございます……ん、おいしい!」
ヴェルグリーズが二人を抱きしめる。もう手を離さないように、と何度目かの念を押して。
「しっかり手を繋いで遊園地を楽しんでくるんだよ」
(所謂普通の子供の遊びと言うことをしたことがなかったから……こういった場所は初めてですね)
小さく笑みを浮かべた楓季貞。もう泣きそうな妖精も、不満で頬を膨らませた妖精の姿も無い。
「おにいさん、おねえさん、ありがとう!」
屈託なく笑った二人の妖精たち。
こうして秋の島の平穏は守られたのだった。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
いつぞやにやった相互で影響し合うシナリオがやりたくてひとりでやります。
どうも、染です。
連動するもう一本は公開されているでしょうか。ライブノベルなので楽しさを重視して頂ければ幸いです。
●依頼内容
椛を紅葉のところへつれていく。
小さな子供にとっては独りの時間も不安でしかたありません。
目的地なのだという『カエデの園』という遊園地へと連れて行きながら、不安を紛らわせてあげましょう。
つまり、迷子を迷子のところへつれていく依頼となります。
●椛(もみじ)
紅葉の妖精。双子で赤い髪をしています。
たのもしいおんなのこです。ただしちょっぴり方向音痴。
片割れの名前は紅葉。なきむしなふたごです。
感情が乱れると地震に近い現象を起こします。
浮遊島である秋の島が壊れると、下界に被害が及ぶでしょう。
そのために、気を紛らわせてあげてください。元気付けたり励ましたりしてあげるといいでしょう。
●ロケーション
妖精女王が産み落とした秋の島。
永遠に秋が続く穏やかな島です。
紅葉や銀杏他、秋の果物やきのこが生え、小さな山や川もあります。
小さめの島ではあるものの、人が住むことも可能な程度には広いです。
紅葉が迷子になった場所の近くでは、公園や遊園地など、遊ぶにはうってつけの場所もあるようです。
彼女たちの目的地である『カエデの園』と呼ばれる遊園地もそこにあります。
●世界観
魔法世界『ブルーム・ブルーム』。
花と魔法で満ちた世界。魔法で文明が築かれています。
基本的には物理攻撃よりも神秘攻撃がメインの世界です。
また、ファンタジーな世界ですので、妖精やドラゴンなど、ありえない生物がいます。
●フルールについて
フルールとは、花冠師のこと。
魔法や魔術を使う人々のことを指し、この世界に住まう人々の半分は花冠師です。
現地の人々はもちろん、異世界から来た人がフルールと呼ばれる場合もあります。
また、フルールにはギルドがあり、各々所属している団体があるようです。
●NPC
・グレイシア
先代の妖精王、氷雪の妖精。鋭い目つきと薄氷色の髪が特徴。
エルフのような長耳と眼鏡、恵まれた体格を持ちます。
他国の妖精へ外交をしに行っていた経歴を持ち、知識も豊富です。
以上となります。
ご参加をお待ちしております。
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